小規模不動産特定共同事業 ── 許可と登録、三つの契約類型
- 通常の事業は許可制、小規模事業は登録制。求められる資本金も違う
- 契約類型は三つ。任意組合型では投資家が無限責任を負う
- 小規模事業は出資総額と一人あたりの出資額に上限がある
- クラウドファンディングは電子取引業務として制度化されている
複数の投資家から出資を受け、不動産の取引による収益を分配する。この事業は、不動産特定共同事業法の規制を受けます。
2017年の改正で小規模不動産特定共同事業が創設され、参入の要件が緩和されました。あわせて、インターネットを通じた募集も制度化されています。
この記事では、事業区分、許可と登録の違い、そして三つの契約類型を整理します。
何を規制する法律か
対象となるのは、不動産特定共同事業契約に基づき、不動産取引を行い、その収益を分配する事業です。
| 内容 | |
|---|---|
| 制定 | 平成6年(1994年) |
| 主な改正 | 平成25年(特例事業者の制度)、平成29年(小規模事業・電子取引業務) |
| 所管 | 国土交通省。金融商品取引法とは別の法律 |
不動産を現物のまま共同で取得・運用する事業は、不動産特定共同事業法の対象です。
一方、信託受益権を対象とする場合や、匿名組合出資が集団投資スキーム持分に当たる場合は、金融商品取引法の規制が関わります。
どちらの法律が適用されるかは、スキームの組み立て方によります。設計の段階で確認してください。
事業区分
| 区分 | 何をするか |
|---|---|
| 第1号事業 | 自ら不動産取引を行い、出資を受けて収益を分配する |
| 第2号事業 | 第1号事業の契約締結の代理・媒介 |
| 第3号事業 | 特例事業者の委託を受けて、不動産取引を行う |
| 第4号事業 | 特例事業者が締結する契約の代理・媒介 |
自ら出資を募って事業を行うなら第1号、募集だけを担うなら第2号という関係です。
許可と登録
| 通常の事業 | 小規模事業 | |
|---|---|---|
| 手続き | 許可 | 登録 |
| 行政庁 | 国土交通大臣または都道府県知事 | 都道府県知事 |
| 有効期間 | ― | 5年ごとの更新 |
| 資本金(第1号) | 1億円以上 | 1,000万円以上 |
| 資本金(第2号) | 1,000万円以上 | 500万円以上 |
手続きを行うのは事業者です。投資家が登録するものではありません。
小規模事業の上限
| 項目 | 上限 |
|---|---|
| 出資の総額 | 1億円以下 |
| 一般投資家1人あたり | 100万円以下 |
| 特例投資家1人あたり | 1億円以下 |
物件の面積や規模で決まるのではなく、出資の額で決まります。
この上限を超える事業を行うには、通常の許可が必要です。金額の基準は改正されることがあるため、着手前に国土交通省または都道府県の資料で確認してください。
三つの契約類型
| 任意組合型 | 匿名組合型 | 賃貸型 | |
|---|---|---|---|
| 投資家の地位 | 組合員 | 匿名組合員 | 共有持分の所有者 |
| 不動産の所有 | 組合員の共有 | 事業者が所有 | 投資家が共有持分を持つ |
| 責任の範囲 | 無限責任 | 出資額の範囲 | 持分の範囲 |
| 所得の区分 | 不動産所得 | 雑所得等 | 不動産所得 |
任意組合型では、組合の債務について、投資家が出資額を超えて責任を負う可能性があります。
「投資額以上の損失はない」という説明は、匿名組合型についてのものです。契約類型を確認せずに受け取らないでください。
所得の区分も異なり、税務上の扱いが変わります。個別の判断は税理士にご確認ください。
類型ごとの特徴
- 任意組合型 不動産を共有し、相続時の評価で不動産としての扱いを受けうる。責任は無限
- 匿名組合型 責任が出資額に限定される。クラウドファンディングで多く用いられる
- 賃貸型 投資家が共有持分を取得し、事業者に賃貸する。事業者が転貸して運用する
業務管理者
事務所ごとに、業務管理者を配置する必要があります。
要件
次のいずれかに該当し、一定の要件を満たす者です。
- 宅地建物取引士であって、登録実務講習を修了した者
- 公認不動産コンサルティングマスター
- ビル経営管理士
要件は改正されることがあります。最新の内容は国土交通省の資料で確認してください。
電子取引業務
2017年の改正で、インターネットを通じて出資の募集を行う業務が制度化されました。
いわゆる不動産クラウドファンディングは、この枠組みで行われています。
電子取引業務を行う場合、通常の許可・登録に加えて、その旨の許可または登録を受ける必要があります。
あわせて、電子情報処理組織の管理、なりすまし防止、情報の適切な表示など、追加の体制が求められます。
投資家として確認すること
クラウドファンディングの募集ページを見るときは、次を確認してください。
- 許可番号または登録番号 行政庁と番号が表示されているか
- 契約の類型 匿名組合型か、任意組合型か
- 優先劣後の構造 事業者が劣後出資をしているか、その割合
- 想定利回りが確定ではないことの記載
- 運用期間と、途中で解約できるか
- 対象物件の所在、種類、取得価格
事業者が一定割合を劣後出資し、損失を先に負担する仕組みが設けられることがあります。
これは緩衝材ですが、その割合を超える損失が出れば、投資家にも及びます。
劣後出資の割合が何パーセントか、どこまでの下落を吸収できるかを確認してください。「劣後出資あり」という表示だけでは、判断できません。
また、事業者自体が経営に行き詰まれば、劣後出資の有無にかかわらず影響が及びます。
事業者に課される義務
| 義務 | 内容 |
|---|---|
| 契約締結前の書面交付 | 契約の内容、リスク、手数料を記載した書面を交付し、説明する |
| 契約成立時の書面交付 | 契約の内容を記載した書面 |
| 標識の掲示 | 事務所に許可・登録の内容を表示 |
| 広告の規制 | 誇大広告の禁止 |
| 分別管理 | 事業者の財産と分別して管理する |
| 財産管理報告書 | 定期的に、投資家へ交付する |
| 帳簿の備付け | 事業に関する帳簿を作成・保存する |
禁止される行為
- 虚偽の告知
- 断定的判断の提供 「必ず利益が出る」といった説明
- 損失の補塡の約束
- 迷惑を覚えさせるような時間の勧誘
「元本保証」をうたう募集は、この法律の下では認められません。そうした表示を見た場合、そもそも疑うべきです。
投資家として確認すること
事業者について
- 許可・登録の有無と番号 国土交通省や都道府県の一覧で確認できます
- 財務の状況 事業者が破綻すれば、分配は止まります
- 過去の運用実績と、償還の状況
- 業務管理者が配置されているか
契約について
- 契約の類型(任意組合型なら無限責任)
- 運用期間と、中途解約の可否・条件
- 分配の時期と方法
- 手数料の内容
- 損失が生じた場合の負担の順序
対象不動産について
| 確認するもの | 影響 |
|---|---|
| 所在と種類 | 需要の見通し |
| 取得価格の根拠 | 鑑定評価を取っているか |
| 境界の確定状況 | 売却時に確定測量が必要。運用期間内に終わるか |
| 越境の有無 | 是正または覚書。相手方の対応に左右される |
| 接道と再建築の可否 | 出口の価格、買い手の融資 |
| 賃貸の状況 | 稼働率、主要な賃借人 |
クラウドファンディングでは、運用期間が数か月から数年と短く設定されることがあります。
その期間内に、物件を売却して資金を回収できるか。これが償還の前提です。
境界が未確定であれば、確定測量に数か月を要します。越境があれば、隣接地所有者との交渉が必要です。短い運用期間では、これらが間に合わないことがあります。
期間が延長される可能性についての記載を、募集資料で確認してください。
事業者として検討する場合
| 確認すること | |
|---|---|
| 一 | 許可か登録か出資総額の見込みで決まる |
| 二 | 資本金の要件を満たすか |
| 三 | 業務管理者を配置できるか |
| 四 | 契約類型をどうするか任意組合型/匿名組合型/賃貸型 |
| 五 | 電子取引業務を行うか |
| 六 | 金商法の規制が関わらないか |
| 七 | 都道府県への事前相談 |
スキームによっては、金融商品取引法の登録が必要になる場合もあります。設計の段階で、弁護士に確認してください。
- 許可か登録かを確認した手続きをするのは事業者
- (小規模)出資総額と一人あたりの上限を確認した
- (事業者)資本金の要件を確認した
- (事業者)業務管理者を配置した
- 契約類型を確認した任意組合型は無限責任
- 「投資額以上の損失はない」が当てはまる類型か確認した
- 所得の区分と税務の扱いを税理士に確認した
- (電子取引業務)その旨の許可・登録を受けているか確認した
- 許可番号・登録番号を一覧で照合した
- 優先劣後の割合を確認した「劣後出資あり」だけでは判断できない
- 事業者の財務状況を確認した
- 運用期間と中途解約の条件を確認した
- 対象物件の所在・取得価格の根拠を確認した
- 境界の確定状況と越境の有無を確認した
- 運用期間内に出口を実現できるか確認した
- 「元本保証」の表示がないか確認した
まとめ
- 通常の事業は許可制、小規模事業は登録制。手続きをするのは事業者であって投資家ではない。
- 小規模事業は出資総額と一人あたりの出資額で決まる。物件の規模ではない。
- 契約類型は三つ。任意組合型では投資家が無限責任を負う。
- クラウドファンディングは電子取引業務として制度化されている。
- 運用期間が短い場合、境界の確定や越境の処理が出口に間に合わないことがある。
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