CHIOU / 株式会社地央

都市計画法の全体像 ── 四つの層で捉える

この記事の要点
  • 都市計画法は四つの層でできている。区域 → 地域地区 → 都市施設・市街地開発事業 → 地区計画
  • 用途地域は13種類。2018年に田園住居地域が加わった
  • 都市計画道路にかかると第53条の許可が必要。事業認可後は第65条でさらに厳しくなる
  • 調査では上の層から下へ順に見る。層を飛ばすと、回答が後から覆る

都市計画課の窓口で「用途地域は第一種住居地域です」と言われた。それで回答できるかというと、できません。

用途地域はあくまで一つの層であって、その上に区域区分があり、下に地区計画があり、横に都市施設の計画が走っています。どれか一つでも見落とすと、後から回答が覆ります。

コースCの第1回として、都市計画法の全体像を、実務で使う形に整理します。個別の制度は、この後の回で一つずつ扱います。

四つの層で捉える

内容 決まること
第一層 区域 都市計画区域、区域区分(線引き)、準都市計画区域 開発許可が要るか、そもそも都市計画法が及ぶか
第二層 地域地区 用途地域、防火地域、高度地区、風致地区など 建てられる建物の種類・規模・高さ
第三層 都市施設・市街地開発事業 都市計画道路、公園、下水道/区画整理、再開発 建築の制限、将来の収用
第四層 地区計画 地区単位の細かいルール 用途地域への上乗せ・横出し

調査は上から下へ。区域が分からなければ用途地域の意味が分からず、用途地域が分からなければ地区計画の位置づけが分かりません。

第一層 区域

都市計画区域

都市計画法の規制が及ぶ範囲です。都道府県が指定します(第5条)。市町村の区域を越えて指定されることもあります。

区域の外では、都市計画法による規制はほとんど働きません。ただし「規制がない」と「何をしてもよい」は別です。建築基準法の一部、農地法、森林法、条例などは適用されます。

区域区分(線引き)

都市計画区域を、市街化区域市街化調整区域に区分することです(第7条)。

市街化区域 市街化調整区域 非線引き
位置づけ すでに市街地/おおむね10年以内に優先的に市街化 市街化を抑制すべき区域 区域区分が定められていない都市計画区域
用途地域 必ず定める 原則として定めない 定めることができる
開発許可 1,000㎡以上(条例で引下げ可) 面積にかかわらず必要 3,000㎡以上
非線引きは「決まっていない区域」ではない

非線引き都市計画区域は、将来の計画が未定という意味ではありません。区域区分を定めないという判断がされている区域です。

用途地域が定められている場合もあり、その場合は市街化区域と同じように用途の制限がかかります。「非線引きだから自由」ではないので、必ず用途地域の有無を確認してください。

準都市計画区域

都市計画区域外であっても、放置すれば将来の整備に支障が生じるおそれがある区域について指定されます(第5条の2)。用途地域などの一部の地域地区を定めることができます。

第二層 地域地区

用途地域は13種類

系統 用途地域
住居系(8) 第一種低層住居専用/第二種低層住居専用/第一種中高層住居専用/第二種中高層住居専用/第一種住居/第二種住居/準住居/田園住居
商業系(2) 近隣商業/商業
工業系(3) 準工業/工業/工業専用

用途地域ごとに、建てられる建物の種類、建蔽率、容積率、高さの制限が決まります。相談者の利用目的が、その用途地域で認められるかを確認するのが調査の起点です。

田園住居地域

2018年に加わった、最も新しい用途地域です。農業の利便増進を図りつつ、これと調和した低層住宅の環境を保護するために定められます。

農地の規制は緩和ではなく強化

田園住居地域内の農地では、土地の形質の変更、建築物の建築、土石等の堆積に、市町村長の許可が必要になります(第52条)。

「農地と住宅が共存できる地域だから、農地転用がしやすくなる」という理解は誤りです。むしろ農地を守るための制限が加わります。この地域が指定されている土地を扱う際は、注意してください。

用途地域以外の地域地区

  • 防火地域・準防火地域 建物の構造と開口部に制限。都市部の中心や幹線沿いに指定される
  • 高度地区 建物の高さの最高限度または最低限度
  • 高度利用地区 容積率の最高・最低限度、建蔽率の最高限度、建築面積の最低限度など
  • 特定街区 容積率・高さ・壁面位置を街区単位で定める
  • 風致地区 自然的景観の維持。条例で建築等が制限される
  • 特別用途地区 用途地域の制限を、地域の実情に応じて強化・緩和する
  • 景観地区 建築物の形態意匠の制限

これらは重ねて指定されます。用途地域だけを見て回答すると、高度地区や風致地区の制限を見落とします。

第三層 都市施設と市街地開発事業

都市施設

道路、公園、下水道、学校、病院など、都市に必要な施設です(第11条)。都市計画に定められると、その区域内での建築が制限されます。

建築制限は二段階で厳しくなる

都市計画決定後(第53条) 事業認可後(第65条)
必要な手続き 都道府県知事等の許可 都道府県知事等の許可
許可の基準 階数2以下、地階なし、木造など容易に移転・除却できるものは許可される 事業の施行の障害となるおそれがあるものは許可されない
実務上の意味 長期間、暫定的な建物なら建てられる 事実上、建てられなくなる
事業の進捗を必ず確認する

都市計画道路にかかっている場合、「決定されているだけ」なのか「事業認可を受けているか」で扱いがまったく違います。

決定から何十年も事業化されないまま残っている路線もあります。一方、事業認可が下りれば、その後は用地買収と収用が進みます。都市計画課で、決定の告示日と、事業認可の有無・時期を確認してください。

市街地開発事業

土地区画整理事業、市街地再開発事業、新住宅市街地開発事業など(第12条)。区域内では建築が制限され、事業の進行に応じて権利の変換が行われます。

区画整理区域では、登記上の土地と、実際に使える土地(仮換地)の位置が違います。この点は法務局調査の回でも触れました。

第四層 地区計画

地区の特性に応じて、建築物の用途、容積率、高さ、壁面の位置、垣・柵の構造などを細かく定めるものです(第12条の4以下)。

用途地域が「面」のルールなら、地区計画は「地区」のルールです。用途地域では認められる用途が、地区計画で制限されていることがあります。

地区計画が定められている区域内で建築等を行う場合、市町村長への届出が必要です(第58条の2)。届出の内容が地区計画に適合しない場合、勧告を受けることがあります。

都市計画は、どう決まるか

決定権者

都市計画の種類によって、都道府県が定めるものと市町村が定めるものに分かれます(第15条)。広域的なもの、根幹的なものは都道府県、それ以外は市町村です。

誰が決めたかで、問い合わせ先が変わります。市町村の都市計画課で「これは県の決定です」と言われることがあるのはこのためです。

手続き

段階 内容
基礎調査 人口、土地利用、交通量などを調査(第6条)
案の作成 必要に応じて公聴会等で住民の意見を反映(第16条)
縦覧・意見書 案を2週間公衆の縦覧に供する。関係者は意見書を提出できる(第17条)
審議会 都市計画審議会の議を経る
決定・告示 告示により効力を生じる(第20条)

縦覧と意見書の期間は限られています。関係する土地を扱っている場合、この時期を逃すと意見を述べる機会がなくなります。自治体の公告を定期的に確認してください。

実務でどこを見るか

都市計画課の窓口で、この順に確認します。

  1. 都市計画区域の内か外か 外なら、都市計画法の規制はほぼ及ばない
  2. 区域区分 市街化区域/市街化調整区域/非線引き
  3. 用途地域と、建蔽率・容積率 敷地が二つ以上にまたがる場合の扱いも
  4. その他の地域地区 防火・準防火、高度地区、風致地区、特別用途地区、景観地区
  5. 都市計画施設 かかっていれば、決定の告示日と事業認可の有無
  6. 市街地開発事業 区画整理・再開発の区域内か。仮換地の指定状況
  7. 地区計画 定められていれば、その内容と届出の要否

七番目まで確認して、初めて回答できます。三番目で止めると、後から覆ります。

実務チェックリスト
  • 都市計画区域の内か外かを確認した外なら他法令と条例を確認
  • 区域区分を確認した市街化区域/調整区域/非線引き
  • (非線引き)用途地域の有無を確認した「非線引きだから自由」ではない
  • 用途地域と建蔽率・容積率を確認した
  • 敷地が二つ以上の用途地域にまたがっていないか確認した
  • 防火地域・準防火地域の指定を確認した
  • 高度地区・風致地区・特別用途地区・景観地区を確認した重ねて指定される
  • (田園住居地域)農地の形質変更等に許可が要ることを確認した
  • 都市計画施設にかかっていないか確認した
  • (かかる場合)決定の告示日と事業認可の有無・時期を確認した53条か65条かで扱いが違う
  • 市街地開発事業の区域内か確認した区画整理なら仮換地の指定状況も
  • 地区計画の有無と内容を確認した届出が必要になる
  • 決定権者を確認した都道府県か市町村かで問い合わせ先が変わる
  • 縦覧中の都市計画案がないか確認した

まとめ

  • 都市計画法は四つの層でできている。区域、地域地区、都市施設・市街地開発事業、地区計画。
  • 調査は上の層から下へ。用途地域だけを見て回答すると、後から覆る。
  • 用途地域は13種類。2018年に田園住居地域が加わり、区域内の農地には形質変更等の許可が必要になった。
  • 都市計画施設にかかる場合、決定段階(53条)と事業認可後(65条)で建築制限の厳しさが違う。
  • 決定権者は都道府県と市町村に分かれる。問い合わせ先を間違えないよう確認する。
この内容を、貴社・貴庁の研修として。

都市計画法から開発許可、区画整理、再開発まで全14分野。自治体の職員研修、専門職団体の講習会としてお引き受けしています。
構成のご提案とお見積りまで、費用はかかりません。

都市計画実践講座を見る
不動産実務講座(無料・全43講座)

BLOG

ブログ

PAGE TOP