開発許可制度 ── 何に、どの規模から必要か
- 要否は区域・行為・面積の三つの掛け合わせで決まる。どれか一つでは判断できない
- 市街化区域でも1,000㎡以上なら許可が必要。「市街化区域だから不要」は誤り
- 市街化調整区域は面積にかかわらず必要。10㎡でも許可が要る
- 調整区域では、33条(技術基準)に加えて34条(立地基準)を満たさなければならない
「この土地を造成して家を建てたいのですが、開発許可は要りますか」。この問いに答えるには、三つを確認する必要があります。
どの区域にあるか。行おうとしているのは開発行為に当たるか。面積はいくらか。この三つの掛け合わせで要否が決まります。どれか一つだけを見ても答えは出ません。
この記事では、開発許可の要否をどう判断するか、市街化調整区域では何が加わるかを扱います。申請の実務は、次の回で扱います。
要否は、三つの掛け合わせ
市街化区域でも、1,000平方メートル以上の開発行為には許可が必要です。条例でこれより小さい面積に引き下げている自治体もあります。
「市街化区域=自由に開発できる」という理解のまま進めると、無許可で工事に着手することになります。是正命令の対象となり、工事の中止と原状回復を求められることがあります。
一 開発行為に当たるか
開発行為とは、主として建築物の建築または特定工作物の建設の用に供する目的で行う、土地の区画形質の変更です(都市計画法4条12項)。
「区画形質の変更」の三つ
| 内容 | 該当しない例 | |
|---|---|---|
| 区画の変更 | 道路・水路等の新設、廃止、付替えにより、土地の区画を変更すること | 単なる分筆・合筆(登記上の区画を変えるだけ) |
| 形の変更 | 切土・盛土による土地の造成 | ごく軽微な地ならし |
| 質の変更 | 農地など宅地以外の土地を宅地とすること | すでに宅地である土地の利用形態の変更 |
一筆の土地を三筆に分けただけであれば、登記上の区画が変わっただけで、開発行為ではありません。
しかし、そこに道路を新設して区画を割れば、開発行為に当たります。この違いは実務で頻繁に問題になります。「分けるだけ」と「道を入れる」の間に線があります。
特定工作物
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 第一種特定工作物 | コンクリートプラント、アスファルトプラント、クラッシャープラント、危険物の貯蔵・処理に供する工作物 |
| 第二種特定工作物 | ゴルフコース(規模を問わない)/1ヘクタール以上の野球場・庭球場・陸上競技場・遊園地・動物園・墓園など |
ゴルフコースだけは面積要件がありません。規模にかかわらず第二種特定工作物です。
二 面積要件
| 区域 | 許可が必要な規模 |
|---|---|
| 市街化区域 | 1,000㎡以上(三大都市圏の一定区域は500㎡以上。条例で300㎡まで引下げ可) |
| 市街化調整区域 | 規模にかかわらず必要 |
| 非線引き都市計画区域 準都市計画区域 |
3,000㎡以上(条例で300㎡まで引下げ可) |
| 都市計画区域・準都市計画区域外 | 1ヘクタール(10,000㎡)以上 |
市街化区域の1,000㎡、非線引きの3,000㎡は、条例で300㎡まで引き下げることができます。
隣の市では不要でも、この市では必要ということが起こります。自庁・当該自治体の条例を必ず確認してください。「1,000㎡未満だから大丈夫」と過去の経験で判断すると、間違えます。
面積は「一体の開発」で見る
隣接する土地を、時期をずらして順に開発した場合でも、実質的に一体の開発と認められれば、合算して面積を判断されます。
面積要件を下回るように分割して申請しても、通りません。同一の事業者、同一の目的、時期の近接、道路や排水の一体性などから総合的に判断されます。
三 許可が不要な場合
面積要件を満たしていても、次に当たる場合は許可が不要です(29条1項各号)。実務でよく使われるものを挙げます。
| 号 | 内容 |
|---|---|
| 2号 | 市街化区域以外における、農林漁業用の建築物、または農林漁業を営む者の居住用建築物 |
| 3号 | 駅舎その他の鉄道施設、図書館、公民館、変電所など公益上必要な建築物 |
| 4号 | 都市計画事業の施行として行うもの |
| 5号 | 土地区画整理事業の施行として行うもの |
| 6号 | 市街地再開発事業の施行として行うもの |
| 10号 | 非常災害のため必要な応急措置 |
| 11号 | 通常の管理行為、軽易な行為 |
2号は実務で重要です。市街化調整区域であっても、農業を営む者の住宅は開発許可が不要です。ただし「農業を営む者」に当たるかどうかの認定があり、自治体ごとに基準が定められています。
市街化調整区域では、二つの基準を満たす
調整区域の開発許可では、技術基準と立地基準の両方を満たさなければなりません。
| 条文 | 内容 | 適用 | |
|---|---|---|---|
| 技術基準 | 33条 | 道路・排水・給水の確保、防災、公園、緑地など。物としての質 | すべての区域 |
| 立地基準 | 34条 | そもそもその場所に建ててよいか。立地の可否 | 市街化調整区域のみ |
市街化区域では33条だけを満たせば足ります。調整区域では、33条を満たしていても、34条のいずれかの号に該当しなければ許可されません。
34条の主な号
| 号 | 内容 |
|---|---|
| 1号 | 周辺の居住者の日常生活に必要な物品の販売・加工・修理等の店舗等 |
| 4号 | 農林水産物の処理・貯蔵・加工に必要な建築物 |
| 7号 | 既存工場と密接な関連を有する事業用建築物 |
| 9号 | 沿道サービス施設(給油所、ドライブインなど) |
| 10号 | 地区計画・集落地区計画に適合する建築物 |
| 11号 | 条例で指定する区域内の開発行為(市街化区域に隣接・近接し、おおむね50以上の建築物が連たんしている地域など) |
| 12号 | 条例で区域・目的・予定建築物の用途を限って定めたもの |
| 13号 | 線引きの際、自己の居住・業務用建築物を建てる目的で土地等を有していた者が行うもの |
| 14号 | 開発審査会の議を経て、周辺の市街化を促進するおそれがなく、市街化区域内で行うことが困難または著しく不適当と認められるもの |
この二つは条例で定めるものです。指定されている区域があるか、どういう用途が認められるかは、市町村によってまったく異なります。
「隣の市では建てられた」は根拠になりません。必ず当該自治体の条例と、区域指定図を確認してください。
14号は、他の号のいずれにも当たらない場合の受け皿です。開発審査会の議を経る必要があるため、時間がかかります。提案から議決まで数か月を要することもあります。
手続きの流れ
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 事前相談 | 開発指導課で計画の概要を相談。ここで方向性が決まる |
| 関係機関との協議 | 道路管理者、下水道管理者、農業委員会、消防など。同意書・協議書が必要 |
| 公共施設管理者の同意 | 32条。既存の公共施設の管理者の同意、新設する公共施設の管理者との協議 |
| 近隣説明 | 条例や指導要綱で義務づけられている場合が多い |
| 申請 | 設計図書、資金計画、権利者の同意書などを添付 |
| 審査・許可 | 33条(+調整区域は34条)に適合するかの審査 |
| 工事 | 許可後に着手。工事完了公告まで、原則として建築できない |
| 検査・公告 | 工事完了検査を受け、検査済証の交付と工事完了の公告 |
許可が下りるまでの期間は、事前相談から数か月に及ぶことが普通です。調整区域で14号を使う場合は、さらに長くなります。事業計画には、この期間を織り込んでください。
実務でつまずく点
農地が絡むと、二つの手続きが重なる
開発区域に農地が含まれる場合、開発許可に加えて農地転用の許可(届出)が必要です。さらに農業振興地域の農用地区域であれば、その前に農振除外が要ります。
農振除外は年に一、二回の受付にまとめられていることが多く、除外の告示まで一年前後を要することもあります。この工程を見落とすと、事業計画が根本から崩れます。
公共施設の管理者の同意が取れない
開発区域内または隣接して、既存の道路や水路がある場合、その管理者の同意が要ります。法定外公共物(赤道・青道)が絡むと、用途廃止と払下げの手続きが必要になることがあります。
工事完了公告まで建築できない
開発許可を受けた区域内では、工事完了の公告があるまで、原則として建築物を建築できません(37条)。分譲を先行させる計画の場合、この制限を織り込んでおく必要があります。
- 区域を確認した市街化区域/調整区域/非線引き/区域外
- 開発行為に当たるか確認した分筆だけなら該当しない。道路の新設があれば該当
- 面積を確認した市街化区域1,000㎡/非線引き3,000㎡/区域外1ha/調整区域は面積不問
- 条例で面積要件が引き下げられていないか確認した300㎡まで引下げ可能
- 一体の開発として合算されないか確認した分割しても通らない
- 許可不要の例外に当たらないか確認した農林漁業用・公益施設・事業の施行など
- (調整区域)34条のどの号に該当しうるか確認した
- (11号・12号)当該自治体の条例と区域指定図を確認した市町村ごとに違う
- (14号)開発審査会の開催頻度と所要期間を確認した
- 33条の技術基準を満たせるか確認した道路・排水・給水・防災・公園
- 公共施設の管理者の同意が得られるか確認した
- 法定外公共物が絡まないか確認した用途廃止・払下げが必要になることがある
- 農地が含まれないか確認した農地転用と農振除外の期間を織り込む
- 近隣説明の義務がないか、条例・指導要綱を確認した
- 工事完了公告まで建築できないことを計画に織り込んだ
まとめ
- 要否は区域・行為・面積の三つの掛け合わせで決まる。どれか一つでは判断できない。
- 市街化区域でも1,000㎡以上なら許可が必要。条例で引き下げられていることもある。
- 市街化調整区域は面積にかかわらず必要。33条に加えて34条を満たさなければならない。
- 34条11号・12号は条例によるため、自治体ごとに扱いが違う。
- 農地が絡むと農地転用と農振除外が重なる。期間を事業計画に織り込む。
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