土地価格の相場を知る方法
不動産の売買のときに一番気になるのは、その不動産の「評価」ではないでしょうか。
「その価格で買って(あるいは、売って)損はしないだろうか」
「その価格は、妥当なのかどうか」
不動産売買の当事者(売主・買主)の最大の関心ごとは、どれだけ高く売れるのか(売主)とどれだけ安く買えるのか(買主)です。
売主は、「その価格で売って損しないのか」と考え、買主は、「その価格で買って損しないのか」と考えます。
要するに、みんな損をしたくないのです。
その価格が妥当であり、客観的資料に基づいて客観的に評価結果であることが理解できたら、このもやもやは少しでも払拭できるかもしれません。
相場を知るためのポイント
土地の総額の重要性
土地の総額は重要です。
例えば、坪あたり40万円の地域に、A地(50坪)とB地(100坪)があったとします。
さて、A地、B地の土地価格はいくらでしょうか?
A地 50坪×40万円=2000万円
B地 100坪×40万円=4000万円
となるのでしょうか?
A地は、相場通り40万円、総額2000万円の値が付く可能性が高いです。土地の総額が2000万円で建物を1000万円で建てれば3000万円で一戸建てを持つことができると考えられるからです。
しかし、B地はどうでしょうか?
そもそも、一戸建てに100坪も必要ありません。
100坪×40万円=4000万円も払うのであれば、坪あたり80万円の立地条件の良い場所で50坪くらいの土地を選ぶと思いませんか?
よって広い土地は、細分化して売り出されます。
新しく道路を新設する場合もあります。
そのため、有効宅地面積は、20%から30%くらいは減少します。もっと広くなれば40%から50%くらい減少する場合もあります。
その分、土地総額価格は、薄められることになりますね。
大都市圏では、500㎡の土地区画形質の変更は開発許可が必要です。
戸建用地は、まず総額ありきなのです。
しかしこれはあくまでも戸建用地としてみた場合のことであり、これがロードサイドの商業店舗用地等であれば、また比較の仕方が変わってきます。
このように、「用途」は何か、を踏まえつつ、総額を意識しなければなりません。
土地の単価は容積率に正比例
地価が高ければ高いほど、その土地を有効に活用したいものです。
そのためには容積率をできるだけ使うことがポイントになります。
A地:100坪 容積率400%
B地:200坪 容積率200%
このA地とB地の坪単価は、同じだと考えられます。
この考え方の基本には、土地の広さより「建物の延べ床面積」を優先し、基準にしていることが挙げられます。
土地の単価は容積率に比例するのです。
これを不動産業界では、「一種あたりいくら」と言います。
一種あたり100万円である商業地で容積率が600%であれば、土地の単価は坪あたり600万円ということになります。
実際の容積率は、前面道路幅員によって影響を受けます。
前面道路幅員が12m未満であった場合、次のいずれか少ない数字が実際の容積率となります。
- 指定容積率
- 前面道路幅員 × 0.6 (用途地域が住居系の場合は0.4)
容積率が800%であっても、前面道路幅員が6mであれば、
6m×0.6=360% < 800%(指定容積率)
となります。
地価は容積率に比例するとは、つまり道路幅員に比例するとも言えますね。
指定容積率が高い数字だからといって安心して入られません。
このように前面道路幅員はどのくらいなのか、注意して確認しなければなりません。
収益還元法
「評価対象不動産が将来生み出すであろうと期待される純収益の現在価値の総和」から不動産価値を求める手法を収益還元法と定義づけています。
純収益を還元利回りで割れば算出できます。
諸経費控除後の純収益が1000万円を稼ぐ不動産があるとします。
還元利回りが5%であれば、
1000万円 ÷ 5% = 2億円
となります。
見て分かる通り、還元利回りの数字に置き方によって、大きく結果は異なってきますので慎重さが必要です。
還元利回りは、他の資産の収益性や金融市場における運用利回りと密接な関係にあります。動向には注意しておきましょう。
商業地など純収益が見込みやすい地域では有効な価格の算出方法です。
賃料が激変する昨今でもありますから過大な期待は禁物ですが・・・
不動産を見るときの思考回路
- 不動産に関する知識
- 現地を見る
- その道のプロに確認する
01.不動産に関する知識
不動産に関する最低限の法令的な制限は身につけていなければなりません。
敷地の接道義務というものがあります。
「建物を建築する敷地は、建築基準法に定める道路に2m以上接していなければならない」とするものです。
この規定を知らなければ、建築できない敷地をつかまされることもありえます。
また、計画的なまちづくりを行うための基本法である都市計画法も重要です。(詳細は、別ページ)
都市計画区域で「市街化区域」と「市街化調整区域」に区分(線引き)している場合があります。
「市街化区域」は、市街化を促進しようとする区域です。
「市街化調整区域」は、農業や自然環境を守るという理念のもと、建物を建てることを原則禁止しています。
開発行為を行うことである一定の建築行為はできる可能性はありますが(それでも開発許可申請とのお金を時間がかかります)、何か建築しようと思って敷地を購入したのに市街化調整区域だったため何もできなかったということにならないように気をつけなければなりません。
このように最低限の基本的な知識を身につけていなければ、致命的なミスを犯してしますということです。
02.現地を見る
前述のように、致命的なミスを犯さないためにも知識を身につけておくことは重要です。
ただし、不動産の実力は知識ではありません。
最も重要なこと。
それが、現地を自分の目で見て考えるということ。
- 周辺の相場がどのくらいか把握する
- 現地の状況(広さ、地形、高低差など)確認
- 周辺の状況(地域性、日照、交通量など)確認
- 道路の状況(幅員、連続性など)確認
ポイントは、相手の立場に立ってみることです。
収益物件であれば、投資家の立場で、高級住宅街であればお金持ちになった気分で、物件を見てみましょう。
そうすることで、物件を見る目が養われていきます。
次に、一通りの確認が終わったら、数値化してみます。
数値化といっても、あくまでも抽象的なものでかまいません。
「自分で考える」ことが重要なことです。
そもそも不動産の評価に絶対的な正解はないのですから、ここは思い切って、感覚的に直感を信じて数字をおいていきましょう。
不動産評価 = 周辺の相場 ± 個別的要因
周辺の相場の置き方としては、標準的(4m道路に接道している50坪くらいの土地)な土地を想定しておきます。
周辺での土地の売買の事例がないかを調べてみます。
調べ方は、「どこで」「いつごろ」「いくら」で売買されたかを拾い出して、それをもとに今現在、どのくらいの価格になるかを想定していきます。
現地の状況で地積が広ければ、マイナス。
道路が6m道路であれば、プラス。
というように、個別的要因をプラスマイナスしていきます。
これからどのように「現地を自分の目で見て考える」かを見ていきたいと思っています。
03.その道のプロに確認する
独りよがりにならないように専門家の意見も聞いて、「考え」の幅と深みを持たせていきたいものです。
専門家の知識を吸収し、「自分の目で見て考えるということ」に活用していきましょう。
土地の価格の種類
一物四価と言われているように不動産の価格は4つあります。
- 実勢価格
- 公示価格
- 路線価
- 固定資産税評価額
01.実勢価格
これは、実際に行われた不動産売買での価格のことです。
取引事例価格とも言えますね。
土地に関して言えば、この取引事例価格(売買価格)が時価であり、売りに出してマーッケット(市場)で売れる価格であると言えるでしょう。
ただし、注意が必要です。
不動産売買の際に何か特殊な事情が含まれていないかどうか、諸条件の比較が的確に行われているかどうか、業者価格とエンド価格の区分がきちんとなされているかどうか、を注意しましょう。
たまたま、その価格でも欲しいという買主がいたから、売買が成立したという場合も考えられます。
取引のすべての事情、背景、売買状況など総合的に把握した上で実勢価格(取引事例価格)をみていきましょう。
一般的に、路線価は、実勢価格の80%と言われていますから
実勢価格 = 路線価 ÷ 80%
で推測できます。
02.公示価格
取引事例の価格を基準にして対象地の価格を求める方法は、不動産鑑定士の行う鑑定評価でも最重要な方法でもあります。
取引事例の価格を基準にする場合、その取引事例は、一つだけではリスクが多いため数多くの取引事例を集めなければなりません。
こんな時、取引事例に代わって基準になるのが公示価格です。
公示価格の目的は、
一般の土地の取引価格に対して指標を与えること
としています。
国土交通省が毎年1月1日に現在の各地の地価を公示します。
国が公示しているということで権威があるとされていますが、いまいち使いずらく実務上使う時は注意が必要です。
注意点としては、 公示されている場所が限られていることや、実勢価格とタイムラグがある(2年くらい)ことを踏まえておくことでしょう。
統計操作も行われていたこともあり、信頼性もどうなのだろうか?という疑問もあります。
それでも参考にすべき価格であることは間違いないです。
参考程度にとどめておくべきということでしょうか。
03.路線価
この路線価から相続税の評価額が自分で計算できます。
地価の概略を知ることができて便利なものではあります。
ただし、全面的に信用はできません。
道路ごとに数字が記入されています。
「8,550A」というように記してあります。
これは、この道路に面した土地の相続税の路線価が1㎡あたり855万円ということです。
これが、相続税財産評価の計算基礎となります。
公示価格の8割とされています。
しかし、公示価格自体があてにならない地域がありますので、注意が必要です。
[A]という記号は、借地権等の割合を示すものです。
Aは90% Bは80% Cは70% Dは60% ・・・といった具合です。
今では、インターネットで誰でもすぐに確認することができます。
昔から公表されているものであり、長い期間をかけて補正されてきたという経緯があるためそれなりの信頼性があると言えるでしょう。
土地の価格は、ほぼ道路で決まると言っても良いでしょう。
そういった意味で、道路ごとに評価している「路線価」は便利なものです。
04.固定資産税評価額
固定資産税評価額は、路線価の内容とほぼ同じです。
固定資産税、登録免許税、不動産取得税等の課税標準の指標となっています。
一般的に固定資産税評価額は、実勢価格の70%とされいていますので、
固定資産税評価額 = 実勢価格 × 70%
で推測できます。