農振除外 ── 申出先と、六つの要件

農振除外 ── 申出先と、六つの要件

この記事の要点
  • 申出先は市町村。農業振興地域整備計画を定めているのは市町村だから
  • 除外には六つの要件をすべて満たす必要がある。一つでも欠ければ認められない
  • 基盤整備事業の完了から8年を経過していない土地は、原則として除外できない
  • 除外はスタートライン。除外されてから、あらためて農地転用の手続きが始まる

「農用地区域です」と分かった時点で、その計画の工程は大きく変わります。農振除外という手続きが、農地転用の前に一つ挟まるためです。

しかもこの手続きは、申請すれば通るものではありません。六つの要件をすべて満たす必要があり、一つでも欠ければ認められません。そして受付は年に一、二回。告示まで一年前後を要することもあります。

この記事では、除外の要件、申出先と手続きの流れ、そして相談者にどう説明するかを扱います。

農地には、性格の違う二つの規制がかかっている
農地法は一筆ごとの「点」の規制、農振法は区域を描く「面」の規制。順番は、面が先になる
農振法 ── 面の規制
農地法 ── 点の規制
市町村が農業振興地域整備計画を定め、そのなかに農用地区域(青地)という区域を描く。区域の中は、農業上の利用を確保すべき土地として扱われ、転用は原則として認められない
農地を宅地などに変えるとき、一筆ごとに転用の許可を要する。許可の窓口は農業委員会を経由し、許可権者は原則として都道府県知事等。農地の区分に応じて可否が判断される
手続きは、この順にしか進まない
① 農振除外 面をはずす
② 農地転用許可 点の許可
青地のままでは、農地転用の審査の土俵に上がれない。だから除外が先に来る
図1 農地法と農振法 ── 点の規制と、面の規制

農用地区域とは

市町村が定める農業振興地域整備計画のなかで、今後おおむね10年以上にわたって農業上の利用を確保すべき土地として定められた区域です。通称「青地」と呼ばれます。

農用地区域(青地) 農用地区域外(白地)
位置づけ 農業上の利用を確保すべき土地 農振地域内だが農用地区域ではない
農地転用 原則不許可 農地区分に応じて判断
転用の前提 農振除外が必要 不要

農振地域に指定されていても、農用地区域でなければ除外の手続きは不要です。まず「青地か白地か」を確認してください。

除外は「許可」ではなく、市町村の計画を書き換えること
申請に対して行政が応答する許可とは、手続きの性格そのものが違う
ふつうの許可申請 ▸ 審査 ▸ 許可または不許可
個人の申請に対する、行政の応答
農振除外申出 ▸ 市町村が計画の変更案をつくる
行政計画そのものを変える手続き
だから、関わる主体が多くなる
申出人
除外を求めて市町村に申し出る
市町村
計画の主体。変更案を作成し、公告・縦覧を行う
農業委員会
市町村の求めに応じて意見を述べる
都道府県
市町村と協議し、知事が同意する
窓口は市町村県に申請書を持ち込む手続きではない。県が出てくるのは、市町村との協議と同意の段階
図2 除外は、市町村の行政計画を変える手続き

申出先は市町村

県に出すのではない

農業振興地域整備計画を定めているのは市町村です。したがって、除外を求める申出も市町村に対して行います。

県の農林水産部門に申請書を持ち込むのではありません。市町村が計画の変更案を作り、その過程で県と協議し、県知事の同意を得るという構造になっています。

窓口を間違えると、そこで時間を失います。市町村の農政担当課に相談してください。

六つの要件は、すべて満たさなければならない
農振法13条2項。一つでも欠ければ、除外は認められない
代替性
農用地区域以外の土地をもって
代えることが困難であること
地域計画
農用地区域内における
地域計画の達成に支障がないこと
新設
効率的・総合的利用
農用地の集団化、農作業の効率化
その他の利用に支障がないこと
利用集積
効率的・安定的な農業経営を営む者
への利用集積に支障がないこと
土地改良施設
土地改良施設の機能に
支障を及ぼさないこと
8年の経過
基盤整備事業の完了年度の翌年度から
8年を経過していること
二号は、令和5年4月1日から加わったもの農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律(令和4年法律第56号)による。市町村が定める地域計画と、その目標地図が判断材料になる
図3 農振法13条2項が定める、六つの要件

六つの要件

農振法13条2項は、次のすべてを満たす場合に限り、農用地区域から除外できると定めています。

要件 実務上の意味
農用地区域以外の土地をもって代えることが困難 白地に代替地がないことを示す必要がある
農用地区域内における地域計画の達成に支障を及ぼすおそれがない 令和5年4月に加わった要件。目標地図の記載を確認する
農用地の集団化・農作業の効率化その他農業上の効率的・総合的利用に支障を及ぼさない まとまった農地の真ん中を抜くのは難しい
効率的・安定的な農業経営を営む者への農用地の利用集積に支障を及ぼさない 担い手が集積している区域は厳しい
土地改良施設の機能に支障を及ぼさない 用水路・排水路・農道への影響
農業生産基盤整備事業の工事完了年度の翌年度から8年を経過している これが最も動かせない
8年ルールは、交渉の余地がない

圃場整備や用排水路の整備など、公共投資が行われた農地は、完了から8年を経過するまで除外できません。

他の五つは説明や計画の工夫で説得できる余地がありますが、この要件は年数の問題なので動かせません。

用地を選ぶ段階で、基盤整備事業の実施履歴と完了年度を市町村で確認してください。8年に満たなければ、その土地は候補から外すという判断になります。

二号(地域計画)は、令和5年4月から加わった

農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律(令和4年法律第56号)により、地域計画の達成に支障を及ぼすおそれがないことが要件に加えられました。令和5年4月1日の施行です。

地域計画は、市町村が地域の話し合いにもとづいて定めるもので、10年後に誰がどの農地を使うかを示した「目標地図」を含みます。策定の期限は令和7年3月末とされ、多くの市町村ですでに公表されています。

対象地が目標地図のなかでどう位置づけられているかを、市町村で確認してください。担い手が耕作することとされている農地であれば、この要件で止まります。

一号(代替性)が実務の中心

六要件のうち、実務でいちばん説明を求められるのが代替性です。「白地に適地があるのに、なぜ青地なのか」を説明できなければ通りません。

説明の材料になるのは、次のような事情です。

  • 白地の候補地を実際に検討し、成立しなかった経緯(面積、形状、接道、価格、所有者の意向)
  • 既存の施設に隣接している必要がある(増設、一体的な利用)
  • 接道条件、インフラの引込み条件
  • 事業の性質上、その場所でなければならない理由

「ここが安かったから」は理由になりません。候補地の比較検討を、資料として残しておいてください。

面積の妥当性

要件そのものではありませんが、事業規模に対して面積が妥当かどうかも審査されます。必要以上に広い区域を除外しようとすると、その部分を削るよう指導されます。

除外が成立するまで、半年から一年
受付が年に一、二回しかないため、数週間の遅れが半年の差になる
事前相談
青地か白地か、要件を
満たしうるかを市町村に確認
申 出
年1〜2回の受付期間に提出
逃すと半年待ち
検討と協議
市町村の審査、農業委員会の
意見、県との事前協議
数か月
公告・縦覧
30日間の縦覧、
満了後15日以内に異議申出
約1か月
同意と公告
県知事の同意を経て変更を公告
ここで除外が成立
除外の成立
着工までの見込み
農振除外 6か月〜1年
農地転用 1〜2か月
(開発許可が要るなら)さらに数か月
合計で、一年から二年「来年の春に着工したい」という相談であれば、その時点で難しいと伝えることになる。除外は、そこから転用が始まるスタートラインでしかない
図4 事前相談から除外の成立、そして転用まで

手続きの流れ

段階 内容 目安
事前相談 市町村の農政担当課へ。青地か白地か、要件を満たしうるかを確認
申出 年1〜2回の受付期間に提出 逃すと半年待ち
市町村の検討 要件への適合を審査。農業委員会の意見も 数か月
県との事前協議 市町村が県と協議 数か月
計画変更案の公告・縦覧 30日間の縦覧 1か月
異議申出 縦覧期間満了後15日以内
県知事との協議・同意 県の同意を得る 数か月
変更の公告 ここで除外が成立
農地転用の手続き ここから始まる 1〜2か月
除外はスタートライン

農振除外が認められても、それだけでは建てられません。除外によって「白地」になっただけであり、そこから農地転用の許可を取る必要があります。

除外は農地転用の前提条件であって、転用の許可ではありません。相談者にはここを明確に伝えてください。「除外が通ったから大丈夫」と受け取られると、後で行き違いになります。

用途によって、説明のしやすさが大きく違う
とくに一号(代替性)を、どこまで客観的に説明できるかで見通しが分かれる
転用の目的
説明のしやすさ
実務での見立て
農家の子の分家住宅
説明の余地はある
必要性と代替性を、家族構成・所有農地の位置・白地の検討経過といった客観的な資料で示せるかどうかにかかる
事業用地・工場・倉庫
厳しい
面積が大きく、周辺の営農条件への影響も大きい。他法令の許可も重なるため、工程全体が長くなる
太陽光発電(営農型でないもの)
かなり厳しい
青地でなければならない理由を示しにくい。代替性の説明が立たないという扱いを受けやすい
一般の個人住宅
ほぼ通らない
住宅を建てたいという事情だけでは、農用地区域から外す理由として弱いとされる
※ 可否を判断するのは市町村と県。ここに示したのは一般的な傾向であり、窓口で断定してはならない
図5 転用の目的別にみた、説明のしやすさ

相談者にどう説明するか

期間を、最初に伝える

相談を受けた時点で、着工までにどれだけかかるかを逆算して伝えてください。

工程 期間の目安
受付までの待ち 0〜6か月(受付時期による)
除外の手続き 6か月〜1年
農地転用 1〜2か月
(開発許可が必要なら) さらに数か月

合計で一年から二年を見込むことになります。「来年の春に着工したい」という相談であれば、その時点で難しいと伝えるべきです。

通らない可能性を伝える

申出をしても、認められないことがあります。「申請すれば通る」という前提で計画を進めさせないでください。

とくに、8年ルールに抵触する場合、担い手への集積が進んでいる区域の場合は、率直に難しいと伝えるほうが親切です。

断定しない

可否を判断するのは市町村と県です。窓口で「これは通ります」と断定しないでください。要件を説明し、該当する可能性の有無までを伝え、市町村の農政担当課につなぎます。

実務でつまずく点

受付時期を逃す

年に一、二回の受付が一般的です。市町村ごとに時期が違います。相談を受けたら、まず次の受付がいつかを確認してください。数週間の違いで、半年変わります。

白地だと思っていたら青地だった

農振地域の指定と農用地区域の指定は別です。「農振地域内だが白地」という土地もあります。市町村の農政担当課で、農用地区域図により確認してください。地図上で色分けされています。

一筆の一部だけ除外する

一筆の農地のうち、必要な部分だけを除外することは可能です。ただし分筆が必要になり、測量と登記の期間が加わります。また、残る部分が農地として使いにくい形になれば、要件三・四の判断に影響します。

県との協議で差し戻される

市町村が認めても、県との協議で修正を求められることがあります。面積の縮小、位置の変更、代替性の説明の補強。その分だけ期間が延びます。

除外後の転用で止まる

除外が済んでも、農地転用の一般基準(資力・信用、転用の確実性、被害防除)を満たさなければ許可されません。除外の段階から、転用の要件も見据えて資料を揃えてください。

実務チェックリスト
  • 農振地域内か、農用地区域(青地)かを確認した市町村の農用地区域図で
  • 市町村の農政担当課に事前相談した県ではない
  • 基盤整備事業の実施履歴と完了年度を確認した8年ルール。動かせない
  • 白地に代替地がないことを説明できるか検討した候補地の比較検討を資料に残す
  • 地域計画の目標地図で対象地の位置づけを確認した令和5年4月に加わった要件
  • 周囲の農地の集団性を確認したまとまった農地の中央は難しい
  • 担い手への利用集積が進んでいる区域でないか確認した
  • 用水路・排水路・農道への影響を確認した
  • 事業規模に対して面積が妥当か検討した広すぎると削るよう指導される
  • 次の受付時期を確認した年1〜2回。逃すと半年待ち
  • 一筆の一部の場合、分筆の期間を工程に加えた
  • 除外後に農地転用の手続きが必要であることを相談者に伝えた
  • 着工までの所要期間を逆算して伝えた合計で1〜2年
  • 通らない可能性があることを伝えた
  • 可否を断定せず、市町村の農政担当課につないだ

まとめ

  • 申出先は市町村。農業振興地域整備計画を定めているのが市町村だから。
  • 除外には六つの要件をすべて満たす必要がある。一つでも欠ければ認められない。
  • 基盤整備事業の完了から8年ルールは、交渉の余地がない。用地選定の段階で確認する。
  • 令和5年4月から、地域計画の達成に支障がないことが要件に加わった。目標地図を確認する。
  • 実務の中心は代替性の説明。候補地の比較検討を資料として残す。
  • 除外はスタートライン。そこから農地転用の手続きが始まる。着工まで一年から二年。
農地転用・農振除外、お引き受けしています。

熊本県・熊本市の農地転用、農振除外、開発許可申請。行政書士 村上事務所(熊本市東区)が承っています。

行政書士 村上事務所
開発許可の教科書(目次)

BLOG

ブログ

PAGE TOP