立地が全て ── 地価と人口動向で選ぶエリア戦略
- 立地には二つの層がある。エリア(面)と、その土地(点)
- 面は人口動態と都市計画で見る。行政が公表している資料で分かる
- 立地適正化計画の誘導区域は、行政がどこに人を集めるかの意思表示
- 同じエリアでも、接道と道路付けで価値は大きく変わる。隣の土地とも違う
「立地が全て」とよく言われます。ただ、この言葉が指しているものが二つあります。
ひとつはエリア。どの市の、どの地域か。もうひとつはその土地そのもの。同じ町内でも、道路の付き方ひとつで条件は変わります。
エリアの話だけをして、その土地の条件を見ないと、「良い場所なのに使いにくい土地」を買うことになります。この記事では、面と点の両方の見方を整理します。
二つの層
| 面(エリア) | 点(その土地) | |
|---|---|---|
| 見るもの | 人口、都市計画、開発の動き、生活の便 | 接道、間口、方位、高低差、形状、道路付け |
| 分かること | 需要が続くか | 建てられるか、売れるか |
| 調べ方 | 行政の公表資料、統計 | 公図、登記記録、現地、役所の窓口 |
| 変わりやすさ | 時間とともに変わる | ほぼ変わらない |
面は変わりますが、点は変わりません。接道が足りない土地は、周辺がどれだけ発展しても接道が足りないままです。
面で見る
人口動態
市町村のウェブサイトで、人口の推移が公表されています。全体の増減だけでなく、次を見てください。
- 町丁目単位の動き 市全体は減っていても、増えている地区があります
- 世帯数の動き 人口が減っても世帯数が増えていれば、住戸の需要は続きます
- 年齢構成 どの層が住んでいるか。単身か、家族か
市の平均を見て判断すると、実態を外します。国勢調査の小地域集計や、市町村が出している地区別のデータで確認してください。
都市計画
行政がその地域をどうしたいかは、都市計画に表れています。都市計画図は、市町村の窓口かウェブサイトで確認できます。
| 見るもの | 意味 |
|---|---|
| 区域区分 | 市街化区域か、市街化調整区域か |
| 用途地域 | 建てられる建物の種類と規模 |
| 都市計画道路 | 将来、道路が通る計画。建築が制限される |
| 土地区画整理・再開発 | 事業の区域内か。段階によって扱いが違う |
| 地区計画 | 用途地域より細かいルール |
立地適正化計画 ── 行政の意思表示
多くの市町村が立地適正化計画を定めています。人口が減る中で、どこに居住を誘導し、どこに医療・福祉・商業を集めるかを示した計画です。
- 居住誘導区域 人口密度を維持したい区域
- 都市機能誘導区域 病院、商業施設などを集めたい区域
これは行政が公表している、長期の方針です。誘導区域の外では、一定規模以上の住宅開発に届出が必要になり、勧告を受けることもあります。
将来の公共交通や施設の配置にも関わります。不動産の広告には出てきませんが、市町村のウェブサイトで区域図を見られます。
開発の動き
- 大規模な事業所の進出・撤退
- 道路や鉄道の整備計画
- 大学・病院・商業施設の新設や移転
- 市町村の総合計画に書かれている方針
「開発が予定されている」という情報は、構想段階なのか、事業として動いているのかで意味がまったく違います。
構想のまま何年も動かない計画があります。都市計画道路のなかには、決定から何十年も事業化されていない路線もあります。
市町村の担当課で、決定の告示日と事業認可の有無を確認してください。「計画がある」だけを根拠に判断しないでください。
熊本の場合
半導体関連の進出により、県内の一部地域で開発が活発になっています。ただし、その影響が県内全域に及ぶわけではありません。
影響の及ぶ範囲と、及ばない範囲を分けて見る必要があります。通勤圏、住宅の需要、道路の整備。どこまでが実際に動いているかは、地区ごとに違います。
点で見る
ここからが、エリアの話では出てこない部分です。同じ町内でも、土地ごとに条件が違います。
接道
建築基準法上の道路に、2メートル以上接している必要があります。これを満たさなければ、原則として建物を建てられません。
現に建物が建っていても、安心はできません。建築基準法ができる前から建っている、あるいは接道の要件が変わった後も残っている場合があります。
再建築できない土地は、買い手に融資が付きにくく、売却が難しくなります。エリアがどれだけ良くても、この条件は変わりません。
道路付け
どの方角の、どういう道路に接しているか。これで使い勝手が変わります。
| 状況 | 実務上の意味 |
|---|---|
| 二方向以上の道路に接する | 出入りの自由度が高い。分割しやすい |
| 道路が狭い | 二項道路なら後退が必要。使える面積が減る |
| 私道に接する | 通行・掘削の承諾が要る。維持費の負担も |
| 道路と高低差がある | 造成費、擁壁の維持。出入りに階段が必要になることも |
| 路地状の敷地 | 間口が狭く、工事車両が入りにくい |
形状と間口
同じ面積でも、整形か不整形かで使える範囲が変わります。
- 間口が狭い 建物の配置が限られる。駐車場が取りにくい
- 三角形・台形 建物を建てられる範囲が減る
- 細長い 部屋の配置に制約が出る
隣地との関係
- 越境 塀、庇、樹木、給排水管
- 境界の確定状況 地積測量図、筆界確認書の有無
- 高低差 どちらが擁壁を維持するのか
- 隣地の用途地域 南側が中高層なら、日照が失われる可能性
地盤と災害
- 造成の履歴 盛土か切土か。開発許可の履歴
- 旧地形 国土地理院の旧版地形図・空中写真で確認できる
- ハザードマップ 浸水、土砂災害、液状化
これらは買う前に、無料で調べられます。
「地位」という言葉について
不動産の世界で地位(じぐらい)という言葉が使われることがあります。その土地が地域の中でどう評価されてきたか、という意味合いです。
地位は、駅からの距離や商業施設の有無といった利便性の指標とは別のものです。
古くからの住宅地で、駅から遠くても評価が高く保たれている地域があります。逆に、新しく便利になった地域が、同じ評価を得るには時間がかかります。
これは地元の事情を知らないと分かりません。地価公示や地価調査の標準地の価格を、周辺と比べて見ると手がかりになります。
ただし、この感覚を根拠に、特定の地域を良い悪いと断定して語るのは避けてください。数字で示せる範囲で判断するほうが確実です。
情報の取り方
| 調べるもの | どこで |
|---|---|
| 人口の推移 | 市町村のウェブサイト、政府統計(e-Stat) |
| 用途地域・区域区分 | 市町村の都市計画課、都市計画図 |
| 立地適正化計画 | 市町村のウェブサイト |
| 道路の種別 | 市町村の建築指導課 |
| 土地の形と接道 | 公図(法務局)、現地 |
| 境界の確定状況 | 地積測量図(法務局) |
| 災害の危険性 | ハザードマップポータルサイト、市町村 |
| 旧地形 | 国土地理院(旧版地形図、空中写真) |
| 地価 | 地価公示、都道府県地価調査、路線価 |
ほとんどが無料で確認できます。不動産会社に聞く前に、自分で見ておくと、説明を受けたときの理解が変わります。
現地で見ること
資料だけでは分からないことがあります。
- 時間帯による様子の違い(昼と夜、平日と休日)
- 道路の実際の幅と、通行の状況
- 周辺の建物の状態、空き家の多さ
- 坂や階段の有無。地図では分かりません
- 周辺の音、におい
面と点、どちらを先に見るか
順序としては面から入り、点で確かめるのが効率的です。
| すること | |
|---|---|
| 一 | エリアを絞る人口、都市計画、誘導区域、生活の便 |
| 二 | 候補の土地を見る接道、道路付け、形状、高低差 |
| 三 | 建てられるか、売れるかを確かめる役所と法務局 |
| 四 | 数字を計算する |
三番目を飛ばして四番目に進むと、前提が崩れたときに計算がやり直しになります。
- 面 町丁目単位の人口・世帯数の推移を確認した市の平均で判断しない
- 面 区域区分と用途地域を確認した
- 面 都市計画道路にかかっていないか確認した
- 面 立地適正化計画の誘導区域の内か外か確認した
- 面 開発計画の段階を確認した構想か、事業認可済みか
- 点 建築基準法上の道路に2m以上接しているか確認した
- 点 道路の種別と幅員を確認した二項道路なら後退の要否
- 点 私道の場合、通行・掘削の承諾を確認した
- 点 土地の形状と間口を確認した
- 点 道路や隣地との高低差を確認した
- 点 境界の確定状況を確認した
- 点 越境の有無を確認した
- 点 造成の履歴と旧地形を確認した
- 点 ハザードマップを確認した
- 現地を複数の時間帯で見た
まとめ
- 立地にはエリア(面)と、その土地(点)の二層がある。面は変わるが、点は変わらない。
- 面は人口動態と都市計画で見る。町丁目単位で見ないと実態を外す。
- 立地適正化計画の誘導区域は、行政が公表している長期の方針。広告には出てこない。
- 点で最初に見るのは接道。再建築できない土地は、エリアが良くても売却が難しい。
- ほとんどの情報は無料で確認できる。説明を受ける前に、自分で見ておく。
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