CHIOU / 株式会社地央

市街化調整区域 ── 建てられる場合と、その条件

この記事の要点
  • 調整区域には原則として用途地域が定められていない。制限の中身は用途地域ではなく、許可制
  • 許可は二本立て。造成を伴えば29条の開発許可、伴わなくても43条の建築許可
  • 既存宅地制度は2001年に廃止されている。現在は条例(34条11号・12号)による
  • 調整区域の土地は融資が付きにくく、流通性が低い。価格だけでなく売却の可否を説明する

「市街化調整区域です」と伝えると、相談者はたいてい「建てられないということですか」と聞き返します。

正確には、建てられない場合が多いが、建てられる場合もあるです。そして建てられるかどうかは、造成を伴うかどうかで確認すべき条文が変わります。ここを取り違えると、回答が根本から狂います。

コースC第1章の締めくくりとして、調整区域の土地を扱うときに何をどの順で確認するかを整理します。

何が制限されているのか

用途地域による制限ではない

市街化調整区域には、原則として用途地域が定められていません(都市計画法13条1項7号)。

したがって、「第一種低層住居専用地域だから店舗は建てられない」といった用途地域による制限は働きません。建蔽率・容積率も、用途地域による指定ではなく、特定行政庁が定める数値によります。

制限の本質は別のところにあります。そもそも許可を受けなければ、建築行為も開発行為もできないという点です。

許可は二本立て

開発許可(29条) 建築許可(43条)
対象 土地の区画形質の変更を伴うもの 区画形質の変更を伴わない建築物の新築・改築・用途変更
面積要件 なし(規模にかかわらず必要) なし
基準 33条(技術基準)+34条(立地基準) 政令で定める基準(34条各号に相当する内容)
造成しなければ自由、ではない

すでに平らな宅地があり、造成をせずに家を建てるだけであれば、開発行為には当たりません。しかし、それでも43条の建築許可が必要です。

「土地をいじらないから開発許可は要らない」までは正しいのですが、そこで止まると誤ります。調整区域では、建てる行為そのものに許可が要ります。

改築や用途変更も対象です。倉庫を店舗にする、住宅を事務所にする。これらも許可が必要になります。

許可が不要な場合

29条1項2号・3号に当たる建築物は、開発許可も建築許可も不要です。

  • 農林漁業用の建築物 畜舎、蚕室、温室、堆肥舎、サイロ、農機具収納施設など
  • 農林漁業を営む者の居住の用に供する建築物
  • 公益上必要な建築物 駅舎その他の鉄道施設、図書館、公民館、変電所など

「農林漁業を営む者」に当たるかどうかは、自治体が基準を定めています。耕作面積、収入、従事日数などで判断されます。自己申告では通りません。農業委員会の証明等が求められます。

建てられる場合とは

34条の各号、または43条の基準に該当すれば、許可を受けて建てられます。実務でよく使われるものを挙げます。

34条11号・12号(条例による)

市街化区域に隣接・近接し、おおむね50以上の建築物が連たんしている地域などについて、条例で区域を指定し、その区域内での開発行為を認めるものです。

既存宅地制度は、もうない

かつては「既存宅地の確認」という制度があり、線引き前から宅地であった土地には比較的緩やかに建築が認められていました。

この制度は2001年5月に廃止されています。経過措置も終了しました。現在は、各自治体が条例で定める区域指定(34条11号・12号)に引き継がれています。

「既存宅地だから建てられる」という説明は、現在の制度では成り立ちません。古い資料や年配の方の記憶に基づく説明を、そのまま伝えないでください。

34条13号(線引き前からの所有者)

区域区分(線引き)が定められた際、自己の居住用または業務用の建築物を建てる目的で土地等を有していた者が行うものです。

ただし、線引きから6か月以内の届出と、その後一定期間内の実施が要件とされています。線引きは多くの地域で数十年前に行われているため、現在この号を使える案件は限られます。

34条14号(開発審査会)

他のいずれの号にも当たらない場合の受け皿です。周辺の市街化を促進するおそれがなく、市街化区域内で行うことが困難または著しく不適当と認められるものについて、開発審査会の議を経て許可されます。

多くの自治体が、14号の運用基準(提案基準)を定めています。分家住宅、収用対象事業による移転、既存建築物の建替えなど、類型化されていることが一般的です。まず自治体の提案基準を確認してください。

既存建築物の建替え

すでに適法に建っている建物の建替えは、比較的認められやすい類型です。ただし、用途・規模・構造が従前と同等であることが条件とされるのが通常です。

住宅を住宅に建て替えるのは認められても、住宅を店舗にする、規模を大幅に拡大する、といった場合は別の判断になります。

調整区域の土地を扱うときの実務

確認の順序

  1. 区域区分を確認する 都市計画図で調整区域であることを特定する
  2. 造成を伴うかを確認する 伴えば29条、伴わなくても43条
  3. 29条1項2号・3号に当たらないか 農林漁業用・公益施設なら許可不要
  4. 条例による区域指定の内か 34条11号・12号。区域指定図を確認
  5. 14号の提案基準に当たるか 分家住宅、建替え、移転など
  6. 既存建築物の履歴を確認する 適法に建てられたものか、許可の内容は何か
  7. 農地かどうか 農地転用と農振除外の要否
  8. 接道を確認する 建築基準法上の道路に2m以上接しているか

四番目までで止めると、多くの案件を取りこぼします。逆に、可否の判断そのものを窓口で断定してはいけません。

既存建築物の許可の履歴を確認する

調整区域に建っている建物には、何らかの許可を受けて建てられた履歴があります。その許可の内容が、その後の扱いを縛ります。

  • 分家住宅として許可されたものは、用途変更や第三者への譲渡に制限がかかることがあります
  • 農家住宅として建てられたものを、農業を営まない者が取得する場合、用途変更の許可が必要になることがあります
  • 許可の条件として、一定期間の使用義務が付されていることがあります

開発指導課で、過去の許可の内容を確認してください。「建物が建っているから同じものが建てられる」とは限りません。

税の扱い

市街化調整区域の土地・家屋には、原則として都市計画税が課税されません。固定資産税は課税されます。

また、農地の固定資産税評価は、市街化区域内の農地(宅地並み評価)と異なり、農地評価となります。保有コストは市街化区域より低くなるのが通常です。

流通性と融資

価格より、売れるかどうかを説明する

調整区域の土地は、金融機関の担保評価が低く、住宅ローンが付きにくい傾向があります。建築の可否が許可に左右されるためです。

買主が現金で購入できても、その買主が将来売却するとき、次の買主に融資が付かないという問題が残ります。人口減少地域では、買い手が付かないまま相続に至ることもあります。

価格の説明だけでなく、将来の流通性についても説明し、記録に残してください。「安いから」で購入した買主が、後で処分できずに困る事態は避けるべきです。

相続で相談を受けたとき

調整区域の土地は、相続の場面で問題になりやすい財産です。

  • 売却しようにも買い手が付かない
  • 建物が老朽化しているが、建て替えられるか分からない
  • 相続人が遠方に住んでおり、管理できない

選択肢としては、相続土地国庫帰属制度の利用、隣地所有者への売却、農地であれば農地中間管理機構への貸付けなどが考えられます。いずれも要件があるため、早い段階で情報提供してください。

実務チェックリスト
  • 都市計画図で市街化調整区域であることを確認した
  • 用途地域が定められていないことを前提に判断した用途地域の制限は働かない
  • 造成を伴うかを確認した伴えば29条、伴わなくても43条
  • 29条1項2号・3号に当たらないか確認した農林漁業用・公益施設
  • (農林漁業用)自治体の認定基準を確認した自己申告では通らない
  • 条例による区域指定(34条11号・12号)の内か確認した
  • 「既存宅地だから」で判断していない2001年に廃止されている
  • 14号の提案基準に該当しうるか確認した分家住宅・建替え・移転など
  • 既存建築物の許可の履歴を開発指導課で確認した
  • (分家住宅・農家住宅)用途変更や譲渡の制限がないか確認した
  • 農地かどうか確認した農地転用・農振除外の要否
  • 接道を確認した建築基準法上の道路に2m以上
  • 可否を断定せず、開発指導課につないだ
  • 将来の流通性と融資の付きにくさを説明し、記録した

まとめ

  • 調整区域には原則として用途地域がない。制限の本質は用途地域ではなく、許可制にある。
  • 許可は二本立て。造成を伴えば29条、伴わなくても43条の建築許可が要る。
  • 既存宅地制度は2001年に廃止された。現在は条例による区域指定(34条11号・12号)。
  • 既存建築物の許可の履歴が、その後の扱いを縛る。開発指導課で確認する。
  • 価格だけでなく、将来の流通性と融資の付きにくさを説明し、記録に残す。
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