第二種金融商品取引業 ── 登録が要る場面
- 必要な登録は業務ごとに違う。募集は第二種、運用は投資運用業
- 実務で広く使われるのが適格機関投資家等特例業務。届出で足りるが、投資家の範囲に制限がある
- 第二種の対象は流動性の低い有価証券。信託受益権、集団投資スキーム持分
- 登録には資本金などの財産的基礎と、人的構成の要件がある
不動産ファンドに関わる業務は、金融商品取引法の規制を受けます。
ただし、「不動産ファンドをやるには第二種金融商品取引業の登録が必要」という理解では足りません。何をするかによって、必要な登録が変わります。
この記事では、業務と登録の対応関係、実務で使われる特例、そして登録の要件を整理します。
第一種と第二種の違い
| 第一種 | 第二種 | |
|---|---|---|
| 対象 | 流動性の高い有価証券 | 流動性の低い有価証券 |
| 具体例 | 株式、社債、投資信託受益証券 | 信託受益権、集団投資スキーム持分 |
| 主な担い手 | 証券会社 | ファンドの販売者、不動産関連事業者 |
| 要件 | より重い | 第一種より軽い |
不動産の証券化で扱われる信託受益権や匿名組合出資持分は、いわゆるみなし有価証券にあたり、第二種の対象になります。
業務によって、必要な登録が違う
| 何をするか | 必要な登録 |
|---|---|
| ファンド持分を募集・私募する | 第二種金融商品取引業 |
| 信託受益権を売買・媒介する | 第二種金融商品取引業 |
| ファンド資産を運用する | 投資運用業 |
| 投資について助言する | 投資助言・代理業 |
募集と運用は、別の登録です。両方を行うなら、両方の登録が必要になります。
アセットマネジメント会社が資産の運用判断を行う場合、投資運用業の登録が問題になります。第二種だけでは足りません。
適格機関投資家等特例業務
一定の要件を満たす場合、登録ではなく届出で、ファンド持分の私募や自己運用ができます。
主な要件は次のとおりです。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 出資者の構成 | 適格機関投資家が1名以上、かつ、それ以外の者が49名以下 |
| 投資家の範囲 | 適格機関投資家以外は、一定の要件を満たす投資家に限られる |
| 手続き | あらかじめ届出を行う |
GK-TKスキームで匿名組合出資を募る場合など、この特例を用いる例が多くあります。
2015年の改正で規制が強化された
この特例を悪用した被害が生じたことを受け、2015年に金融商品取引法が改正されました。
| 強化された点 | 内容 |
|---|---|
| 投資家の範囲 | 一般の個人は原則として出資者になれない |
| 届出書の公表 | 金融庁のウェブサイトで公表される |
| 行為規制 | 説明義務、禁止行為などが適用される |
| 監督 | 報告徴求、業務改善命令、業務停止命令の対象 |
「届出だから規制が緩い」という理解は、現在では成り立ちません。出資者の要件を満たさない者が一人でも入れば、無登録営業となります。
登録の要件
財産的基礎
| 内容 | |
|---|---|
| 法人の場合 | 資本金の額が一定以上であること |
| 個人の場合 | 営業保証金の供託 |
| 純財産 | マイナスでないこと |
金額の基準は法令で定められており、改正されることがあります。申請前に、金融庁または財務局の資料で確認してください。
人的構成
- 業務を適確に遂行できる体制 経験を有する者の配置
- 法令遵守の体制 担当者・部門の設置、社内規則の整備
- 常勤の役職員の確保
- 他の兼業業務との関係で、利益相反が生じない体制
登録審査では、人的構成が重点的に見られます。
金融商品取引業の経験を有する者がいるか、法令遵守を担当する者が営業から独立しているか、内部管理の体制が整っているか。
資本金の要件を満たしていても、体制が整っていなければ登録されません。申請の前に、財務局への事前相談を行うのが実務です。
その他
- 欠格事由に該当しないこと
- 金融商品取引業協会への加入、または同等の社内規則の整備
- 加入する認定投資者保護団体があること(該当する場合)
行為規制
| 規制 | 内容 |
|---|---|
| 標識の掲示 | 営業所に登録番号等を表示する |
| 広告等の規制 | 誇大広告の禁止。手数料やリスクの表示義務 |
| 契約締結前の情報提供 | 取引の内容、リスク、手数料を、あらかじめ説明する |
| 契約締結時の交付 | 契約の内容を記載した書面等の交付 |
| 適合性の原則 | 顧客の知識、経験、財産の状況、投資目的に照らして不適当な勧誘を行わない |
| 禁止行為 | 虚偽の告知、断定的判断の提供、損失補塡 |
| 分別管理 | 顧客の財産を、自己の財産と分別して管理する |
従来は書面の交付が原則でしたが、制度が見直され、電磁的方法による提供が広く認められるようになりました。
ただし、顧客の承諾を得るなどの要件があります。運用にあたっては、現行の法令とガイドラインを確認してください。
断定的判断の提供
「必ず儲かる」「元本は保証される」といった説明は、明確に禁止されています。
利回りの見込みを示す場合も、それが確定的なものでないことを明示する必要があります。営業の現場で最も問題になりやすい規制です。
宅建業との関係
| 宅地建物取引業 | 第二種金融商品取引業 | |
|---|---|---|
| 対象 | 現物の宅地・建物 | 信託受益権、ファンド持分 |
| 根拠法 | 宅地建物取引業法 | 金融商品取引法 |
| 参入 | 免許 | 登録 |
| 監督 | 国土交通大臣・都道府県知事 | 金融庁・財務局 |
同じ物件を扱っても、現物なら宅建業法、受益権なら金商法です。
両方の業務を行う場合、両方の免許・登録が必要になります。社内の体制も、それぞれの規制に対応させる必要があります。
実務上の注意
スキームを組む前に確認する
資金の集め方、運用の主体、投資家の属性。これらによって、必要な登録や届出が変わります。
スキームを固めてから「登録が必要だった」と分かると、組み直しになります。設計の段階で、弁護士や登録実務に詳しい者に確認してください。
無登録営業のリスク
登録や届出をせずに業として行った場合、刑事罰の対象になります。
また、無登録業者が行った売付け等について、契約を取り消すことができる規定が設けられています。事業そのものが成り立たなくなります。
「少人数だから」「知り合いだけだから」という判断は危険です。業として反復継続する意思があるかどうかで判断されます。
特例業務の要件を維持する
適格機関投資家等特例業務では、要件を継続して満たす必要があります。
- 適格機関投資家が脱退して不在にならないか
- それ以外の出資者が49名を超えないか
- 出資者が要件を満たす投資家であるか
- 持分が第三者に譲渡された場合の扱い
組成時に満たしていても、期間中に崩れることがあります。持分の譲渡制限を契約で定めておくのが実務です。
原資産の調査は、規制の外にある
金融商品取引法が規律するのは、取引の勧誘や説明の適正さです。原資産そのものの品質は、別に確かめる必要があります。
| 確認するもの | 影響 |
|---|---|
| 境界の確定状況 | 売却時に確定測量が必要。出口の時期に影響する |
| 越境の有無 | 是正または覚書。相手方の対応次第 |
| 接道と再建築の可否 | 買い手の融資、担保評価 |
| 法令への適合 | 検査済証、既存不適格 |
| 賃貸借契約 | 期間、解約条項、敷金の承継 |
これらは投資家への説明事項にもなります。調査結果を書面で整理し、開示できる状態にしておいてください。
境界が未確定であること、越境があること、修繕が必要であること。これらを知りながら説明しなかった場合、後の紛争で不利になります。
適合性の原則や説明義務の観点からも、不利な事実こそ先に伝えてください。
- 行う業務を特定した募集か、運用か、助言か
- 必要な登録を確認した第二種・投資運用業・投資助言代理業
- 特例業務で足りるか検討した適格機関投資家等特例業務
- (特例)出資者の要件を確認した適格機関投資家1名以上、それ以外49名以下
- (特例)投資家の範囲の制限を確認した一般の個人は原則不可
- (特例)持分の譲渡制限を契約で定めた
- 財産的基礎の要件を確認した
- 人的構成を整えた経験者の配置、法令遵守体制
- 財務局に事前相談を行った
- 金融商品取引業協会への加入を検討した
- 広告の表示を確認した誇大広告、手数料・リスクの表示
- 契約締結前の情報提供の内容と方法を整えた
- 断定的判断の提供にあたる表現がないか確認した
- 適合性の原則に照らした勧誘の基準を定めた
- 分別管理の体制を整えた
- (宅建業も行う)両方の規制に対応する体制を整えた
- 原資産の調査結果を書面で整理した
- 不利な事実を先に説明する運用にした
まとめ
- 必要な登録は業務ごとに違う。募集は第二種、運用は投資運用業。
- 適格機関投資家等特例業務は届出で足りるが、2015年の改正で投資家の範囲が制限された。
- 「届出だから規制が緩い」という理解は現在では成り立たない。
- 登録審査では人的構成が重点的に見られる。資本金だけでは足りない。
- 金商法が規律するのは勧誘と説明。原資産の品質は別に確かめる必要がある。
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