不動産会社の開業 ── 免許取得までの流れ

この記事の要点
  • 免許の区分は事務所を何県に置くかだけで決まる。売上や規模は関係ない。
  • 専任の宅地建物取引士は従業者5人に1人。この割合を切ると免許を受けられない。
  • 保証金は供託1,000万円か、保証協会の分担金60万円か。ここで開業資金が大きく変わる。
  • 広告のルールは2022年に改正された規約が現行。古い解説が多く残っている。

不動産会社の開業は、順序を決めれば手続きそのものは難しくありません。詰まるのは、要件を満たしていない状態で先に進んでしまったときです。

とくに事務所と、専任の宅地建物取引士。この二つは、あとから直すのに時間がかかります。

この記事では、免許の区分、事務所と人の要件、保証金の選択、そして広告のルールを整理します。

免許は、事務所をどこに置くかで決まる

事務所の置き方
国土交通大臣免許2以上の都道府県に事務所を設置する場合
都道府県知事免許1の都道府県に事務所を設置する場合

営業する範囲ではなく、事務所の置き方で決まります。熊本県内に事務所が一つなら知事免許で、県外のお客様と取引しても構いません。

有効期間は5年。更新には期限がある

免許の有効期間は5年です。更新の申請は、有効期間が満了する日の90日前から30日前までに行う必要があります。

この期間を外すと、手続きが面倒になります。免許証を受け取った時点で、更新の時期を控えておくことです。

事務所の要件

宅地建物取引業の事務所は、継続的に業務を行える形態と、独立した空間であることが求められます。

  • 他の法人や個人の事務所と、明確に区分されていること
  • 自宅の一部を使う場合、生活空間と分けられていること
  • 賃貸なら、事務所としての使用が認められていること

物件を借りてから要件を満たさないと分かる例が、いちばん多い失敗です。契約する前に、免許の窓口に間取りを見せて相談してください。用途地域の制限も併せて確認します。

専任の宅地建物取引士

事務所には、従業者5人に1人の割合で専任の宅地建物取引士を置く必要があります。これを満たさなければ免許は受けられません。

人が抜けたら、補充の期限がある

開業時に満たしていても、退職などで割合を下回れば、その時点で違反状態になります。法定の期間内に補充しなければなりません。

採用計画と資格者の確保は、開業のときだけの問題ではありません。人を増やす計画があるなら、資格者も一緒に数えます。

保証金 ── 供託か、保証協会か

取引の相手方を保護するため、営業を始める前に保証金を用意します。方法は二つです。

営業保証金を供託保証協会に加入
主たる事務所1,000万円分担金 60万円
従たる事務所ごと500万円分担金 30万円
資金の拘束廃業まで動かせない脱退時に返還される性質
そのほか入会金等が別途かかる

この差が、開業資金の設計を大きく左右します。供託を選ぶ事業者は多くありません。

ただし保証協会には入会金などの費用が別にかかり、額は協会や地域によって異なります。加入を検討する協会に直接確認してください。

広告のルールは、2022年に変わっている

不動産の広告は、宅地建物取引業法のほか、不動産の表示に関する公正競争規約に従います。徒歩何分の表示、新築の定義、おとり広告の禁止などを定めたものです。

古い解説が大量に残っている

この規約は2022年に改正され、同年9月1日から改正後のものが施行されています。

ところがインターネット上には、それ以前の内容で書かれた解説が数多く残っています。平成の年号で書かれた記事を見つけたら、そのままでは使えないと考えてください。

現行の規約と施行規則は、不動産公正取引協議会で確認できます。

開業までの順序

  1. 事務所を決める 契約前に窓口へ相談する
  2. 会社を設立する 法人でやる場合。目的に宅地建物取引業を入れる
  3. 専任の宅地建物取引士を確保する 従業者数から必要人数を計算
  4. 免許を申請する 知事免許なら都道府県の窓口
  5. 免許の通知を受ける
  6. 保証金の手続き 供託か、保証協会への加入
  7. 営業開始

免許が下りても、6が終わるまで営業はできません。ここを見落とすと、開業日がずれます。

開業前のチェックリスト
  • 事務所を何県に置くか決めた免許の区分が決まる
  • 物件を契約する前に、窓口へ間取りを見せて相談した
  • 他の事務所と区分されているか確認した
  • 賃貸なら、事務所使用が認められているか確認した
  • 用途地域の制限を確認した
  • 従業者数から、必要な専任取引士の人数を計算した
  • 資格者が抜けた場合の補充の見通しを立てた
  • 供託か保証協会かを決めた
  • (保証協会)入会金等の額を、加入先に確認した
  • 免許取得から営業開始までの日数を見込んだ
  • 広告のルールを、現行の規約で確認した2022年改正後
  • 更新時期を控えた満了の90日前から30日前

まとめ

  • 免許の区分は事務所を何県に置くかで決まる。営業範囲は関係ない。
  • 有効期間は5年。更新は満了の90日前から30日前まで。
  • 事務所は独立した空間が要る。物件を契約する前に窓口へ相談する。
  • 専任の宅地建物取引士は従業者5人に1人。人が抜けたときの補充まで考える。
  • 保証金は供託1,000万円か、保証協会の分担金60万円か。開業資金の設計が変わる。
  • 免許が下りても、保証金の手続きが終わるまで営業できない。
  • 広告の規約は2022年に改正されている。平成の年号で書かれた解説は使わない。

開業の手続きでつまずくのは、要件を満たしていない状態で先に進んだときです。事務所を借りる前、人を採る前に、窓口で確かめる。それだけで、多くの手戻りを防げます。

本記事は、国土交通省「宅地建物取引の免許について」の記載(免許の区分、有効期間、更新申請の期間、専任の宅地建物取引士の設置基準)、および宅地建物取引業法に基づく営業保証金・弁済業務保証金分担金の額に基づいて構成しています。入会金など協会ごとに異なる費用は記載していません。手続きの詳細は、免許の窓口および加入先の協会にご確認ください。

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