借地権
借地権の概要
借地権とは、建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃貸借のことをいい、権利金は、その土地の使用収益権に対する対価といえます。
借地権は次の5種類です。
- 借地権(旧借地法・借地借家法第3条)
- 定期借地権(借地借家法第22条)
- 事業用定期借地権等(借地借家法第23条)
- 建物譲渡特約付借地権(借地借家法第24条)
- 一時使用目的の借地権(借地借家法第25条)
無償返還届出をして社長の土地を会社が借りる場合
会社と社長間の土地の貸し借りに関する相談に対する一番多い回答が、無償返還届出です。
将来、その土地を使う必要の生じたときは無償で返還する旨の契約を行い、「土地の無償返還に関する届出書」を税務署に提出したときは、権利金の認定課税はしないこととなっています。
権利金の認定課税を行わないということであり、同等の地代についての認定課税は行われます。
地代を払っていても相当の地代未満の場合はその不足地代についての認定課税が行われます。
この届出は法人税法の規定ですので、個人間の賃貸借には適用されませんので注意してください。
提出期限は土地の賃貸借契約締結後、遅滞なく提出することとなってます。
定期借地権を設定して社長の土地を会社が借りる場合
新借地借家法によって新たに認められたのが、定期借地権です。
あらかじめ定められた期間しか存在しない借地権のことをいいます。
予め定められた期間に土地を返すことが明らかであるため、受贈益課税の問題はありません。無償返還届出を提出する必要もありません。
このように、一時金を授受しないことを前提とすると、無償返還届出と定期借地権設定でも同じ効果となります。
無償返還届出の際には一時金授受は認められていないので一時金授受するとき定期借地権設定を行うとよいでしょう。
「相当な地代」と定期借地権との比較
事業採算性で両者の選択を行うのが良いと思います。
相続税の評価水準は時価の80%程度、その相続税評価額の6%が実行地代率とすると、(0.8×0.06=0.048)4.8%となります。
これに対して、一般的借地権の平均的実施利回りは、一般的におおよそ2.3%とされています。
単純に計算して、
土地総額が10億円だとすると
■相当の地代
10億円 × 80% × 0.06 = 48,000,000円【相当の地代】
■定期借地権
10億円 × 0.023 =23,000,000円【定期借地権の適正地代】
社長の土地を権利金なしで会社に貸した場合は?
会社が社長個人の土地を借りて、会社名義の建物を建てるという相談がよくあります。
自分の土地だからといってあまり考えずに適当に権利金や地代を設定してしまうと、担保力もないところに過大な税金が認定課税されることになったりと、経営そのものにマイナスのダメージを与えかねないことにもなります。
逆に言えば、借地権の課税についてきちんと整理、理解していれば節税につながります。
社長の土地を権利金なしで会社に貸した場合は、会社は通常支払わなければならない権利金相当額の利益を得たこととなり、その利益は受贈益として計上しなければなりません。
貸す側の社長個人には課税関係は生じません。
ただし、権利金相当額が以上に高額のときは否認される可能性もありますので注意しましょう。(同族会社等の行為又は計算の否認等(所法157条))
社長の土地を相当の地代で会社に貸した場合は?
社長の土地を権利金のかわりに相当の地代で会社に貸した場合は、会社に対しての権利金の認定課税はありません。
社長個人が受け取った地代は不動産所得として課税の対象となります。
その地代は、会社にとっては損金となり、会社の法人税の課税対象がその分だけ減額されることとなります。
「相当な地代」とは、土地の更地価額の年6%の地代です。
課税上弊害がなければ、過去3年分の相続税評価額の平均額の年6%となっています。
更地価額は、相続税評価額を使って計算すれば、通常の取引価額のよる場合の8割ぐらいになるでしょう。
年6%は一般的な地代と比べるとかなり高いものとなり、地代収入に対する社長の所得税の問題は解消されないことになります。
相当な地代の届出書
「相当な地代の届出書」を土地の所有者を所轄する税務署に賃貸人、賃借人の連名で提出します。
土地の更地価額の年6%であることを約する書面となります。
この書類には、地代の改訂方法の記載があります。
土地の時価の変動に応じて地代を見直す方法と据え置く方法とで違いがあるので整理しておきましょう。
土地の時価の変動に応じて地代を見直す方法では、常に借地権の価格はゼロです。
据え置く方法では、地価が上昇した場合に、契約当初においてはゼロであった借地価額が借地人に帰属することになります。
転貸方式(サブリース)の留意点
転貸方式、サブリースとは、“又貸し”という意味です。
不動産管理会社が転貸を目的としてオーナーから一括で借り上げることを示します。
オーナー
サブリース会社 入居者空室や賃料下落などによって逆ざやが発生して、サブリース会社の収支が赤字になることもあります。
オーナーにとっては空室リスクを負わなくて済むというメリットがあるのです。
サブリース会社の報酬相当額は?
自分で設立した不動産管理会社(サブリース会社)にサブリースしたいと考えるとき、できるだけ低い報酬額を不動産管理会社に支払い、不動産管理会社は、通常の賃料で貸し出すことが脳裏をかすめそうです。
そうすることによって、多くの所得を不動産管理会社に移すことができるというわけですね。
課税庁は、このような事例の多くを否認しています。
では、どのくらいが適正な金額なのでしょうか?
物件の借り上げを行う場合の借り上げ料は、物件によりますが家賃収入の85%から90%程度の事例が多いようです。
このことから、不動産管理会社の利益は、10%〜15%ということになりますね。
ちなみにこの家賃総額の考え方としましては、共益費等を除いた金額を計算するのが一般的です。
適正管理料の割合は、5〜12%程度といったところでしょうか。
コストの区分
サブリースの場合、経営上に発生するランニングコストは基本的に不動産管理会社(サブリース会社)が通常は負担します。
では、建物の大規模修繕にかかる支出はどうなるのでしょうか?
建物そのものは個人(オーナー)のものなので、個人(オーナー)で負担すべきものと考えられます。
サブリース契約の留意点
契約をする際に確認しておくべき事項として、免責期間、解約条項、条件変更、修繕、リフォーム条項、建物管理条項、敷金の取扱いなどを整理しておきましょう。
敷金の取扱いについては、サブリース会社が倒産したときに最も重要となってくる条項です。
バブル崩壊後は、多くのサブリース会社倒産により多くの不動産投資家が損害を被りました・・・サブリース会社の与信については十分な注意が必要です。
サブリース会社がデベロッパーや建設会社の子会社の場合があります。
その場合は、親会社の与信も調べておきましょう。
むしろ親会社の与信のほうが重要です。
サブリースのリスク
では、会社の与信は完璧であれば、リスクがなく安心なのか、というとそうでもありません。どんなにサブリース会社の倒産の可能性が低くても、回避できないのが減額請求リスクです。
普通建物賃貸借契約であれば、賃料減額請求は可能なのです。これは、強行規定です。
また、サブリース契約の途中で解約されてしまうというリスクもあります。
気をつけなければいけないのが、入居者が問題を起こすような人で出て行ってもらいたいときなどでも、オーナーには追い出す権利がないのです。契約関係はサブリース会社と入居者にしかないからです。
安易なサブリースには注意しましょう
不動産投資で一番避けたいのが、空室。
空室ができることが計画は崩れてきます。
そんなときにサブリースの仕組みは、渡りに船、といいたいところですが、空室リスクが軽減できた分、最大の家賃収入を得ることができないというデメリットも享受しなければなりません。
サブリースするかどうかは、メリット・デメリットを良く考慮の上、判断することが大切です。
管理料徴収方式の留意点
いわゆる不動産管理会社の運営形態は、「管理料徴収方式」「転貸方式」「不動産所有方式」の3形態があります。
このなかで管理料徴収方式での管理料の設定がたびたび問題となっているので注意が必要です。
管理料徴収方式とは、オーナーが不動産を第三者に賃貸する場合の仲介をして、管理を行っていく方式です。
※仲介を業として行う場合は、宅地建物取引業としての許可が必要です。
何が問題になるのかというと、それは、ずばり「会社が個人オーナーから受け取る管理料の金額」についてです。
個人オーナーが個人所得を管理会社に移転することが、節税効果になるのは当然のことなのですが、それをやりすぎると支払った管理料のうち不相当に高額と認められる部分の金額については否認されるのです。
では、「不相当な高額な金額」とは、いくらなのでしょうか?
不動産投資をするうえで、とても知りたいところですが、明確な数値は提示されていません。
月額賃料に対しての何%まではOK、というようにハッキリとしていれば、頭を悩ます必要はないのですが、明確な数値がないだけに悩ましいところです。
高額管理料については、国税不服審判所の審判や裁判まで争われているケースも多いのが現状です。
たとえば、オーナーが支払った管理料は年間賃料の10%の案件で、管理の実態が伴わないことから租税回避の疑いがあるものとして課税庁が否認した事例もあります。(国税不服審判所平成18年6月13日採決)
詳細は割愛しますが、ポイントは、「管理の実態が伴っていない」というところです。
「個人課税部門における事務運営の執行等に関する指示事項(指示)H12.9.6・課所6−46」では、“管理料又は管理料率については目安となる適正額等といったものはないものであり、委託する管理業務の内容、事業規模や収益の状況等個々の実態に応じて適切に取り扱うよう周知・徹底されたい”としています。
「そうはいっても結局のところ、何%なんだ?」と思われるでしょうが、結局のとろ、物件のケースごとに管理料を設定していくしかありません。
同族会社の行為計算否認規定とは
同族会社であるから、なんでもかんでも一心同体、好きなようにできると思い、高額な管理料を設定し、個人オーナーから不動産管理会社に支払いを行えば、不動産収入は圧縮するため節税効果は絶大です。
ただし、「同族会社の行為計算否認規定」 というものが存在することを知っておきましょう。
とても重要です。
なぜ重要かというと、税務調査の際に同族会社の行為計算否認規定が適用されるからです。
同族会社の行為計算否認規定については、不動産に強い税理士に相談したほうが賢明です。
規定自体がかなり曖昧で、税務署もどのくらいの金額から動き出すのかもあまりつかみ取れず、税理士でも判断の難しいとところだからです。
同様に調査官も曖昧にしか理解していなかったりで、非常にデリケートです。
問題となるのは、なんといっても不相当な高額な管理料。
役員報酬として親族に所得を分散したり、給与所得控除と税率の差額で税額を圧縮したりするところもみられますので注意が必要です。
同族会社とは少数の株主が支配する会社であるので、法人税を軽減するために、通常の会社では行わないようなことをとる場合があり、それを放置すると「実質課税の原則」から外れるため是正するための措置が必要である、というような考え方からこの規定はできています。
同族会社としてのメリットがあります。しかし、税務上のデメリットも存在するのが現状です。この2つを十分に検討し、株主構成を考えることが必要です。
管理契約について
同族会社とはいえ、管理契約はキチンと締結しておきましょう。管理会社の管理業務の内容と範囲を明らかにしておくことが必要です。
管理上発生する経費を個人と会社のどちらが負担するのか、その辺を明確にしておかないと、税務調査の際に問題となる場合があります。できるだけ業務内容と負担者区分について細かく定めておきましょう。
管理料徴収方式の場合の契約の当事者は、入居者と個人オーナーですが、不動産管理会社で集金業を行う場合は、家賃の入金口座を会社名義としなければなりません。