CHIOU / 株式会社地央

不動産調査の目的と全体像 ── 四つの調査を、どの順で進めるか

この記事の要点
  • 不動産調査は現地・法務局・役所・照合の四つに分かれる。それぞれ分かることが違う
  • 順番がある。書類を揃えてから現地へ出る。逆にすると、二度行くことになる
  • 調査の目的は「良い物件か」を判断することではなく、説明すべき事実を漏れなく拾うこと
  • 四つのうち一つでも飛ばすと、契約後に出てくる。そこからでは取り返しがつかない

新人が最初に任される仕事の一つが、物件調査です。先輩から住所を渡され、「調べてきて」と言われる。ところが、何をどこまで調べればよいのか、どこから手をつければよいのかが分からない。

調査には四つの種類があり、それぞれ調べる場所も、分かることも違います。しかも進める順番を誤ると、同じ場所へ二度行くことになります。

この記事では、四つの調査が何を明らかにするのか、どの順で進めるのか、そして調査を始める前に決めておくべきことまでを扱います。個別の手順は、この後の記事で一つずつ扱います。

調査は、四つに分かれる

不動産調査という言葉は広く、人によって指す範囲が違います。実務では、次の四つに分けて考えると整理しやすくなります。

調査 行く場所 分かること
法務局調査 法務局 所有者、権利関係(抵当権・地役権・賃借権)、地目、地積、土地の形、隣接地との並び
役所調査 市役所・町村役場 区域区分、用途地域、建蔽率・容積率、道路の種別と幅員、上下水道、開発許可の要否
現地調査 物件 境界標の有無、越境、建物の実際の形、道路の実測幅、排水の状況、周辺の環境
照合調査 机の上 書類と現地の食い違い。ここが調査の結論になる

四つ目の照合調査は、現場へ行く作業ではありません。集めた書類と、現地で見たものを突き合わせる作業です。ここで食い違いが出たものが、重要事項説明で説明すべき事項になります。

なぜこの順番なのか

法務局 → 役所 → 現地 → 照合。この順番には理由があります。

書類を揃えてから現地へ出る

公図と登記事項証明書、都市計画図、道路種別図。これらを手に持って現地に立つと、何を確かめるべきかが決まっています。「公図では隣地との間に細い筆があるが、現地ではどうなっているか」「登記地目は田だが、現況はどうか」。確かめる項目が具体的なので、見落としが減ります。

逆に、手ぶらで現地へ行くと、何となく写真を撮って帰ることになります。そして机に戻ってから「あそこはどうだったか」が出てきて、もう一度行くことになります。

現地に二度行くのは、時間だけの問題ではない

調査の期限は、多くの場合、契約日から逆算して決まっています。二度手間が発生すると、その分だけ確認が不十分なまま契約日を迎えることになります。「時間がなかったので確認できませんでした」は、後から出てきた問題の言い訳になりません。

法務局を先にする理由

役所の窓口では「地番」で尋ねます。住居表示ではありません。公図と登記事項証明書を先に取っておけば、地番も、隣接地の状況も分かった状態で役所へ行けます。

また、所有者が誰かが分かっていないと、そもそも調査を進めてよい案件かどうかの判断がつきません。相続が発生していて名義がそのままになっている、共有者が多数いる。こうした事情は最初に把握しておくべきものです。

調査の目的は何か

ここが誤解されやすいところです。調査は「良い物件かどうか」を判断する作業ではありません。

判断するのは買主です。調査を担当する側の仕事は、買主が判断するために必要な事実を、漏れなく拾い出して伝えることです。良し悪しの評価を先回りして加える必要はありません。

拾うべき事実の三つの型

① 使えるかどうかに関わる事実 接道、用途地域、開発許可の要否。建てられるか、建て替えられるか。

② お金に関わる事実 セットバックによる有効面積の減少、地盤改良の必要性、私道の掘削承諾、浄化槽の維持費。

③ 揉めるかもしれない事実 越境、境界の未確定、共有私道、隣地との係争。

三つ目が最も見落とされやすく、最も後を引きます。境界標がない、隣家の塀が越境している、私道の共有者と連絡が取れない。これらは物件の価格を左右しませんが、取引の成否を左右します。

調査を始める前に決めること

いきなり法務局へ行く前に、三つ確認しておくと後が楽になります。

一 どこまで調べるか

売買の媒介なのか、買主からの依頼なのか、社内の検討用なのか。目的によって、必要な深さが変わります。境界確定まで必要なのか、境界標の有無を確認すれば足りるのか。ここを決めずに始めると、際限がなくなります。

二 いつまでに

役所の窓口には受付時間があり、法務局も同様です。開発許可や農地転用が絡む案件では、担当課への照会に日数がかかることもあります。期限から逆算して、どの日に何を回るかを決めます。

三 何の形で報告するか

口頭で足りるのか、調査報告書として残すのか。書面で残す場合、事実と評価を分けて書くことになります。「外壁にひび割れがある」は事実、「修繕が必要である」は評価です。後から責任が問われる場面では、この区別が効いてきます。

つまずきやすい三つ

住居表示と地番を取り違える

「○○町一丁目2番3号」は住居表示、登記で使うのは地番です。一致しません。ブルーマップや課税明細で対応を確認してから動きます。ここを取り違えると、まったく別の土地を調べることになります。

現況を見ずに書類で完結させる

登記地目が「宅地」でも、現に耕作されていれば農地法の対象です。建物図面に載っていない増築がある、取り壊されたはずの建物の登記が残っている。書類は現況と一致しないことがあるという前提で動きます。

役所で聞く相手を間違える

用途地域は都市計画課、道路の種別は建築指導課、道路の管理は道路管理課、排水は下水道課、開発許可は開発指導課。窓口が分かれています。一つの課で全部聞こうとすると、正確な回答が得られません。

実務チェックリスト
  • 調査の目的と範囲を、依頼者と確認した媒介/買主からの依頼/社内検討で深さが変わる
  • 期限を確認し、逆算して回る日程を決めた照会に日数がかかる項目がないか
  • 報告の形(口頭/書面)を決めた
  • 住居表示と地番の対応を確認したブルーマップまたは課税明細で
  • 法務局で公図・登記事項証明書・地積測量図・建物図面を取得した
  • 所有者と権利関係を確認した相続未了・共有者多数・抵当権の抹消見込み
  • 役所で確認する項目を、窓口ごとに整理した都市計画課/建築指導課/道路管理課/下水道課/開発指導課
  • 書類を持って現地へ出た手ぶらで行かない
  • 書類と現地の食い違いを一覧にした
  • 拾った事実を、事実と評価に分けて記録した

まとめ

  • 不動産調査は、法務局・役所・現地・照合の四つに分かれる。それぞれ分かることが違う。
  • 順番は、法務局 → 役所 → 現地 → 照合。書類を揃えてから現地へ出ると、確かめる項目が具体的になる。
  • 調査の目的は、良し悪しを判断することではなく、判断に必要な事実を漏れなく拾うこと。
  • 拾うべきは、使えるか/お金に関わるか/揉めるかもしれないか、の三つ。三つ目が最も後を引く。
  • 住居表示と地番の取り違え、書類での完結、役所の窓口違いが、つまずきやすい三つ。
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