CHIOU / 株式会社地央

開発許可申請の実務 ── 最大の関門は、32条の同意

この記事の要点
  • 申請が止まる最大の関門は32条の同意と協議。公共施設の管理者から同意が得られないと、申請すらできない
  • 33条の技術基準では道路・排水・公園・地盤が実務上の争点になる
  • 権利者の相当数の同意が要件。借地人や抵当権者も対象になりうる
  • 工事完了の公告があるまで原則として建築できない。分譲の段取りに影響する

開発許可の要否が分かったら、次は申請です。ところが申請書を出す前の段階で止まることが、実務では最も多くあります。

公共施設の管理者から同意が得られない。権利者の同意が集まらない。排水の放流先が決まらない。これらは申請の前提であり、整わなければ受け付けてもらえません。

この記事では、申請の全工程と、それぞれの段階でどこが問題になるかを扱います。要否の判断は前回で扱いました。

全工程

段階 内容 所要の目安
事前相談 開発指導課に計画の概要を持ち込む 数週間〜
関係機関協議 道路・河川・下水道・農業委員会・消防・埋蔵文化財など 数か月
32条の同意・協議 公共施設の管理者の同意、管理予定者との協議 関係者次第
近隣説明 条例・指導要綱による 数週間〜
権利者の同意取得 33条1項14号 関係者次第
申請 設計図書、資金計画、同意書等を添付
審査・許可 33条(+調整区域は34条)への適合を審査 1〜3か月
工事 許可後に着手 計画による
完了検査・公告 検査済証の交付、工事完了の公告 数週間

申請してから許可までより、申請にたどり着くまでのほうが長い。これが実務の実感です。事業計画を立てるときは、この前段の期間を厚めに見ておいてください。

最大の関門 32条の同意と協議

同意と協議は別物

都市計画法32条は、二つの手続きを定めています。

既存の公共施設の管理者からは「同意」を得る。開発区域内または隣接する道路、水路、公園など。同意が得られなければ、申請できません。

新たに設置される公共施設の管理予定者とは「協議」する。開発によって新設する道路や公園を、誰がいつから管理するか。こちらは協議が調えばよく、同意までは求められません。

同意が取れない典型

  • 法定外公共物が絡む 赤道・青道が開発区域を横切っている。用途廃止と払下げが必要になり、時間がかかります
  • 水路の付替え 既存水路を移設する場合、河川管理者や水利権者との調整が要ります
  • 私道 開発区域に接する道路が私道の場合、所有者全員の承諾が必要になることがあります
  • 放流先の同意 雨水を農業用水路に放流する場合、土地改良区や水利組合の同意が求められます。これが最も難航しやすい項目です
水利権者との調整は、最初に手を付ける

農業用水路への放流には、土地改良区や地元の水利組合との協議が必要になります。組織の意思決定に総会の議決を要する場合があり、開催が年に一度ということもあります。

後回しにすると、それだけで一年遅れます。計画の初期段階で、放流先と必要な同意を確認してください。

33条の技術基準

すべての区域に共通する基準です。実務で争点になりやすいものを挙げます。

道路(2号)

開発区域内の道路が、接続する道路と適切に接続していること。幅員の基準は、開発の目的と規模によって政令で定められています。

状況 実務上の問題
接続先の道路が狭い 拡幅が求められることがある。用地の取得が必要になる
行き止まりになる 転回広場の設置が求められる
通り抜けを求められる 周辺の道路網との連続性を指導される場合がある

排水(3号)

実務でいちばん難しい項目です。汚水と雨水を有効に排出でき、開発区域外に溢れさせないこと。

  • 放流先の確保 公共下水道、河川、水路。放流先がなければ計画が成り立ちません
  • 放流量の制限 下流の能力を超える場合、調整池の設置が求められます。用地と費用が必要になります
  • 汚水処理 下水道の区域外なら浄化槽。集中処理施設が求められることもあります

公園・緑地(2号、令25条)

開発区域の面積が0.3ヘクタール以上5ヘクタール未満の場合、開発区域の面積の3パーセント以上の公園・緑地・広場を設ける必要があります。

5ヘクタール以上ではさらに要件が加わります。公園用地は事業採算に直接影響するため、計画の初期段階で織り込んでください。

地盤と擁壁(7号)

地盤の沈下、崖崩れ、出水その他による災害を防止するため、必要な措置が講じられていること。擁壁の構造計算、地盤改良、排水対策。造成の規模によっては、宅地造成及び特定盛土等規制法の許可も重なります。

権利者の同意(14号)

「相当数」の同意とは

開発区域内の土地・建物・工作物について権利を有する者の相当数の同意を得ていることが要件です。

対象になりうるのは、所有者だけではありません。借地権者、賃借人、抵当権者、地役権者なども含まれます。

「相当数」の解釈は自治体によって運用が異なります。事前相談の段階で、誰の同意が必要かを確認してください。後から一人足りないと分かると、そこで止まります。

資力・信用(12号、13号)

申請者に開発行為を行うために必要な資力と信用があること。工事施行者に工事を完成するために必要な能力があること。自己の居住用の場合は適用されません。

資金計画書、決算書、工事施行者の実績などが求められます。

必要書類

種類 主なもの
申請書 開発行為許可申請書
位置・区域 位置図、区域図、現況図
設計図書 土地利用計画平面図、造成計画平面図、道路縦断図・横断図、排水施設計画平面図、擁壁の構造図・計算書
同意・協議 32条の同意書・協議書、権利者の同意書
権利関係 開発区域内権利者一覧表、登記事項証明書、公図
資金 資金計画書、残高証明・融資証明
その他 設計者の資格を証する書面(1ha以上)、近隣説明の報告書

一定規模以上の開発では、設計者に資格が求められます。1ヘクタール以上の開発行為に関する設計図書は、有資格者が作成したものでなければなりません。

許可後の実務

変更するとき

許可を受けた内容を変更する場合、原則として変更の許可が必要です(35条の2)。軽微な変更は届出で足ります。

工事中に設計変更が生じることは珍しくありません。無断で変更して工事を進めると、完了検査が通りません。

地位を承継するとき

場合 手続き
相続・合併 一般承継。当然に地位を承継する(44条)
譲渡 特定承継。都道府県知事の承認が必要(45条)

事業者が変わる場合、承認を得ないまま工事を続けると違反になります。資力・信用の要件を、新たな事業者について改めて審査されます。

工事完了公告まで建築できない

開発許可を受けた区域内では、工事完了の公告があるまで、原則として建築物を建築できません(37条)。

例外として、工事に必要な仮設建築物や、知事が支障がないと認めたものなどがあります。分譲を先行させて建築工事も並行したい場合、この制限が効いてきます。事前に開発指導課と協議してください。

予定建築物以外は建てられない

開発許可を受けた土地では、工事完了公告の後も、予定建築物以外の建築物は原則として建築できません(42条)。用途を変更するには、改めて知事の許可が必要です。

住宅用として開発許可を受けた土地に、後から店舗を建てることはできません。買主に説明すべき事項です。

つまずく点

農地が絡むと工程が倍になる

開発区域に農地が含まれる場合、農地転用の許可(届出)が必要です。農業振興地域の農用地区域であれば、その前に農振除外が要ります。

農振除外は年に一、二回の受付にまとめられていることが多く、除外の告示まで一年前後を要することもあります。この工程は次回で詳しく扱います。

埋蔵文化財

周知の埋蔵文化財包蔵地に該当する場合、文化財保護法に基づく届出が必要です。試掘調査、場合によっては本発掘調査が求められ、費用と期間がかかります。

教育委員会で包蔵地の照会を、早い段階で行ってください。

近隣説明でつまずく

条例や指導要綱で、一定規模以上の開発に近隣説明が義務づけられていることがあります。説明会の開催、報告書の提出が申請の要件になります。

反対が出た場合、法的には申請を止める根拠にならなくても、事実上進まなくなることがあります。早い段階で情報を出し、懸念を聞き取っておくほうが結果的に早くなります。

実務チェックリスト
  • 開発指導課に事前相談したここで方向性が決まる
  • 排水の放流先を確認した最も難航しやすい項目
  • 放流先の管理者・水利権者を特定した土地改良区・水利組合。総会の開催時期も
  • 調整池の設置が必要か確認した用地と費用に直結
  • 32条の同意が必要な公共施設管理者を特定した
  • 法定外公共物(赤道・青道)が絡まないか確認した
  • 接続道路の幅員と、拡幅の要否を確認した
  • 公園・緑地の設置義務を確認した0.3ha以上5ha未満は3%以上
  • 擁壁・地盤改良の必要性を確認した盛土規制法の許可も重なる可能性
  • 権利者の範囲を確認した所有者だけでなく借地権者・抵当権者等も
  • 「相当数」の解釈を自治体に確認した
  • 資金計画と工事施行者の能力を証する書面を用意した
  • (1ha以上)有資格の設計者を確保した
  • 農地が含まれないか確認した農振除外に年単位
  • 埋蔵文化財包蔵地に該当しないか教育委員会で照会した
  • 近隣説明の義務を条例・指導要綱で確認した
  • 工事完了公告まで建築できないことを工程に織り込んだ
  • 予定建築物以外は建てられないことを、買主に説明する準備をした

まとめ

  • 申請してから許可までより、申請にたどり着くまでのほうが長い。
  • 32条では、既存施設の管理者から「同意」、新設施設の管理予定者とは「協議」。同意が取れなければ申請できない。
  • 排水の放流先が最も難航する。水利権者の意思決定に時間がかかるため、最初に手を付ける。
  • 権利者の同意は所有者だけでない。借地権者や抵当権者も対象になりうる。
  • 工事完了公告まで建築できず、公告後も予定建築物以外は建てられない。
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