開業資金の調達 ── 自己資金・借入・補助金
- 資金は出所ごとに性格が違う。返す必要があるか、返す時期が決まっているかで分ける。
- 借入は金額より返済の時期と収入の時期が合っているかで決まる。
- 補助金は後払いが原則。先に払える資金がなければ、そもそも使えない。
- 自己資金の比率は金融機関の判断材料であり、事業の安全余裕でもある。
資金調達の相談で最初に聞かれるのは「いくら借りられますか」ですが、先に決めるべきは、いつ何に使い、いつ戻ってくるかです。
金額が足りていても、時期が合っていなければ資金は詰まります。
この記事では、資金の出所を性格ごとに分け、それぞれの向き不向きと、組み立てるときの順序を整理します。
出所を、性格で分ける
| 出所 | 返済 | 向いている使い道 |
|---|---|---|
| 自己資金 | 不要 | 回収の見えない支出。準備期間の費用 |
| 借入 | あり。時期が決まる | 回収の時期が読める投資 |
| 補助金・助成金 | 不要だが後払い | 使途が定められた支出 |
| 敷金・保証金 | 預かり金 | 使い切ってはいけない |
賃貸の管理を行う場合、預かった敷金や保証金は返還する前提の金銭です。手元にあるからといって運転資金に回すと、退去が重なったときに払えなくなります。
口座を分けて管理するのが基本です。
借入は、時期を合わせる
借入の可否は金額だけで決まりません。返済の時期と、収入が入る時期が合っているか。ここがずれていると、黒字でも資金が尽きます。
- 短期 仕入れから売却までが読める場合
- 長期 賃料など、毎月入る収入で返す場合
- 据置期間 収入が立ち上がるまでの空白をどう埋めるか
とくに見落とされるのが据置期間です。改装や許認可で数か月かかるなら、その間の返済をどうするかを先に決めます。
説明で効くのは、事業の魅力より「なぜ返せるのか」の筋道です。
収入の見込みを、どの前提から出したか。前提が外れたときにどうするか。この二つを説明できる資料が、通りやすい資料です。
補助金は、後払いが原則
補助金は多くの場合、先に自分で支払い、あとから交付を受ける形です。採択されても、その場で現金が入るわけではありません。
- 交付決定より前の支出は、対象にならないことが多い
- 事業を終えてから実績報告、そのあとに交付
- 補助率がある以上、自己負担は必ず残る
つまり、補助金を当てにするほど、先に払える資金が要ります。ここを取り違えると、採択されたのに実行できない事態になります。
補助率、上限額、対象経費、締切。これらは制度ごと、年度ごとに変わります。この記事には金額を書きません。
申請する時点で、その制度の公募要領を直接確認してください。過去の解説記事の数字は当てになりません。
自己資金の比率が意味するもの
自己資金の比率は、二つの意味を持ちます。
- 外から見た信用 どれだけ自分で用意したかは、判断材料になる
- 中から見た余裕 想定が外れたときに、どれだけ持ちこたえられるか
借入の比率を上げれば手元は厚くなりますが、毎月の返済も増えます。収入が立ち上がるまでの期間が長い事業ほど、自己資金の厚みが効きます。
組み立てる順序
- 使い道を時期ごとに並べる いつ、何に、いくら
- 収入が入る時期を置く 空白の期間を見つける
- 返さなくてよい資金を先に充てる 自己資金
- 回収時期の読める投資に借入を充てる
- 補助金は、後払いを前提に組み込む
- 想定が外れた場合で作り直す
6をやっていない計画は、金融機関にもすぐ分かります。
- 使い道を時期ごとに並べた合計額だけで考えていない
- 収入が入り始める時期を置いた
- 空白の期間の資金を確保した
- 据置期間の要否を検討した
- 返済の時期と収入の時期が合っているか確認した
- 敷金・保証金を運転資金に含めていない
- 補助金の後払いを織り込んだ
- 交付決定前の支出になっていないか確認した
- 補助率による自己負担分を計上した
- 制度の金額・要件を、申請時点の公募要領で確認した
- 想定が外れた場合の収支を作った
- 返せる根拠を、前提から説明できるようにした
まとめ
- 資金は出所ごとに性格が違う。返済の要否と時期で分けて考える。
- 借入は金額より時期。返済と収入がずれていると、黒字でも詰まる。
- 補助金は後払いが原則。当てにするほど、先に払える資金が要る。
- 敷金・保証金は預かり金。運転資金に混ぜない。
- 自己資金は信用であり、想定が外れたときの余裕でもある。
- 金額と要件は毎年変わる。申請時点の公募要領で確認する。
資金計画は、金額を積み上げる作業ではなく、時期を並べる作業です。並べてみると、足りないのが金額ではなく時期であることが、しばしばあります。
本記事では、補助金・助成金の補助率、上限額、対象経費、公募締切といった、制度ごと年度ごとに変わる数値を記載していません。申請にあたっては、その時点の公募要領をご確認ください。融資条件は金融機関により異なります。
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