資金調達
不動産投資を検討する上で、多くの人が「よい物件」を探すことを最も重要視します。
しかし、不動産物件には、数十万円のものから数億円のものまで幅広い価格帯があり、それらは安ければ良いというものでもありません。
また、その種類もアパートやマンションなどの居住用物件、貸店舗に貸事務所、駐車場など多種多様です。
インターネットで「東京、収益物件」と検索してみると、1万件以上の収益物件の情報が掲載されており、多くの物件情報に触れることができますが、これらの物件情報をただ眺めていても、最適な投資物件を見つけることはできないでしょう。
では、不動産投資を検討する上で、初めに考えるべきことは何でしょうか。
それは、「資金計画」です。
豊富な資金力があり、「いくらでもよいから、よい物件を取得したい。」というのであれば、話は別ですが、多くの方々はそうではないと思います。
自身の資金調達力の中で、最適な物件を探すことが理想的な投資です。
4つの資金調達方法
資金調達は、主に次の4つに分けることができる。
- 自己資金
- 敷金
- 保証金
- 借入金
基本的に資金調達は「自己資金」と「借入金」の2つにより構成されます。
ケースによっては、これに「敷金」や「保証金」、一定の条件下では「補助金・助成金」、建設が伴う場合は「建設協力金」など、様々な調達方法が加わることもあります。
以下で、それらの特徴を解説します。
※法人の資金調達には株式による調達(エクイティ)も考えられますが、ここでは省略します。
自己資金
自己資金とは自分自身の保有する資産を出資するものです。
最大のメリットは、やはり金利がかからないことにあります。
投資規模が大きくなればなるほど、金利負担は大きくなります。
1億円を年利5%で借入れた場合、単純計算すると金利は1年で500万にもなるのです。
この負担を軽減できることは大きなメリットであり、余裕のある資金繰りが可能になります。
デメリットとしては、資金量が限られてくることがありますね。
いくら自己資金をつぎ込めばいいだろうか。
よく質問されるので、悩んでいる投資家は多いものと思われます。
レバレッジを大きくきかせれば、大きいリターンを得ることができます。
では、フルローン(頭金ゼロ、全額借入)が、最強なのか。
いろいろな金融商品がありますが、借り入れしやすいのは不動産投資です。
これは、家賃という支払い原資があるためです。
しかもある程度見込みがたち安定しているという特徴があります。
自己資金をまったくいれずに、借入金だけでレバレッジをきかすのは、不動産投資の醍醐味のようにも感じます。
ここで忘れてはいけないのが、大きいリターンと一緒に大きなリスクもついてくるということです。
金利上昇リスク、空室リスク等、きかせているレバレッジ分のリスクを負うことになります。
健全な不動産投資のためには十分にレバレッジとリスクのシュミレーションが必要です。
なにもフルローンがいけないと言っているのではありません。
資金力は、人それぞれですので、要はあなたの資金力次第なのです。
サラリーマンであれば、本業の年収によります。
資金力によって銀行はお金を貸してくれるので、おのずと自己資金がいくら必要なのかがわかりますね。
自己資本比率はどのくらいが目安なのでしょうか。
通常、物件価格の30%以下に設定されることが多いですね。
先ほどの、あなたの資金力にもよりますし、物件の立地条件や利回りなどのポテンシャルによっても変わってきますが、次のように各金融機関によっても自己資本比率の目安は変わってきます。
ノンバンク系 | 10%程度 |
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地方銀行 | 20%程度 |
都市銀行 | 30%程度 |
くどいようですが、これもまた、一律ではありません。。。
つぎ込んだ自己資金の各年度の利回りを自己資本利益率や内部収益率等の指標を用いて評価して比較する手法もあります。
アメリカなどではやっています。
敷金
「敷金」とは、賃貸借契約時に発生する、借主が貸主に対して預託する一時金の一種です。
基本的には、賃料不払いや物件の損傷などの借主の債務を担保する目的での預託金であり、賃貸借契約終了時に、借主側に債務不履行がなければ、無利息で一括返済されることになります。
ただし、敷金の扱いは地域の慣習により大きく異なり、注意が必要となります。(西日本では一部権利金の性質を持ち、敷引という形で返還が行われないことがある、等。)
金額の目安としては、居住用物件で賃料の1〜3ヶ月分、貸事務所は賃料の半年から1年分、貸店舗では2年分という場合もあります。
しかし、地域や物件により様々で、一概には言えません。
また、近年は敷金の金額水準が低くなっている傾向にあり、多額の敷金の預託を受けようとすると、借主が見つかりにくくなるなどのことも考えられます。
このようなことも踏まえ、初期費用の調達において、敷金に大きく期待することは望ましくないと思われます。
最終的には返還する必要のある資金であるということを念頭に置いておく必要があるでしょう。
保証金
保証金とは、こちらも敷金同様、借主より貸主に預託される一時金の一種です。
敷金の意味合いを含むこともあり、どのような目的で預託されているかによって、取扱が異なりますので、注意が必要となります。
敷金以外の目的で預託を受ける場合、返還は低利の利子をつけ、一定の期間で均等返済することなどもあります。
特に注意が必要な点は、保証金が敷金以外の目的で預託された場合、賃貸借物件が売買された時に、返還義務が買主に承継されない、とする判例があるということです。
預託を求める場合は、目的を明確にしておく必要があるでしょう。
また、現在は特段の理由がない場合、敷金名目での預託を受けることが一般的となってきています。
借入金
借入金とは、銀行等の金融機関からの調達です。
一般的には、金利がかかるために積極的に用いないほうがよいと思われがちですが、有効に用いることでメリットとなる部分もあります。
第一には、自己資金に捉われない投資が可能になるということです。
マンションの区分所有での投資、1000万円の自己資金で運用するという例で考えてみましょう。
「自己資金単体で1000万円の部屋を1部屋購入し、賃貸で運用するケース」と「さらに2000万円を借入れて、1000万円の部屋を3部屋購入し、同様に運用するケース」で比べれば、空室リスク等を考慮すると、収入としては明らかに後者が安定した運用となります。
また、3部屋まとめて購入することで、購入単価が下がるなどの利点も考えられます。
また、不動産投資では不動産に抵当権を設定することで、不動産の比較的高い担保価値により、低い金利での借入れが可能となることが考えられます。
これは、不動産投資以外の事業として資金を借入れる場合と比較して、大きな利点であると言えるでしょう。
さらに税務的なメリットもあります。
借入れにより発生する利子の支払いは損金として計上することができ、事業主が個人の場合は、債務控除の対象となるため相続税対策にもなります。
不動産投資においては、借入金が積極的な意味合いをもつのです。事業のための借入金の利子は損金に算入でき、相続税に関していえば債務控除の対象になります。
自己資金、敷金、保証金を積み上げてきて、調達できない部分は、借入金による調達を行います。
借入金とは、いわゆる借金のことです。
借金ときくと「悪いもの」「危険なもの」とイメージがあるかもしれませんね。
しかし、不動産投資において借金とは、「悪いもの」でも「良いもの」でもなく、「危険なもの」でも「安全なもの」でもないのです。
補助金・助成金
国や地方公共団体などの補助制度を利用することで資金の一部を調達するものです。
多くの補助金が返還の必要がなく、制度内容によっては多額の補助を受けられるケースもあるので、資金調達上大きなメリットとなります。
しかし、申請や手続きに多くの時間と手間がかかり、事業自体に制約がかかってしまう場合もあります。(工事等の発注を「入札形式」に限られる等)
このようなデメリットが発生することを事前にある程度まで理解し、最終的に補助の利用がプラスとなるのか、マイナスとなるのか、を判断する必要があります。
また、基本的に既存の投資物件を購入するだけの場合は、利用できる補助制度や助成制度は、ほとんど存在しないと思われます。
このように資金調達においては、様々な方法を検討することが可能です。
また、上記以外にも「親戚に融資を依頼する」ことなど、細かく言えば更に多くの調達法が考えられるでしょう。
これらの複数の調達法からメリット・デメリットをしっかりと把握し、自身に最適なバランスでの資金調達を行うことで、リスク管理を行いながら、最高の投資効率を目指すことが可能になるでしょう。