CHIOU / 株式会社地央

地盤改良はなぜ必要か ── 工法と費用の目安

この記事の要点
  • 土地の売買時点では、地盤調査の結果がないことがほとんど。分かるのは建物の設計段階
  • だから調査では「改良が必要になる可能性」を見当づけて説明する。断定はできない
  • 見当をつける手がかりは造成履歴・旧地形・地名・ハザードマップ・周辺の建物
  • 改良費は工法によって桁が変わる。数十万円から百万円単位。誰が負担するかを契約前に決める

土地を引き渡したあと、建物の設計段階になって地盤調査を行い、「改良が必要です」と言われる。費用は百万円を超える。「そんな話は聞いていない」と言われる。

これが地盤をめぐる最も典型的な揉め方です。厄介なのは、売買の時点では調査結果が存在しないことが多いという点にあります。分からないものを、どう説明すればよいのか。

この記事では、地盤の問題がいつ分かるのか、売買の前にどこまで見当をつけられるのか、そして費用の可能性をどう伝えるかを扱います。

地盤の問題は、いつ分かるのか

ここが実務上の急所です。時系列で見ると、ずれがはっきりします。

時点 地盤について分かること
土地の調査・売買 調査結果はない。周辺情報から推測するのみ
引渡し後、建物の設計 地盤調査を実施。ここで初めて数値が出る
着工前 改良の要否と工法が決まる。費用が確定する
「地盤は問題ありません」と言わない

調査結果がない段階で、地盤が良いとも悪いとも断定できません。「問題ありません」と伝えたものが後で覆ると、その差額の責任がこちらへ向きます。

伝えるべきは、「調査は建物の設計段階で行われること」「その結果によっては改良費が発生すること」「おおよその費用の幅」の三つです。可能性を説明した記録を残してください。

調査の種類

方法 対象 特徴
スクリューウエイト貫入試験
(旧・スウェーデン式サウンディング)
戸建て住宅 費用が安く、短時間で済む。木造住宅の標準的な方法。深い層は分からない
標準貫入試験(ボーリング) 中〜大規模建築 土のサンプルが採れ、深い層まで分かる。費用と時間がかかる
表面波探査 戸建て住宅 地面を掘らずに測る。近隣への影響が小さい

戸建てなら通常はスクリューウエイト貫入試験です。敷地の四隅と中央の五点程度を測ります。同じ敷地内でも、点によって結果が違うことがあります。

売買の前に、見当をつける

調査結果がなくても、手がかりはあります。これらを調べるのが、調査担当者の仕事です。

造成の履歴

盛土か切土かで、地盤の性質が変わります。盛土のほうが沈下のリスクが高くなります。

  • 開発許可の履歴を、市役所の開発指導課で確認する
  • 造成の年代。古い盛土ほど締まっているが、施工の記録が残っていないことが多い
  • 宅地造成等工事規制区域内かどうか

旧地形と旧地名

その土地が、以前は何だったか。これが最も雄弁な手がかりです。

  • 旧版地形図 国土地理院で明治期以降の地図が閲覧できます。田、池、川、湿地だった場所は要注意です
  • 空中写真 国土地理院の地図・空中写真閲覧サービスで、戦後の状況が分かります
  • 旧地名 沼、深、池、谷、江、蒲、芦、川。水に関わる字が入る地名は、かつての地形を示していることがあります

ハザードマップと地形分類

重ねるハザードマップ(国土交通省)では、地形分類を見ることができます。谷底低地、氾濫平野、埋立地、旧河道。これらに当たれば、軟弱層の可能性が高くなります。

あわせて液状化のしやすさも確認します。自治体が液状化マップを公表していることもあります。

現地と周辺

周りの建物と構造物を見る

周辺の家のブロック塀が傾いていないか。擁壁にひび割れがないか。道路のアスファルトが波打っていないか。電柱が傾いていないか。

一軒だけなら偶然ですが、複数あればその一帯の地盤を疑います。現地で見るべき最も分かりやすい兆候です。

あわせて、敷地と道路の高低差、隣地との高低差、水の溜まりやすさを見ます。周辺より低い土地は、かつて水が集まる地形だった可能性があります。

改良の工法と、費用の桁

調査の結果、改良が必要となった場合の工法は、おおむね三つです。下にいくほど深い層まで対応でき、費用も上がります。

工法 内容 費用の桁
表層改良 地表から2メートル程度までの土をセメント系固化材と混ぜて固める 三つの中で最も安い
柱状改良 セメント系固化材で地中に柱を作る。支持層まで届かせる 表層改良の1.5〜2倍程度
鋼管杭 鋼管を支持層まで打ち込む。深い層まで対応できる 三つの中で最も高い

戸建て住宅では、数十万円から百万円単位になります。支持層が深ければ、それ以上になることもあります。

金額は敷地の広さ、支持層の深さ、施工条件で大きく変わるため、「だいたい○万円」と伝えないでください。幅で伝え、正確な額は調査後の見積もりによる、と説明します。

改良費以外にかかること

  • 残土処分 表層改良や柱状改良では土が出ます。処分費がかかります
  • 重機の搬入 前面道路が狭いと、小型機での施工になり割高になります。入れない場合は工法が制限されます
  • 撤去費 将来、土地を売るときに改良体の撤去を求められることがあります。とくに鋼管杭は撤去費が高額です

液状化

砂質の地盤に地下水が多い場所では、地震時に液状化が起こることがあります。建物が傾き、上下水道が使えなくなります。

熊本地震でも液状化による被害が発生しました。旧河道や埋立地、干拓地では、可能性を確認しておく必要があります。

液状化の対策は通常の地盤改良とは別で、費用も変わります。該当地域では、その旨を説明事項として扱ってください。

売買の実務でどう扱うか

説明の型

断定を避けつつ、可能性を伝えます。

伝える四つ

① 現時点で地盤調査は行われていない(または、いつの調査があるか)

② 調査は建物の設計段階で実施される

③ 結果によっては地盤改良が必要になり、数十万円から百万円単位の費用が発生する可能性がある

④ 周辺情報から見て、その可能性が高い/低い/判断できないと、根拠とともに伝える

契約で決めておくこと

  • 改良が必要になった場合の費用負担。原則は買主負担ですが、明記しておきます
  • 一定額を超えた場合の扱い。契約解除や再交渉の条件を入れることがあります
  • 売主が地盤調査の結果を持っている場合、その提供

既存建物がある場合

建物が建っている土地では、その建物の状態が地盤の情報になります。基礎のひび割れ、床の傾き、建具の建て付け。水平器で床を測っておくと、感覚ではなく数値で残せます。

ただし、建物が傾いていても原因が地盤とは限りません。断定せず、事実として記録してください。

実務チェックリスト
  • 地盤調査の結果が存在するか確認した売主が持っていることがある
  • 造成の履歴を確認した開発許可の履歴、盛土か切土か、造成年代
  • 宅地造成等工事規制区域内か確認した
  • 旧版地形図で、以前の地形を確認した田・池・川・湿地でなかったか
  • 空中写真で戦後の状況を確認した
  • 旧地名を確認した沼・深・池・谷・江など、水に関わる字
  • ハザードマップの地形分類を確認した谷底低地・氾濫平野・埋立地・旧河道
  • 液状化の可能性を確認した自治体の液状化マップ
  • 周辺の塀・擁壁・道路・電柱の傾きを確認した複数あれば一帯の地盤を疑う
  • 敷地と周辺の高低差を確認した
  • (既存建物)床の傾きを水平器で測り、数値で記録した
  • 前面道路の幅を確認した重機が入れないと工法が制限され割高になる
  • 改良費が発生する可能性を、根拠とともに説明した断定しない
  • 費用負担の取り決めを契約に明記した
  • 説明した内容を記録に残した

まとめ

  • 土地の売買時点では、地盤調査の結果がないことがほとんど。分かるのは建物の設計段階。
  • だから「問題ありません」とは言えない。可能性を根拠とともに伝え、記録に残す。
  • 見当をつける手がかりは、造成履歴・旧地形図・空中写真・旧地名・ハザードマップ・周辺の構造物。
  • 改良工法は表層改良・柱状改良・鋼管杭の三つ。下にいくほど費用が上がる。
  • 費用負担の取り決めを契約に明記する。決めていないと、後から必ず揉める。
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