盛土規制法 ── 区域の指定と、許可の要否

この記事の要点
  • 二つの区域の違いは、宅地造成かどうかではない。人家等との位置関係で分かれる
  • 許可が要るかは崖の高さ・盛土の高さ・面積で決まる。政令に数値が定められている
  • 用途を問わない。農地でも山林でも、規制区域内なら対象になる
  • 土地所有者に維持の責務がある。造成した者が去った後も、所有者に残る

造成計画を立てるとき、開発許可のことは考えても、盛土規制法の許可を見落とすことがあります。

この法律は2023年5月に施行された比較的新しいものです。宅地に限らず、農地でも山林でも、規制区域内であれば対象になります。開発許可が不要な規模でも、盛土規制法の許可が必要になる場合があります。

この記事では、どの区域でどの規模なら許可が要るのか、手続きはどうなるかを扱います。

何が変わったか

正式名称は宅地造成及び特定盛土等規制法。2021年7月の静岡県熱海市での土石流災害を契機に、旧・宅地造成等規制法を全面的に改正する形で成立しました。

旧法(宅地造成等規制法) 盛土規制法
対象 宅地造成 土地の用途を問わない
区域 宅地造成工事規制区域 宅地造成等工事規制区域+特定盛土等規制区域
土石の堆積 対象外 対象
責務 明示なし 土地所有者等の維持責務を明記
罰則 比較的軽い 大幅に強化

最も大きな変化は、宅地以外にも及ぶようになったことです。農地の嵩上げ、山林への残土処分、資材置場への土砂の堆積。これらが規制の対象になりました。

二つの区域

違いは「宅地造成かどうか」ではない

名称から誤解されやすいところです。宅地造成等工事規制区域が宅地、特定盛土等規制区域が農地や山林、という区分ではありません。

どちらの区域も、土地の用途を問いません。違いは、人家等との位置関係です。

区域 指定されるところ 規制
宅地造成等工事規制区域 市街地、集落、その周辺など、人家等が存在するエリア 一定規模以上は許可
特定盛土等規制区域 市街地等から離れているが、地形等の条件から盛土等が行われれば人家等に被害を及ぼしうるエリア 一定規模以上は届出、より大きい規模は許可

指定するのは都道府県知事等です。基礎調査を行ったうえで指定され、おおむね5年ごとに見直されます。

規模の基準

ここが実務の中心です。規制区域内であっても、規模が基準に満たなければ許可は不要です。

宅地造成等工事規制区域内

行為 許可が必要な規模
盛土 高さ1メートル超の崖を生じるもの
切土 高さ2メートル超の崖を生じるもの
盛土と切土を同時に 高さ2メートル超の崖を生じるもの
盛土(崖を生じない) 高さ2メートル超
面積 盛土・切土をする土地の面積が500平方メートル超

面積要件があることに注意してください。崖が生じなくても、高さが低くても、500平方メートルを超える造成であれば許可が必要になります。

特定盛土等規制区域内

この区域では、届出が必要な規模許可が必要な規模の二段構えになっています。

行為 許可が必要な規模
盛土 高さ2メートル超の崖を生じるもの
切土 高さ5メートル超の崖を生じるもの
盛土と切土を同時に 高さ5メートル超の崖を生じるもの
盛土(崖を生じない) 高さ5メートル超
面積 3,000平方メートル超

許可の規模に満たなくても、宅地造成等工事規制区域と同じ規模(盛土1m超の崖、面積500㎡超など)に達すれば届出が必要です。

土石の堆積

資材置場や残土の仮置きなど、一時的な堆積も対象です。宅地造成等工事規制区域では、高さと面積の組み合わせで基準が定められています。

数値は必ず所管窓口で確認する

ここに挙げた数値は政令に定められたものですが、条例でより厳しい基準が定められている場合があります。

また、区域の指定状況は自治体によって進み方が違います。計画地が規制区域内かどうか、どの規模から許可が要るかは、都道府県または市の所管窓口で必ず確認してください。

手続き

段階 内容
区域の確認 規制区域図で、計画地が指定区域内かを確認
規模の判定 崖の高さ、盛土の高さ、面積を算定
事前相談 所管窓口へ。技術基準への適合を相談
土地所有者等の同意 工事に係る土地の所有者等の同意が必要
周辺住民への周知 説明会の開催等が求められる
許可申請 設計図書、地質調査結果、安全対策計画など
許可 技術基準、資力・信用、工事施行者の能力を審査
工事中 定期報告、中間検査
完了 完了検査を受け、検査済証の交付

許可の基準

  • 技術的基準 擁壁の設置、排水施設、地盤の締固め、盛土材料の品質など
  • 工事主の資力・信用
  • 工事施行者の能力
  • 土地所有者等の同意

開発許可と似た構造ですが、技術基準は災害防止に特化しており、より詳細です。とくに盛土材料の品質、締固めの管理、地下水対策は重点的に見られます。

中間検査が入る

開発許可と違い、工事の途中で検査があります。盛土は完成後に内部を確認できないためです。

検査のタイミングを工程に織り込んでおかないと、工事が止まります。一定の高さごと、あるいは一定の工程ごとに検査が求められます。

土地所有者の責務と、既存の盛土

造成した者が去っても、責務は所有者に残る

規制区域内の土地の所有者・管理者・占有者は、盛土等に伴う災害が生じないよう、その土地を常時安全な状態に維持する責務を負います。

造成した事業者が撤退した後も、この責務は土地の所有者に残ります。擁壁の劣化、排水施設の詰まり、法面の変状。定期的な点検と必要な補修が求められます。

造成地を取得する場合、この責務が付いてくることを買主に説明してください。

既存の盛土への対応

法の施行前に行われた盛土についても、災害の防止のため必要があると認められる場合には、是正措置等を命じることができます。

命令の相手方は土地所有者等ですが、原因行為者(造成主、工事施行者など)に対しても命じることができます。「前の所有者がやったことだから」では済みません。

罰則

無許可の工事や、命令への違反には罰則が定められています。法人に対しては、個人よりも大幅に重い罰金が科される仕組みになっています。

また、建設業者が違反した場合、建設業法上の監督処分につながる可能性があります。

実務での確認

取引の場面

  • 規制区域内か 都道府県・市のウェブサイトで区域図が公開されていることが多い
  • 造成の履歴 過去に許可を受けた造成地か。許可の内容と検査済証の有無
  • 擁壁の状態 高さ、構造、ひび割れ、水抜き穴の詰まり、傾き
  • 維持責務 買主に説明し、記録に残す

開発を計画する場面

開発許可と盛土規制法は別の許可

両方の要件を満たす必要があります。開発許可が不要な規模でも、盛土規制法の許可が必要になることがあります。

たとえば市街化区域内で1,000平方メートル未満の造成であれば開発許可は不要ですが、盛土で1メートルを超える崖が生じるなら、盛土規制法の許可が必要です。

「開発許可が要らないから手続きは不要」という判断をしないでください。

残土の処分

造成で発生した土砂を他所に持ち込む場合、持込み先でも規制がかかります。規制区域内の農地や山林への搬入は、盛土規制法の対象になりえます。

「引き取ってもらったから終わり」ではありません。持込み先が適法に処理しているかを確認しておかないと、後で問題になることがあります。

実務チェックリスト
  • 計画地が規制区域内か確認した宅地造成等工事規制区域/特定盛土等規制区域
  • どちらの区域かを確認した許可の規模基準が違う
  • 崖の高さ、盛土の高さ、面積を算定した
  • 条例でより厳しい基準がないか確認した
  • 開発許可とは別の許可であることを前提に検討した片方だけでは足りない
  • 土地所有者等の同意を得られるか確認した
  • 周辺住民への周知の要否を確認した
  • 中間検査のタイミングを工程に織り込んだ
  • 盛土材料の品質と調達先を確認した
  • (取引)造成の履歴と検査済証の有無を確認した
  • (取引)擁壁の状態を確認した高さ・構造・ひび割れ・水抜き穴・傾き
  • (取引)土地所有者の維持責務を買主に説明し、記録した
  • 既存の盛土に是正命令の対象となりうるものがないか確認した
  • 残土の持込み先での規制を確認した

まとめ

  • 二つの区域の違いは、宅地造成かどうかではなく、人家等との位置関係。どちらも用途を問わない。
  • 許可の要否は崖の高さ・盛土の高さ・面積で決まる。面積要件があることを見落とさない。
  • 開発許可とは別の許可。開発許可が不要な規模でも、盛土規制法の許可が要ることがある。
  • 工事中に中間検査がある。工程に織り込まないと工事が止まる。
  • 土地所有者に維持の責務がある。造成した者が去っても、所有者に残る。
この内容を、貴社・貴庁の研修として。

都市計画法から開発許可、農地法、盛土規制まで全14分野。自治体の職員研修、専門職団体の講習会としてお引き受けしています。
構成のご提案とお見積りまで、費用はかかりません。

都市計画実践講座を見る
不動産実務講座(無料・全93講座)

BLOG

ブログ

PAGE TOP