不動産の買い替え ── 順序と、残債の壁

この記事の要点
  • 難所は売却と購入が同時にできないこと。どちらを先にしても負担が出る
  • 残債が売却価格を上回ると、自己資金がなければ売れない
  • 購入を先にするなら、買い替え特約を検討する
  • 税の特例には併用できない組み合わせがある

いま住んでいる家を売り、その代金で次の家を買う。言葉にすれば単純ですが、実務では順序が問題になります。

売却と購入を、完全に同時に行うことは難しい。どちらかが先になり、その間に負担が生じます。

この記事では、順序の選び方と、資金繰りの実際を整理します。

三つの進め方

内容 生じる負担
売り先行 売ってから買う 仮住まいと、二度の引越し
買い先行 買ってから売る 二重の返済
同時決済 同じ日に決済する 日程の調整が難しい
同時決済が理想だが、簡単ではない

売却の決済と購入の決済を同じ日に行えば、仮住まいも二重の返済も避けられます。

ただし、次を揃える必要があります。

  • 売主と買主、双方の日程
  • 売却代金が入ってから、購入代金を払う順序
  • それぞれの金融機関の手続き
  • 抵当権の抹消と設定の登記
  • 引越しのタイミング

一日のうちに、複数の当事者と金融機関が動きます。

どこか一つが遅れると全体が止まるため、余裕のない設計は避けてください。

実務では、売却の決済を午前、購入の決済を午後とすることがあります。

残債と売却価格の関係

残債が上回ると、そのままでは売れない

住宅ローンが残っている家には、抵当権が設定されています。

買主に引き渡すには、これを抹消しなければなりません。そのためには、ローンを完済する必要があります。

状況
売却価格>残債 完済でき、差額が手元に残る
売却価格<残債 不足分を自己資金などで埋める必要がある

後者を、オーバーローンと呼ぶことがあります。

この場合の選択肢です。

  • 不足分を自己資金で用意する
  • 住み替えローン(買い替えローン)を利用する
  • 売却を見送り、返済を続ける
  • 金融機関と協議する

最初に、残債の額と売却の見込みを突き合わせてください。

ここが合わなければ、他の検討は意味を持ちません。

住み替えローン

売却しても返しきれない残債と、新しい住まいの購入資金を合わせて借りる仕組みです。

内容
利点 自己資金がなくても買い替えられる場合がある
注意 借入額が物件価格を上回る
審査 通常より厳しくなる
取扱い 金融機関によって異なる

次に売るときも、同じ問題が起きやすくなります。

借入額が担保価値を上回った状態が続くため、将来また買い替えたいときに動けなくなる可能性があります。

順序を選ぶ

売り先行が向いている場合

  • 残債があり、売却額が確定しないと予算が組めない
  • 売却に時間がかかりそうな物件
  • 仮住まいを確保できる
  • 急いで移る必要がない

資金の見通しが立つのが最大の利点です。

一方で、引渡しまでに次が決まらなければ仮住まいと二度の引越し費用がかかります。

買い先行が向いている場合

  • 自己資金に余裕がある
  • 売却物件に確実な需要がある
  • 希望する物件が限られており、逃したくない
  • 仮住まいが難しい事情がある
買い先行には、買い替え特約を

先に購入すると、売却が成立しなかった場合に資金が回りません。

これに備えるのが買い替え特約です。

定める内容
期限 いつまでに売却できなければ
価格 いくら以上で売れなければ
効果 購入契約を解除できる
手付 返還されるか

売主にとっては不利な条件なので、応じてもらえるとは限りません。

人気のある物件では、特約なしの買主が優先されます。

特約を付けられない場合、売却が不調に終わったときにどうするかを、先に決めておいてください。

つなぎ融資

購入代金の支払いが先になる場合、売却代金が入るまでの間を埋める融資があります。

  • 期間が短く、金利は高めになることが多い
  • 売却が長引くと負担が増える
  • 取扱いは金融機関による

税の特例

買い替えに関わる主な特例です。

特例 内容
居住用財産の特別控除 譲渡所得から一定額を控除
軽減税率 所有期間が長い場合の税率
買換えの特例 課税を将来に繰り延べる
譲渡損失の特例 損失を他の所得と通算し、繰り越す
併用できない組み合わせがある

特例を使ったことで、住宅ローン控除が受けられなくなる場合があります。

売却で税を軽くしたつもりが、購入側で不利になる。この行き違いは実務で起こります。

また、次の点にも注意が要ります。

  • 要件を満たすかどうかは、細かく定められている
  • 所有期間、居住期間、親族間の売買かどうか
  • 買換えの特例は課税がなくなるのではなく、先送りされる
  • 期限がある特例は、改正で延長・終了する

どの組み合わせが有利かは、金額と時期によって変わります。

売却の契約を結ぶ前に、税理士に相談してください。契約後では選べる道が減ります。

進め方

すること
残債の額を、金融機関に確認する
売却の見込み額を調べる複数社に査定を依頼
差額を確認する 足りるか、不足するか
税の扱いを税理士に相談する
順序を決める
購入の借入れの事前審査を受ける
売却活動と物件探しを進める
決済の日程を設計する
査定額は、売れる額ではない

複数社に査定を依頼すると、金額に開きが出ることがあります。

高い査定額を出した会社が、高く売ってくれるとは限りません。

確認すべきは、金額そのものより次の点です。

  • その額の根拠 どの成約事例を使ったか
  • どのくらいの期間で売れる見込みか
  • 売れなかった場合、どう調整するか
  • その地域での取扱実績

買い替えでは、「いつまでに、いくらで」が両方とも要ります。

高くても売れなければ、次の購入が成り立ちません。

仲介する側の注意

  • 残債の確認を、最初に行う
  • オーバーローンなら、その旨を早く伝える
  • 買い替え特約の可否を、売主側に確認する
  • 税の話は、税理士への相談を勧める
  • 決済日程は、余裕をもって組む
  • 売却が不調の場合の道筋を、先に共有する
  • 仮住まいの費用と、二度の引越し費用を試算に入れる
買い替えに関する確認
  • 残債の額を金融機関に確認した
  • 売却の見込み額を複数社に確認した
  • 残債と売却額の差を確認した
  • (不足する場合)自己資金か住み替えローンかを検討した
  • 順序を決めた売り先行・買い先行・同時決済
  • (買い先行)買い替え特約の可否を確認した
  • (買い先行)特約がない場合の対応を決めた
  • つなぎ融資の要否と条件を確認した
  • 売却の契約前に税理士に相談した
  • 特例と住宅ローン控除の併用の可否を確認した
  • 決済日程に余裕を持たせた
  • 仮住まいと二度の引越し費用を試算に入れた
  • 査定額の根拠と、売却期間の見込みを確認した

まとめ

  • 難所は、売却と購入を同時にできないこと。順序でどちらかに負担が出る。
  • 残債が売却価格を上回ると、不足分を埋めなければ抵当権を抹消できない。
  • 住み替えローンは使えるが、借入額が担保価値を上回る状態が続く。
  • 買い先行なら買い替え特約を。付けられない場合の道筋を先に決める。
  • 税の特例は併用できない組み合わせがある。契約前に税理士へ。
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