CHIOU / 株式会社地央

物件収集のステップ ── 何を見て、何を捨てるか

この記事の要点
  • 広告の表示にはルールがある。徒歩の分数も、新築の定義も決まっている
  • 大事なのは書かれていないこと。接道、境界、越境は広告に出てこない
  • 面積には壁芯と内法がある。パンフレットと登記簿で数字が違う
  • 資料は自分でも取れる。登記事項証明書、公図、地積測量図

物件の情報は、ポータルサイトにも不動産会社にもあふれています。しかし、そこに書かれていることだけでは判断できません。

広告には表示のルールがあり、書かなければならないことが決まっています。裏を返せば、それ以外は書かなくてよいということです。

この記事では、情報がどこから出てくるのか、広告をどう読むのか、そして何が書かれていないのかを扱います。

情報はどこから出てくるか

経路 特徴
ポータルサイト 数が多い。同じ物件が複数の業者から掲載されることがある
不動産会社の店頭・サイト その会社が扱う物件
売主が直接販売 新築分譲、買取再販など。売主が宅建業者なら規制が変わる
競売・公売 裁判所・行政機関。内覧できないなど、通常の取引と条件が違う
相続・任意売却 個別の事情がある。急ぐ理由がある場合も
レインズという仕組み

宅地建物取引業者は、専任媒介・専属専任媒介で依頼を受けた物件を、指定流通機構(レインズ)に登録する義務があります。

つまり、専任で売りに出ている物件は、業者間では共有されています。「その会社にしかない物件」は、多くの場合そうではありません。

一般の方は直接見られませんが、成約価格の情報は「レインズ・マーケット・インフォメーション」で公開されています。実際にいくらで売れたかの目安になります。

広告表示のルール

不動産の広告には、不動産の表示に関する公正競争規約という業界のルールがあります。知っておくと、読み方が変わります。

表示 ルール
徒歩○分 道路距離80メートルにつき1分。端数は切り上げ
新築 建築後1年未満で、かつ未入居のもの
中古住宅 建築後1年以上経過、または居住の用に供されたことがあるもの
面積 単位と算出方法を明示する
価格 消費税を含む総額で表示する
徒歩の分数に、坂と信号は入っていない

徒歩の表示は道路距離を80で割った数字です。実際に歩いた時間ではありません。

坂道、階段、踏切、信号待ちは考慮されていません。高低差のある地域では、表示より時間がかかります。

これは規約どおりの表示であって、業者が誤魔化しているわけではありません。ルールを知ったうえで、実際に歩いて確かめてください。

面積の二つの数え方

数え方 使われる場面
壁芯(へきしん) 壁の中心線で囲まれた面積 マンションのパンフレット、建築確認
内法(うちのり) 壁の内側で囲まれた面積 区分所有建物の登記簿

同じ部屋でも、壁芯のほうが数字は大きくなります。パンフレットの面積と登記簿の面積が違うのは、このためです。

住宅ローン控除など、面積要件のある制度では、どちらの面積で判定するかが決まっています。要件ぎりぎりの物件では、確認が必要です。

広告に書かれていないこと

ここが本題です。判断に効く情報の多くは、広告には出てきません。

書かれていないこと 効いてくる場面
接道の状況 再建築できるか。できなければ融資も売却も難しい
道路の種別 二項道路なら後退が必要。使える面積が減る
境界の確定状況 売却時に確定測量が必要になる
越境の有無 是正または覚書が必要
私道の権利関係 通行・掘削の承諾。工事ができない場合がある
地盤・造成の履歴 建て替え時の改良費
隣地の用途地域 南側に高い建物が建つ可能性
修繕の履歴と予定 まとまった支出の時期
現在の入居状況 満室想定か、実際に埋まっているか

これらは重要事項説明で説明されますが、それは契約の直前です。その前に自分で確認しておけば、検討の早い段階で判断できます。

「現況優先」「現状有姿」と書かれていたら

建物や設備を現在の状態のまま引き渡す、という意味です。不具合があっても補修しないという趣旨で使われることがあります。

何が「現況」なのかを、具体的に確認してください。「現状有姿」とだけ書かれていても、売主が知りながら告げなかった不具合については、責任を免れません。

自分で取れる資料

次の資料は、誰でも取得できます。不動産会社を通さなくても構いません。

資料 どこで 分かること
登記事項証明書 法務局(オンライン申請も可) 所有者、抵当権、地役権、地目、地積
公図 法務局 土地の位置と形、隣接地、細長い無地番の筆の有無
地積測量図 法務局 面積、境界点。ない土地も多い
建物図面・各階平面図 法務局 建物の配置と形状
都市計画図 市町村 用途地域、区域区分、都市計画道路
建築計画概要書 特定行政庁 建築確認の内容
ハザードマップ 市町村、ポータルサイト 浸水、土砂災害、液状化
公図で最初に見るところ

敷地と道路の間に、細長い無地番の筆が描かれていないかを見てください。

これは法定外公共物(赤道・青道)の可能性があります。挟まっていると、道路に接していないと判断されることがあります。

現地では舗装されて分からなくなっていることが多く、公図でしか気づけません。

売主側から取ってもらう資料

  • 物件状況等報告書(告知書) 雨漏り、シロアリ、給排水管の不具合、修繕の履歴
  • 設備表 設備の有無と、故障・不具合の別
  • 確認済証・検査済証 適法に建てられたか
  • 設計図書 構造や仕様
  • (区分所有)重要事項調査報告書 管理費・修繕積立金の額と滞納、修繕の履歴と予定
  • (賃貸中)レントロール 各室の賃料、契約期間、敷金
区分所有なら、管理組合の資料を見る

建物の状態より、管理組合の状態のほうが効いてくることがあります。

  • 修繕積立金の残高 長期修繕計画に対して足りているか
  • 滞納の状況 滞納が多い管理組合は、修繕の判断が遅れがち
  • 長期修繕計画 次の大規模修繕の時期と、積立金の引上げ予定
  • 総会議事録 紛争、訴訟、一時金の議論がないか

これらは重要事項調査報告書と、管理会社や管理組合から取り寄せる資料で分かります。

現地で見ること

資料では分からないことがあります。

敷地まわり

  • 境界標があるか。刻印は何か
  • 塀や樹木が越境していないか。出ているほうも、入っているほうも
  • 前面道路の実際の幅。側溝を含むか
  • 道路や隣地との高低差。擁壁の状態
  • 水が溜まりやすい形状になっていないか

建物

  • 外壁のひび割れ、塗装の状態
  • 基礎のひび割れ
  • 床の傾き(水平器があれば数値で記録できる)
  • 天井や壁のシミ(雨漏りの痕跡)
  • 建具の建て付け

周辺

  • 昼と夜、平日と休日で様子が違わないか
  • 周辺の空き家の多さ
  • 音、におい
  • 坂や階段。地図では分かりません

「未公開物件」「掘り出し物」について

安いことには、理由がある

「未公開」「特別なルート」といった言葉で紹介される物件があります。実際にそうした情報が存在する場面はありますが、価格が安い場合は理由を確認してください。

  • 再建築ができない
  • 市街化調整区域にある
  • 境界が未確定、越境がある
  • 私道の承諾が取れていない
  • 賃貸の需要が乏しい地域にある
  • 建物が違法または既存不適格

これらは買うときに安くなる理由であり、売るときにも同じように効きます。「安く買えた」ことと「得をした」ことは違います。

急がされたとき

「他にも希望者がいる」「今日中に決めないと」。こう言われたときこそ、資料を取って確かめてください。

確認する時間を与えない取引は、確認されると困ることがある場合があります。急ぐ必要が本当にあるなら、その理由を説明してもらえるはずです。

見る順番

すること ここで外れたら
広告で条件を絞る 次の物件へ
公図と登記事項証明書を取る 接道・権利関係で問題があれば見送る
都市計画図とハザードマップを見る 用途・災害の条件を確認
現地を見る 資料と現況の食い違いを確認
売主側の資料を取り寄せる 告知書・設備表・管理組合の資料
数字を計算する

二番目を早い段階に置くのが要点です。数百円で取れる資料で、検討を続けるかどうかが決まることがあります。

情報を集めるチェックリスト
  • 徒歩の分数を実際に歩いて確かめた坂・階段・信号は含まれていない
  • 面積が壁芯か内法か確認した要件ぎりぎりの場合は特に
  • 「新築」の定義に当たるか確認した1年未満かつ未入居
  • 公図を取得した細長い無地番の筆がないか
  • 登記事項証明書を取得した所有者・抵当権・地役権
  • 地積測量図の有無を確認した
  • 都市計画図で用途地域・区域区分を確認した
  • ハザードマップを確認した
  • 接道の状況を確認した広告には書かれていない
  • 境界の確定状況と越境の有無を確認した
  • 物件状況等報告書・設備表を取り寄せた
  • (区分所有)重要事項調査報告書を取り寄せた積立金残高・滞納・長期修繕計画
  • (賃貸中)レントロールと実際の入居状況を確認した
  • 現地を複数の時間帯で見た
  • 安い理由を確認した安く買えたことと得をしたことは違う
  • 急がされている場合、その理由を確認した

まとめ

  • 広告の表示にはルールがある。徒歩の分数に坂と信号は入っていない。
  • 面積には壁芯と内法がある。パンフレットと登記簿で数字が違う。
  • 判断に効く情報の多くは広告に書かれていない。接道、境界、越境、私道。
  • 公図と登記事項証明書は自分でも取れる。検討の早い段階で取る。
  • 区分所有では、建物の状態より管理組合の状態が効いてくることがある。
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