CHIOU / 株式会社地央

全国総合計画と国土形成計画 ── 開発から、形成へ

この記事の要点
  • 法律の名称から「開発」が外れた。これが計画の性格の変化を示している
  • 国土形成計画は二層、国土利用計画は三層。構造が違う
  • 方向を示すのが形成計画、土地の使い方の量を示すのが利用計画
  • 直接の規制ではないが、下位の計画を通じて個別の土地に及ぶ

国の計画は、時代が何を課題としていたかを映しています。

戦後は国土を開発することが課題でした。いまは、既にあるものをどう使い、どう管理するかが課題です。

この記事では、全国総合開発計画から国土形成計画への流れと、国土利用計画との関係を整理します。

全総の時代

昭和25年(1950年)の国土総合開発法に基づき、全国総合開発計画(全総)が策定されてきました。

計画 時期 基本的な考え方
一全総 昭和37年 拠点開発方式。工業の拠点を配置する
新全総 昭和44年 大規模プロジェクト構想。高速交通網の整備
三全総 昭和52年 定住構想。地方への定住を促す
四全総 昭和62年 交流ネットワーク構想。多極分散型国土
五全総 平成10年 「21世紀の国土のグランドデザイン」
課題が、順に移っていった

各計画の主題を並べると、その時代の問題が見えます。

  • 初期 地域間の格差をどう是正するか。産業をどこに置くか
  • 中期 東京への一極集中をどう抑えるか
  • 後期 量的な拡大が終わった後、何を目指すか

五全総の時点で、人口減少が視野に入り始めます。

そして、「開発」を前提とした計画の枠組みそのものが、実情に合わなくなっていきました。

なぜ「開発」が外れたか

平成17年の改正

平成17年(2005年)、国土総合開発法が改正され、国土形成計画法となりました。

それまで それ以降
法律の名称 国土総合開発 国土形成計画法
計画の名称 全国総合開発計画 国土形成計画
前提 人口と経済が拡大する 人口が減少する
主題 何をつくるか どう使い、どう管理するか

名称の変更は、形式的なものではありません。

開発の対象としての国土から、既にあるものを成熟させる対象としての国土へ。計画の性格が変わったことを示しています。

あわせて、地方の関与を強める仕組みも導入されました。全国一律ではなく、地域ごとの計画を設ける構成です。

国土形成計画の構造

内容
全国計画 国土全体の方針。閣議決定される
広域地方計画 ブロック単位。国と地方の協議を経て決定される

この二層が、国土形成計画の構造です。

広域地方計画は、北海道と沖縄を除く全国を複数のブロックに分けて策定されます。熊本県は九州圏に含まれます。

これまでの全国計画

閣議決定
第一次 平成20年(2008年)
第二次 平成27年(2015年)
第三次 令和5年(2023年)7月

おおむね10年を見通して策定され、その期間ごとに見直されます。

日付と名称は、原典で確認する

閣議決定の日付や、計画が掲げるキーワードは、資料によって食い違っていることがあります。

審議会の答申の日と、閣議決定の日を取り違えている例もあります。

正確な日付と、計画が掲げる文言は、国土交通省が公表する計画本文で確認してください。

研修や社内資料で引用する場合、出典と時点を明記する習慣をつけてください。

国土利用計画との関係

方向を示す計画と、量を示す計画
国土形成計画 国土利用計画
根拠法 国土形成計画法 国土利用計画法
主題 どういう国土にするか 土地をどう使うか
内容 方針、目標、施策 利用区分ごとの規模の目標
構造 二層(全国・広域地方) 三層(全国・都道府県・市町村)

この二つは、対になっています。

方向だけでは土地の使い方が決まりません。農地をどれだけ残すか、宅地をどれだけ確保するか。この量の配分を扱うのが国土利用計画です。

両計画は一体のものとして策定されます。直近では、第三次国土形成計画と第六次国土利用計画が同時に閣議決定されました。

三層である意味

国土利用計画は、都道府県計画・市町村計画まで下りていきます。

段階 役割
全国計画 国全体の利用区分ごとの規模の目標
都道府県計画 県内の配分。土地利用基本計画の前提になる
市町村計画 市町村内の方針

そして都道府県が定める土地利用基本計画が、国土を五つの地域に区分します。

ここから先が、都市計画法や農地法といった個別の法律の領域です。

個別の土地まで、どうつながるか

上から順に下りてくる
段階
国土形成計画・国土利用計画(全国)
国土利用計画(都道府県)
土地利用基本計画(五地域の区分)
都市計画区域の指定、区域区分
用途地域、地区計画
個別の土地の規制

国の計画そのものが、直接ある土地の建築を止めることはありません。

しかし、下位の計画と個別法を通じて、最終的には一筆の土地に及びます。

この講座で「三つの層」として説明しているのは、この構造です。国土がキャンバス、都市計画が下書き、建築基準法や事業法が彩色にあたります。

実務にどう効くか

長期の見通しを立てるとき

不動産の取得や事業では、十年、二十年先の見通しが必要になります。

確認するもの 分かること
広域地方計画 その地域が、圏域の中でどう位置づけられているか
都道府県の国土利用計画 県内での土地利用の方向
市町村の計画 より具体的な方針

ただし、計画は計画です。そのとおりに進む保証はありません。実際の人口の動きや、事業の進捗と併せて見てください。

行政に提案するとき

事業の提案が上位計画の方向と合っていることを示せると、庁内での説明がしやすくなります。

「国の計画のこの方針に沿っています」「県の計画のこの記述に対応します」。担当者が上に上げるための材料になります。

研修や資料で扱うとき

計画の名称を取り違えない

似た名前の計画が並ぶため、混同が起きやすい領域です。

  • 国土形成計画国土利用計画 根拠法も構造も違う
  • 全国総合開発計画 現在は使われていない名称
  • 土地利用基本計画 都道府県が定める。五地域の区分
  • 国が進める他の構想 国土形成計画とは別の枠組み

資料を作る際は、どの計画の話をしているかを明示してください。

また、国の構想や施策の名称は変わることがあります。計画本文にある表現を使うのが確実です。

これからの方向

直近の計画が扱っている主な課題です。

課題 内容
人口減少 地域によって減り方に差がある
担い手の不足 生活サービスを維持する人がいなくなる
災害 激甚化への対応。土地利用に組み込む
脱炭素 エネルギー、緑地、交通
デジタル 移動の代替、行政サービスの効率化
土地の管理 所有者不明土地、空き家、荒廃した農地・森林

最後の項目は、この講座の第6章で扱う内容と直接つながります。

国の計画で示された方向が、個別法の改正となって現れる。この流れを意識すると、制度改正の背景が見えます。

計画を確認するときの視点
  • どの計画の話か明示した形成計画か、利用計画か
  • 全国計画の本文を確認した国土交通省が公表
  • その地域を含む広域地方計画を確認した
  • 都道府県・市町村の国土利用計画を確認した
  • 土地利用基本計画で五地域の区分を確認した
  • 閣議決定の日付を原典で確認した答申の日と取り違えない
  • 計画が掲げる文言を、本文の表現で引用した
  • 出典と時点を資料に明記した
  • 直接の規制ではないことを踏まえた
  • 計画どおりに進む保証はないことを前提にした

まとめ

  • 法律の名称から「開発」が外れた。計画の性格が変わったことを示している。
  • 国土形成計画は二層、国土利用計画は三層。構造が違う。
  • 方向を示すのが形成計画、土地の使い方の量を示すのが利用計画。両者は一体で策定される。
  • 国の計画は直接の規制ではないが、下位の計画と個別法を通じて一筆の土地に及ぶ。
  • 閣議決定の日付や計画の文言は、資料によって食い違うことがある。原典で確認する。
この内容を、研修・講座として。

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