CHIOU / 株式会社地央

不動産投資を始める前に ── 確認すべき8つのこと

この記事の要点
  • お金は購入時・保有中・売却時の三つの局面でかかる。物件価格はその一部
  • 購入時の諸費用だけで物件価格の数パーセントになる。自己資金から出ていく
  • 修繕は「いつか」ではなく必ず来る。時期と概算を先に見込む
  • 売却時にも費用がかかる。境界が未確定なら測量費が加わる

物件の広告に出ているのは、売買価格と、表面利回りだけです。

実際には、買うときにも、持っている間にも、売るときにも、お金が出ていきます。これらを数えないまま利回りだけで判断すると、想定と現実がずれます。

この記事では、不動産にかかる費用を、局面ごとに八つに分けて整理します。金額は物件と地域によって変わるため、「どこに何がかかるか」の一覧として使ってください。

三つの局面

局面 性質
購入時 一度きり。自己資金から出ていくことが多い
保有中 毎年・毎月・不定期。空室でもかかるものがある
売却時 一度きり。手取りが減る

購入時にかかるもの

一 登記に関する費用

項目 内容
登録免許税 所有権移転、抵当権設定の登記にかかる税
司法書士報酬 登記手続きの依頼料

決済日に現金で必要になります。融資に含められる場合とそうでない場合があるため、金融機関に確認してください。

二 税金

項目 いつ
印紙税 契約時。契約書に貼る
不動産取得税 取得の数か月後に納税通知が届く
消費税 建物部分(売主が事業者の場合)。土地は非課税
不動産取得税は、忘れた頃に来る

購入時ではなく、取得から数か月経ってから納税通知書が届きます。

決済で手元の資金を使い切っていると、支払いに困ることになります。購入時の資金計画に、この分を残しておいてください。

軽減措置が適用される場合がありますが、要件があり、申告が必要なこともあります。都道府県の担当課で確認できます。

三 仲介手数料

宅地建物取引業者を介して購入した場合にかかります。上限が国土交通大臣の告示で定められています。

売主から直接購入する場合はかかりません。ただしその場合、価格に販売の経費が含まれていることがあります。

そのほか購入時に

  • 融資に関する費用 事務手数料、保証料、印紙税
  • 火災保険料・地震保険料 数年分をまとめて払うことが多い
  • 固定資産税等の精算金 年の途中で買えば、売主に日割りで支払う
  • 管理費・修繕積立金の精算金 区分所有の場合

これらを合計すると、物件価格の数パーセントになります。物件の種類、価格帯、融資の条件によって幅があるため、具体的な金額は見積りで確認してください。

保有中にかかるもの

四 毎年かかるもの

項目 内容
固定資産税 1月1日時点の所有者に課税。空室でもかかる
都市計画税 市街化区域内の場合。調整区域は原則かからない

住宅用地には軽減の特例がありますが、更地にすると適用されなくなります。建物を解体して土地だけで持つ場合、税額が上がることを見込んでおいてください。

五 毎月かかるもの

  • 借入の返済 元金と利息
  • 管理委託料 家賃収入に対する割合で設定されることが多い
  • 管理費・修繕積立金 区分所有の場合。値上げされることがある
  • 共用部の電気代・水道代 一棟の場合
修繕積立金は、上がる前提で見る

区分所有では、長期修繕計画に沿って修繕積立金が段階的に引き上げられるのが通常です。

購入時の金額のまま何十年も続くことはありません。長期修繕計画書を見て、将来の水準を確認してください。

また、積立の残高が計画に対して不足している場合、一時金が徴収されることもあります。管理組合の総会議事録と収支報告書で確認できます。

六 いつか必ず来るもの ── 修繕

建物と設備には寿命があります。「壊れなければ払わない費用」ではなく、「時期が来れば必ず払う費用」です。

部位 備考
給湯器 入居中に故障すると、即日対応を求められる
エアコン 複数台あれば、時期が重なることもある
屋根・外壁 まとまった額になる。足場代がかかる
給排水管 更新には大がかりな工事を伴う
シロアリ対策 予防と駆除では費用が違う

毎月の収支が黒字でも、修繕を織り込んでいなければ、実際には赤字になります。家賃収入の一部を修繕用に積み立てておく考え方が現実的です。

七 入退去のたびにかかるもの

  • 原状回復費 入居者負担と貸主負担の区分がある。経年劣化は貸主負担が原則
  • クリーニング費
  • 広告料 入居者募集のために仲介業者へ支払うもの
  • 設備の入れ替え 次の入居者を確保するために必要になることがある

退去のたびにこれらが発生します。入居期間が短いほど、回数が増えます。

八 空室の期間

収入がゼロでも、支出は止まらない

空室の間、家賃収入は入りませんが、借入の返済、固定資産税、管理費、保険料は続きます。

退去してから次の入居者が決まるまで、原状回復と募集の期間が必要です。年間を通じて満室である前提の収支は、現実的ではありません。

広告に出ている利回りが満室想定になっていないか、確認してください。現に空室がある物件で、満室想定の数字が示されることがあります。

売却時にかかるもの

売れば手取りが入りますが、そこから引かれるものがあります。

項目 内容
仲介手数料 売却価格に応じて。上限が定められている
印紙税 売買契約書に
抵当権抹消の費用 登録免許税と司法書士報酬
譲渡所得への課税 所有期間によって税率が変わる
繰上返済の手数料 借入を一括返済する場合
境界が未確定なら、測量費が加わる

売却にあたって、買主や金融機関から境界の確定を求められることがあります。

地積測量図がなく、筆界確認書もない土地では、確定測量が必要になります。隣接地所有者の立会いを要するため、数か月かかることがあります。

費用と時間がかかるだけでなく、隣接地の所有者が相続で増えていたり、所在が分からなかったりすると、そこで止まります。

買うときに「境界は確定していますか」と確認しておくと、売るときの負担が変わります。

そのほか、売るときに出てくること

  • 越境の是正または覚書 塀や庇が越えていれば、処理を求められる
  • 建物の解体費 更地で売る場合
  • 残置物の処分費
  • 私道の掘削承諾 インフラの更新が必要な場合

数え方の順序

収支を確かめるときは、この順で組み立ててください。

すること
購入時の諸費用を積み上げ、必要な自己資金の総額を出す
毎年・毎月の支出を積み上げる
空室期間を織り込む満室想定にしない
修繕を年あたりの積立額として加える
金利が上がった場合の返済額で再計算する
売却時の費用を差し引いた手取りを見る

三番目から五番目を省くと、数字は良く見えます。しかし、省いた分は現実には発生します。

「節税」「相続対策」として説明されたとき

税務の判断は、必ず税理士に

不動産の購入が節税や相続対策として説明されることがあります。制度としてそうした効果が生じる場面はありますが、要件も計算も複雑です。

とくに、節税や相続税の軽減を主たる目的とした取引について、税務上否認された事例があります。「必ず有利になる」という前提で進めるものではありません。

また、減価償却によって課税所得が減る局面はありますが、売却時の取得費が減るため譲渡益が大きくなります。先送りしている面があることも押さえてください。

この記事は税務の助言を目的としたものではありません。個別の判断は税理士にご相談ください。

利回りの数字を受け取るとき

広告の利回りの多くは表面利回りです。

計算
表面利回り 年間家賃収入 ÷ 物件価格
実質利回り (年間家賃収入 − 年間の支出)÷(物件価格 + 購入時の諸費用)

分子から支出を引き、分母に諸費用を足すため、実質利回りは必ず低くなります。

高い利回りには、理由がある

利回りが高いこと自体は、良い条件を意味しません。価格が安い理由があるはずです。

  • 再建築ができない
  • 市街化調整区域にある
  • 築年数が古く、修繕が近い
  • 賃貸の需要が乏しい地域にある
  • 境界が未確定、越境がある

これらは買うときに安くなる理由であり、売るときにも同じように効きます。利回りの高さだけで比べないでください。

お金を数えるチェックリスト
  • 購入時の諸費用を積み上げた登記・税・仲介手数料・融資費用・保険料・精算金
  • 不動産取得税の分を手元に残した数か月後に通知が来る
  • 固定資産税・都市計画税の年額を確認した
  • (区分所有)修繕積立金の将来の引上げ予定を確認した長期修繕計画書
  • (区分所有)積立残高と一時金の可能性を確認した総会議事録・収支報告書
  • 修繕を年あたりの積立額として収支に入れた
  • 入退去のたびの費用を見込んだ原状回復・クリーニング・広告料
  • 空室期間を織り込んだ満室想定にしない
  • 金利が上がった場合の返済額で再計算した
  • 売却時の費用を差し引いた手取りを見た
  • 境界の確定状況を確認した未確定なら売却時に測量費と数か月
  • 越境の有無を確認した
  • 表面利回りか実質利回りかを確認した
  • 利回りが高い場合、その理由を確認した
  • 税務の説明を税理士に確認した

まとめ

  • お金は購入時・保有中・売却時の三つの局面でかかる。物件価格はその一部。
  • 不動産取得税は取得の数か月後に来る。手元に残しておく。
  • 修繕は必ず来る。年あたりの積立額として収支に織り込む。
  • 空室でも、返済・税・保険料は止まらない。満室想定で計算しない。
  • 境界が未確定なら、売却時に測量費と数か月が加わる。買うときに確認しておく。
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