土地家屋調査士行政書士 村上事務所
不動産調査

建築と地盤の関係(地盤調査・地盤改良)

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建築と地盤の関係について考察する際、建物の安全性や効率性において地盤の役割は極めて重要です。
地盤とは、建物を支える土地のことを指し、自然災害などが発生した際の安全性に直結しています。
ここで、地盤の基本的な概念やその性質、さらに建築物との関連性について詳しく見ていきましょう。

土とは何か

まず、土とは何かということから始めます。
土は、無数の土粒子が集まって形成されており、それぞれの粒子の間には水や空気が存在します。

この土粒子の性質や水との関係が、地盤の性質を大きく左右します。
特に、「水」の影響は多岐にわたります。

例えば、地下水の流れ(透水の現象)、地盤の沈下(圧密の現象)、斜面での土砂災害、地震時の地盤の液状化など、多くの地盤に関する現象が水の働きに起因しています。
地盤の形成には、人の活動も含めて様々な要因が影響しています。

河川の流れや海岸の波動、さらに海水面の変動などは地盤の「侵食」「運搬」「堆積」といった現象を引き起こし、地形を形成していきます。
特に海水面の変動により、軟弱な堆積地盤が形成されることもあります。

土の構成要素について考えると、土は基本的に「土粒子」、「水」、「空気」の三つの要素から成り立っています。
この三つの要素のバランスが、土の性質を定めます。

土粒子は粒径によって「粘土」「シルト」「砂」「レキ」の4つに分類されます。
粘土やシルトの粒径は「ふるい分析」で、砂やレキの粒径は「沈降分析」で測定されます。

地下水の影響

地下水の存在も地盤の性質に大きな影響を与えます。
地下水の深さや流れ、そしてその圧力は地盤の強度や安定性に関わります。

地下水面の深さを知るためには、井戸や河川、海の水位などの情報が役立ちます。
これは地下水系はこれらの水体と連続しているためです。

「応力」と「ひずみ」

地盤の力学的性質を理解するには、「応力」と「ひずみ」の概念が必要です。
応力は物体内部の圧力を、ひずみは変形の度合いを示すもので、これらの関係が地盤の変形や破壊の挙動を示します。

「圧密」とは、軟弱な地盤の上に荷重が加わると、時間と共に地盤が沈下していく現象を指します。
この現象は、テルツギの圧縮理論によって説明されることが多いです。
テルツギの圧縮理論は、透水や土の圧縮応力に対する変形、有効応力という三つの要素を組み合わせて圧密現象を解析します。

さらに、地盤の破壊について考えると、地盤材料は特定の平面、すなわち「すべり面」に沿って破壊が進行します。
このすべり面に沿った破壊現象は、摩擦の法則を用いて説明することができます。

建築物やインフラを安全に建設するためには、地盤や土の性質を正確に理解し、その上で設計を行う必要があります。ここで、「土圧」という概念が重要となります。
土圧は、建築物や構造物が受ける土の圧力を意味します。
この土圧を計算するための理論として「クローンの土圧理論」と「ランキンの土圧理論」が知られています。

最後に、建築物を建てる際の敷地の安全性について考えると、「支持力」と「沈下」が主要な要因として挙げられます。
特に沈下の中でも、不均等な沈下、すなわち「不同沈下」は建築物に大きな影響を及ぼす可能性があります。

不同沈下は、適切な地盤調査により予測し、その上で適切な対策を講じることで防ぐことができます。
以上のように、建築と地盤の関係は非常に深いものがあり、それぞれの特性や性質をしっかりと理解することが、安全で持続可能な建築を実現するための鍵となります。

地盤調査

地盤調査は、土地の安全性や建築可能性を確認するための重要な工程となっています。
これは、建物や構造物の安全性を担保するために不可欠な作業です。
特に地震国日本において、地盤の状態が建築物の耐震性に大きく影響するため、適切な調査と選定が求められます。

事前調査(予備調査)

この段階では、具体的な地質や地盤の詳細を調査する前の下準備が行われます。

a. 資料調査(ペーパーロケーション)

これは、現地調査を行う前に、既存の資料や情報をもとに土地の歴史や特性を把握する工程です。例えば「地形図」は、地域の地形や地盤の概略を知るための基礎情報として利用されます。一方、旧版地形図や航空写真は、土地の変遷や歴史的背景を理解するのに役立ちます。

b. 現地踏査(現地ロケーション)

この段階で、専門家が直接現地を訪れて、地盤や土地の実態を視察します。ここで得られる情報は、資料調査だけでは得られない実地の情報となるため、非常に価値があります。

現地調査(本調査)

現地踏査の結果を元に、より詳細な地盤の調査が行われます。

a. 概略調査

一般的な地盤の特性や土地の特徴を調査します。

b. 本調査

詳細な地盤調査が行われ、特定の地点での土の種類や密度、水分量などが調査されます。

c. 追加調査

必要に応じて、さらに詳しい調査が行われることがあります。
地盤調査の結果、地すべり地や膨張性のある土地など、建築に適さない土地の特性が明らかになることがあります。
このような場合、地盤補強や基礎の変更など、建築方法の変更が必要となることが考えられます。
特に、日本は地震が多いため、地盤の安定性は非常に重要です。地盤調査により、地震の際の揺れやすさや、土地の安定性を予測することができます。

最後に、地盤調査は建築を始める前の非常に重要なステップです。
安全で快適な住環境を実現するために、地盤調査の結果をもとに適切な基礎や構造を選定することが不可欠です。

現地調査における地盤の評価は、建築物や土木構造物の安全性や持続可能性を確保するための重要なプロセスです。
本稿では、現地調査の詳細について深く探ることで、その方法、意義、そして技術的な側面について解説します。

現地調査の目的と内容

現地調査の主な目的は、土地の地盤特性を詳しく知ることです。
具体的には、地盤の土層構成、土質状況や軟弱地盤の分布、さらには地下水の有無や流動経路などを明らかにすることです。
これらの情報は、建物の基礎設計や、地震や浸水のリスク評価などに役立ちます。

スウェーデン式サウンディング試験

スウェーデン式サウンディング試験は、地盤の貫入抵抗を計測する方法の一つです。
貫入抵抗は、土の硬さや締まり具合を示す指標となります。
この試験は、簡易で安価であり、多くの場所で広く採用されています。

試験の実施手順は以下の通り

スクリューポイント

これは、直径19mmのロッドの先端に取り付けられる、最大径33mmの先端部です。これが地盤に貫入される部分です。

貫入方法

地盤に対してスクリューポイントをねじ込みながら荷重および回転を加えて貫入させます。

計測

1m貫入するのに必要な半回転数(180度回転を1回と数える)をNswとして測定します。
ただし、この試験方法には以下のような問題点が存在します:

貫通困難

盛土に大きなレキやガラが含まれる場合、貫通が困難となり、盛土の下の地盤情報が得られないことがある。

試料取得困難

土の試料が直接取得できないため、詳しい土質の判定が難しい。

これらの問題を解決するための方法としては、レキやガラを貫通させるための各種打ち抜き方法や、貫入ロッドを引き抜く際にスクリューポイントに付着した土を詳しく調査するなどのアプローチが考えられます。

また、手動式の場合、操作者は回転させる際の感触やハンドルに伝わる音や振動を元に土質を推定することができます。
このように、粘性土、砂質土、礫質土といった異なる土質は、それぞれ固有の特性や反応を持っています。

スウェーデン式サウンディング試験機の操作注意点

自動試験装置を利用する際には、操作にあたっての注意が必要です。

載荷段階

原則として、貫入時の荷重は50Nから始める。ただし、調査目的に応じて荷重を500Nまで上げることも可能です。

回転速度

毎分50半回転を超えないように操作します。

性能検定

定期的に装置の性能検定を行い、常に正確なデータを取得できるようにメンテナンスします。

スクリューポイントの摩擦

使用中のスクリューポイントは摩擦により徐々に減少します。摩擦によって最大径が3mm以上減少した場合、そのスクリューポイントは使用不可となります。

計測値の利用

スウェーデン式サウンディング試験による計測値は、地盤の土質を評価するための基本的な指標となります。
これらの値をもとに、地盤の土質分類や支持力を算出します。

粘性土の場合

qu値を用いて、粘着力としてのC値に換算します。

砂質土の場合

N値に換算し、内部摩擦角φを推定します。
また、盛土の確認として、現地計測した結果が原地盤と異なる場合があります。
これは、人の手による土地の改変や盛土が行われていた結果である可能性が考えられます。
盛土の評価の際には、盛土の厚さや締まりの程度、均質性、そして盛土してからの経過時間を考慮する必要があります。

結論

スウェーデン式サウンディング試験は、地盤調査における基本的な手法の一つとして位置づけられています。
簡便でありながら、大まかな土質の情報を知る上で非常に役立つ方法と言えます。

ただし、詳細な土質の情報や特性を知るためには、この方法だけに頼るのではなく、他の試験方法や現地での試料採取も行うことが重要です。
地盤調査は、建築物やインフラの設計や施工前に行われる重要な工程であり、その地盤の特性や状態を詳しく知ることが目的です。

以下は、その詳細な内容について解説しています。

土の堆積条件による種類

土の堆積条件によって、大きく以下の3つのカテゴリに分類されます。

土の種類 説明
残積土 これは風化された岩石がその場所にそのまま残ったものです。一般的な例としては、「まさ土」が挙げられ、これは花崗岩質岩石が風化してできた残積土や崩積土です。特に、近畿、中国、四国地方に広く分布しています。
運積土 これは、さまざまな運搬作用、例えば風や水、氷、重力などによって、元々の場所から別の場所へと運ばれて堆積した土です。
崩積土 斜面などから土砂が崩れ落ちて堆積した土。
風積土 風によって運ばれた土。
堆積土 水の流れや湖、海などで堆積した土。
火山性堆積土 火山活動に伴う噴火や噴煙で飛散した火山灰や岩石が堆積したもの。例として、「しらす」が挙げられます。これは火山ガラスを主体とした白砂で、南九州一帯に堆積しています。
植積土 有機質土が主体のもので、例として「腐植土」があります。これは寒冷地に特に多く、セメント系固化材を混合しても固化しないことが多いため、注意が必要です。

さらに、特定の地域や条件下で形成される特殊な土として、「関東ローム」や「黒ぼく」があります。
関東ロームは関東地方に広く分布する火山灰質の粘性土であり、住宅建築に適していますが、盛土材としては不適切です。

黒ぼくはロームに比べて支持力性能が低いため、住宅建築には向かない特性を持っています。

標準貫入試験

地盤調査の方法として、標準貫入試験があります。
これは地盤の硬さを測定するための試験で、以下の手順で行われます。

重さが63.5(±0.5)kgのドライブハンマーを、76(±1)cmの高さから自由に落下させる。
ボーリングロッドの先端に取り付けた標準貫入試験用のサンプラーを地盤に30cm打ち込むのに要する打撃回数を記録します。これをN値と呼びます。
このN値が大きいと、土層が硬いと評価され、N値が小さいと、土層が柔らかいと解釈されます。また、N値を測定した深さの土質の試料が採取でき、このデータから基礎設計に必要な土質定数を推定することができます。

その他の地盤調査方法

標準貫入試験以外にも、さまざまな地盤調査の方法があります。

簡易動的コーン貫入試験

地盤の締まり具合や硬さを調べるための試験で、先端に円錐状のコーンをつけたロッドをハンマーの打撃によって地盤に打ち込む方法です。

オートマティックラムサウディング(SRS)試験

これは動的コーン貫入試験の一つであり、簡易動的コーン貫入試験のように地盤の締まり具合を測定します。

三成分コーン貫入試験

ロッドの先端についたコーンを地盤に静的に圧入し、コーンの先端抵抗、間隔水圧、周面摩擦の3つの要素を測定する方法です。これにより、地盤の詳細な特性や状態を知ることができます。

平板載荷試験

地盤の極限支持力や地盤反力係数を測定するための試験で、地盤の強さや変形の特性を直接的に測定することができます。

表面波探査

これは地盤の中に微小な振動を発生させ、その振動の伝播状態を計測することで、地盤の変性度や変性深さを評価する方法です。

電気探査

地下の電気的特性を測定することで、地下の構造や土質を推定する方法です。
地盤調査の結果を基に、建物の設計や施工方法、基礎の種類などが決められます。安全な建物を建設するためには、適切な地盤調査が不可欠です。

地盤の地耐力とは?

地盤調査は建築物の安全性を確保するための重要な工程です。
特に、地盤の地耐力が足りないと判定された場合、地盤の安定化や強化のための特別な対策が必要となります。

まず、地盤の「地耐力」とは何かを理解することが始まりです。地耐力とは、地盤が建築物の重さやその他の負荷に耐える能力のことを指します。この耐力が不足している場合、建築物が沈下するリスクが増大します。

地盤の改良・補強の方法

地盤の安定性や強度が不足している場合、以下の基本的なアプローチが考慮されます。

締固め

緩い土を機械的に圧縮し、密度を増大させること。これにより、土粒子間の距離が縮小し、土の粘着力(土粒子同士の結合力)や内部摩擦角(土粒子が互いに摩擦し合う力)が増大します。これは、土を盛り上げる「盛土」の際に特に重要で、十分に締固めが行われない場合、土の沈下が生じる恐れがあります。現場でのこの作業は「転圧」として知られています。

置換

軟弱な土を取り除き、それを強い材料で置き換えること。この方法は、強度や支持力が不足している地盤を直接改善するためのものです。

固結

セメントやその他の固化剤を土と混合すること、または土を凍結させることにより、土の構造を強化します。

荷重分担

建築物の荷重を地盤に直接負担させるのではなく、特別な支柱や柱(杭)を使用して荷重を分散させる方法。これにより、負荷が集中するのを防ぎ、地盤の均一な沈下を促進します。

表層地盤改良

「表層地盤改良」という技術は、地表近くの軟弱な地盤を特定の深さ(例: 0.5m以上 2.0m以下)で改良するものです。
セメント系の固化剤と土を混合し、その後で転圧することにより、地盤の均一性を向上させ、不同沈下を防ぐことが目的です。

注意すべき点として、腐植土や高有機質土、さらにはpH値4以下の酸性土地盤など、特定の種類の土は、改良に際して必要な強度が得られないことがあるため、事前の試験や分析が必須です。

まとめ

地盤調査とその後の改良・補強は、建築物の安全性を確保するための極めて重要なステップです。
専門家の指導のもと、適切な手法を選択し、地盤の特性や状況を十分に考慮することが必要です。

柱状地盤改良

柱状地盤改良とは、特定の技術を用いて地盤の特性や機能を向上させるための方法の一つです。
これは、建築物やインフラの安全性を確保するための重要な工程です。以下、詳しく説明してまいります。

柱状地盤改良の手順

まず、セメント系の固化剤と水を混合し、攪拌(かくはん)してセメントスラリーという液状のものを作成します。
このスラリーを地中に特定の装置を用いて注入し、地盤内の土と混ぜ合わせて固化反応を起こさせます。
この反応により、土の中に柱状の改良体が形成され、地盤の支持力が向上します。

地盤改良の効果

地盤の支持力が向上することで、建物の不同沈下(一部分だけが沈下する現象)を防ぐことができます。不同沈下は、建物にひび割れや傾きを引き起こす原因となり得ます。

柱状地盤改良のポイント

地盤の土質や傾斜、その他の状況を正確に把握することが必要です。
特定の土質や条件下では、地盤改良が困難となる場合もあります。
改良時に使用する装置には、共回り現象を防ぐための特定の翼が付いています。

共回り現象とは、地盤内の土とセメントスラリーが適切に混合されず、同じ方向に回転してしまう現象です。
改良の際、適切な混合を実現するために、攪拌装置の回転数や攪拌翼の数などが重要となります。
一軸圧縮試験を行い、改良体の強度を確認することが重要です。これは、改良体がどれだけの力に耐えることができるかを示す指標となります。

小口径鋼管回転圧入

これは、鋼の管を地盤に回転させながら圧入する方法です。鋼管の先端部分の支持力や鋼管の周囲の摩擦力を利用して、建物の荷重を支えます。
この方法においても、土質や地盤の傾斜、その他の条件を正確に把握することが必要です。

戸建住宅の基本設計の手順

地盤の耐力、つまり地盤が持っている支持力に応じて、どのような基礎を選ぶべきかが決まります。
例えば、地耐力が30kN/m2以上の場合、布基礎という軽い基礎を使用できます。
支持地盤の深さに応じて、平面地盤補強や柱状地盤補強という方法を選択します。

以上のように、柱状地盤改良や小口径鋼管回転圧入は、建築物やインフラの安全性を確保するための重要な技術です。
土質や地盤の状態を正確に評価し、適切な手法を選択することで、長持ちする安全な建築物を実現することができます。

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住所
〒860-0088
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電話番号
096−200−9695

ファックス番号
096−200−9752

創業
2004年6月

保有資格
行政書士
宅地建物取引主任士
土地家屋調査士
ビル経営管理士
不動産コンサルティングマスター
マンション管理業務主任者
賃貸不動産経営管理士
2級土木施工管理技士
測量士
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