CHIOU / 株式会社地央

法務局での権利関係調査 ── 登記から何が読めるか

この記事の要点
  • 取るのは公図・登記事項証明書・地積測量図・建物図面の四つ。分かることがそれぞれ違う
  • 見落としが多いのは乙区の地役権。取得後に「通行させる義務がある」と分かっても遅い
  • 地積測量図はすべての土地にあるわけではない。ない場合、境界確定に時間と費用がかかる
  • 対象地だけでなく隣接地の登記も見る。将来そこに何が建つかで、物件の価値が変わる

物件の住所を渡されて、まず向かうのが法務局です。窓口で何を請求すればよいのか。取った書類のどこを見ればよいのか。

四種類の資料を取ることは分かっていても、それぞれ何が分かるのかを整理していないと、見るべき欄を見落とします。とくに乙区は、慣れないうちは読み飛ばしがちです。

この記事では、四つの資料で何が分かるのか、どこを見るのか、そして資料がない場合や特殊なケースへの対応までを扱います。境界の確定については、第8回で詳しく扱います。

四つの資料で、分かることが違う

資料 分かること 限界
公図 土地の位置、おおまかな形、隣接地との並び、道路・水路との接し方 精度が低い。面積や寸法の根拠にはならない
登記事項証明書 所有者、権利関係、地目、地積、移転の履歴 現況と一致しないことがある
地積測量図 面積、境界点の位置 すべての土地にあるわけではない
建物図面 建物の配置、各階の形状と床面積 増築が反映されていないことがある

地番が分からないときは、ブルーマップ

法務局では地番で請求します。住居表示では調べられません。「○○町一丁目2番3号」は住居表示、登記で使うのは地番です。

地番が分からない場合は、法務局に備え置かれているブルーマップ(住宅地図に地番を水色で重ねたもの)で確認します。課税明細書からも分かります。ここを取り違えると、まったく別の土地を調べることになります。

公図の読み方

公図には二種類あります。法第14条地図は測量に基づく精度の高いもの、地図に準ずる図面は明治期の公図を引き継いだもので精度が低くなります。どちらかは図面の表題部で分かります。

精度が低い場合、現地の形と大きく違うことがあります。公図は位置関係の把握までにとどめ、寸法の根拠には使わないでください。

細長い無地番の筆に注意

敷地と道路の間に、細長い無地番の筆が描かれていることがあります。これは法定外公共物、いわゆる赤道(里道)や青道(水路)です。かつては国有財産でしたが、現在は市町村が管理しています。

これが挟まっていると、道路に接していないと判断され、接道義務を満たさない場合があります。現地では舗装されて分からなくなっていることも多く、公図でしか気づけません。

登記事項証明書の読み方

証明書は三つの部分に分かれます。

表題部

土地なら所在・地番・地目・地積、建物なら所在・家屋番号・種類・構造・床面積。

地目が「田」「畑」であれば、農地法の対象になります。宅地に転用するには許可または届出が必要です。ただし逆も成り立ちます。地目が「宅地」でも、現に耕作されていれば農地法上の農地です。地目だけで判断せず、現況を確認してください。

甲区 ── 所有権

現在の所有者と、過去の移転の履歴が記録されます。差押えや仮処分もここに載ります。

見るべきは、所有者が誰かだけではありません。移転の原因と日付です。「相続」で移転していて日付が古い場合、その後さらに相続が発生している可能性があります。所有者が高齢で長く動きがない場合も同様です。

乙区 ── 所有権以外

抵当権、根抵当権、地役権、賃借権、地上権。ここが最も見落とされます。

地役権を見落とすと、取得後に使えない

地役権が設定されていれば、他人がその土地を通行したり、工作物を設置したりする権利があります。取得してから判明しても、消せません。

典型は通行地役権です。奥の土地の所有者が道路に出るために、手前の土地に設定しているもの。建物を建てる位置が制限され、駐車場としても使えなくなることがあります。乙区に記載があれば、その内容と範囲を必ず確認してください。

抵当権については、抹消の見込みを確認します。売主が完済していても、抹消登記がされていなければ権利は残ったままです。決済と同時に抹消する段取りになっているかを、早い段階で確かめます。

筆界特定の記載

「筆界特定」の記載がある場合、過去に境界をめぐる争いがあったことを意味します。筆界特定書を取得して、何が争われ、どう特定されたかを確認してください。

地積測量図がないとき

地積測量図は、分筆や地積更正の登記がされた土地にのみ備え付けられています。古くから区画が変わっていない土地には、そもそも存在しません。

ない場合の対応は三つです。

  • 隣接地の地積測量図を見る 隣地が分筆されていれば、その図面から対象地の外周が推定できることがあります
  • 閉鎖登記簿・旧所在で探す 市町村合併や地名変更があった場合、旧所在で作成されていることがあります
  • 測量を依頼する 現況測量と確定測量は別物です。確定測量は隣接地所有者の立会いを要し、時間がかかります

取引に境界の確定が必要かどうかは、早い段階で判断してください。確定測量は数週間から数か月を要します。決済日から逆算して間に合わないと分かった時点で、条件を組み直すことになります。

建物図面と現況の食い違い

実務でよく出るのは、次の三つです。

状態 意味すること
図面にない部分が建っている 未登記の増築。建蔽率・容積率の超過や、確認申請の有無を確認する必要がある
登記はあるが建物がない 滅失登記がされていない。課税台帳とも食い違うことが多い
建物の位置が図面と違う 建て替えの際に登記が更新されていない可能性

いずれも、取引の前に表示変更登記または滅失登記が必要になります。誰の負担で、いつまでに行うかを決めておく項目です。

隣接地も見る

対象地だけを調べて終わりにしないでください。隣接地に将来何が建つかで、物件の価値が変わります。

隣接地については、登記事項要約書で足ります。所有者と権利関係が分かれば十分です。見るのは次の点です。

  • 所有者が個人か法人か。不動産会社や建設会社の名義であれば、開発の可能性があります
  • 最近取得されていないか。取得原因が「売買」で日付が新しければ、何か動きがある可能性
  • 抵当権が設定されていないか。設定額が大きければ、事業用の資金かもしれません

用途地域と合わせて見ると、そこに何が建ちうるかの見当がつきます。南側の隣地が中高層住居専用地域なら、日照が失われる可能性があります。

特殊なケース

マンション ── 敷地権を見る

区分所有建物では、専有部分と敷地に対する権利がセットになっています。これを敷地権といいます。

確認するのは、敷地権の種類持分割合です。種類が「所有権」であれば土地を共有していますが、「借地権」であれば地代の支払い義務があります。借地権のマンションは、地代と更新の条件を必ず確認してください。売却時の価格にも影響します。

区画整理区域 ── 仮換地を見る

区画整理事業が行われている区域では、登記上の土地と、実際に使える土地の位置が違います。使えるのは「仮換地」として指定された土地です。

市役所の区画整理担当課で仮換地図を確認し、位置と面積、使用収益の開始時期を確認します。事業の進捗によっては、建築が制限されている期間があります。

閉鎖登記簿 ── 履歴をさかのぼる

分筆・合筆、地名変更、市町村合併があると、古い登記簿は閉鎖されます。現在の証明書には過去の経緯が載りません。

土地の来歴を確認する必要があるとき、地積測量図が旧所在でしか見つからないとき、過去の権利関係を追うときに請求します。

実務チェックリスト
  • 地番を特定した住居表示とは別。ブルーマップまたは課税明細で確認
  • 公図を取得し、位置・形・接道の状況を確認した寸法の根拠には使わない
  • 公図に細長い無地番の筆がないか確認した法定外公共物なら接道の判断に影響
  • 公図の種類を確認した法第14条地図か、地図に準ずる図面か
  • 表題部の地目を確認した田・畑なら農地法の対象。現況も要確認
  • 甲区で所有者と移転の原因・日付を確認した相続の日付が古ければ再相続の可能性
  • 乙区で地役権の有無を確認したあれば内容と範囲まで
  • 乙区で抵当権の抹消見込みを確認した
  • 筆界特定の記載がないか確認したあれば過去に境界の争いがある
  • 地積測量図の有無を確認したない場合、確定測量に数週間〜数か月
  • 建物図面と現況の食い違いを確認した未登記増築・滅失登記の未了
  • 隣接地の登記事項要約書を取得した所有者が法人なら開発の可能性
  • (マンション)敷地権の種類と持分を確認した所有権か借地権か
  • (区画整理区域)仮換地の位置・面積・使用収益開始時期を確認した

まとめ

  • 取るのは公図・登記事項証明書・地積測量図・建物図面の四つ。分かることも限界も違う。
  • 公図は位置関係の把握まで。細長い無地番の筆は法定外公共物で、接道の判断に影響する。
  • 乙区の地役権が最も見落とされる。取得後に判明しても消せない。
  • 地積測量図はすべての土地にあるわけではない。確定測量が必要なら早い段階で判断する。
  • 隣接地の登記も見る。所有者が法人であれば、そこに何か建つ可能性がある。
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