CHIOU / 株式会社地央

道路調査の実務 ── 種別・幅員・境界をどう確かめるか

この記事の要点
  • 道路は道路法と建築基準法の二つの体系で見る。調べる窓口も別
  • 私道の場合、権利関係が問題になる。通行承諾より、掘削承諾のほうが厄介
  • 官民境界が未確定だと、面積も建築計画も確定しない。確定には時間がかかる
  • 幅員は実測する。最も狭い箇所で測る。平均ではない

「前面道路は何ですか」と聞かれて、「市道です」と答える。これでは答えになっていません。

市道であることは道路法上の話であり、建築基準法上の道路かどうかは別の話です。さらに私道であれば、通行や掘削の権利が誰にあるのかという問題が加わります。

この記事では、道路をどの窓口でどう調べるのか、私道の場合に何が問題になるのか、そして官民境界の扱いまでを扱います。接道義務そのものは、第3回で扱いました。

道路は、二つの体系で見る

同じ一本の道について、性質の違う二つの見方があります。混同すると、回答を誤ります。

道路法 建築基準法
目的 道路を整備し、管理する 建物を安全に建てさせる
分類 国道・都道府県道・市町村道の認定路線/法定外公共物/私道 第42条各号に該当するかどうか
調べる窓口 道路管理課 建築指導課
分かること 誰が管理しているか、台帳上の幅員、境界の確定状況、掘削の可否 その敷地に建物が建てられるか
市道でも建築基準法上の道路とは限らない

市道として認定されていても、幅員が足りず建築基準法上の道路に当たらない場合があります。逆に、私道でも位置指定を受けていれば建築基準法上の道路です。

「市道だから大丈夫」は根拠になりません。建築の可否を左右するのは建築基準法上の判定です。必ず建築指導課で第42条の何号かを確認してください。

調べる順番

一 公図で、道路の筆を見る

敷地と道路の間に別の筆がないかを確認します。細長い無地番の筆があれば、法定外公共物(赤道・青道)の可能性があります。これが挟まっていると接道と認められない場合があるため、最初に見ます。

道路部分の筆に地番があれば、私道の可能性が高くなります。登記事項証明書を取れば所有者が分かります。

二 建築指導課で、種別を確認する

第42条の何号に当たるか。ここが調査の中心です。あわせて次を確認します。

  • 二項道路であれば、後退線の位置と後退距離
  • 反対側が水路や崖の場合の扱い
  • 位置指定道路であれば、指定の年月日と指定図
  • 条例による上乗せ(がけ条例、狭あい道路の整備条例など)

三 道路管理課で、管理と境界を確認する

  • 認定路線か 路線名と認定の年月日。認定路線図で確認します
  • 道路台帳の幅員 実測値と照らします
  • 官民境界の確定状況 確定していれば確定図を取得します
  • 掘削の可否 舗装の年数によって制限期間がある場合があります

四 現地で実測する

台帳の幅員と実測値は一致しないことがあります。実際に測ってください。

どこからどこまでを測るかで結論が変わるため、基準を決めて記録します。

  • 境界標(鋲・プレート)があれば、それを基準にする
  • 境界標がなければ、U字溝の外側を基準にする
  • 側溝を含むか含まないかを、記録に明記する
測る場所は「最も狭いところ」

道路の幅は一様ではありません。複数点で測り、最も狭い箇所の値を採用します。平均ではありません。一箇所でも4メートルに満たなければ、そこが効いてきます。

カーブしている場合は、直線部分で測ります。カーブの内側は実際より広く出ます。

私道のときに問題になること

私道に面した物件では、道路の性質より権利関係のほうが実務上の障害になります。

所有形態を確認する

形態 実務上の意味
単独所有 所有者一人と交渉すればよい。ただし関係が悪ければ動かない
共有 持分を持つ全員の同意が要る場合がある。相続で共有者が増えていることも多い
分割所有(分筆型) 私道が細かく分筆され、各戸が自分の前の部分を所有している形。全員との調整が必要

通行承諾と掘削承諾

この二つは別物です。実務で厄介なのは、圧倒的に掘削承諾のほうです。

内容 必要になる場面
通行承諾 その私道を通ってよいという承諾 日常の通行、車両の出入り
掘削承諾 私道を掘ってよいという承諾 上下水道・ガスの引込み、老朽管の更新、建て替え時の再引込み
掘削承諾が取れず、工事ができない

建て替えや水道管の更新には、私道を掘る必要があります。共有者全員の承諾を求められることがあり、一人でも反対すれば工事ができません。

共有者が相続で増えていたり、所在が分からなくなっていたりすると、承諾を集めること自体が難しくなります。調査の段階で、承諾書が既に取得されているかを確認してください。過去に取得された承諾書が引き継がれている場合もあります。

維持管理の取り決め

舗装の補修、側溝の清掃、街灯の電気代。誰がどう負担するかの取り決めがあるかを確認します。取り決めがないまま長年経過している私道では、修繕が必要になったときに揉めます。

官民境界

官民境界とは、道路(官)と民有地(民)の境目です。ここが確定していないと、敷地の面積も、建物を建てられる範囲も確定しません。

確定しているかを確認する

道路管理課で、境界の確定状況を確認します。確定していれば「境界確定図」または「道路査定図」が保管されているので、写しを取得します。

現地では、道路境界を示す鋲やプレートを探します。「○○市道路境界」などと刻まれています。

確定していない場合

境界確定の手続きが必要になることがあります。申請を受けて職員が現地で立会い、隣接地の所有者とも確認したうえで境界を定めるという流れです。

関係者が多い場合、数か月を要します。取引に確定が必要かどうかは、早い段階で判断してください。決済日から逆算して間に合わないと分かってから動くと、条件を組み直すことになります。

敷地と道路の高低差

道路より敷地が低い場合、雨水が流れ込みます。盛土で対処することになりますが、その分の造成費がかかります。また、盛土の規模によっては宅地造成及び特定盛土等規制法の許可が必要になることがあります。

逆に敷地が高い場合は、擁壁の状態を確認します。既存擁壁が現行基準に適合していない場合、建て替え時に造り替えが必要になることがあります。これは数百万円規模の費用になります。

実務チェックリスト
  • 公図で、敷地と道路の間に別の筆がないか確認した法定外公共物なら接道の判断に影響
  • 道路部分の筆に地番があるか確認したあれば私道の可能性。所有者を確認
  • 建築指導課で第42条の号を確認したここが調査の中心
  • 二項道路の場合、後退線の位置と後退距離を確認した
  • 反対側が水路・崖でないか確認した該当すれば後退の負担が片側に寄る
  • 条例による上乗せの有無を確認したがけ条例・狭あい道路の整備条例など
  • 道路管理課で認定の有無と台帳幅員を確認した
  • 官民境界の確定状況を確認した確定図の有無。未確定なら数か月を要する
  • 掘削の制限期間がないか確認した舗装後の年数による
  • 現地で幅員を複数点で実測した最も狭い箇所を採用。側溝を含むかを記録
  • (私道)所有形態を確認した単独/共有/分割所有
  • (私道)通行承諾の有無を確認した
  • (私道)掘削承諾の有無を確認した取れないと工事ができない
  • (私道)維持管理の取り決めの有無を確認した
  • 道路と敷地の高低差を確認した擁壁がある場合は状態も

まとめ

  • 道路は道路法と建築基準法の二つの体系で見る。窓口も道路管理課と建築指導課に分かれる。
  • 市道でも建築基準法上の道路とは限らない。建築の可否を決めるのは第42条の判定。
  • 私道では権利関係が障害になる。とくに掘削承諾は、取れないと工事そのものができない。
  • 官民境界が未確定なら、確定に数か月かかることがある。早い段階で要否を判断する。
  • 幅員は複数点で実測し、最も狭い箇所を採用する。平均ではない。
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