道路の調査
何のために「道路」を調べるのか?
それは、「この敷地に、建物を建てることができるのか」あるいは、既に建築物がある場合は、「この敷地に再建築することができるのか」を確認するために、道路の調査を行います。
調査の際のポイントは、「道路法上の道路」と「建築基準法上の道路」を整理して確認するということです。
調査を行う市町村役場の窓口も違います。「道路法上の道路」は、道路管理課、路政課等で調査します。「建築基準法上の道路」については、建築指導課等で調査します。
道路法上の道路の調査
- 市道認定されているかどうか
- 市道の認定幅員
- 道路の名称
現況図、道路台帳など備え付けられていることもあるので、確認しましょう。
官民境界の調査
官民境界とは、道路(官)と敷地(民)との境目(境界)のことです。
道路管理課等とは、違う課が窓口となっていることもあります。
「立会記録」あるいは「道路境界査定記録」と呼ばれています。
記録があるかどうか。官民境界は確定しているかどうか。を調査します。
記録があれば、写しをもらいましょう。
官民境界が確定していると主張するためには、道路の対向の敷地の官民境界も確定していなければいけない場合もあります。
これは、行政によって対応が異なるので、確認しておきましょう。
境界が確定した日付も重要です。
現地と比較してみましょう。
境界標など注意して現地調査します。幅員もメジャー等で測っておきましょう。
ブロック塀や側溝(U字溝等)も注意して確認します。
違いがあれば、その原因を探らなければなりません。
どちらか(道路か敷地か)が越境している場合もあります。
測量図の確認
上記の官民境界の記録の他に、測量図が法務局に備え付けてある場合があります。
その測量図も確認しておきましょう。
敷地形状はもちろんのこと、道路についてはどのように記載されているかを確認します。
建築基準法上の道路の調査
建築基準法第43条の定めにより、建築物の敷地は道路に2m以上接していなくてはなりません。
これを「接道義務」と言います。
接道義務を考えるとき、勘違いしてはいけない点は、ここで言う道路が「建築基準法上の道路」であるという点です。
「この敷地は登記上の公衆用道路に7mも接しているから、接道義務は大丈夫!」と簡単に考えていると、いざ確認申請という時に「この道路は基準法上の道路ではなく、接道を満たしていません。」と言われることになるかもしれません。
道路を規定する法律や政令は、道路法、道路交通法、道路運送法、道路構造令など様々ありますが、それぞれにおいて対象となる道路の規定が異なります。
しかし、不動産に関する内容として出てくる「道路」は基本的には「建築基準法上の道路」と考えてよいでしょう。
では、この「建築基準法上の道路」とはどのようなものでしょうか。
これは建築基準法第42条に定められている道路のことを指しています。
以下で、43条の定める道路について、1つ1つ解説していきます。
すべての道路に関して、幅員が4m以上であることが条件となります。
1項1号道路
道路法による道路
国道、都道府県道、市区町村道。ただし、上記の道路認定がされていても、登記上の権利が個人等に帰属する場合もあり、注意が必要です。
1項2号道路
都市計画法等の法律に基づく道路
ここで言う「等」とは、都市計画法の他に、土地区画整理法、都市再開発法、新都市基盤整備報、大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法、密集市街地整備法があります。1項2号道路の例としては、都市計画法の開発許可を受けて築造された道路などがこれに該当します。
1項3号道路
法の規定が適用された際に現に存在していた道路
基準時(法の適用となった日)に現に存在していた道路となります。道路の形態が有ること、通行の用に供されていること、建築の立ち並びが有ること、などの監督行政庁ごとの基準がありますので、確認が必要となります。
1項4号道路
一定の法律に基づき、新設・変更の事業計画がある道路(予定地)
一定の法律とは、道路法、都市計画法、土地区画整理法、都市再開発法、新都市基盤整備法、大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法、密集市街地整備法になります。また、二年以内にその事業が執行される予定のものとして特定行政庁が指定したものに限られます。
1項5号道路
土地を建築物の敷地として利用するために指定を受けた道路(通称:位置指定道路)
宅地開発などの「土地を建築物の敷地として利用するため」に築造される道路で、特定行政庁から位置の指定を受けたものがこれにあたります。よって、基本的には私道になりますが、政令で定める基準に適合している必要があります。
以上の5種類が1項道路です。これらは全て4m(一部6m)以上の道路となります。
2項道路 (通称:みなし道路)
法の規定が適用された際に現に存在していた幅員4m未満の道路
基準時(法の適用となった日)に現に存在し、建築物の立ち並んでいる幅員4m未満の道路のうち、特定行政庁が指定したものになります。
この道路を接道に建築を行う場合、道路の中心線から水平距離で2m(一部3m)の後退(セットバック)が必要となり、後退した線が道路境界線となります。
よって、後退により道路の範囲内となった部分に関しては、建築物はもちろん、塀などの構築物の建築も出来なくなりますので、注意が必要です。また、片側が水路などで後退が出来ない場合は、一方後退となり、水路との境界線から4m(一部6m)の後退が必要となります。
2項道路を接道とする際は、後退が必要になりますので、建築プランに注意が必要です。
建築指導課等に行き、「建築基準法上の道路」なのかどうかを確認します。
現況で、道路幅員が4m未満の場合は、特に注意が必要です。
4m未満の建築基準法上の道路(みなし道路、2項道路とよばれている)である場合は、セットバック(中心後退)をする必要があるからです。
セットバックするということは、自分の敷地が狭くなると言う訳ではないのですが、そのセットバックした部分には建築物等の築造はできないため、実質土地利用に制限がかかるということになります。
道路に関する現地調査
不動産調査の中で最も重要であるのが「現地調査」です。
特に道路に関する現地調査は、重要です。
「現地を見るだけで誰にでもできる簡単な調査でしょ?」などと思われがちですが、ポイントを押さえて、一通り全てを確認しておかないと、必要以上に何度も現地に行く羽目になってしまうかもしれません。
物件によっては、情報が一般には出ていない、機密性の高いものもあるでしょう。そのような物件の現地に何度も赴き、他の不動産業者さんなどに情報が出てしまう事は避けたいものです。
以下で、道路に関する現地調査のポイントをまとめます。
道路幅員
対象物件に接道する道路に関する調査を行います。基本的には土地売買は建物を建てる事が前提となっている場合が多いと思います。
この接道次第で、建築に対する条件が異なりますので、注意が必要です。
調査対象
- 道路に接する対象物件敷地の幅
- 接道する道路の幅員
接道義務により一般的には、「幅員4m以上の道路に、2m以上」接している必要があります。(例外あり)
道路の幅員により、建築できる建物の高さなどに制限が出てきます。また、道路が建築基準法上の道路かを判断する1つの材料にもなります。
幅員の測り方
コンクリート杭やプラスティック杭、金属プレート、鋲などが道路の端にあるか探してみましょう。
その杭やプレートに「十字」や「矢印」が記されています。
そこが、境界点です。
その境界点から、道路対向側の境界点を測ります。
これが、道路幅員です。
不動産の売買を行うときにトラブルになりやすいのが、境界線です。
売主と隣地地権者の主張が異なっている場合などもあり、円滑な売買の妨げとなる事があります。
なくなっている場合も多いですが、境界標(プレートや杭、鋲など)があれば、周辺すべてのものを確認しておきましょう。
写真を撮っておくと良いでしょう。
悪質な隣人は、都合の悪いものを撤去したり、都合の良い位置に動かしたりしまうかもしれません。ないと信じたいものですが、、
調査対象
- 境界の境(フェンスや生垣の位置など)
- 境界標
では、境界点がない場合はどうしたらよいのでしょうか?
その場合にU字溝がある時は、「U字溝の外側から道路対向側のU字溝の外側」を測ります。
U字溝には「暗渠」(蓋がかかっているもの)と「開渠」(蓋のかかってないもの)があります。
どちらの場合も、市役所の土木管理課等で、どの範囲が道路幅員(道路敷)であるかの確認が必要ですが、開渠である時は特に注意が必要です。
開渠の場合は、現実的に自動車の通行は不可能なため、道路幅員(道路敷)に含まれないことがあります。
敷地の後退(セットバック)状況の確認
杭やプレート、鋲などの境界点からブロック塀が後退(セットバック)している時は、その後退(セットバック)距離を測っておきましょう。
その後退(セットバック)距離が正しい後退(セットバック)距離なのかどうかを市役所の建築指導課等で確認します。
なかには、後退(セットバック)距離が足りてない場合や、必要以上に後退(セットバック)している場合などあるので、必ず確認した方が良いでしょう。
敷地形状
敷地の形状は不動産の価値に大きな影響を与えます。
「地形(じがた)が良い、悪い」と言われ、一般的には整形の土地は価値が高くなり、不整形や歪な形のものは価値が低くなります。
実際の現地で、対象物件がどのような形状であるかを確認する事は重要です。また、土地の起伏がないかどうか、法面(斜面)や擁壁がないか、あるのであれば、その高さや大きさはどの程度のものかを把握しておきましょう。
調査対象
- 敷地形状
- 隣地(隣接道路)との高低差
- 擁壁、法面
崖扱いとなり、建築ができなくなる事もあり、注意が必要です。
越境物
越境物の確認も重要な要素です。これは、現地でしか把握する事が出来ませんので、必ず確認しましょう。
越境物だからといって、勝手に排除できるものでもありません。
軽微な越境(軒が1cmだけ、など)であれば大きな影響はないことが大半ですが、人によってはとても気にする点となることもあり、把握出来ていない事で後々大きな問題になることもあります。
建物であれば「建替、改修時には撤去する旨の覚書」を結んでおく等の対策が考えられます。
また、樹木などであれば、撤去が比較的容易に可能なものであれば、排除するようにしておきましょう。
調査対象
- 隣地からの越境物(建物の一部、樹木など)
- 空中の越境物(主に電線、高圧線には特に注意)
- 地中の越境物(隣地の排水管など)
一部、現地調査だけではわからないこともありますが。
ライフライン
ライフラインは、役所等でも調査を行いますが、役所等の記録が現地と異なる場合もありますので、現地での確認も必要です。
対象物件に上下水、電気、ガスのライフラインを供給することが可能か、という点がポイントとなりますが、「開発が必要」など物件によっては雨水排水の確保、消防水利の確保などの要素も加わります。
調査対象
- 上水道の引き込みの有無
- 上水の引き込みの位置
- 敷地内の汚水桝の有無、浄化槽の有無
- 最寄りの下水マンホールの位置
引き込みがある場合、四角い形の蓋(止水栓)があると思われます。
道路から直接引き込まれているかを確認する必要が有ります。隣地を通って引き込まれていることもあり、補修・交換等に隣地の地権者の承諾が必要となる場合があります。
汚水桝は丸い形の蓋になっていることが大半です。
以上の点に意識を配りながら物件の現地調査を行うことで、事前に物件に関してのリスクを把握することが可能となるでしょう。
自分なりのチェックリストを作るなどの事前準備をして、効果的な現地調査をおこないましょう。
舗装状況の調査
なぜ舗装状況を確認しなければならないか。
それは、工事費に影響するからです。
上下水道、ガス等の引き込み工事などの際の掘削工事で舗装状況によって工事費が左右されるのです。
舗装の種類には、自然舗装、砂利舗装、簡易舗装、アスファルト舗装、コンクリート舗装、があります。
位置指定道路
位置指定道路とは、建築基準法42条第1項第5号に該当する「私道」です。
建築指導課等に図面等が備え付けられているので入手します。
道路の形状、幅員、奥行、隅切り、排水設備等を調査します。