現地調査
この世に2つと同じ不動産がないように、何一つ欠点もないという不動産も存在しません。
利回りや立地条件だけに目を奪われて、投資判断をした結果、後々ににっちもさっちもいかない事態に陥らないよう、十分に物件の調査をすることが大事です。
不動産投資で重要なこと。
それは、出口まで見据えた投資戦略を持つこと。
買ったときに、利益は確定するのです。
欠陥のある物件はとうぜん高く売ることができません。
重大な欠陥があるときは、売ることさえできないかもしれません。
それだけ購入前の物件調査は重要なのです。
逆に言えば、価格交渉の材料となりうるのです。
地盤が弱かったりしたら、改良するだけの費用を売買価格から減額してもらうとか、隣接地との境界トラブル(越境や境界杭の損失など)があれば、その瑕疵を取り除くための費用の減額などを要求することも可能となってきます。
物件調査の最終目的とは?
物件調査の最終目的は、建物の建替えが可能かどうかです。
アパートやマンションであっても同様です。その今、建っているアパートやマンションと同じ規模の建物を建てることができるか。
そのような観点から物件調査を進めていきます。
「今、この建物が建っているのだから、将来も同じような建物が建てられるはず」と思いがちですが、それがそうとも言い切れません。
法律は年々変わっています。いままでよしとされていたものが、今後建て替えるときはダメ、なんてことは良くあることです。(こういうのを既存不適格建築物といいます)
不動産屋さんのいいなりにならないこと
不動産投資案件は、なんといっても不動産屋さんが一番持っていると言ってよいでしょう。
いくつもの投資案件を扱っている不動産屋さんは、はたしてその案件のことをきちんと正確に理解しているのでしょうか?
確かに、不動産業を生業としているという意味においては、不動産のプロでしょう。
ただし、その投資案件に対してどれだけ精査しているかを見極めなければいけません。
とくに大手の不動産業者などは、現地を見たこともない案件を紙の上だけでまわすこともあります。
現地を見なければわからない欠陥は、紙の上だけでは見抜けません。
だからこそ、物件は自分で調査すべきなのです。
自分で調査しないまでも、不動産のことを理解し、不動産屋さんに確認できるようになることです。
不動産屋さんにきちんと調査してもらうという作戦です。
そもそもが、不動産で商売しているのですから当たり前だとは思うのですが。
現地調査
不動産を調査する上で『現地調査』が何よりも大切です。
それは、なぜでしょうか?
現地に「すべて」があるからです。
雰囲気でしかわからないものがあります。
そういうものは、現地で五感をフルに使ってでしか、感じることはできません。
土木や建築の技術的な部分、許認可などの法律的な部分、マーケティングなどのソフトな部分、が重要であることは疑いようもないことです。
ただ、最終的なところ、ギリギリのところで判断をしなければならない時、その時の答えは現地にしかありません。
これらは、感覚的なものなので言葉で説明することはできません。。。
ので、その他の技術的な部分をこれから見ていきましょう。
現地を調査する項目、ポイントは、
- 道路
- 排水
- 敷地の利用状と
などです。
現地調査をする時は、
- デジカメ(スマホ)
- 7.5mのスチールメジャー
- 現地調査チェックリスト(メモ用紙)
を必需品として持っていきます。
デジカメ(スマホ)はいうまでもなく、現地を撮影します。
後で写真を見返して、現地の全体がわかるように、すべてのアングルから工夫して撮影しましょう。
デジカメは、便利であるがゆえに何も考えもなしにやたらととりすぎると(お金もかからないから、あれもこれもと撮りたくなっちゃいますよね)後から見返した時に、何が何だかわからなくなる時があります。
- 撮る順番、箇所を決める
- 紙などにメモして、画像と現地が一致するようにする
こんなふうに自分なりに決まりごとを作っておくといいかもしれません。
そして、きちんと管理すること。
いつでも、すぐに取り出せて確認できることが重要です。
7.5mのスチールメジャーは、道路幅員を測る時に使用します。
また、地盤面の高低差を測る時にも使用します。
現地調査チェックリスト(メモ用紙)とは、文字通り現地を調査してチェックリストにチェックしメモするものです。
チェックする項目
接道状況 | 幅員 ⚪︎⚪︎m |
---|---|
舗装状況 | コンクリート/アスファルト/砂利敷/未舗装 |
排水溝 | U字溝/その他 |
擁壁 | 間地ブロック/ブロック/コンクリート |
崖 | なし/有り(高さ m) |
水道 | 公営水道/個別井戸/集中井戸/共同井戸(水栓番号 ) |
下水道 | 本下水/個別浄化槽/集中浄化槽/簡易水洗/汲み取り |
ガス | 都市ガス/個別プロパン/集中プロパン(企業名 ) |
越境 | 電柱(電柱番号 )/電線/高圧線/樹木/建築物/その他( ) |
嫌悪施設 | 墓地/工場/家畜牧場/産廃処分場/その他( ) |
水害の形跡 | なし/有り( ) |
道路の現地調査
不動産を理解する上で、道路に関する知識は非常に重要です。建物を建てるとき、道路は基本的に4mの幅員が必要です。
なぜ、4mかというと火災などの際の消火活動からの要請なんですね。消防車が無理なく通行できるように、と。
実際にはメージャーで道路の幅員を測るわけですが、どこが道路の境界かを判断することが重要になってきます。まずは、境界を示す、杭、プレート、鋲を探しましょう。
境界標がない場合、U字溝があればU字溝の外側の側端から対向の外側の側端までを測ります。
基本的にU字溝は道路部分に含まれます。
境界標(杭、鋲、プレートなど)があれば、境界標から境界標までを図ります。
境界標があり、明らかに敷地が後退している場合は、その後退している部分を測っておきましょう。この後退距離は、建築基準法上、重要なポイントとなってきます。後ほどの市役所調査で必要となるものです。
4m未満の場合、通常は、道路の中心線から2mずつお互い後退すれば、建物を建てることができるようになります。これを「中心後退」または「セットバック」と呼びます。例外的に対抗が水路や河川等だったりすると一方的に4m後退しなければならないときもあります。(これを一方後退といいます)
4mあれば、どんな地域でも建物が建てられるのか?というとそうでもありません。区画整理地域などでは、区画整理で定められた幅員の確保が求められたりします。この辺りは、現地での現況幅員を踏まえ役所等で調査する以外ありません。
いずれにしても接道する道路幅員が、4mあるか、ないか。
これが、最重要にして最大のポイントとなります。
道路幅員は2カ所測りましょう
敷地の端と端の2カ所を測りましょう。敷地が不成形の場合は、そのポイントごとに測ります。最低でも2カ所ということですね。
見た目で、幅員が変わらない要に見えたとしても、坂道や工作物なので目の錯覚を起こしている場合があるからです。こればかりは場数を踏んでも目の錯覚はおこるようでして・・・私などはもう何物件も現地調査をしてきたにもかかわらず、目の錯覚を起こします。汗
道路の舗装状況・勾配状況
舗装状況も確認しておきましょう。舗装状況などはまさに現地で確認するのが一番です。
- コンクリート舗装
- アスファルト舗装
- 簡易舗装
- 砂利舗装
- 未舗装
なぜ、舗装状況などを確認するのか?
舗装によって工事代が変わってくるのです。上下水道管やガス管などの掘削工事を行うとき、コンクリート舗装が一番高くつきます。
舗装が痛んでない場合、まだ工事したばかりだと推測できます。
こんな時、道路管理者(都道府県)は、一定期間は道路の掘削を禁止したり、条件がついたりする場合があります。住宅の建設の際には、上下水道などのライフラインは必要不可欠であり、禁止できるようなものでもないことから⚪︎⚪︎mの全面舗装などの条件で掘削を許可することが多いのが現状です。
舗装がきれいだったら、市役所の道路を管理する課(道路管理課等)で確認しましょう。ビル建設や、開発許可の場合、許可されないことも十分あり得るので注意が必要です。
道路に接する敷地部分の長さ
建築物を建築するには、道路に接する敷地部分の長さは、「2m」必要です。
2m以下の場合、十分で慎重な調査が必要になります。
例えば、ブロック塀を含めれば、2mあるといったような場合。
そのブロック塀は、だれの所有物なのかが問題となります。
現地をメジャーで測った時、1.97mとか1.98mとは、悩ましい時があります。そんな時は、メジャーを伸ばした状態で遠景と近景の写真に撮っておきます。近景では、数値がわかるように撮っておき、後ほど市役所調査の時に建築指導課等で確認します。
排水
U字溝
︎U字溝は、道路からの雨水の排水のために設置されています。
前面道路にU字溝があるかどうか確認しましょう。
そのU字溝に蓋がしてあるかどうも確認します。
蓋がある場合は、「暗渠」ない場合は「開渠」といいます。
U字溝が破損していないか、溝に泥などが詰まっていないか、見ておきましょう。
よく見かけるのは、断面が20㎝〜30㎝×20㎝〜30㎝。
このくらいの大きさであれば、原則的に道路幅員に含まれます。
問題は、水路形式になっている場合、しかも開渠の場合です。このような場合、道路幅員に含まれない場合があります。その水路をまたいで敷地内から道路へと行き来するためには、「占用許可」というものが必要になってきますので、道路幅員に含むのか、含まないのか、しっかりと調査しましょう。
汚水を排水するための処理施設がない地域では各住宅の敷地内の個別浄化槽から浄化された排水を前面道路のU字溝に放流しているところを許可している場合もあります。
その場合には、きちんとU字溝が機能していることが前提となっています。
本下水
下水道のマンホールを現地で確認することができれば、ほぼ下水道整備が済んでいると考えてよいでしょう。
現地で確認した上で、市役所の下水道を管理する課で下水道配管図をもらって詳細を調査します。
マンホールに、「汚水」や「雨水」と書かれていることが多いです。
また、市区町村のマークが入っているかどうか、確認しましょう。
市区町村のマークが入っていれば、行政の管理する下水道ということですが、マークがない場合は注意が必要です。周辺地域で費用を出し合い、管理している私設管の可能性があります。
接続するためには、いくら費用が必要なのか、どんな手続きが必要なのか、を地元自治会や町内会などにまずヒアリングしていきます。
宅地内のマンホール
下水道区域内であり、前面道路に下水道のマンホールがあれば、原則として一宅地にひとつの下水道枡があるものです。
もし、敷地内に枡がない場合、市役所に尋ねましょう。
忘れられている可能性大です。
忘れられているのだとしたら、工事を無料でしてくれます。
浄化槽
前面道路にもマンホールがあるし、敷地内にも下水道の枡がある。
「これは本下水だな」と思うのは、仕方がないことかもしれません。
しかし、そうでない場合があります。
敷地内に下水道枡がたちあげてあっても、それを使用しておらず、個別浄化槽をそのまま使っている家もあるのです。
建物の周囲を観察することです。
個別浄化槽を使用している場合、浄化槽ポンプがあります。
ポンプが作動しているかどうか、音を聞いてみたり、手で触ったりして確かめてみましょう。
個別浄化槽
一般の住宅では、個別浄化槽(単独浄化槽、合併浄化槽)が使用されています。
単独浄化槽とは、トイレの汚水だけを処理するだけのもの。
合併浄化槽は、トイレの他にキッチンと風呂も加えた3カ所をまとめて浄化、処理するもの。
合併浄化槽でないと建築許可が下りない地域が多くなってきています。
単独浄化槽でいいのか、合併浄化槽でないとダメなのか市役所で調査しましょう。
担当は、地域によってまちまちです。
建築課であったり、道路管理課だったりします。
排水先によっては、浄化槽許可が出ない場合もあります。
排水先の河川が澱んでいるよう場合は建築確認が出ない時があります。
また、U字溝が、破損していたり、砂などが堆積していたりしている場合も同様、建築確認がでない場合があります。
河川とU字溝の確認をしましょう。
敷地利用状況の調査
大きく分けて、3つの項目が挙げられます。
- 越境
- 周辺環境
- 建物利用状況
1 越境
隣接地に建っている建物自体やそのひさしなどがかかっている場合があります。
または、隣接地に植えている樹木などが敷地内に入り込んでいる場合もあります。
状況がわかるように(どこをどう越境しているのかどうかがわかるように)写真を撮り、敷地状況図にもメモしておきます。
隣接地の土地所有者と話し合いをしておきます。
他人が敷地を利用していないかも注意してみてみましょう。
通路をしている場合はもちろん、上空にも目を配り、電線等が横切っていないか確認しておきましょう。
電線が横切っている場合、あるいは電柱そのものが敷地内にある場合などは、管轄の電力会社との話し合いになります。
2 周辺環境
注意して見るべきポイント
・がけ ・農地 ・河川 ・処理場 ・山 ・高圧線 ・擁壁 ・周辺の匂い 等
マーケティングに必要なものとして、学校、病院、駅、スーパー、金融機関なども確認しておきましょう。
テレビの電波障害についても確認しておきましょう。周辺の建物にアンテナが設置されていない時は、電波障害がある可能性が大きいです。電波障害があるために有線テレビの配線を敷設していることが多いからです。
水害があったかどうか推測してみるポイント
ブロック塀や、建物の外壁にシミがないかをみてみましょう。
氾濫した河川の水などは泥の茶色いシミとなりますので、過去に水害があった場合になど、どのくらいの水位まで被害にあったのかが確認できます。
ハザードマップが地域ごとに作成されている場合が多いです。市役所で確認しておきましょう。
擁壁の見るべきポイント
たわみ、ゆがみ、欠損、亀裂、ひび割れ、水抜き穴、2段積み擁壁、擁壁の高さ 等
写真で記録し、市役所の建築の担当課に写真を見せて建築物の建築に問題はないか確認します。
3 建物利用状況
- 建物の保守状況(外壁、基礎、雨漏り跡、傾斜 等)
- 建物の付帯設備(電気、ガス、水道、井戸、排水施設)のチェック
風通しが悪い場合、カビが発生しやすいです。シロアリの有無も聞き取りしておくべきでしょう。