融資(ファイナンス)について
お金にまつわる知識は、仲介業者として、もしくは自らが不動産投資をする際に非常に役に立ちます。
仲介業者として、お客様にアドバイスできるということは、信頼感を得ることにつながります。
そしてお勧めしているのは、不動産会社を始めるとき(あるいは始めてからでも)、自らが不動産投資をして、家賃収入を得て、安定収入を得るべきなんじゃないだろうか、ということです。
せっかく、不動産業界の中に身を投じているのです。
そのほかの人より、情報の量が違います。
なにより、言ってしまえば、不動産とは情報がすべてなのです。
収益物件を購入するまでの大きな流れ
- 物件を探す
- 調査する
- 判断する
- 投資する
- 投資する・管理する
融資交渉
私の経験則から、おおよその必要な自己資金額は、
都市銀行 | 物件価格の~30%の自己資金 |
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地方銀行 | 物件価格の~20%の自己資金 |
ノンバンク系 | 物件価格の~10%の自己資金 |
あくまでも目安です。
融資交渉において大事なことは、「あなたが融資担当者だったら、果たして融資するだろうか」ということを常に意識しておくことです。
銀行にとってあなたに融資するということは投資と同じ意味を持つからです。
担保の設定されていない土地をすでに所有、もしくは現金で購入予定の場合には事業資金100%の融資が受けられる可能性は高いです。
融資は、担当者レベルではなく、直接決裁権限を持つ支店長や支店長代理クラスの人と交渉したほうがよいでしょう。
そのためにも日ごろから定期預金や積み立てなどで信用力をつけておくことが重要です。
私は、新しい銀行との接点を持つきっかけを探るとき、その銀行が今何を欲しがっているのか、を調べます。
預金が欲しかったり、投資信託を買ってほしかったり、融資先を探していたりしているものです。
そのタイミングを測って近づきます。
そしてこちらの事業内容をさりげなくアピールし、話がまとまりそうな感触(その銀行との相性なども含めて)がつかめたら、ある程度のお金をどーんと定期預金します。
この『どーん』が肝です。
おかげで「私はお金をもっていますよ。よいお客ですよ。信用できますよ。投資先として値打ちがありますよ」とアピールできるのです。
見せ金みたいな効果です(笑)
銀行は金持ちに貸したいのです。
こうしてできるだけ複数の金融機関と交渉し、より有利な条件を引き出しましょう。
実績のないうちは、信用不足分を金利に上乗せされることもあると思います。
これには、非常に悔しい思いをしました。
こればっかりは信用力をつける以外ありません。
また、他行が融資している物件は融資がしやすいです。
銀行内の融資稟議が書きやすいからです。
そもそも不動産投資になぜファイナンスの知識が必要なのか?
不動産投資は、ローンの力をうまく利用すれば、少ない自己資金でレバレッジをきかせることができます。
不動産の特性(リスク)をしっかり理解し、ファイナンスの知識を確実に身につけ、ローンの力をうまくコントロールできれば、成功により近づくことができます。
銀行が融資を判断するための基準として見ているのは、「どんな物件か?(担保は十分か?)」「収支はよいか?」と「誰に貸すのか?」というところです。
銀行によってどの評価を重視しているか、異なりますので、融資を申し込む金融機関を研究すると融資交渉は有利に進みますよ。
「どんな物件か?」を金融機関に伝えるためには、不動産売買契約書のコピー、物件の写真、謄本、測量図、位置図、を添付します。
もし、その物件の境界が確定しているなら、境界確定図。土地区画整理区域なら、換地図(仮換地図)。
開発区域なら、開発登録簿。
などなど必要に応じて、できるだけのものを添付します。
多いくらいのほうが融資担当者は喜びます。
彼らが稟議をあげるとき何が必要になるかわからないので。
「収支はよいか?」について金融機関に伝えるためには、なんといっても事業収支計画がいちばんです。
「事業収支計画」と書くと難しく聞こえるかもしれませんが、2つのお金の流れでしかありません。
入ってくるお金と出て行くお金、この、たった2つです。
事業計画作成
事業集計画を作成する際は、次の項目をチェックしましょう。
- 必要経費はすべて織込み済みか?
- 物件価格に占める建物割合はどうか?
- 建物の減価償却方法は適切か?
- 家賃の設定は妥当か?
- 家賃の上昇が見込まれていないか?
- 空室率は?
- 敷金礼金更新料は見込まれていないか?
- 元利均等返済と元金均等返済の違いによる利払いの違い、キャッシュフローの違いを理解しているか?
- 借入期間と固定金利、変動金利の選択は適切か?
- 税引前収入(キャッシュフロー)が一目でわかるか?
- 修繕維持費、管理費は妥当か?
他に必要に応じて添付するものとして、
- 管理会社から送られてきた最近の家賃収支報告書のコピー
- 物件の入居状況(入居者氏名、職業、家賃一覧等)のコピー
などがあります。
「誰に貸すのか?」について金融機関に伝えるために、
- 現在のローン残高と最近の収支(月額家賃収入、月額ローン支払い額)の一覧表
- 償還明細書(各ローン分全部)のコピー
- 確定申告をしているなら過去3年間の確定申告のコピー(添付書類含む)
- 過去3年間の納税証明書の原本、過去3年間の源泉徴収票のコピー
- 保険証のコピー
- 運転免許証のコピー
- 3か月以内に発行した住民票(家族全体のもの)の原本
- 3か月以内に発行した印鑑証明書の原本
- 自己資金確認資料(通帳・定期・株券など)のコピー
などなどです。
各金融機関によって提出を求められる書類は当然違ってきます。
重要なのは、情報をオープンにしてお金の流れを明確に見せること、金融機関が貸したくなるポイントを押さえること、です。
各金融機関の性格があります。
その性格に合わせたアピールを心がけましょう。
もっといえば、融資担当者の性格も違います。
融資担当者でも不動産が好きな人と、あまり興味がない人がいて、私はまずそこをチェックします。
融資担当者があまり不動産に興味がないのであればそこの銀行との取引はあまり力を入れません。私の場合。笑
金融機関ごとの融資の条件・金利・エリア
金融機関には、政府系の金融機関、民間の金融機関、その他の金融機関とあります。
それぞれの金融機関を研究するに越したことはないでしょう。
自己資金が少ないとき、おすすめなのが、その物件の地元の金融機関を当ってみることです。
地方銀行、信用金庫農協、労働金庫など。手間を惜しまず調べてみることです。
金融機関によって条件はまちまちです。
そのなかで購入価格100%というケースもありました。
金融機関の収益不動産評価法
大きく分けて2つあります。
積算評価 | 土地と建物の価格をだして合計するもの |
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収益評価 | その物件の家賃収入から割り出すもの |
2つの評価額のうち安いほうの価格を採用する場合と、これらの平均値を採用する場合があります。
景気や金融機関自身の方針で変わるようです。
これらの評価で算出した金額に7掛けしたものが実際の融資額となります。
金融機関の融資の種類
ローンにはいくつかの種類があるので、事前にローンの種類を理解し、どの融資を利用するか考えておきましょう。
住宅ローン | 金利が低く、借り入れ年数も長いのが特徴です。投資向けではないので不動産投資への融資は基本的にできません。50%以上自宅に使用すれば住宅ローンが使える場合がありますので事前に相談してみてもいいでしょう。 |
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アパートローン | 投資向けの融資メニュー。審査は早い。金利は住宅ローンと比べて高め。 |
事業ローン(プロパーローン) | 事業(中小企業、個人事業主)に対して、個別に融資の可否を判断していくタイプの融資 |
ローンには、良いローンと、悪いローンがあります。
良いローンとは収益を生む資産を買うためにする借金であり、悪いローンとは、消費するためのローンのことです。
ちなみに、ゆとりローン、というものは、詐欺のようなローンだと個人的に思っています。
元利均等返済と元金均等返済、変動金利と固定金利、のメリット、デメリット
元利均等返済
毎月元金と金利を合計し毎月の返済額が均等になる返済方式
メリット | 毎月の元利返済額が同じなので計画が立てやすい |
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デメリット | 返済初期の元金返済が少ないために金利負担が膨らみ結果、返済総額が多くなる |
元金均等返済
元金の返済は、一定で金利は元金の残債に対して支払う返済方式
メリット | 元金が毎月一定額減っていくため、毎月の返済額が徐々に減っていく |
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デメリット | 返済額が大きくなるため初期のキャッシュフローが悪くなってしまう |
変動金利
市中金利の変動に伴い、半年に一度金利を見直す借り方
メリット | 市中金利が下がったとき、それに連動して借入金利も下がる |
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デメリット | 市中金利が上昇した時は、それに連動して借入金利も上昇する |
固定金利
一定期間金利が固定される借り方
メリット | 金利変動のリスクを回避できる |
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デメリット | もし市中金利が下がったとしても、高い金利のまま借り続けなければならない |
銀行のことを知っておこう
銀行からお金を借りて、きちんと返済をしていれば、銀行にとってあなたは優良なお客様です。
取引量が増えてきて、接待OKな銀行ならば、接待なんてこともあるでしょう。
しかし一度信用を落とすと、さっきまで味方の立場にいたはずの銀行は、一転します。
信用を落とす、とは、いうまでもなく支払いが滞ることであり、どのように一転するかというと、銀行は回収屋となるのです。
不動産事業を行う上で必要不可欠で重要な良きパートナーであることは間違いありませんが、スキを見せてはいけません。
また、最初のうちは、融資がうまくいかない、なんてこともあると思います。
そんな時は、なぜ駄目だったかを聞きましょう。
転んで、ただで起き上がってはいけません。
良い条件で融資を受けられるよう、日々データを積み重ねていくのみです。
良い条件とは、少ない担保で、低い金利で借りること。
これに尽きます。
節税について
法人化したほうが節税対策になるとはどういうこと?
最初から法人で収益不動産を購入するのであれば、わざわざ法人化する必要もないでしょうが(新たに新設会社を設立してもOKです)、もしあなたが収益不動産を仲介し、個人のお客様が買主であった時、アドバイスできることとして、「法人化する」とは、具体的にどういうことなのかをみていきます。
- そもそもなぜ法人化するのかというと、法人のほうが税務的に有利だからです。
- さらに、法人化した場合、あらゆるものが経費化できます。
- ただし、個人から法人に名義を移す場合には、相当の対価を支払わなければならず、もし譲渡した個人に取得時価格との差額利益が出てしまうと譲渡所得として税金を支払わなくていはなりません。さらに買主側である法人も新たに不動産取得税や登録免許税などを支払わなければなりません。
- そこで、個人の建物を一括で借り上げる会社(家賃保証をする管理会社)を設立し、個人に対して相場の家賃の一定割合を保証することにして、実際の募集家賃と、保証家賃の差益を法人に移すという手法が考えられます。
- 不動産管理会社を設立し、個人の不動産及び資産管理っを行うという形で管理料を受け取る形も可能です。親族を会社の役員にして所得を分散し節税をはかります。
- ここで受け取る管理料の割合に注意が必要です。家賃20%なら大丈夫との考え方もあります。ただ、実務的には家賃保証の場合、募集家賃の15%から10%なので、15%くらいが無難ではないだろうかと思います。
- 管理料徴収方式の場合は、家賃保証というリスクを負っていない。そのため入出金管理、入退去業務程度だと、8%が上限かもしれません。
- 合資会社、合名会社、株式会社、いずれもできる業務については同じです。
- 具体的な法人化の方法をまとめると『会社を設立して賃貸物件を売却する』法人化、『管理委託方式』の法人化、『一括借り上げ方式』の法人化があげられます。
法人化による代表的なメリット
- 家族役員への給与支給ができる
- 退職金の損金算入
- 保険料も法人の損金算入が可能
- 所得分散が図れる
- 相続税対策に有効
- 法人役員は給与所得控除が受けられる