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建物管理

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建物管理を考えるとき、多くの人たちの頭にまず思い浮かぶのは、建物の具体的な形状、設備の有無、建物の美しさや外観といった「ハード」な側面だと思います。
このハードな側面は、まさに建物の「物理的な部分」とも言える要素です。
しかし、このハードな部分だけでは建物の管理は完結しません。

実は、運営管理の計画、経費や費用の計算、外部機関や関係者との調整といった、「ソフト」と呼ばれる面が非常に重要となってきます。
さて、この「ソフト」な部分について、より深く理解を深めてみましょう。

まず、建物のグレードという言葉があります。
これは何かと言うと、その建物がどれくらいの質を持っているのか、どのクラスに位置するのかを示す指標です。

ちょっと難しいかもしれませんが、例えば、レストランで星の数が多いほど良質であるとされるように、建物もそのグレードが高ければ高いほど質が良いとされます。
そして、このグレードは、単純に建物の場所やその設備の良さだけでなく、管理の質や方法、すなわち「ソフト」な部分によっても大きく変わってくるのです。

ソフト分野の建物管理業務

次に、ソフト分野の建物管理業務を詳しく見てみましょう。主に以下の5つの大きなカテゴリに分けられます。

01.企画立案業務

新しく建物を建てる際には、設計の初期段階から管理の観点での参加が非常に望まれます。初めから管理の考えを取り入れることで、後々の運営が効率的になり、コストも削減できます。具体的には、建物の安全性を高める工夫や、メンテナンスがしやすい設備の選定などが行われます。

02.コスト管理業務

建物の運営において、どれだけお金がかかるのか、どのように経費を節約できるのかというのは大変重要な問題です。この部分では、過去のデータを元に未来の経費を予測し、それに基づいて計画を立てます。

03.渉外業務

建物の運営には、行政などの外部機関とのやり取りが必要です。例えば、建築基準法や消防法といった法律に基づいて、必要な手続きや報告を行います。これらの手続きは、建物の安全を確保するためのもので、正確に行うことが求められます。

04.テナント管理業務

テナントというのは、建物を借りる人や企業のことを指します。彼らとの良好な関係は、建物の運営が円滑に進むために不可欠です。

05.事務・出納業務

こちらは、日常的な運営業務やお金の管理などを行う部分です。正確かつ迅速な作業が求められます。
さらに、「建物診断」という特別な業務があります。これは、建物の現在の状態や運営の状況をしっかりと評価・診断するものです。この診断を基に、建物の改善や改修の計画を立てることが可能になります。

最後に、建物の管理、特にその「ソフト」な面は、非常に複雑で多岐にわたります。しかし、それぞれの要素が適切に機能することで、建物の価値を最大限に引き出すことができます。そして、その結果、長期にわたる建物の運営を成功させることができるのです。

テナント管理業務

テナント管理は、物件所有者と賃貸借関係にあるテナントとの関係をスムーズに運用するための業務です。
主な目的は以下の通りです。

賃貸借契約・館内細則の確認・指導

賃貸借契約は、テナントと所有者間の法的な約束です。館内細則はその建物特有のルールや取り決めを示すもので、テナントが細則に従って適切に使用しているかを定期的に確認する必要があります。

テナントニーズの把握

時代や市場の変化に伴い、テナントのニーズも変わります。継続的なコミュニケーションを取りながら、ニーズを捉え、適切に応えることで長期的な良好な関係を築くことができます。

建物資産の保全

物件を長期にわたって適切な状態に保つためには、定期的なメンテナンスや修繕が必要です。テナント管理業務の中で、これらの調整やスケジュールの管理も行います。

主要なテナント管理業務項目

日常管理

テナントの日常的な要望や問題に対応する業務です。例えば、共用部分の照明が切れた際の対応や、駐車場のトラブルなど。

内装工事管理

テナントが自らのスペースで行う内装工事の進行管理や、許可取得のサポートなど。
テナント対応:テナントからの各種の依頼やクレームへの対応。例えば、騒音トラブルや設備の故障に関する問い合わせなど。

契約管理

賃貸契約の更新や終了、新規テナントとの契約締結などの業務です。契約は長期にわたることが多く、その間にテナントとの関係を維持し、様々な要望や交渉に対応することが求められます。

事務・出納業務

建物管理における事務・出納業務は、賃貸物件の運営を円滑に進めるための基盤となる業務です。具体的な業務内容は以下の通りです。
請求業務:賃料、共益費、専用部の電気料、水道料などの請求を行い、テナントからの支払いを確認する業務。定期的な請求はもちろん、変動がある場合の追加請求や修正も含まれます。

入金業務

テナントからの支払いを確認し、未収金がある場合はそのフォローアップを行う。未収金の管理は、賃料収入を安定させる上で非常に重要な業務となります。
その他、以下の業務も含まれます。
諸官庁への届出書類管理:建物の運営に関連する様々な届出や申請が必要となる場合があります。例えば、建築確認申請や消防署への設備変更の届け出など。

購買管理

建物の維持・管理に必要な資材やサービスの購入を管理する業務。例えば、清掃用具や設備の部品などの発注と在庫の管理。
各種報告書作成業務:物件の運営状況や財務状態を示す報告書の作成。これには、年次の決算報告や月次の運営報告などが含まれる。

保険付保業務

建物や設備の価値を保護するための保険の加入や更新、そして保険金請求の際の対応など。
事務・出納業務は、建物管理の基盤となる業務であるため、高度な知識や経験、そして緻密な業務遂行が求められます。

建物管理に関する法令

建物の適切な管理や運営には、多くの法律や条例が関わってきます。これらの法律は、建物の安全や利用者の利益を保護するため、また環境やエネルギー効率の向上を目指すために設けられています。
具体的な法律とその概要は以下の通りです。

建築物衛生法

通称「ビル管法」として知られるこの法律は、特に大規模な建築物の環境衛生の確保に関する事項を定めています。特定建築物として指定される建物の所有者は、環境衛生管理技術者を選任し、その情報を都道府県知事に届け出る義務があります。この法律の目的は、特に大規模な建築物の中で多くの人々が生活や業務を行う中で、快適かつ安全な環境を確保するためです。

消防法

この法律は、火災の予防や火災発生時の迅速な対応を目的としています。特に大規模な建築物や特定の用途で使用される建築物には、定められた基準を満たす設備の設置や防火管理者の選任などの義務があります。

電気事業法

この法律は、電気の安全と供給の安定を目的としています。建築物の適切な電気設備の設置や保守、使用方法に関する基準や義務が定められています。

建築基準法

建築物の安全や機能を確保するための基準が定められている法律です。建築物の敷地や構造、設備に関する詳細な基準が定められており、新しい建築物を建設する際や大規模な改修を行う際には、これらの基準を満たす必要があります。

省エネ法

省エネルギーの推進を目的とした法律です。特に大規模な事業所や建築物には、一定のエネルギー使用量の削減やエネルギーの効率的な利用を目指すための基準や取り組みが求められています。
これらの法律は、建築物の管理者や所有者にとって、遵守すべき重要なガイドラインとなっています。適切な知識や経験を持った専門家と連携しながら、法令遵守を確保することが大切です。

建物管理は、これらの多岐にわたる業務や法律の適切な理解と実践によって、安全で快適な環境を提供することが可能となります。適切な建物管理を行うことで、テナントや利用者の満足度向上、物件の資産価値の維持や向上、そして社会的な責任を果たすことができるのです。

廃棄物やリサイクルに関する法令について深く理解するために

廃棄物やリサイクルに関する法令について深く理解するために、以下にそれぞれの法令について詳しく解説いたします。

01.PCB処理特別措置法

この法律は、人々や動物に有害な影響を及ぼす可能性のある「ポリ塩化ビフェニル(PCB)」の適切な取り扱いと処理に関する内容を明確に規定しています。PCBは、燃えにくく、高い絶縁性を持つ化学物質として、工場やビル、電車などの様々な機器の中のトランスやコンデンサに使用されていました。その他にも、触媒油としての熱媒体、潤滑油、感圧複写紙などの製品に使用されていました。
しかし、この物質は環境中で生物の体内に蓄積しやすく、特に食物連鎖を通じて上位の生物に蓄積する性質があります。このような性質が、人々の健康や環境に多大な影響を及ぼす可能性が指摘され、特に日本では「カネミ油症事件」として社会的な注目を浴びました。この事件は、PCBが混入した食用油を多数の人々が摂取し、健康被害が発生したという悲劇的な事件であり、その後、PCBの製造や使用が中止されるきっかけとなりました。

PCB処理特別措置法では、以下のような点が主な内容として規定されています

  • PCB廃棄物を補完する事業者は、平成39年3月31日までにその処分を完了しなければならない。
  • PCB廃棄物の保管事業者は、毎年、保管及び処分の状況を都道府県知事に報告する義務がある。
  • PCBの製造者や取扱事業者は、国や地方自治体の取組みに積極的に協力する義務がある。

02.警備業法

警備業法は、私的な警備業の適正な運営と品質の確保を目的として制定されました。
昭和39年の東京オリンピックの際、オリンピック選手村の警備が必要となり、この業界が広く認識されるきっかけとなりました。

この法律により、警備業を営むためには都道府県公安委員会の認定を受ける必要があります。
また、警備員自体も一定の資格や経験を持つことが求められ、特に派遣社員の警備業務への従事は制限されています。

建物のオーナーや管理者が警備業務を受託し、その業務を下請けの警備会社に再委託する場合、元請会社も警備業法に基づく認定を受けている必要があります。
この点は、業務委託を行う際の注意点として認識しておくべきです。

03.区分所有法

多くの大型建物、特にマンションやオフィスビルでは、一つの建物の中に複数の所有者が存在することが一般的です。
このような場合、建物の一部(専有部分)だけを所有する形態を「区分所有」と呼びます。
区分所有法は、この区分所有の形態における権利関係や管理方法を定めたものです。

この法律の中では、区分所有者が共同で決定を行う際の「決議要件」という重要なルールが設けられています。
これには、普通決議と特別決議の2種類が存在します。

普通決議は、共用部分の管理や管理者の選任、解任などの一般的な事項に関するもので、区分所有者及び議決権の過半数での決定が求められます。
一方、特別決議は、共用部分の変更や規約の変更、管理組合の法人化など、より重要な事項に関するもので、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の同意が必要となります。

特に、事業用の建物においては、「議決権」と「区分所有者数」のバランスが取れていない場合があるため、この点には注意が必要です。

04.個人情報保護法

近年、デジタル化が進む中で、個人のプライバシー保護やデータの適切な取り扱いが求められています。
その背景として、インターネット上での個人情報の取引や、マーケティングのためのデータの収集などが急速に進展していることが挙げられます。

個人情報保護法は、企業や組織が保有する個人の情報の取り扱いに関するルールを明確に規定しています。

具体的には、以下のような内容が含まれています。

  • 個人情報の収集、利用、提供には、その人の同意が必要。
  • 個人情報の取り扱いに関する基本方針(プライバシーポリシー)を明示する義務。
  • 個人情報の取り扱いに関する適切な安全管理措置を講じる義務。
  • 個人情報の取り扱いに関する苦情や問い合わせに対する適切な対応を行う義務。

この法律に基づき、国や地方公共団体、特定の事業者が定めたガイドラインやモデル規程などが存在し、これらの基準を元に具体的な取り組みが行われています。
特に、EUにおけるGDPR(一般データ保護規則)のような厳格なルールが存在する中で、国際的なビジネスを行う際には、各国の法律やルールをしっかりと把握しておく必要があります。

05.一般廃棄物の処理及び清掃に関する法律(一般廃棄物法)

この法律は、都市部で発生する一般廃棄物の適切な処理を図ることを目的として制定されました。
具体的には、以下のような内容が含まれています。

  • 地方自治体による一般廃棄物の収集、運搬、処理、最終処分等の基本的な方針を定める。
  • 一般廃棄物の発生抑制、リサイクルの推進、適正な処理を図るための施策を実施する。
  • 地方自治体による一般廃棄物の収集、運搬、処理、最終処分等に関する基準を設ける。

特に、都市部ではゴミの発生量が増加しており、その処理や再利用の必要性が高まっています。
この法律に基づき、各都道府県や市町村が一般廃棄物の処理に関する条例を定め、具体的な取り組みを行っています。

06.電子署名法

電子署名法は、電子的な手段での署名(電子署名)が、紙媒体での手書きの署名と同等の効力を有することを認める法律です。近年、デジタル化が進む中で、契約書や書類の電子化が進められており、その中で電子署名の必要性が高まっています。
この法律では、電子署名の信頼性を確保するための技術的な基準や認証業務に関するルールが定められています。具体的には、以下のような内容が含まれています。

  • 電子署名の作成に使用される情報(秘密鍵)の管理や保護に関するルール。
  • 電子署名の認証業務を行う認証業者の認定や監督に関するルール。
  • 電子署名が使用される際の契約書や書類の有効性に関するルール。

この法律に基づき、認証業者が定めたガイドラインやモデル規程などが存在し、これらの基準を元に具体的な取り組みが行われています。
特に、国際的なビジネスを行う際には、各国の電子署名に関する法律やルールをしっかりと把握しておく必要があります。

07.浄化槽法

浄化槽法は、排水処理施設としての浄化槽の適正な設置や管理を図ることを目的として制定されました。
具体的には、以下のような内容が含まれています。

  • 浄化槽の設置場所や種類、規模に関する基準を定める。
  • 浄化槽の設置や管理に関する技術的な基準を定める。
  • 浄化槽の適正な運用や管理を図るための指導や監督を行う。

この法律に基づき、各都道府県や市町村が浄化槽の設置や管理に関する条例を定め、具体的な取り組みを行っています。
以上が、ご質問いただいた法律に関する簡単な説明です。詳細な内容や最新の情報については、公式な情報源や専門家にご相談することをおすすめします。

PM管理業務の重要性(特にハード分野)

ビルの運用とメンテナンスに関する知識は、初心者から専門家まで幅広い層にとって非常に重要です。
ここでは、ビルのライフサイクルコストやその管理方法について解説します。

ビルを建てる際の初期のコストはもちろん重要ですが、ビルが完成してからの運用費用にも目を向ける必要があります。事実、ビルのライフサイクル全体で考えると、初期コストの約4倍から5倍のコストがかかると言われています。このライフサイクルコストの中で、驚くことに約70%がメンテナンスコストに当てられます。このメンテナンスコストには、設備の日常の運転費用も含まれています。

こうしたPM(プロジェクトマネジメント)の管理業務は、ビルの収益性に直接関係しています。また、最近ではエレベーターの不具合による死亡事故など、安全面での問題も増えてきています。このような事故を防ぐためにも、ビルのメンテナンスと管理は非常に重要です。実際、ビルの収益性を保つためのキーポイントは、建設後、運営がスタートしてからのPMの取り組み方次第と言っても過言ではありません。

ビルメンテナンスの目的とその詳細

ビルとは、私たち「人」が利用するための建築物です。そのため、利便性はもちろん、安全性にも高い注意を払う必要があります。近年のエレベーター事故をはじめとした様々な事故を防ぐためにも、継続的なメンテナンスが不可欠です。

ビルの価値を維持し続けるためには、日常維持管理計画や年間維持管理計画、さらには総合年間管理計画や長期修繕計画などを的確に立てて遂行することが求められます。さらに、法律で定められている点検や作業、報告書の提出などの作業も計画的に行われるべきです。

具体的に、ビルメンテナンスの業務を細かく見ていくと、主に以下の3つのカテゴリーに分けられます。

01.設備管理業務

こちらはさらに日常管理業務と定期保守業務に分かれます。日常管理業務では、ビル内の各種設備の点検が行われ、特に重要な設備については専門業者による定期的な点検が求められます。

02.保守警備業務

この業務では、ビル利用者の安全を保つための対策が行われます。防犯カメラの設置や警備員の配置など、入居者の秘密情報の保護や安全確保が主な目的となります。

03.清掃業務

ビルの美観を維持するため、定期的な清掃が行われるべきです。清潔な環境は、ビル利用者の満足度を高めるためにも欠かせない要素です。

環境衛生管理の詳細

「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」、通称「建物衛生法」や「ビル管法」として知られるこの法律は、ビルの環境衛生管理に関する基本的な法律として位置づけられています。この法律は、ビルの空気や水、排水などの衛生管理基準を定めており、適切な環境を保つための基準として活用されています。

具体的には、特定の規模以上の建築物に対して、定められた頻度で空気環境のチェックや清掃、排水設備の掃除などの作業が義務付けられています。これに違反すると、重大な法的リスクを伴う可能性があるため、注意が必要です。

廃棄物管理と環境問題

廃棄物の処理に関する法律、つまり「廃棄物処理法」は昭和45年に制定され、以降、さまざまな改正を経て現在の形になっています。特に近年は、循環型社会の形成を目指す動きが強まり、環境基本法や循環型社会形成促進基本法などの新しい法律も施行されています。

このような中、従来のリデュース、リユース、リサイクルの「3R」の考え方を基本としつつ、さらにリデザインやリファインなどの新しい取り組みも加えることで、より持続可能な社会の実現を目指しています。

このように、ビルのメンテナンスや管理に関する知識は非常に幅広く、深い。ビルのライフサイクルを通じて、その価値を最大限に引き出し、長く安全に利用するためには、これらの知識が必要不可欠です。

ABOUT ME
株式会社三成開発
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土地家屋調査士行政書士 村上事務所
社名
株式会社三成開発

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熊本県土地家屋調査士会登録番号
第1248号

熊本県行政書士会登録番号
第04431128号

一般建設業熊本県知事許可
(般-5)第20080号

住所
〒860-0088
熊本県熊本市北区津浦町44−5

電話番号
096−200−9695

ファックス番号
096−200−9752

創業
2004年6月

保有資格
行政書士
宅地建物取引主任士
土地家屋調査士
ビル経営管理士
不動産コンサルティングマスター
マンション管理業務主任者
賃貸不動産経営管理士
2級土木施工管理技士
測量士
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