CHIOU / 株式会社地央

優良建築物等整備事業 ── 法定事業ではない、という特徴

この記事の要点
  • 最大の特徴は法定事業ではないこと。都市計画決定などの手続きが要らない
  • その代わり、権利変換の仕組みがない。原則として全員の合意が要る
  • 補助は地方公共団体が行い、国がその一部を補助する構造
  • タイプの区分と要件は要綱による。国と自治体の最新資料で確認する

老朽化した建物が並ぶ街区を建て替えたい。しかし、市街地再開発事業は手続きが重く、時間がかかる。

そういう場面で用いられるのが、優良建築物等整備事業です。

この記事では、法定事業との違いを軸に、この事業の性格を整理します。

市街地再開発事業との違い

法律に基づく事業ではない
市街地再開発事業 優良建築物等整備事業
根拠 都市再開発法 国の交付金要綱・制度要綱
都市計画決定 必要(第一種・第二種) 不要
権利変換 法律上の仕組みがある ない
反対者の扱い 法定の手続きにより処理できる 原則として合意が必要
期間 長い 比較的短い
規模 大きい 比較的小さい

この違いが、事業の性格をほぼ決めます。

市街地再開発事業は、都市計画として決定し、組合の設立認可を受け、権利変換計画の認可を経るという手続きを踏みます。時間はかかりますが、法律上の仕組みで権利関係を処理できます。

優良建築物等整備事業には、その仕組みがありません。

任意事業であることの両面

利点 制約
都市計画の手続きが不要 権利変換ができない
期間を短縮できる 一人でも反対すれば進まないことがある
柔軟に計画を組める 権利関係を当事者間で整理する必要がある
小規模でも成立しうる 補助の要件は満たす必要がある
「手続きが軽い」は「簡単」という意味ではない

法的な手続きが少ないことは、事業が容易であることを意味しません。

権利関係の整理を、すべて当事者間の合意で行う必要があります。

  • 共同化する各敷地の権利関係の調整
  • 新しい建物の持分の決定
  • 賃借人がいる場合の対応
  • 抵当権が設定されている場合の処理
  • 相続が未了の権利者への対応

これらを一つずつ、合意で解決していくことになります。

合意形成に要する時間が、事業全体の期間を決めます。

タイプの分類

事業には複数のタイプがあり、階層になっています。

大区分 下位の区分
優良再開発型 共同化タイプ、市街地環境形成タイプ、マンション建替タイプ
市街地住宅供給型 中心市街地共同住宅供給タイプなど
既存ストック再生型
都市再構築型
複数棟改修型
「共同化タイプ」は、優良再開発型の一つ

「優良再開発型」と「共同化タイプ」を並列に扱った資料を見かけますが、これは階層の取り違えです。

共同化タイプ、市街地環境形成タイプ、マンション建替タイプは、いずれも優良再開発型の下位区分です。

また、タイプの名称と区分は、要綱の改正により変わることがあります。

検討にあたっては、国土交通省が公表する制度要綱と、その自治体の交付要綱で、現行の区分を確認してください。

それぞれの内容

タイプ 内容
共同化タイプ 細分化した敷地を集約し、共同で建築する
市街地環境形成タイプ 公開空地や公共的通路を整備し、市街地環境を改善する
マンション建替タイプ 老朽化した分譲マンションの建替え
市街地住宅供給型 中心市街地等での住宅の供給
既存ストック再生型 既存建築物の改修・用途変更による再生

マンション建替タイプの決議要件

建替え決議は5分の4以上

マンションの建替えについて、「3分の2以上の賛成で足りる」という記述を見かけることがありますが、誤りです。

要件
建替え決議 区分所有者および議決権の各5分の4以上
規約の変更等 各4分の3以上
通常の管理に関する事項 過半数

また、決議に参加するのは区分所有者であって、賃借人ではありません。「住民の3分の2」という表現は、二重に不正確です。

この事業を使うかどうかにかかわらず、建替えそのものの要件は区分所有法によります。

なお、区分所有法制については見直しの議論が進められてきました。最新の内容は法務省の資料で確認してください。

補助の仕組み

まず自治体、次に国

補助の構造は、国が直接事業者に出すものではありません。

役割
地方公共団体 要綱を定め、事業者に補助する
その自治体の補助に対して、一部を補助する

したがって、その自治体が補助制度を設けていなければ、この事業は使えません。

相談の順序は、まず市町村の窓口です。市町村の補助が見込める場合に、都道府県や国の補助が続きます。

補助の対象となりうる費用

  • 調査設計計画に要する費用
  • 土地の整備に要する費用
  • 共同施設の整備に要する費用
  • (タイプにより)除却、仮住居に関する費用
建物本体がすべて補助されるわけではない

対象となるのは、要綱で定められた費目に限られます。

「建設費が補助される」という理解は正確ではありません。共用部分の整備や、公開空地の整備といった、公共性のある部分が中心です。

補助率と上限額も定められています。

事業の採算は、補助を前提にしても成り立つかどうかで判断してください。補助があるから成立する、という組み立ては危険です。

また、補助は予算の範囲内で行われます。年度の状況により、希望どおりにならないことがあります。

要件の例

タイプにより異なりますが、次のような要件が定められています。

  • 地区の面積 一定規模以上
  • 権利者の数 (共同化の場合)複数であること
  • 公開空地や公共的通路の整備
  • 建築物の耐火性能
  • 都市計画等との整合
  • 対象となる区域 都市再開発方針に位置づけられた区域など

具体的な数値は、その自治体の要綱で確認してください。

進め方

すること
権利者の意向を確認する
市町村に相談し、補助制度の有無を確認する
基本構想を作り、成立性を検討する
権利者の合意を得る
基本計画を作成し、補助の申請を行う
交付決定を受ける
権利関係を確定させる(持分、区分所有の設定など)
除却、仮住まいへの移転、工事
竣工、登記、引渡し
管理組合の設立、運営の開始
一番目と四番目に、最も時間がかかる

設計や工事の期間は見積もれます。読めないのは、合意形成に要する時間です。

権利者にとっては、次のような判断が必要になります。

  • いまの土地・建物を手放して、新しい建物の持分を得るか
  • 従前と同等の面積が確保できるか
  • 追加の負担が生じないか
  • 工事期間中、どこに住むか、どこで営業するか
  • 高齢の権利者にとって、その期間を待てるか

これらに答えられないまま計画だけ進めても、合意は得られません。

早い段階で、個々の権利者にとっての条件を具体的に示す必要があります。

検討するときの確認

成立するかどうか

確認するもの 内容
自治体の補助制度 その市町村に要綱があるか
対象区域 要綱で定める区域に該当するか
地区の面積 要件を満たすか
権利者の構成 人数、権利の種類、所在の把握
権利関係 抵当権、賃借権、相続の未了
採算 補助を除いても成り立つか

権利関係の把握

最初に、登記を確認する

共同化を検討する場合、対象となるすべての土地・建物の登記を確認してください。

  • 所有者 相続登記がされているか
  • 共有の場合の共有者
  • 抵当権、根抵当権
  • 賃借権の登記
  • 境界の確定状況

所有者が特定できない土地が一つでもあれば、そこで止まります。

また、境界が確定していなければ、各権利者の持分を算定できません。

確定測量には、隣接地所有者の立会いが必要です。この作業を早い段階で始めてください。

市街地再開発事業との選択

条件 向いている手法
権利者が少なく、合意が見込める 優良建築物等整備事業
規模が比較的小さい 同上
早く進めたい 同上
権利者が多い 市街地再開発事業
反対者が見込まれる 同上
公共施設の整備を伴う 同上

どちらが優れているという話ではありません。

権利者の数と、合意の見通しが、選択を決めます。

検討時のチェックリスト
  • 法定事業ではないことを踏まえた権利変換の仕組みがない
  • 市街地再開発事業との比較を行った
  • その市町村に補助制度があるか確認した
  • 対象区域・面積の要件を確認した
  • 現行の要綱でタイプの区分を確認した
  • 補助の対象となる費目と補助率を確認した
  • 補助を除いても採算が成り立つか検討した
  • すべての土地・建物の登記を確認した
  • 相続が未了の権利者がいないか確認した
  • 抵当権・賃借権の状況を確認した
  • 境界の確定状況を確認した
  • (マンション建替)決議要件を確認した各5分の4以上
  • 権利者ごとの条件を具体的に示した
  • 合意形成に要する期間を見込んだ

まとめ

  • 法定事業ではない。都市計画決定などの手続きが不要で、期間を短縮できる。
  • その代わり権利変換の仕組みがない。権利関係は当事者間の合意で整理する。
  • 「共同化タイプ」などは優良再開発型の下位区分。階層を取り違えない。
  • マンションの建替え決議は各5分の4以上。3分の2ではない。
  • 補助は自治体が行い、国がその一部を補助する。自治体に制度がなければ使えない。
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