事業収支計画
不動産投資を行うときに、判断の材料になるもの。
それは、事業収支計画書です。
入ってくるお金(収入項目)から出ていくお金(支出項目)を引き算して、自分の財布の中に残ったお金(キャッシュフロー)を計算するものです。
なぜ重要かというのは、この事業収支計画書で、不動産投資を行うかどうかを決断しなければならないからです。
また、事業収支計画書で税金の対策、修繕計画も立てやすくなります。
それから資金調達のことも考えなければなりません。
数値の設定は、相場で行うのが一般的でしょう。
しかし、安全側だけの数値をおくのも考えものです。
リスクとのバランスをとりつつ、攻めるところは攻める。
勇気を持って突き進む。
そうして事業を実現させていくという意識も必要です。
魅力ある事業計画であれば、金融機関も融資しやすいでしょう。
もちろん、大風呂敷を広げてはいけませんが、強気でいくところは強気でいくのがよいのではないかと思うのです。
何事も安全側で計画しておくことは重要です。将来何がおこるかわかりませんし。
しかし融資が決まらないと、そもそも不動産投資ができなくなってしまいます。
要は、一言で言ってしまえば、バランス、ですね。
リスクとリターンのバランス。
これを心がけておけば、大きく外すことはないのではないかと。
あ、強気で言った分だけ、融資担当者の激しい突っ込みに耐えうるだけの準備はしておきましょうね^^
初期投資(イニシャルコスト)項目設定
初期投資(イニシャルコスト)とは、建物完成までにかかる費用のことです。
総事業費のことですね。
不動産投資は初期投資(イニシャルコスト)が大きいのが特徴です。
イニシャルコストとは、文字通り、最初にかかるコストのことです。
このコストを正確に知っておくことで、より計画的な投資ができるようになります。
それでは、項目ごとに見ていきましょう。
土地関係費
土地代
新たに土地を取得する場合には、土地代を計上します。
坪単価×土地面積
土地取得に伴う仲介手数料
土地取得の際に仲介業者がいれば、土地代(売買代金)の3%。
立退料
普通借家の場合は、解約日の6ヶ月前に書面をもって借主に通知しなければならないことになっています。
立ち退きには、正当理由が必要です。
立退料は、法令で定められているものではありません。
判例を参考にすると家賃の約6ヶ月分といったところです。
この金額は、あくまでも目安であり、相手のあることなので家賃の6ヶ月分未満で済む場合もあるし、6ヶ月以上かかる場合もあるということに注意しておきましょう。
入居者(相手)次第ということです。
地主承諾料
借地に収益物件を建てる場合、その借りている土地の所有者に承諾料を支払わなければならない場合があります。だいたい、公示価格の10%くらいでしょうか。建替承諾料ともいわれています。
敷地造成費
造成坪単価 × 造成面積
解体整地費
解体建築物の面積 × 解体物工事単価
建物関係費
建築工事費
工事坪単価 × 建物延床面積
設計・監理費、企画料
建築費 × 料率
設計・監理料のほかに調査や企画に要する費用として企画料も計上します。
近隣補償費・公共負担金・開発負担金
文字通り、近隣住民に支払うものです。電波障害、風害などの補償費も含みます。
開発期間の金利との比較で、補償費を払って早期に解決したほうが良いかを検討することとなります。
みておくべき予算としては、建築費の1〜2%くらいというところでしょうか。(あくまでも参考値として)
公租公課
不動産取得税
固定資産税評価額 × 3% (平成27年3月31日までに取得した場合の税率)
新築の特例適用住宅(1戸あたり40〜240㎡)では、1戸あたり1200万円の控除があります。
通常の賃貸マンションであれば課税されないケースもあります。
登録免許税
- 取得した土地の登記の場合 = 評価額 × 2% (原則)
- 新築建物の保存登記の場合 = 評価額 × 0.4%
- 抵当権を設定した場合 = 債権金額 × 0.4%
登記するために、土地家屋調査士、司法書士への報酬も必要です。
通常、税額の20〜30%程度を予算にあげておきます。
固定資産税・都市計画税
- 固定資産税年額 = 課税標準額 × 1.4%
- 都市計画税年額 = 課税標準額 × 0.3%
開業までの工事期間中の固定資産税と都市計画税を予算にあげておきます。
金利
建築工事中金利
工事着工時に建設費総額の3分の1、工事中間時に3分の1、完成時に3分の1を支払うことが多いようです。
着工時と中間時は事業開始前に用意しなければならないお金のため、金融機関からの借入の際には金利が発生します。
予備費
予期せぬことが起きた場合のときのために予算に計上しておくことが望ましいです。
総事業費の1〜1.5%くらいというところでしょうか。
収入項目
収入項目は、賃料収入、駐車場収入、更新料収入、資金運用益、その他の収入があります。
賃料収入
収入の中でも不動産賃貸事業の場合、賃料収入が、最も重要です。
いわゆる、家賃です。家賃は最大の収入源となります。事業計画の根幹を成す、重要なポイントですので、慎重に設定しなければなりません。
坪賃料 × 専用床面積合計 ×12ヶ月 (1−空室率)
賃料の設定方法は、不動産価格に期待利回りを乗じても止める方法があります。
ただ実際には、資本主義社会の原理原則がそうであるように、現実の賃料は市場の需要と供給のバランスによって、周辺の賃料相場で落ち着くようです。
空室率
空室率は地域やテナント数に大きく左右されます。
築年数によっても変わってきますので、一概に言えませんが、だいたい次のような数字を入れて計算してます。
商業ビル、事務所ビル 5〜15%
賃貸住宅 5〜10%
入居率
上記の数式には入れていませんが、入居率というものも入れておくとより精度が高まります。
賃貸アパート・マンションの設立当初3年は、80%〜90%。それ以降は、90%〜95%。
貸ビル・店舗の設立当初3年は、80%〜90%。それ以降は、85%〜90%。
レンタブル比
専用床面積をはじき出すためには、設計を行わなければなりません。
そんな設計までしないまでも、概算で計算し、大まかなお金の流れが知りたいときがありますよね。ざっくりの数字でもいいから、この物件のポテンシャルってどうなの?というときです。
そんなときは、延べ面積限度一杯に仮定し、次のおおよそのレンタブル費を乗じて、だいたいの専用床面積をはじき出すのです。
マンション | 0.9〜 |
---|---|
オフィス | 0.7〜 |
商業ビル | 0.6〜 |
賃貸事業の比較検討する際の注意点
実質賃料の考え方
賃貸条件をいくつかの物件で比較するとき、敷金、保証金、などの契約時の一時金も関連づけすべきでしょう。
一般的に、一時金の運用益を加算します。
利回りをだいたい3%〜5%程度を月額支払い賃料に加算したものを実質賃料とします。
共益費、管理費
共益費とは、建物の共用部分の水道光熱費、設備管理費、清掃費、防災防犯経費のことです。
共益費は、物件の賃貸事例によってそれぞれ異なります。
収支計算では、設定の条件としないのが一般的です。
共益費を徴収せずに賃料に上乗せしていたり、多額な共益費を徴収しその中に賃料相当分を含ませていたり、と物件によって様々です。
各物件の共益費の扱いに注意し賃料の修正を行うことで、いくつかの物件をより正確に比較することができます。
管理費についても収支計算を行うときは、管理費収入=管理費支出として、設定の条件に含めないのが一般的です。
駐車場収入
建物に付属し、駐車場の賃貸による収入を計上します。
周辺事例を参考に賃料は設定しましょう。
入居率等は、本体建物と同一にするのが一般的ですが、戸数よりも駐車場台数が少なかったりして駐車場の需要が明らかに見込める場合もありますので、物件ごとの状況を踏まえて設定するのがよいでしょう。
その他
広告料
広告塔などとして賃貸できれば、収入となります。よく渋滞する路線の物件であれば、わりと高い広告料がとれたりするものです。
更新料
更新料は、一般的に更新後の月額賃料の1ヶ月分くらいであることが多いですね。
これらを収入と計上することもありますが、入居者が入れ替わるときにかかるリニューアル費用と相殺するという意味でも計上しないことも少なくありません。
事業計画書作成
事業計画を作成するためには、まず物件調査を行い、その物件がどのような「特性」をもっているのかを感じ、権利関係や建築を行う際の法的な規制は何なのかを押さえておく必要があります。
需給動向を把握するために行う市場調査は、地元業者へのヒアリング、賃貸情報誌、行政情報、新聞情報などから入手します。
なかでも、地元業者のヒアリングが一番重要です。
肌で感じる空気感を探ることができたら最高です。
賃貸条件のチェックすべきポイントは、建物の状態、建物周辺の状態、嫌悪施設、駅、バス停、公園、道路付け、周辺の交通環境、コンビニ、スーパー、水道、ガスなどのインフラ、病院・医院、育児施設・幼稚園・小学校、ターゲット(学生が多いのか、ファミリーが多いのか)
用途はこのマーケットに適切なのかどうか。設備は古すぎはしないか?思い切って建て替えるか?それとも用途変更(コンバージョン)?いやいや部分的にだけバージョンアップしようか?
こんな風にしていろんな手法を考察していきます。
そして企画の内容を事業計画に落とし込むのです。
収支計算表は、ただ計算しただけでは意味がありません。
収支計算表が何を意味するのか、把握するためのチェックポイントを挙げてみます。
個人の場合
- 剰余金は何年目くらいからどのくらい発生するか?(1~2年以内から剰余金が発生することが望ましい)
- 借入金は何年間で完済できるのか?(税引後で20年、長くても25年以内くらい)
- 投下資本は何年で回収できるのか?(預かり金が少額なものは2より1年長くなるくらい)
- 相続対策としてどのくらい節税できるのか?(具体的な事例による)
アウトソーシングを活用する
アウトソーシングをすれば当然費用はかかりますが、協力業者とうまく仕事を行うことで人的資源を補い、自社の専門性や付加価値を高め、顧客満足につなげていくことをお勧めしています。
以下は、実際に多いクレーム内容です。
アウトソーシングしやすい(ハード面)
- 共用灯(電球切れ)
- エアコン(部屋に設置しているエアコンの故障)
- 換気扇
- 照明器具
- 放送・通信設備
- 蛇口
- 給湯器
- 配水管
- ロータンク
- 受水槽
- 火災警報器
アウトソーシングしにくい(ソフト面)
- ペットに関すること
- 火災警報器の法定点検の際のお知らせ等
- ゴミ置き場の管理や共用施設の掃除等
- 騒音
- カギを落として部屋に入れない
- 迷惑駐車・駐輪
次のような業務がアウトソーシングに適しています。
警備業務 |
|
---|---|
防災業務 |
|
清掃管理業務 |
|
環境衛生管理業務 |
|
設備管理業務 |
|
建築物保全管理業務 |
|
運営管理サービス業務 |
|