渋滞と交通処理 ── 詰まるのは、点である

この記事の要点
  • 渋滞は需要が容量を超えると起きる。道を広げるだけでは解けない
  • 打てる手は需要側と供給側に分かれる
  • 開発では交通処理の計画が許認可の要件になる
  • 地方都市では交差点と出入口が効く

「道路が狭いから渋滞する」──広げれば解決するとは限りません。

広げた分だけ車が増える、ということが起こります。渋滞は、需要と容量の関係で決まります。

この記事では、都市計画の側から打てる手と、開発の場面で求められることを整理します。

なぜ起きるか

需要が容量を超えたとき
内容
需要 その道を通ろうとする車の数
容量 その道が捌ける車の数

容量は、車線数だけでは決まりません。

  • 交差点の処理能力 信号の待ち時間
  • 右折レーンの有無
  • 沿道からの出入り
  • 路上駐車
  • バス停、荷捌き
  • 合流・分流の位置

渋滞は、区間ではなく「点」で起きます。

交差点、出入口、合流部。そこが詰まると、手前が伸びます。

だから、その一点を直せば大きく改善することがあります。逆に、区間を広げても点が変わらなければ効きません。

広げると増えることがある

道路を拡幅すると、通りやすくなった分だけ交通量が増える現象が知られています。

  • これまで避けていた人が使い始める
  • 公共交通から車に戻る
  • 沿道の開発が進み、新たな需要が生まれる

「拡幅すれば解決する」と単純に考えないでください。

二つの方向

需要を減らすか、容量を増やすか
需要側の手 供給側の手
主なもの 交通需要マネジメント 道路の改良
時差出勤、公共交通への転換 交差点改良、右折レーン、バイパス
費用 比較的小さい 大きい
時間 短い 用地取得を伴えば年単位
確実性 行動が変わるかによる 物理的に効く

実際には、両方を組み合わせます。

需要側だけでは限界があり、供給側だけでは費用と時間がかかります。

需要への三つの働きかけ

やること
回数を減らす そもそも移動しない 在宅勤務、まとめ買い
距離を短くする 近くで済ませる 近隣に施設を配置する
時間をずらす 集中を避ける 時差出勤、始業時刻の分散

二つ目が、まちづくりと直結します。

病院、学校、商業施設が郊外に散らばると、移動距離が伸びます。立地適正化計画で施設を誘導するのは、この効果も狙っています。

地方都市で効くもの

大都市の手法が、そのまま使えるとは限らない

ロードプライシングや大規模な公共交通への転換は、地方では成り立ちにくい手法です。

  • 代替となる公共交通が乏しい
  • 車を使えなくなると、生活が成り立たない
  • 渋滞の規模が、対策の費用に見合わない
  • 通過交通より、地域内の移動が多い

地方都市で現実的なのは、点の改良です。

効き方
交差点の改良 右折レーンの設置。これだけで大きく変わることがある
信号の制御 時間配分の見直し、連動
出入口の位置 大規模施設の出入りが本線を止めていないか
路上駐車の解消 荷捌きスペースの確保
歩行者の横断 横断施設の整備
通学路の分離 時間帯規制

費用も時間も、拡幅とは桁が違います。

開発の場面で問われること

交通処理の計画が要件になる

一定規模以上の開発では、交通処理をどうするかが許認可の審査対象になります。

確認されること
発生集中交通量 その施設で、どれだけ車が増えるか
出入口の位置と数 本線への影響
右折入場の可否 中央分離帯、対向車線の状況
待機スペース 敷地内に確保できるか
駐車場の台数 附置義務条例
歩行者の動線 車と交錯しないか
工事中の交通 ダンプの経路と時間帯

道路管理者と交通管理者の両方と協議が要ります。

道路管理者は道路の構造、交通管理者は交通の安全と円滑。所管が違います。

出入口で計画が変わることがある

「ここに出入口を作る」という前提が、協議で覆ることがあります。

  • 交差点に近すぎる
  • 右折入場を認められない
  • 横断歩道、バス停との位置関係
  • 見通しが確保できない
  • 歩道の切り下げ幅に制限がある

出入口の位置が変われば、建物の配置も駐車場の割付けも変わります。

設計を固める前に、道路管理者・交通管理者に相談してください。

調べ方

資料 分かること
道路交通センサス 主要な道路の交通量と混雑度
自治体の渋滞対策の計画 どこを問題箇所と認識しているか
都市計画道路の計画 将来の道路網
現地観測 時間帯別の実際の状況
地図の交通情報 おおよその混雑

現地は、必ず自分で見てください。

朝夕の通勤時間、休日の昼、雨の日。状況が大きく違います。

不動産の評価に効く

  • 右折で入れない立地は、店舗として不利
  • 渋滞路線沿いは、通行量は多くても入りにくい
  • 通学路の時間帯規制で、搬入ができない
  • 都市計画道路の計画線がかかっていれば、建築に制限
  • バイパスができると、旧道の通行量が減る

最後の点に注意してください。

バイパスの開通で、それまでの幹線沿いの店舗が影響を受けることがあります。

交通処理に関する確認
  • 前面道路の交通量を確認した
  • 時間帯を変えて現地を見た
  • 右折で入れるか確認した中央分離帯・対向車線
  • 交差点からの距離を確認した
  • 都市計画道路の計画線を確認した
  • バイパス等の整備計画を確認した
  • (開発)発生集中交通量を試算した
  • (開発)道路管理者・交通管理者に事前相談した
  • (開発)出入口の位置が認められるか確認した
  • (開発)駐車場の附置義務を確認した
  • (開発)工事中の車両経路を検討した
  • 時間帯規制の有無を確認した

まとめ

  • 渋滞は需要が容量を超えたとき起きる。容量は車線数だけで決まらない。
  • 詰まるのは点。交差点・出入口・合流部を見る。
  • 広げると交通量が増えることがある。拡幅だけでは解けない。
  • 地方都市で現実的なのは、交差点改良などの点の対策。
  • 開発では、出入口の位置が協議で覆ることがある。設計前に相談する。
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