現地調査のチェックリスト ── 見逃しやすいもの
- 現地でしか分からないのは、境界標・越境・未登記の増築・道路の実測幅・排水の行き先の五つ
- 見る順番がある。外周 → 境界 → 建物 → 道路 → 排水。行き当たりばったりだと必ず抜ける
- 写真は全景と部分をセットで。部分だけでは、後から場所が特定できない
- 記録は事実と評価を分けて書く。「傾いている」は事実、「危険である」は評価
書類を揃えて現地へ向かう。ここまでは決まっています。ところが現地に着いてから、何をどの順で見ればよいのかで迷う。とりあえず建物の写真を何枚か撮り、周りを一周して帰ってくる。
そして机に戻ってから気づきます。「あの境界標、どこにあったか」「道路の幅、測っていない」。もう一度行くことになります。
この記事では、現地でしか分からないことは何か、どの順で見るのか、そして写真と記録をどう残すかまでを扱います。見たものが法的に何を意味するかは、次の記事で扱います。
現地でしか分からない五つ
書類が揃っていても、次の五つは現地に立たなければ分かりません。逆にいえば、この五つを確かめるために現地へ行きます。
| 確かめるもの | 書類で分からない理由 |
|---|---|
| 境界標の有無 | 地積測量図に境界点があっても、現地の杭や鋲が失われていることがある |
| 越境 | 塀、擁壁、庇、樹木の枝、給排水管。図面には現れない |
| 未登記の増築 | 建物図面と実際の形が合わないことがある。逆に、取り壊された建物の登記が残っていることも |
| 道路の実測幅 | 台帳の幅員と実測値が一致しないことがある。しかも一様ではない |
| 排水の行き先 | 本下水か浄化槽か、放流先はどこか。側溝の状態も含めて現地で追う |
持っていくもの
道具より先に、書類を持っていくことが最も重要です。公図、登記事項証明書、地積測量図、建物図面、都市計画図、道路種別図。これがないと、現地で何を確かめるべきかが決まりません。
| 道具 | 用途 |
|---|---|
| メジャー(5m) | 建物の寸法、境界標の間隔、側溝の幅 |
| メジャー(50m) | 道路の幅員、敷地の一辺。巻尺型が扱いやすい |
| カメラ(スマートフォン可) | 撮影日時が記録に残る設定にしておく |
| 方位磁石 | 日照、北側斜線の当たり方の見当をつける |
| 水平器 | ブロック塀や建物の傾きを、感覚ではなく数値で見る |
| 調査票 | その場で書き込む様式。後でまとめようとすると記憶が曖昧になる |
見る順番
一 外周を一周する
敷地に入る前に、公道側から一周します。建物の全景、道路との関係、隣地との高低差、周辺の建物。ここで全体の輪郭をつかんでから細部に入ります。
この段階で、公図の形と現地の形が合っているかを見ておきます。極端に違う場合は、そもそも対象地を取り違えている可能性があります。
二 境界標を探す
コンクリート杭、金属標、鋲、刻印。地積測量図に境界点が記されていれば、その位置を見当にして探します。土やアスファルトに埋もれていることもあります。
「見つからなかった」を「ない」と書かないでください。埋没しているだけかもしれません。「地積測量図の○点の位置に境界標を確認できず」と、事実として記録します。境界の確定が必要かどうかの判断は、この記録から始まります。
三 越境を見る
境界標が見つかったら、その線に沿って何が越えているかを見ます。
- 塀、擁壁、フェンス。基礎の部分がどちら側にあるか
- 庇、雨樋、エアコンの室外機
- 樹木の枝と根
- 給排水管、ガス管、電線
越境は、こちらから隣地へ出ている場合と、隣地からこちらへ入っている場合の両方があります。どちらも記録します。売買の場面では、覚書の有無が問題になります。
四 建物の形を図面と照らす
建物図面を手に持って、外周を歩きます。図面にない部分が張り出していないか。増築、物置、車庫、テラス。基礎があって屋根があるものは、原則として建築物です。
あわせて外観の状態を見ます。外壁のひび割れ、屋根のずれ、基礎の欠損。ブロック塀は水平器を当てて、傾きを数値で記録します。
五 道路を実測する
前面道路の幅を測ります。一箇所ではなく、最も狭い箇所を含めて複数点で測ります。道路は一様な幅ではありません。
どこからどこまでを測るかで結論が変わるため、側溝を含むか含まないかを記録に残します。側溝の位置、U字溝に蓋があるか、境界標や鋲があるか。これらは道路の境界を判断する手がかりになります。
接道の長さも測ります。敷地が道路に接している部分の長さです。旗竿地では、竿の部分の幅が全長にわたって足りているかを見ます。一箇所でも細くなっていれば、そこが効きます。
六 排水を追う
敷地の排水がどこへ行くかを追います。
- 道路の側溝、マンホール。蓋に「汚水」「雨水」の表示があるか
- 市区町村のマークがあるか。私設管の可能性もある
- 敷地内に浄化槽の蓋があるか。ある場合は本下水に接続していない
- 放流先はどこか。側溝、水路、河川
ブロック塀や外壁の下部に、泥のシミや変色がないかを見ます。周辺の地形が低いか、近くに水路や河川があるか。ハザードマップで確認できることと、現地で見えることは違います。過去に浸水した形跡は、現地でしか分かりません。
写真の撮り方
写真は、後から調査結果を確認するときと、依頼者に説明するときに使います。撮り方に決まりを作っておくと、後で困りません。
- 全景と部分をセットで撮る。部分の写真だけでは、後から場所が特定できません
- 撮影日時を記録に残す。スマートフォンの設定で日時が記録されるようにしておきます
- 方角を記録する。同じ建物でも、見る向きで印象が変わります
- 比較の対象を入れる。メジャーや既知の寸法のものを一緒に写すと、後から大きさが分かります
- 撮る順番を決めておく。外周を時計回り、次に敷地内、最後に道路。順番が決まっていれば、後から並べ替える手間が減ります
記録の残し方
その場で調査票を埋めます。後でまとめようとすると、記憶が曖昧になります。
「北側外壁に幅1cm、長さ約50cmのひび割れを確認」は事実です。「雨漏りの恐れがあり修繕が必要」は評価です。この二つを混ぜて書くと、後から責任の所在が曖昧になります。事実は誰が見ても同じですが、評価は立場によって変わります。書面に残す場合は、必ず分けてください。
あわせて、確認できなかったことも記録します。「敷地内に立ち入れず、南側の状況は未確認」「境界標を確認できず」。調べていないことを書かないでいると、調べたものと区別がつかなくなります。
- 書類を持って現地へ出た公図・登記事項証明書・地積測量図・建物図面・都市計画図・道路種別図
- 公道側から外周を一周し、全景を撮影した
- 公図の形と現地の形が合っているか確認した極端に違えば対象地の取り違えを疑う
- 境界標の有無と位置を確認した見つからない場合も「確認できず」と記録する
- 越境の有無を確認した塀・擁壁・庇・樹木・配管・電線。双方向とも
- 建物の形を建物図面と照らした未登記の増築、取り壊し済み建物の残存
- ブロック塀の傾きを水平器で確認した
- 道路の幅員を複数点で実測した最も狭い箇所を含める。側溝を含むかを記録
- 接道の長さを測った旗竿地は竿部分が全長にわたって足りているか
- 排水の行き先を追った側溝・マンホール・浄化槽・放流先
- 水害の痕跡を確認した外壁下部のシミ、周辺の地形
- 写真を全景と部分のセットで撮り、日時と方角を記録した
- 調査票に事実と評価を分けて記入した
- 確認できなかった項目も記録した
まとめ
- 現地でしか分からないのは、境界標・越境・未登記の増築・道路の実測幅・排水の行き先の五つ。
- 道具より先に、書類を持っていく。持っていないと、何を確かめるべきかが決まらない。
- 見る順番は、外周 → 境界 → 建物 → 道路 → 排水。行き当たりばったりだと必ず抜ける。
- 道路の幅は複数点で測る。一様ではなく、最も狭い箇所が効く。
- 記録は事実と評価を分ける。確認できなかったことも記録に残す。
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