土地家屋調査士行政書士 村上事務所
不動産売買

不動産売買契約

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経済活動の中止的な手段が、「契約」です。
「取引」は法律的には契約を手段として行われます。
よって、不動産取引とは、契約によってやり取りされるということです。

契約が有効に成立すると、法律効果として債権債務関係が発生し、契約の種類によっては財産の設定、移転が生じます。
例えば、不動産売買の場合は、売買契約が有効に成立するとその法律効果として、「代金を支払え」、「不動産を引き渡せ」という債権債務関係が発生します。

不動産売買契約書の作る目的は、お互いの意思を確認して証拠として残すことが一番に挙げられます。
それからもうひとつ、民法の適用を除外することが重要な役割として挙げられます。

特段の取り決めが無い限り、取引の当事者には民法の規定が適用されることになっています。通常の認識とかけ離れた規定が民法には存在するため、売買契約書によってそれを除外するというわけです。

◼︎売買契約書チェックポイント

01当事者

当事者とは、売主、買主のことです。住所、氏名の確認をしましょう。

02物件の表示

物件の表示に誤りがないかを確認します。
・売買対象土地の所在・地番・地目・地積
・売買対象建物の所在・家屋番号・種類・構造・床面積
売買の対象となる範囲を明確にすることによって、売買の目的物の移転義務、滅失、毀損、瑕疵等の責任範囲まで明確になります。
よって売主と買主との間のトラブル防止にもつながっていくのです。

03売買対象面積

土地の面積は、登記簿の面積と実際のところの面積とが違う場合があります。ですので「実測売買」とするのか「登記簿売買」とするのか決めておかなければなりません。
「実測売買」とは、実測面積を売買対象面積とする売買であり、契約時に実測面積が確定していれば、その面積によります。問題は、契約時には実測面積が確定しておらず所有権移転日までに測量を行って実測面積を確定すると言ったような場合です。この場合は、既に契約された売買代金から面積の差に応じて精算します。

土地の売買対象面積は直接、売買代金に影響しますので、とても重要です。
登記簿売買では、「登記簿面積による」という記載だけではなく、「実測売買をしない」ことを明確に記載しておくとよいでしょう。

マンションの場合も登記簿面積で売買するのが一般的となっています。
マンションの登記簿面積は、壁その他の区画の「内側線」で囲まれた部分の水平投影面積で表示されています。内法面積(うちのり)ともいいます。
新築で売り出されたときは壁芯面積により表示しているので注意しましょう。

なぜこんなにややこしく表示の方法が違っているのでしょうか?
それは、登記簿面積は建物が竣工しないと確定しないからです。建物が竣工する前から売り出しをはじめる、いわゆる分譲マンションなどは、建築基準法による壁芯面積で売買されるのです。

この二つの算出方法では、当然に面積が異なってきますので、内法面積なのか壁芯面積なのかを説明しておくことが重要です。

04売買代金の支払い時期

「売買代金の支払い」と「引き渡し」「所有権移転登記申請手続き」は、原則として同時履行の関係になります。

売買契約成立時に手付金 → 中間金 → 「所有権移転登記申請手続き」「引き渡し」と同時に残代金

不動産業者が売主の場合、完成物件の手付金として受け取れる額は、売買代金の2割までと制限されています。中間金の支払いがある場合もこの2割の中に含まれますので、注意しましょう。

支払い方法は、銀行振込、預金小切手により支払う場合が多いです。

05手付金

一般的な不動産取引では、売買契約の時に「手付金」を支払い、取引の進捗に合わせて随時「中間金」「残代金」を支払っています。

「手付金」として支払われた金銭は「売買代金に充当する」旨の規定を設けて、売買代金の一部に充当するのが一般的です。

手付金は法的には売買代金の一部ではないからです。
あくまでも手付金は、売買契約の成立を担保するものであり要物契約なのです。

原則どおりで考えると、買主が「残代金」を支払う時に、まず売主は「手付金」を買主に返します。それから買主は売買代金の全額(返還された手付金をあわせた合計)を支払うことになります。
手付金に利息をつけないのが一般的です。

不動産取引での手付金は、当事者間で特別の約定がなければ「解約手付」として扱われます。
相手方が履行に着手するまでは、
買主の場合 → 支払った手付金を放棄
売主の場合 → 受領した手付金の倍額の支払い
で、解除できるとされています。

判例は、
「履行の着手」とは、自らが履行を着手していても相手方が履行の着手をするまでは手付解除ができるとされています。

契約違反による解除
契約の相手方に債務不履行がある場合売買契約を解除することができます。

契約違反の事実として
・買主の代金支払い
・売主の物件引渡しに関する事項
・抵当権の抹消
・所有権の移転登記
等が、原則として解除事由となります。

当事者の基本的義務について契約違反があるときは、基本的には契約解除事由にあたります。
損害賠償の請求をすることもできます。
通常、損害賠償の予定額(違約金の額)を定めておきます。
違約金の額は、任意です。一般的には売買金額の20%とすることが多いです。売買金額の10%とすると手付解除と変わらなくなるので、違いを出すため20%とするのが一般的のようです。

解除された場合、契約の効力は消滅します。
売主と買主の両方に原状回復義務が発生します。

買主は、解除前に所有権移転登記をしていれば抹消登記をします。
また、引渡しを受けていれば、その返還をしなければなりません。

売主は、解除前にお金を受けとっていたときは、そのお金を返さなければなりません。
民法では、その返還しなければいけないお金には、受け取ったときからの利息をつけるものとされていますが、一般的には利息を付すことは行われていないのが現状です。

06融資特約

買主が住宅ローンを利用して不動産を購入する場合は、売買契約の中に「融資特約」(ローン特約)の規定を設けるのが一般的です。
不動産は、そのほとんどが高額であり、買主は金融機関からの融資を利用することが少なくありません。

融資特約とは、買主が利用する融資の承認が得られなかった時は、売買契約を解除できるというもの。
売主には、融資の承認が得られなかった時に契約を解除されるというリスクがあり、不安定な立場を強いられます。事前に買主の信用力を十分に留意したいものです。

売主の立場としてどうしても売買契約を締結させたい時がありますよね。
そのときは買主が融資の承認が得られるように、融資に必要な書類を揃えるなどの努力をしなければなりません。

抵当権等の抹消に関する事項

特約のない限り売主は売買の目的物の所有権の行使を妨げる従前の抵当権などを抹消し、瑕疵のない権利として買主へ移転すべきものとされています。
売主は、所有権移転登記までに対象物件に存在する抵当権の登記の抹消、賃借権などを自らの費用で「負担して取り除かなければならない」ということです。
譲渡担保、仮差押、仮処分、税法上の差押も取り除かなければならない負担とされています。

登記されていない「取り除かなければならない負担」については、除去・抹消をどのように行うのか明確にしておきましょう。第三者による占有の排除などは注意が必要です。

所有系移転登記までに、売買契約時には存在しなかった「取り除かなければならない負担」が設定される場合があります。売買代金の残金授受の直前に新たな「取り除かなければならない負担」が存在していないか再確認することが重要です。

引渡し後に引き続き存続する担保物権、用益物件がある場合は、その旨を特約条項に記載します。
この場合、負担付きでの売買ということになります。
どのような時に負担付きの売買になるのでしょうか。
具体的には、
・借家人付きアパート・マンション等の売買のケース(居抜き売買、オーナーチェンジなど)
・電力会社の電線の敷設のための地役権
・排水施設利用のための地役権
・公団・公社等の買い戻しの特約登記

07所有権移転登記・引渡し時期

民法では、当事者の意思表示のみで目的物の所有権の移転の効力が生ずるとされています。
一般的な不動産の取引では、「買主が売買代金を支払った時」に買主に移転する特約を付します。通常は残代金支払の日です。

契約した後に買主の名義が変更する場合もあることから、契約書には、
「買主または買主の指定する者の名義に」と記載します。

引渡しは、建物については鍵を渡すことにより行い、土地の場合は「引渡確認書」等の書面を作成します。
土地の場合は、どうしても目に見える形で引渡しをしたことを表現する方法がないため、引渡し確認書のようになんらかの形で事実確認を行っておいたほうが良いでしょう。もちろん実際に引渡しが行われていれば引渡しは有効です。

取引によっては、所有権移転登記を留保することもあり得ますので、「所有権移転登記の申請手続きに必要な一切の書類を引き渡す」と契約書に記載する場合がありす。「所有権移転登記申請手続きをする」と断定しないほうが無難というわけです。

08危険負担

売主、買主のどちらにも責任がない場合、いわゆる不可抗力である自然災害などで引渡し前に対象物件が焼失、毀損、流失、陥没した場合は、買主(債権者)がこれを負担しなければなりません。
買主は対象物件の引渡しを受けることがなくても、代金を支払わなければならないということになります。
民法上、このような規定であるため契約書で危険負担についての記載(特約)がなければ、上記のように買主の負担ということに自動的になります。

しかしどうでしょう。
買主は売買契約をしただけ。対象物件の引渡しを受けることはできない。だけどお金は払わなければならない。現実的に支配し、収益する権利がまだないのにもかかわらず、危険だけを買主に移転させるのは不公平ではないだろうか?

と、いうわけで一般的な取引では、危険負担についての特約条項を盛り込み、民法の考え方を否定しています。
「損失は売主の負担」としたうえで、「買主が契約締結の目的を達することができない場合に契約を解除」することができるという特約の内容になります。
この契約解除はあくまでも白紙解除とするものです。売主・買主のどちらかが損害賠償請求ができるというものではありません。

民法の534条を制限的に解釈すべきとする学説も有力です。
民法(債権法)改正で、「特定物の売買における危険の移転時期は引渡しの時期とする」ことを明文化することが検討されています。

瑕疵担保責任

瑕疵とは、欠陥のことであり、次のようなものがあります。
・土地建物の物理的欠陥 (不等沈下、雨漏り等)
・法律的な欠陥 (接道義務違反等)
・心理的な欠陥 (自殺物件等)

この瑕疵は隠れたものである必要があります。買主が通常要求される注意を払っても発見できなかった瑕疵のことをいいます。

売主の故意・過失は関係ありません。無過失責任です。

有償契約である売買契約では、取引の目的物である土地・建物に瑕疵がある場合、売主は民法に規定する責任(瑕疵担保責任)を負うことになります。

買主は、瑕疵の発見後、1年以内に損害賠償、解除の請求を行わなければなりません。

売主の場合は、個人の場合と不動産業者の場合とでその内容が異なります。
売主が個人の時は、瑕疵担保を負わない特約も有効です。債務整理による売却などの時はこの特約となるでしょう。

売主が不動産業者、買主が不動産業者でない時は、瑕疵担保期間は最低2年間は必要です。
この場合、これ以下の期間を定めた場合は無効とされ、「瑕疵担保責任の期間が2年」となるのではなく「特約がない」ものとなります。つまり売主の引渡し後の期間の制限がなくなり無制限となるのです。よって民法に規定する「買主が瑕疵を発見した時から1年」となります。

「品確法」(平成12年4月1日施行)の適用を受ける新築住宅については10年間です。

隠れた瑕疵についてのトラブルは多いので注意が必要です。

売買代金で抵当権を抹消できない場合があります。抵当権が1億円設定されている物件で売買代金が5,000万円だった場合などです。
この場合、売買代金で抵当権抹消に充当することができません。

担保権者(金融機関)は、別の物件に担保を設定する等、了承済みなのかどうかを確認し、「抵当権の抹消を承諾する」旨の書面が確認できればベストでしょう。

公租公課等の分担に関する条項

公租公課とは、「固定資産税」と「都市計画税」のことです。
この2つの税金は、1年を単位として賦課されますので、それぞれ日割り計算を行います。

起算日を、1月1日とする場合と、4月1日とする場合とがあります。
首都圏では1月1日を起算日とするのが主流となっています。

一般的な不動産取引の実務として次のことを定めておくと良いでしょう。
・公租公課の清算は納税通知書送達後に行う方法
・前年度の年税額で清算する方法
・前年度の税額で仮に計算しておいて、今年度の納税通知書が送達したら清算する方法

以上のような方法が、考えられますね。
公租公課の負担に関する事項については、法的な根拠はありません。
法的な根拠がない分、きちんと売主と買主の間で決めておいたほうが良いということになります。
課税業者が受け取る固定資産税と都市計画税の清算金は、建物に関する部分については消費税の対象となるとされています。売買代金に上乗せされたものとして解されるのです。

マンション等の管理経費(管理費・修繕積立金)についても清算しておくことが必要です。
その他、各種公共料金(上下水道、ガス、電話、電気等)があります。
売主は自己負担部分について必ず清算してもらいます。
引渡し日にはそれぞれのメーターを停止させておく必要があります。

印紙代の負担区分

売主と買主のどちらが負担するのかが悩ましいところですが、通常その契約書に貼付する印紙代は保有するものが負担すると定める場合が多いです。
民法上では、当事者が平等に負担することとしています。

印紙を貼ることが、売買契約成立の要件ではないので、印紙を貼っても貼らなくてもその効力になんら関係はありません。
しかし、印紙税法の規定に反することとなり、印紙代の3倍に相当する過怠税を徴収されます。

印紙税法上は連帯責任とされています。
1通しか契約書を作成せずにその正本を保有するものが印紙の貼付を怠っていれば、正本を持っていなくても責任を負うことになります。

付帯設備の引渡し

中古物件(建物)の売買の場合、建物に付帯する設備がどこまで含まれるのか、その定義はありません。建物躯体部分は当然に売買対象に含まれるので問題とはなりませんが、付帯設備に関しては売主と買主との間でトラブルになることが多いため、売買契約書とは別に「付帯設備一覧表」を作成しておく必要があります。

・その設備に不具合や故障はないかどうか。
・使用するときに通常と異なる点はないかどうか。
・メーカーによる保証期間
なども、確認しておく必要があるでしょう。

設備の故障などは瑕疵担保責任を追わないことが一般的です。
故障の程度によっては、売主に撤去を求めたほうが良い場合もあります。

引渡すものと売主が取り外すものと明確にしておくことでトラブルを回避できます。

暴力団排除条例

全国47都道府県の全てにおいて、平成23年10月に暴力団排除条例が制定されました。
不動産売買契約書には、暴力団等反社会的勢力排除条項を導入し、不動産取引から暴力団等社会的勢力排除に向けて寄与することが期待されています。

売買契約書チェックポイント〈売買代金、手付金等の金額、支払い時期、方法〉

売買代金、手付金等の支払日を確認しておきましょう。
通常、売買代金の支払いは引渡しや所有権移転登記申請手続と同時履行されます。売買代金の支払い方法については、現金によるのか、銀行振込、預金小切手等によるかのあらかじめ確認しておきます。

手付金は、通常、売買契約の際に当事者間において金銭の授受がなされます。「解約手付」「証約手付」「違約手付」のどれに当てはまるのか、金額は妥当であるのか、等を確認しましょう。

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住所
〒860-0088
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電話番号
096−200−9695

ファックス番号
096−200−9752

創業
2004年6月

保有資格
行政書士
宅地建物取引主任士
土地家屋調査士
ビル経営管理士
不動産コンサルティングマスター
マンション管理業務主任者
賃貸不動産経営管理士
2級土木施工管理技士
測量士
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