媒介契約の種類と選び方 ── 三つの違い
- 三種類の違いは、依頼者の自由度ではなく業者側に課される義務の重さ
- レインズ登録は専任7日以内・専属専任5日以内(休業日を除く)。報告は2週に1回・1週に1回
- 専任・専属専任の有効期間は3か月以内。これを超える定めは3か月に短縮される
- 低廉な空家等の特例は2024年7月から800万円以下に拡大。上限30万円+消費税
媒介契約は、依頼を受けた時点で結ぶものです。しかし種類の選択を依頼者任せにすると、こちらに課される義務の重さが変わることを説明できません。
一般・専任・専属専任。違いは依頼者の自由度ではなく、業者側が負う義務にあります。レインズへの登録期限、報告の頻度、有効期間の上限。いずれも宅地建物取引業法で定められており、守れなければ監督処分の対象になります。
この記事では、三種類の法的な違い、業者に課される義務と期限、そして報酬の上限を扱います。
三種類の違いは、義務の重さ
| 一般媒介 | 専任媒介 | 専属専任媒介 | |
|---|---|---|---|
| 他社への重ねての依頼 | できる | できない | できない |
| 依頼者が自ら発見した相手との直接取引 | できる | できる | できない |
| レインズへの登録 | 義務なし | 7日以内 | 5日以内 |
| 業務処理状況の報告 | 義務なし | 2週間に1回以上 | 1週間に1回以上 |
| 有効期間 | 制限なし | 3か月以内 | 3か月以内 |
レインズの登録期限は、媒介契約の締結日の翌日から起算し、宅建業者の休業日は算入しません。
週末が休業日であれば、その分だけ実日数は延びます。ただしこれは猶予であって、遅らせてよい理由ではありません。登録が遅れれば、その間の販売機会を失います。締結したその日に登録するのが実務です。
有効期間の扱い
専任・専属専任の有効期間は3か月を超えられません。3か月を超える定めをしても、3か月に短縮されます。契約自体が無効になるわけではありません。
更新は、依頼者からの申出によって行います。自動更新の特約は無効です。期間満了が近づいたら、依頼者に更新の意思を確認し、書面で残してください。
媒介契約書に書くこと
宅地建物取引業法第34条の2により、媒介契約を締結したときは、遅滞なく、書面を作成して記名押印し、依頼者に交付しなければなりません。依頼者の承諾を得れば電磁的方法でも提供できます。
| 記載事項 | 実務上の注意 |
|---|---|
| 物件を特定するための表示 | 登記事項証明書のとおりに |
| 売買すべき価額または評価額 | 意見を述べるときは根拠を示す義務がある |
| 媒介契約の種類 | 専任・専属専任なら、その旨と制限内容 |
| 既存建物の建物状況調査を実施する者のあっせん | あっせんの有無を明示する |
| 有効期間・解除に関する事項 | 専任系は3か月以内 |
| レインズへの登録に関する事項 | 登録の有無と期限 |
| 報酬に関する事項 | 額と、受領の時期 |
| 依頼者が義務に違反した場合の措置 | 違約金・費用償還の定め |
| 標準媒介契約約款に基づくか否か | 基づかない場合はその旨 |
売買すべき価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければなりません。宅地建物取引業法第34条の2第2項です。
「相場ですと〜くらいです」だけでは足りません。取引事例、公示価格、路線価、収益還元など、用いた資料と算出の考え方を示します。口頭でも足りますが、後の争いに備えて査定書として書面で残すのが実務です。
報酬の上限
報酬は、国土交通大臣の告示で上限が定められています。これを超えて受領することはできません。
| 売買代金(税抜) | 報酬額の上限(税抜) |
|---|---|
| 200万円以下の部分 | 5パーセント |
| 200万円超400万円以下の部分 | 4パーセント |
| 400万円超の部分 | 3パーセント |
実務では「(代金×3%+6万円)×消費税」の簡便式が使われますが、これは400万円を超える場合の計算結果を一つの式にまとめたものです。400万円以下では成り立ちません。
低廉な空家等の特例
低額な物件は、通常の物件と同じだけ現地調査等の手間がかかるにもかかわらず、報酬が見合わないという問題がありました。そのため特例が設けられています。
2024年(令和6年)7月1日から、対象が「400万円以下」から「800万円以下」に拡大されました。通常の媒介と比較して現地調査等の費用を要するものについて、売主・買主それぞれから30万円(+消費税)を上限に受領できます。
受領するには、あらかじめ依頼者に説明し、合意を得ておく必要があります。媒介契約の締結時に説明してください。空き家を扱う機会が増えている以上、押さえておくべき改正です。
賃貸についても、長期の空家等の媒介では借賃の2か月分(+消費税)を上限とする特例があります。
実務で揉めやすい場面
専任なのに、他社経由で成約した
依頼者が専任媒介の義務に違反して他社に依頼し、そこで成約した場合、約款に基づき違約金を請求できます。標準媒介契約約款では、報酬額に相当する金額とされています。
ただし、請求するには媒介契約書を交付し、制限内容を説明していたことが前提です。書面がなければ主張が難しくなります。
専属専任なのに、依頼者が直接売った
専属専任では、依頼者が自ら発見した相手と直接契約することもできません。違反した場合、約款上は報酬相当額を請求できます。
この制限は、契約時に必ず口頭でも説明してください。書面に書いてあるだけでは、後から「知らなかった」と言われます。
一般媒介で、明示型か非明示型か
一般媒介には、他社への依頼状況を明示する義務がある明示型と、その義務がない非明示型があります。標準約款では明示型が原則です。
明示型で、依頼者が明示しなかった他社経由で成約した場合、費用の償還を請求できる旨が約款に定められています。どちらの型かを契約書で明確にしてください。
有効期間が切れたまま活動を続けている
期間満了後も、更新の手続きをせずに販売活動を続けている例があります。この状態では、成約しても報酬請求の根拠が曖昧になります。期間管理を怠らないでください。
建物状況調査(インスペクション)のあっせん
既存建物の媒介では、建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項を媒介契約書に記載しなければなりません。
あっせんの有無を「無」とする場合も、その旨を記載します。あっせんの依頼があったのに応じなかった、という事態にならないよう、依頼者の意向を確認して記録してください。
- 媒介契約の種類を、義務の違いとともに説明した依頼者の自由度だけでなく、業者側の義務も
- 媒介契約書を遅滞なく作成し、記名押印して交付した
- 有効期間が3か月以内になっているか確認した専任・専属専任の場合
- 自動更新の特約になっていないか確認した
- 価額について意見を述べた場合、根拠を示した査定書として書面で残す
- レインズへの登録期限を確認した専任7日/専属専任5日、休業日を除く
- 登録証明書を依頼者に交付した
- 報告の頻度を確認した専任2週に1回/専属専任1週に1回
- 報告の内容と日付を記録に残した
- 報酬の上限を確認した400万円以下は簡便式が使えない
- 低廉な空家等の特例に該当するか確認した800万円以下。事前の説明と合意が必要
- 建物状況調査のあっせんの有無を記載した
- (一般媒介)明示型か非明示型かを明確にした
- 専任・専属専任の制限内容を口頭でも説明した
- 有効期間の満了日を管理している
まとめ
- 三種類の違いは、依頼者の自由度ではなく、業者側に課される義務の重さ。
- レインズ登録は専任7日・専属専任5日以内(休業日を除く)。報告は2週に1回・1週に1回。
- 専任・専属専任の有効期間は3か月以内。自動更新の特約は無効で、更新は依頼者の申出による。
- 価額に意見を述べるときは根拠を示す義務がある。査定書として書面に残す。
- 低廉な空家等の特例は2024年7月から800万円以下に拡大。事前の説明と合意が要る。
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