地盤と水 ── 事故の原因は、たいてい水にある

この記事の要点
  • 地盤の事故は、たいてい水が絡んでいる
  • 土は粒と隙間でできている。隙間に何が入るかで性質が変わる
  • 擁壁が倒れる原因の多くは背面に溜まった水
  • 現地では水がどこへ行くかを見る

液状化も、沈下も、擁壁の崩壊も、斜面の崩れも。別々の現象に見えて、根は同じです。

水がどう動いたか。これで説明がつきます。

この記事では、その見方を実務の観察に落とします。

土は、隙間でできている

三つのものが混ざっている
内容
土粒子 砂、シルト、粘土。固体の部分
水 隙間を満たす
空気 残りの隙間

土の強さは、粒どうしが噛み合うことで生まれます。

その噛み合いを支えているのが、粒が互いに押し合う力です。

ところが、隙間の水の圧力が上がると、この押し合う力が減ります。

これが、地盤の事故に共通する仕組みです。

粒の大きさで、水の動きが変わる

土質 水の抜けやすさ 起きやすいこと
砂・礫 抜けやすい 液状化
シルト 中間 両方
粘土 抜けにくい 長期の沈下

砂は水をすぐ通し、粘土はなかなか通しません。

この違いが、現象の出方を分けます。

液状化 ── 水が支配権を奪う

砂が水に浮く

地下水位が高く、緩く堆積した砂の地盤で起こります。

地震の揺れで砂粒がずれ動こうとすると、隙間の水が逃げ場を失って圧力が上がります。

粒どうしの押し合う力が失われ、土全体が液体のようにふるまいます。

起きること
建物が沈む・傾く 支える力を失う
軽いものが浮く マンホール、地下タンク、浄化槽
噴砂 地面から砂まじりの水が噴き出す
側方流動 傾斜地や護岸の近くで、地盤が横に動く

起きやすい場所には共通点があります。

  • 埋立地、干拓地
  • 旧河道、旧池・沼を埋めた土地
  • 砂丘の裾、砂州
  • 河川や海に近い低地
  • 造成の盛土

古い地図と空中写真で、以前そこが何だったかを確かめてください。

沈下 ── 水が抜けていく

粘土は、時間をかけて縮む

粘土の地盤に建物を載せると、隙間の水がゆっくり押し出されます。

水が抜けた分だけ、土は縮み、地盤が沈みます。

特徴
速度 年単位で続く
終わり 水が抜けきるまで止まらない
不同沈下 場所によって沈む量が違うと、建物が傾く

建てた直後は問題がなくても、数年後に不具合が出ます。

扉が閉まらない、壁に斜めのひび割れ、床の傾き。これらは沈下の兆候です。

とくに危ないのは、境目

切土と盛土にまたがる敷地

斜面を造成すると、削った側(切土)と盛った側(盛土)ができます。

この二つは、性質がまったく違います。

状態
切土 もとの地盤。締まっている
盛土 人が積んだ土。締固めの程度による

一つの敷地が両方にまたがると、沈み方が違って建物が傾きます。

さらに、境目には水が集まりやすいという問題があります。切土面を伝って流れてきた水が、盛土の中に入り込みます。

造成前の地形図と、現在の地形を比べてください。

大規模な盛土造成地については、自治体が調査してマップを公表している場合があります。

擁壁 ── 背面の水が押す

土だけでなく、水も押している

擁壁が受ける力は、背面の土の重さだけではありません。

雨水が背面に溜まると、水の圧力が加わります。これが決定的な差を生みます。

だから、擁壁には水抜き穴があります。

点検するところ 見るもの
水抜き穴 詰まっていないか。数はあるか
穴から出るもの 土砂が出ていれば、背面が流出している
壁面 はらみ、ひび割れ、目地のずれ
白い筋 内部を水が通っている印
上部の地面 沈み、亀裂
下部 排水溝の詰まり、洗掘

水抜き穴から土砂が出ているのは、危険な兆候です。

背面の土が少しずつ流れ出し、内部に空洞ができています。

古い擁壁は、基準が違う

  • 造られた時期の基準による
  • 玉石積み、間知石積みなど、現行の基準に合わないもの
  • 二段になっている 上下で所有者が違うことがある
  • 増積み 既存の擁壁の上に足している
  • 設計図書が残っていない

宅地造成及び特定盛土等規制法の区域内かどうかを確認してください。

また、造成宅地防災区域の指定があれば、重要事項説明の対象です。

斜面 ── 水が入ると重く、滑りやすくなる

雨で起きること
土が重くなる 水を含んだ分、滑らせる力が増す
粒どうしの力が減る 滑りに抵抗する力が落ちる
水みちができる 特定の層に沿って水が流れる

崩れるのは、雨が降っている最中とは限りません。

水が地中に浸み込むには時間がかかるため、雨がやんだ後に崩れることがあります。

現地で見るもの

  • 湧水 斜面の途中から水が出ている
  • 湿った場所が、いつも同じところにある
  • 木が根元から曲がっている ゆっくり動いている印
  • 斜面上部の亀裂
  • 過去の崩壊の跡
  • 排水路が斜面に向いている

土砂災害警戒区域等の指定を、必ず確認してください。

調査で確かめること

調べるもの 分かること
一 地形分類 低地か台地か、旧河道か
二 古地図・空中写真 以前そこが何だったか
三 造成の履歴 切土か盛土か、境目はどこか
四 ボーリングデータ 土質と地下水位
五 ハザードマップ 浸水、土砂災害、液状化
六 区域指定 造成宅地防災区域など
七 現地 水がどこへ行くか
現地では、水の行き先を追う

雨が降ったとき、その水はどこへ行くか。

  • 敷地の高低差はどちらを向いているか
  • 周囲から水が入ってこないか
  • 排水先はあるか。側溝、水路
  • 水たまりの跡
  • 植生の違い 湿った場所には特有の植物が生える
  • 近隣の擁壁・工作物の状態

晴れた日だけでなく、雨の後にも見てください。

そのとき初めて分かることがあります。

説明の仕方

避けるべき言い方 適切な言い方
「地盤は問題ありません」 「資料の範囲では確認されていません。調査は建築の際に行われます」
「液状化しません」 「マップ上はこの区分です。詳細は地盤調査でご確認ください」
「擁壁は大丈夫です」 「外観からはこう見えます。専門家の点検をお勧めします」
「地盤改良すれば解決します」 「工法と費用は、調査の結果によります」

地盤の安全性を、業者が断定しないでください。

判断には調査が要り、その調査にも範囲と限界があります。

水と地盤に関する確認
  • 地形分類を確認した低地・台地・旧河道
  • 古地図・空中写真で、以前の状態を確認した
  • 切土と盛土の境目がないか確認した
  • 大規模盛土造成地のマップを確認した
  • ボーリングデータで地下水位を確認した
  • 液状化に関するマップを確認した
  • 土砂災害警戒区域等の指定を確認した
  • 造成宅地防災区域の指定を確認した
  • (擁壁)水抜き穴の詰まりと、出てくる土砂を見た
  • (擁壁)はらみ・ひび割れ・白い筋を見た
  • (擁壁)所有関係と、増積みの有無を確認した
  • (斜面)湧水・湿った場所・木の傾きを見た
  • 現地で、水の行き先を追った
  • 雨の後にも見た
  • 地盤の安全性を断定していない

まとめ

  • 液状化も沈下も擁壁の崩壊も、水の動きで説明がつく。
  • 砂は液状化、粘土は長期の沈下。粒の大きさで現象が分かれる。
  • 切土と盛土の境目は、沈み方が違い、水も集まる。
  • 擁壁の水抜き穴から土砂が出ていれば、内部に空洞ができている。
  • 現地では、雨の水がどこへ行くかを追う。雨の後にも見る。
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