CHIOU / 株式会社地央

断層と不動産 ── 調べられること、調べられないこと

この記事の要点
  • 活断層の真上でも、建築を禁じる法律は原則としてない
  • 被害の大半は揺れによるもの。断層から離れていても起きる
  • 地盤の性質のほうが、日常的には影響が大きい
  • 調べられることは限られる。分かる範囲と、分からない範囲を伝える

「この土地は活断層の近くですか」と聞かれることがあります。熊本では、とくに多い問いです。

答えるには、何が調べられて、何が調べられないかを整理しておく必要があります。

この記事では、断層に関する情報の扱い方を実務の観点から整理します。

まず、規制の有無

活断層を理由とする建築制限は、原則としてない

土砂災害や浸水については、区域が指定され、建築や開発が制限される仕組みがあります。

活断層には、これに相当する全国的な制度がありません。

扱い
建築の可否 活断層を理由に禁じる法律は、原則としてない
区域の指定 災害関係の区域指定のような制度はない
条例 一部の自治体が独自の制度を設けている例がある

したがって、「活断層の上だから建てられない」ということは通常ありません。

ただし、その自治体が独自の定めを置いている可能性はあります。該当しそうな場合は、窓口で確認してください。

どこで調べられるか

情報 提供元
活断層の位置 国の研究機関が公表する図面・データベース
長期評価 地震調査研究推進本部
揺れやすさ 都道府県・市町村の地震被害想定
地盤 地形分類図、ボーリングデータ
過去の被害 自治体の記録、災害誌
線の太さに意味がある

公表されている活断層の図は、一本の細い線として描かれているわけではありません。

  • 位置に幅がある 地下の構造を推定しているため
  • 確実度に段階がある 確実なもの、推定されるもの
  • 地表に現れていない断層がある
  • まだ知られていない断層がある

「この地図で線が引かれていないから、断層はない」とは言えません。

近年の大きな地震でも、事前に知られていなかった断層が動いた例があります。

被害の大半は、揺れによるもの

断層から離れていても、被害は出る

地震による建物の被害は、次の要因から生じます。

要因 内容
揺れ 最も広範囲に及ぶ。距離があっても伝わる
地盤の増幅 軟弱な地盤では揺れが大きくなる
液状化 砂質の地盤、地下水位が高い場所
斜面の崩壊 造成地の盛土、擁壁
地表のずれ 断層の直上に限られる

建物への影響という点では、揺れと地盤の条件のほうが重要です。

断層からの距離だけを気にして、地盤の状態を見ないのは本末転倒です。

実際、大きな地震では断層から離れた場所でも、地盤の悪い地域に被害が集中しています。

だから、確認すべきはこちら

  • 地形分類 台地か、低地か、盛土か
  • 造成の履歴 切土か盛土か、その境目か
  • 地下水位
  • 擁壁の状態と、その規模
  • 建物の建築時期と耐震性

これらは、断層の情報より具体的で、対処もできます。

熊本での実務

2016年の地震を経て

熊本では、断層に関する問い合わせが取引の場面で出ます。

県内には複数の活断層帯があり、その位置は公表されています。

実務上、次のような場面があります。

  • 買主から、断層との位置関係を尋ねられる
  • 擁壁や造成地の安全性を確認したい
  • 被災した建物の修復履歴を知りたい
  • 液状化の可能性を確認したい
  • 宅地の変形に関する対策の履歴

被災地域では、修復や補強の履歴が資産の評価に関わります。

罹災証明の区分、修復の内容、公的支援の利用状況。売主に確認し、記録があれば引き継いでください。

説明の仕方

断定も、否定もしない
避けるべき言い方 適切な言い方
「断層から離れているので安全です」 「公表されている断層の位置はこうです。揺れは距離があっても伝わります」
「活断層の上なので危険です」 「この図面ではこの位置です。建築の制限は設けられていません」
「地震は来ないでしょう」 「予測はできません。建物の耐震性と地盤を確認しましょう」
「地図に線がないので断層はありません」 「この図では確認されていません。未知の断層の可能性は残ります」

宅地建物取引業者が、地震の危険性について断定的な判断を示すことは避けてください。

示せるのは、公表されている情報と、その出典です。

そのうえで、調べれば分かることと、分からないことを切り分けて伝えてください。

重要事項説明との関係

活断層そのものについて、一般的な説明義務は定められていません。

ただし、次は説明の対象になります。

  • 造成宅地防災区域の指定
  • 土砂災害警戒区域等の指定
  • 水防法に基づく浸水想定区域内であること
  • その他、法令に基づく制限

また、買主が明示的に関心を示した事項について、知りながら告げないことは問題になりえます。

聞かれたら、分かる範囲を正確に答え、根拠を示してください。

建物側の対処

地盤や断層は動かせませんが、建物の側でできることはあります。

対処 内容
耐震性の確認 建築確認の時期、診断の結果
耐震改修 補助制度がある市町村が多い
地盤の補強 液状化対策を含む
擁壁の点検 ひび割れ、はらみ、水抜き
家具の固定 建物が無事でも被害は出る
地震保険 付保の検討
お金をかける順序

限られた予算で何から手を付けるか。

  1. 建物の耐震性 命に直結する
  2. 擁壁など、崩れると周囲に及ぶもの
  3. 地盤の補強 費用が大きい
  4. その他

地盤の改良は高額になりがちで、既存の建物では選択肢が限られます。

新築や建て替えの機会があれば、そのときに地盤調査を行い、必要な対策を組み込むのが現実的です。

調べる手順

すること
公表されている活断層の図で、位置関係を確認する
自治体の地震被害想定を確認する
地形分類を確認する台地・低地・盛土
古い地図と航空写真で、造成前の状況を見る
近隣のボーリングデータを探す
造成宅地防災区域等の指定を確認する
現地で擁壁・地盤の状態を見る
建物の建築時期と、被災・修復の履歴を確認する
断層と地盤に関する確認
  • 公表されている活断層の図で位置関係を確認した
  • 線に幅と確実度があることを踏まえた
  • 自治体の地震被害想定を確認した
  • 地形分類を確認した断層より影響が大きいことがある
  • 造成の履歴を、古い地図・航空写真で確認した
  • 造成宅地防災区域等の指定を確認した
  • 擁壁の状態を現地で見た
  • 建物の建築確認の時期を確認した
  • (被災地域)罹災証明と修復の履歴を確認した
  • 耐震改修の補助制度を確認した
  • 安全とも危険とも断定していない
  • 示した情報の出典を明らかにした

まとめ

  • 活断層を理由とする建築制限は、原則としてない。自治体の独自制度は確認する。
  • 公表されている図の線には幅と確実度がある。未知の断層もある。
  • 被害の大半は揺れによるもの。断層からの距離だけでは判断できない。
  • 地形分類、造成履歴、擁壁の状態のほうが、確認できて対処もできる。
  • 安全とも危険とも断定せず、公表情報と出典を示す。
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