CHIOU / 株式会社地央

公的不動産の活用 ── 売る前に、決めること

この記事の要点
  • まず何をいくつ持っているかを把握する。ここで止まる自治体が多い
  • 売る・貸す・使い続けるの三択ではない。組み合わせがある
  • 行政財産と普通財産でできることが違う
  • 公募の前に、民間に聞く手続きがある

使われていない庁舎、統廃合した学校、余っている土地。自治体は多くの不動産を持っています。

維持費はかかり続け、老朽化は進みます。一方で、簡単には手放せません。

この記事では、公的不動産をどう扱うかを、手続きの側から整理します。

まず、把握する

一覧がない自治体が多い

活用を考える前に、何を持っているかが分かっていない。ここで止まることがよくあります。

把握すること
所在と面積 登記と現況が合っているか
取得の経緯 寄附か、買収か、国からの移管か
財産の種別 行政財産か普通財産か
所管する部局 教育委員会、水道局など、庁内で分かれている
現在の使われ方 使っていない部分はどこか
維持費 光熱水費、警備、点検、修繕
建物の状態 耐震、老朽化、法適合
法令上の制限 用途地域、都市計画施設、補助金の条件

所管が分かれていることが、把握を難しくします。

財政課、管財課、教育委員会、それぞれが別々に管理している。横断的に見る仕組みがなければ、全体像が出てきません。

公共施設等総合管理計画

多くの自治体が、保有する施設の全体を対象とした計画を策定しています。

  • 施設の総量と、将来の更新費用の見通し
  • 維持できるかどうかの判断
  • 統廃合、複合化、長寿命化の方針
  • 個別施設ごとの計画

その自治体の計画を、まず確認してください。方針が既に示されている場合があります。

行政財産と普通財産

できることが違う
行政財産 普通財産
性格 公用・公共用に供している それ以外
売却 原則できない できる
貸付け 制限がある できる
使わせ方 目的外使用の許可 賃貸借契約
私権の設定 原則できない できる

売ったり長期に貸したりするには、まず用途廃止して普通財産にする必要があります。

この手続きに議決が要る場合があります。時期の制約になります。

ただし、行政財産のままでも一定の範囲で貸し付けられる仕組みが設けられています。庁舎の空きスペースに店舗を入れる、といった形です。

選べる形

特徴
売却 収入が入る。以後の関与がなくなる
貸付け 所有を残したまま収入を得る
定期借地 期間を定めて貸し、返してもらう
複合化 公共施設と民間施設を同じ建物に
用途変更して使い続ける 学校を福祉施設に、など
解体して更地に 費用がかかる。次の用途が要る
売却が最善とは限らない

一度売れば、その土地に対して自治体は何も言えなくなります。

  • 想定と違う用途に使われる
  • 周辺住民が反発する
  • 転売される
  • 将来必要になっても、買い戻せない

用途を縛りたいなら、貸付けか定期借地が向きます。

売る場合でも、用途指定や買戻しの特約を付ける方法があります。ただし、その分だけ買い手が限られ、価格も下がります。

民間に聞く手続き

公募の前に、意向を確かめる

条件を決めてから公募して、誰も応募しない。これがよく起きます。

そこで、公募の前に民間の意向を聞く手続きが用いられます。

内容
目的 どういう条件なら参加できるかを聞く
時期 条件を固める前
相手 広く募る。特定の事業者に限らない
扱い 聞いた内容を、条件の設定に反映する

公平性に注意が要ります。

  • 特定の事業者だけに聞かない
  • 聞いた内容が、その事業者に有利な条件にならないようにする
  • 実施したことと、その概要を公表する
  • 後の公募で、参加を妨げない

「先に話を聞いた事業者が有利」と見られると、公募が成立しません。

条件を決めるとき

  • 用途の制限は、厳しくするほど応募が減る
  • 期間 短いと投資を回収できない
  • 賃料・価格の水準
  • 既存建物を使う場合、改修の負担
  • 解体が必要なら、誰が費用を負うか
  • 原状回復の範囲
  • 撤退したときの扱い

条件を厳しくすれば、地域の望む形になりますが、担い手がいなくなります。

どこまで譲れるかを、先に整理してください。

止まりやすい箇所

四つ
内容
補助金の条件 国庫補助を受けて建てた施設は、処分に制限がある
寄附の経緯 「学校用地として」寄附された土地は、他用途に使いにくい
住民の反対 特に学校跡地は、地域の記憶と結びつく
庁内の調整 所管部局が手放したがらない

一つ目と二つ目は、登記や契約書を見ないと分かりません。

取得の経緯を遡って調べてください。財産処分の承認手続きが必要になる場合があります。

三つ目については、早い段階から地域と話してください。方針が固まってからでは、反発だけが残ります。

不動産業者・専門職の関わり方

できること
現況の把握 登記と現況の照合、境界の確認
法令の確認 用途地域、都市計画施設、開発許可の見通し
測量・分筆 一部だけ売る・貸す場合
価格の資料 近傍の取引事例、公的価格
市場性の見立て その条件で、借り手・買い手がいるか
契約書の設計 用途指定、買戻し、原状回復

境界が未確定の公有地は、少なくありません。

売却や貸付けの前に、確定測量が要ります。隣接地に民有地があれば、立会いに時間がかかります。

この期間を工程に入れずに公募の日程を組むと、間に合わなくなります。

公的不動産の活用に関する確認
  • 公共施設等総合管理計画の方針を確認した
  • 行政財産か普通財産か確認した
  • 用途廃止の手続きと時期を確認した
  • 取得の経緯を遡って調べた補助金・寄附の条件
  • 財産処分の承認が必要か確認した
  • 所管部局を洗い出した
  • 登記と現況を照合した
  • 境界の確定状況を確認した
  • 確定測量の期間を工程に入れた
  • 用途地域・都市計画施設を確認した
  • (公募前)民間の意向を聞く手続きを検討した
  • (公募前)公平性に配慮した
  • 条件の厳しさと、応募の見込みを見比べた
  • 早い段階から地域と話した

まとめ

  • 活用の前に、何を持っているかの把握で止まる自治体が多い。
  • 行政財産と普通財産でできることが違う。売るには用途廃止が要る。
  • 売却が最善とは限らない。用途を縛るなら貸付けか定期借地。
  • 公募の前に民間の意向を聞く。ただし公平性に配慮する。
  • 補助金と寄附の条件は、登記や契約書を遡らないと分からない。
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