CHIOU / 株式会社地央

収益物件の経済的調査 ── レントロールの、裏を取る

この記事の要点
  • レントロールは売主が作った書類。契約書と突き合わせる
  • 紙の上のテナントが、実際に営業しているとは限らない
  • 見るべきは満室想定ではなく入金の実績
  • テナントの信用は、物件の収益力そのもの

収益物件の資料に、年間賃料と利回りが書いてあります。

その数字は、どこから来たのか。誰が、何をもとに作ったのか。

この記事では、数字の裏を取る手順を整理します。

レントロールを疑う

売主が作った書類である

レントロールは、テナントの契約内容を一覧にした表です。

売買の資料として最も重視されますが、作成しているのは売主または管理会社です。公的な書類ではありません。

突き合わせる先 確認すること
賃貸借契約書 賃料、共益費、契約期間、更新条件
入金の記録 実際に払われているか
現地 そのテナントが実在するか
敷金の預り 金額と、引き継ぎの方法
滞納の有無 いつから、いくら

一つでも欠けている資料があれば、その理由を尋ねてください。

「契約書が見当たらない」という区画は、たいてい何かあります。

よくあるずれ

  • 記載のテナントがすでに退去している
  • 賃料が契約書と違う 減額に応じた経緯が反映されていない
  • フリーレント期間が終わった前提で書かれている
  • 売主の関係会社が、相場より高く借りている
  • 短期の契約を、長期のように見せている
  • 滞納があるのに、満額で計上されている

四つ目に注意してください。

売却前に身内を入居させ、利回りを高く見せる形があります。引渡し後に退去すれば、空室に戻ります。

賃借人の名義と、売主との関係を確認してください。

入金の実績を見る

満室想定ではなく、実際に入った額
意味
満室想定賃料 すべて埋まった場合の理論値
契約賃料の合計 いま契約されている分
実際の入金額 滞納を差し引いた、本当の収入

資料に載っている利回りは、多くが一つ目で計算されています。

三つ目との差が、その物件の実力です。

過去2〜3年ぶんの入金記録を求めてください。

  • 通帳の写し、または会計帳簿
  • 月ごとの入金額の推移
  • 空室になった時期と、埋まるまでの期間
  • 修繕費、原状回復費の実額
  • 管理費、清掃費、保守点検の費用

収入だけでなく、支出の実績も見てください。

資料の「経費」が、実際にかかっている額より小さく見積もられていることがあります。

合意された手続で確認する

大きな案件では、売主と買主が合意した範囲で、会計の専門家が数字を検証する方法が取られます。

  • 何を、どこまで調べるかを事前に合意する
  • 監査ではないので、意見は表明されない
  • 結果は「調べた範囲で、こうだった」という報告
  • 範囲外のことは分からない

報告書を受け取ったら、まず「何を調べなかったか」を確認してください。

現地で確かめる

書類だけでは分からない
見るもの 分かること
看板、表札 レントロールの名義と一致するか
営業しているか 実際に使われているか
郵便受け 溜まっていれば、使われていない
電気メーター 動いているか
共用部の状態 管理の質が出る
駐輪場、駐車場 実際の居住・利用の状況
ごみ置き場 入居者の様子

時間帯を変えて、複数回行ってください。

夜に窓の明かりがいくつ点いているかで、実際の入居がおよそ分かります。

飲食店なら、営業時間中に行ってください。閉まったままの区画があれば、確かめる理由になります。

テナントの信用

収益力は、テナントの体力で決まる

賃料は、テナントが払い続けられて初めて収入になります。

見るもの
業種 景気や規制の影響を受けやすいか
入居からの期間 長ければ定着している
支払いの履歴 遅れたことがあるか
賃料の負担率 売上に対して重すぎないか
一社への依存 大口が抜けたときの影響
保証会社の有無 滞納時の回収

五つ目が、収益物件の最大のリスクです。

一棟の賃料の半分を一社が占めていれば、その一社が抜けた時点で収支が崩れます。

その契約の残存期間と、中途解約の条件を必ず確認してください。

売主の事情も見る

  • なぜ売るのか
  • いつから売りに出ているか 長ければ、理由がある
  • 価格を下げてきた経緯
  • 差押えや仮登記がないか
  • 敷金を確実に引き継げるか

売主が資金繰りに窮していれば、敷金の引継ぎが滞る危険があります。

引渡しの際、敷金相当額を代金から差し引く方法が取られることがあります。

賃貸市場の見方

確認すること
周辺の募集賃料 いまの賃料は相場と合っているか
空室率 その地域、その規模で
募集期間 埋まるまでどのくらいかかるか
競合の供給 近くに新築の計画がないか
需要の源 大学、工場、病院。撤退すれば需要が消える
いまの賃料が相場より高いとき

更新や入替えのときに、下がります。

古い契約が高い賃料のまま続いているだけ、という場合があります。

  • そのテナントが抜けたら、いくらで募集できるか
  • 相場に合わせた場合の収支
  • その差が、購入価格に反映されているか

「いまの利回り」ではなく「相場賃料での利回り」で確かめてください。

説明の仕方

避けるべき言い方 適切な言い方
「利回り◯%です」 「満室想定での数字です。実績はこうです」
「満室なので安定しています」 「契約の残存期間と解約条件をご確認ください」
「このエリアは需要があります」 「募集賃料と空室率の資料をお示しします」
「レントロールのとおりです」 「契約書と入金記録で突き合わせました」

収益の予測を、業者が保証しないでください。

示すのは、調べた事実とその出典です。

経済的な調査に関する確認
  • レントロールを賃貸借契約書と突き合わせた
  • 契約書が揃わない区画の理由を尋ねた
  • 過去2〜3年の入金記録を確認した
  • 滞納の有無と、その期間を確認した
  • 支出の実績(修繕・原状回復・管理)を確認した
  • 賃借人と売主の関係を確認した
  • 現地で、看板・営業状況・郵便受けを見た
  • 時間帯を変えて複数回行った
  • 大口テナントの残存期間と解約条件を確認した
  • 一社への依存度を確認した
  • 敷金の引継ぎ方法を確認した
  • 差押え・仮登記の有無を確認した
  • 相場賃料での利回りを試算した
  • 周辺の募集賃料と空室率を確認した
  • 利回りを保証していない

まとめ

  • レントロールは売主が作った書類。契約書と入金記録で突き合わせる。
  • 資料の利回りは満室想定。実際に入った額との差が実力。
  • 売主の関係会社が高く借りていないか、名義を確認する。
  • 一社への依存度が、収益物件の最大のリスク。
  • いまの賃料が相場より高ければ、入替えで下がる。相場で試算する。
この内容を、研修・講座として。

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