品確法 ── 10年間の責任と、性能表示
- 柱は三つ。性能表示制度・10年の瑕疵担保責任・住宅紛争処理
- 10年責任の対象は構造耐力上主要な部分と、雨水の浸入を防止する部分の二つ
- 性能表示制度は任意。義務ではない。評価を受けていない住宅も多い
- 10年責任と、その履行を確保する仕組みは別の法律(住宅瑕疵担保履行法)
「新築だから10年保証がありますよね」。よく聞く言い方ですが、何が10年なのかを説明できるでしょうか。
対象となる部分は限られています。すべての不具合が10年間カバーされるわけではありません。設備の故障も、内装の傷も対象外です。
この記事では、品確法の三つの柱と、実務で説明すべき範囲を扱います。
三つの柱
正式名称は住宅の品質確保の促進等に関する法律。2000年に施行されました。
| 柱 | 内容 | 性質 |
|---|---|---|
| 住宅性能表示制度 | 住宅の性能を共通のものさしで評価・表示する | 任意 |
| 瑕疵担保責任の特例 | 新築住宅の一定部分について10年間の責任 | 強行規定 |
| 住宅紛争処理 | 指定住宅紛争処理機関による紛争解決 | ― |
三つ目が抜けている解説をよく見かけます。紛争が起きたときの受け皿まで含めて、この法律の設計です。
10年の瑕疵担保責任
対象は二つの部分
10年間の責任が及ぶのは、次の二つです。
| 対象 | 具体例 |
|---|---|
| 構造耐力上主要な部分 | 基礎、基礎ぐい、壁、柱、小屋組、土台、斜材、床版、屋根版、横架材のうち、荷重や地震等を支えるもの |
| 雨水の浸入を防止する部分 | 屋根・外壁の仕上と下地、開口部に設ける戸・わく等、屋根や外壁の内部・屋内にある雨水の排水管 |
後者を落とすと、雨漏りが対象になる理由を説明できません。実務で最も多い相談は雨漏りです。この部分が対象であることを、必ず押さえてください。
対象外のもの
- 給湯器、エアコン、換気設備などの設備機器
- 内装の仕上げ、建具の調整
- クロスの継ぎ目、木材の乾燥収縮による隙間
- 引渡し後の使用状況による損傷
「新築だから10年間なんでも直してもらえる」ではありません。設備には別途、施工会社やメーカーの保証が付くのが通常です。それぞれの保証期間を確認して伝えてください。
「新築住宅」の定義
品確法上の新築住宅とは、建設工事の完了の日から1年を経過しておらず、かつ、まだ人の居住の用に供したことのないものです。
完成から1年を過ぎた未入居住宅は、品確法上の新築住宅に当たりません。10年責任の対象外です。売れ残った建売住宅を扱うときに問題になります。必ず完成年月日を確認してください。
特約で短縮できない
この10年の責任を、特約で短縮することはできません。買主に不利な特約は無効です。逆に、20年まで伸長する特約は有効とされています。
請求できる内容
2020年の民法改正に合わせて品確法も改正され、追完請求(修補)、代金減額請求、損害賠償、解除を請求できることが整理されました。
履行を確保する仕組みは別の法律
10年の責任があっても、売主や施工者が倒産していれば、実際には修補されません。
この問題に対応するのが特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(住宅瑕疵担保履行法)です。品確法とは別の法律です。
新築住宅を引き渡す建設業者・宅建業者に、保険への加入または保証金の供託を義務づけています。倒産していても、保険法人から直接、修補費用等の支払いを受けられる仕組みです。
買主への説明では、「10年の責任があります」で終わらせず、「その履行を確保する保険等に加入しています」まで伝えてください。保険の加入状況は、重要事項説明の項目でもあります。
性能表示制度
住宅性能表示制度は任意の制度です。すべての住宅が評価を受けているわけではありません。
「品確法によって耐震性や断熱性が標準化されている」という説明は誤りです。評価を受けていない住宅は、等級が付いていません。等級がないことは、性能が低いことを意味するわけでもありません。
二種類の評価書
| 内容 | |
|---|---|
| 設計住宅性能評価書 | 設計図書の段階での評価 |
| 建設住宅性能評価書 | 施工段階と完成時の検査を経た評価 |
両方あるか、設計だけかを確認してください。建設住宅性能評価書があれば、実際の施工まで確認されています。
評価される分野
新築住宅では10の分野が定められています。すべてが必須というわけではなく、必須分野と選択分野に分かれます。
- 構造の安定(耐震等級など)
- 火災時の安全
- 劣化の軽減
- 維持管理・更新への配慮
- 温熱環境・エネルギー消費量
- 空気環境
- 光・視環境
- 音環境
- 高齢者等への配慮
- 防犯
既存住宅も対象になる
性能表示制度には、既存住宅を対象とする評価もあります。現況検査を含む評価が行われます。
「品確法は新築だけの法律」というのは正確ではありません。10年の瑕疵担保責任は新築住宅に限られますが、性能表示制度は既存住宅も対象です。
住宅紛争処理
建設住宅性能評価書が交付された住宅、または住宅瑕疵担保責任保険が付された住宅について、紛争が生じた場合、指定住宅紛争処理機関(各地の弁護士会)に処理を申請できます。
| 手続き | 内容 |
|---|---|
| あっせん | 当事者の話し合いを仲介する |
| 調停 | 調停案を示す |
| 仲裁 | 仲裁判断に従うことをあらかじめ合意して行う |
訴訟より費用と時間の負担が小さくなります。申請手数料も低額に設定されています。
また、住宅リフォーム・紛争処理支援センターが電話相談を受け付けています。買主から相談を受けたときの案内先として、知っておいてください。
耐震等級について
| 等級 | 内容 |
|---|---|
| 等級1 | 建築基準法の水準。極めて稀に発生する地震に対して倒壊・崩壊しない程度 |
| 等級2 | 等級1で想定する地震力の1.25倍に対して倒壊・崩壊しない |
| 等級3 | 等級1で想定する地震力の1.5倍に対して倒壊・崩壊しない |
「震度いくつまで耐えられる」という表現は使わないでください。等級は震度で定義されていません。建物の被害は、地震の規模だけでなく、地盤、揺れの周期、建物の状態によって変わります。
長期優良住宅との関係
長期優良住宅は、長期優良住宅の普及の促進に関する法律に基づく別の制度です。認定にあたって、品確法の性能表示制度の等級が基準として用いられます。
認定基準は改正されています。省エネルギー性については、断熱等性能等級5かつ一次エネルギー消費量等級6が求められる水準に引き上げられました。古い資料の「断熱等級4」は現行と一致しません。
住宅ローン控除との関係
住宅ローン控除の要件を定めているのは租税特別措置法です。品確法ではありません。
借入限度額が住宅の性能によって区分されており、認定長期優良住宅、ZEH水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅などの区分があります。その判定に性能表示の等級が使われることはありますが、「品確法に基づく住宅だから控除対象」という関係ではありません。
要件と限度額は改正されます。その時点の制度を必ず確認してください。
実務での確認
新築を扱うとき
- 建設住宅性能評価書の有無。設計評価だけか、建設評価もあるか
- 取得している等級(構造の安定、温熱環境、劣化の軽減など)
- 住宅瑕疵担保責任保険の加入状況、保険法人名
- 設備機器の保証期間(品確法の対象外であること)
- 完成年月日(1年以内かつ未入居か)
中古を扱うとき
- 新築時の建設住宅性能評価書が引き継がれているか
- 引渡しから10年以内か。売主が保険に加入していたか
- 既存住宅の性能評価を取得しているか
- 建物状況調査(インスペクション)の実施履歴
引渡しから10年以内の中古住宅であれば、当初の売主に対する責任がまだ残っている場合があります。誰に対して請求できるのかを整理して伝えてください。
説明で気をつけること
| 避けるべき言い方 | 適切な言い方 |
|---|---|
| 「10年間なんでも保証されます」 | 「構造の主要な部分と、雨水の浸入を防ぐ部分が対象です」 |
| 「品確法で耐震性が保証されています」 | 「性能表示は任意です。この住宅は評価を受けています/受けていません」 |
| 「震度7まで耐えられます」 | 「耐震等級○を取得しています」 |
| 「品確法の住宅なので控除対象です」 | 「控除の要件は税制で定められています。区分を確認しましょう」 |
- 10年責任の対象を正確に説明した構造耐力上主要な部分+雨水の浸入を防止する部分
- 対象外のものを伝えた設備機器・内装など
- 設備機器の保証期間を別途確認した
- 完成年月日を確認した1年以内かつ未入居か
- 住宅瑕疵担保責任保険の加入状況を確認した
- 性能表示制度が任意であることを説明した
- 設計評価か建設評価かを確認した
- 取得している等級を確認した
- 耐震等級を震度で言い換えていない
- (中古)新築時の評価書が引き継がれているか確認した
- (中古)引渡しから10年以内か確認した
- (中古)誰に請求できるかを整理して伝えた
- 住宅ローン控除の要件を税制で確認した
- 紛争処理の窓口を案内できるようにした
まとめ
- 柱は三つ。性能表示制度、10年の瑕疵担保責任、住宅紛争処理。
- 10年責任の対象は、構造耐力上主要な部分と、雨水の浸入を防止する部分。設備は対象外。
- 性能表示制度は任意。評価を受けていない住宅も多い。
- 責任の履行を確保する仕組みは、住宅瑕疵担保履行法という別の法律による。
- 耐震等級は震度で定義されていない。「震度いくつまで」と言い換えない。
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