空き家を活用する ── 用途を変えるときに必要なこと

この記事の要点
  • 活用できるかは、建物より土地の条件で決まることが多い
  • 用途を変えると、他の法令が次々に効いてくる
  • 改修費は想定を超える。開けてみないと分からない部分がある
  • 所有者には事情がある。「安く買える物件」として扱わない

空き家を借りて、あるいは買って、宿や店として使う。こうした取組みが各地で行われています。

ただし、住宅として建てられた建物を別の用途で使うには、いくつもの手続きが必要です。

この記事では、活用を検討する際に確認すべきことを、順を追って整理します。

まず、土地の条件を見る

建物より先に、土地を確認する

建物の状態が良くても、土地の条件次第で活用が成り立たないことがあります。

確認するもの 成り立たなくなる例
接道 再建築できない。増改築にも制約が出る
用途地域 その用途の建物を建てられない
市街化調整区域 用途の変更に許可が要る、または認められない
私道 掘削の承諾が得られず、給排水を更新できない
境界 越境がある。確定測量に時間がかかる
災害の区域指定 宿泊施設として使いにくい

とくに接道は、最初に確認してください。

建築基準法上の道路に2メートル以上接していなければ、大規模な改修や増築ができません。

「安く買えたが、結局ほとんど手を入れられなかった」という事態を避けられます。

市街化調整区域の場合

調整区域内の建物を別の用途に変えるには、原則として許可が必要です。

住宅として建てられたものを、店舗や宿泊施設に変えることは、簡単には認められません。

近年、空き家の活用を促す方向での運用が示されている場合もあります。その市町村の窓口で確認してください。

用途変更という手続き

建築基準法上の用途が変わる

建物には、建築確認を受けたときの用途があります。

これを変える場合、一定の規模を超えると確認申請が必要です。

内容
対象 特殊建築物への用途変更で、一定の床面積を超えるもの
特殊建築物 旅館、飲食店、物販店、共同住宅、寄宿舎など
手続き 確認申請
確認申請が不要でも、基準は適用される

規模が小さく確認申請が不要な場合でも、その用途に応じた基準は適用されます。

審査がないだけで、守らなくてよいわけではありません。

後に消防や保健所の検査で、建築基準法上の問題が判明することがあります。

規模にかかわらず、設計者に確認したうえで進めてください。

既存不適格の壁

古い建物は、現行の基準に適合していないことがほとんどです。

用途変更に伴い、現行の基準への適合を求められる項目があります。

  • 避難経路、階段の幅
  • 内装の制限
  • 防火・防煙の区画
  • 採光、換気
  • 耐震性能

これらの改修に、想定を超える費用がかかることがあります。

なお、歴史的な建造物については、条例により建築基準法の一部の適用を除外できる仕組みがあります。該当しそうな建物では、確認する価値があります。

用途ごとに必要なもの

用途 主に関わる法令
賃貸住宅 比較的少ない
シェアハウス 建築基準法上「寄宿舎」として扱われる場合がある。消防法
旅館・簡易宿所 旅館業法、消防法、建築基準法
民泊 住宅宿泊事業法(届出)。日数の上限がある
飲食店 食品衛生法、消防法、用途変更
物販店 用途変更。規模により消防法
事務所・工房 比較的少ない
保育・福祉 各根拠法の基準。要件が厳しい
消防法が、最も費用に響くことがある

用途によって、求められる消防用設備が変わります。

  • 自動火災報知設備
  • 誘導灯
  • 消火器、屋内消火栓
  • スプリンクラー(規模・用途による)
  • 防火管理者の選任

とくに宿泊を伴う用途では、要求される水準が上がります。

古い木造住宅に、これらを後から設置する費用は小さくありません。

用途を決めた段階で、消防署に事前相談してください。設計が固まってからでは、手戻りが大きくなります。

民泊と旅館業の違い

住宅宿泊事業(民泊) 簡易宿所等
手続き 届出 許可
営業日数 年間の上限がある 制限なし
用途地域 住居専用地域でも可能な場合がある 制限がある
条例 自治体が独自に制限を設けている場合がある ―

収支の見込みは、営業できる日数で大きく変わります。

その自治体の条例を必ず確認してください。区域や期間を限定している例があります。

改修費が想定を超える理由

開けてみないと分からない

長く使われていない建物では、外から見えない部分が傷んでいます。

よくあるもの 影響
雨漏りによる構造材の腐朽 柱・梁の補修が必要になる
シロアリ 土台の交換
給排水管の劣化 全面的な更新
電気容量の不足 引込みからの変更
基礎のひび割れ・沈下 補強
残置物 処分費用と、期間

取得の前に、建築士による調査を行ってください。

費用はかかりますが、取得後に判明する損失に比べれば小さいものです。

また、予備費を厚く見込んでください。解体してから追加が判明することは、珍しくありません。

DIYの範囲

自分でできる工事には限りがある

費用を抑えるため、自ら作業を行う例があります。

ただし、資格や届出が必要な工事があります。

  • 電気工事 電気工事士の資格が必要
  • ガス設備 有資格者による施工
  • 給排水 指定給水装置工事事業者による
  • 構造に関わる部分 設計と施工の判断が要る
  • 解体 規模により届出、アスベストへの対応

内装の仕上げや塗装と、これらは区別してください。

無資格の工事は、事故につながるだけでなく、保険の適用や許認可にも影響します。

所有者との向き合い方

「安く買える物件」ではない

空き家の所有者には、それぞれ事情があります。

  • 相続の話し合いがついていない
  • 共有者が多く、判断できない
  • 遠方に住み、状態を把握していない
  • 解体費用を出せない
  • 実家を手放すことへの抵抗

「困っているのだから安く売るはずだ」という前提で臨むと、話は進みません。

実際に必要なのは、状況を整理し、選択肢を示すことです。

  • いまの状態で、何ができて何ができないか
  • 解体した場合の費用と、その後の税負担
  • 使える補助制度
  • 相続の手続きの進め方
  • 売る以外の選択肢(貸す、管理を委託する)

この整理ができる者が、結果として任されます。

法令の名称は正確に

空き家に関する法律の名称は、空家等対策の推進に関する特別措置法です。

「空き家対策特別措置法」ではありません。条文上は「空家」と表記します。

また、この法律は「放置していること」自体に罰則を科すものではありません。

過料の対象となるのは、立入調査を拒んだ場合、報告に応じない場合、命令に違反した場合などです。段階を踏んだ手続きを経ています。

表示に関する注意

「新築同様」とは表示できない

改修した中古住宅を「新築」または「新築同様」と表示することはできません。

「新築」と表示できるのは、建築後1年未満で、かつ居住の用に供されたことがないものに限られます。

誤認を招く表示は、不当表示として問題になります。

改修の内容を具体的に示す。「〇年に全面改修」「給排水管を更新」といった事実で表現してください。

進め方

すること
一 土地の条件を確認する接道・用途地域・区域区分
二 建築士による建物の調査
三 用途を決める
四 用途変更の要否を確認する
五 関係する部局にまとめて相談する建築・消防・保健所
六 改修費を、予備費を含めて見積もる
七 補助制度を確認する着手前に
八 収支を試算する
九 取得・賃借の契約

五番目を早い段階で行ってください。

部局ごとに順に相談すると、後の部局で前提が崩れることがあります。

空き家の活用に関する確認
  • 接道を確認した再建築・増改築の可否
  • 用途地域で、その用途が可能か確認した
  • (調整区域)用途変更の許可の見通しを確認した
  • 私道の掘削承諾を確認した
  • 境界と越境を確認した
  • 建築士による調査を行った
  • 用途変更の確認申請の要否を確認した
  • 既存不適格の是正が必要な項目を確認した
  • 消防署に事前相談した
  • (宿泊)旅館業法か住宅宿泊事業法かを整理した
  • (宿泊)自治体の条例による制限を確認した
  • 改修費に予備費を見込んだ
  • 補助制度を、着手前に確認した
  • 資格が必要な工事を区別した
  • 「新築同様」等の表示を使っていない

まとめ

  • 活用できるかは、建物より土地の条件で決まることが多い。接道を最初に確認する。
  • 用途を変えると、消防法・旅館業法・食品衛生法などが次々に効いてくる。
  • 確認申請が不要な規模でも、その用途の基準は適用される。
  • 改修費は想定を超える。建築士による調査と、厚めの予備費を。
  • 法令名は「空家等対策の推進に関する特別措置法」。放置自体に罰則はない。
空き家の活用について、ご相談ください。

行政書士村上事務所では、用途変更に伴う許認可の申請と関係機関との協議をお引き受けしています。土地家屋調査士として、境界・測量・登記まで一貫して対応できます。
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