CHIOU / 株式会社地央

家の価値は地面で決まる ── 地盤と基礎

この記事の要点
  • 地盤調査の結果は、売買の時点では存在しないことが多い。分かるのは設計段階
  • ただし履歴と地形は買う前に調べられる。旧版地形図、空中写真、地形分類
  • 金額が最も大きいのは擁壁。造り替えは数百万円になることがある
  • 擁壁は現地で自分の目で見られる。傾き、ひび割れ、水抜き穴

建物は直せます。設備は入れ替えられます。しかし、地面の条件は買った後には変えられません。

そして、その費用は広告にも、収支計算にも出てきません。地盤改良費、擁壁の造り替え、造成のやり直し。いずれも建物を建てる段階、あるいは売る段階になって現れます。

この記事では、買う前に何が分かるのか、現地で何を見るのかを扱います。

地盤の情報は、買う時点では揃っていない

時点 分かること
土地の売買 地盤調査の結果はない。周辺情報からの推測のみ
建物の設計 地盤調査を実施。ここで数値が出る
着工前 改良の要否と工法が決まり、費用が確定する
「地盤は問題ありません」と言われたら

調査結果がない段階で、地盤の良し悪しは断定できません。「問題ない」と説明されたら、何を根拠にそう言えるのかを確認してください。

近隣の調査データがある、過去に改良した記録がある、といった根拠があれば別です。根拠のない断定は、後で覆ります。

既存の建物がある土地なら、売主が地盤調査報告書や地盤改良の記録を持っている場合があります。設計事務所や施工業者が保管していることもあります。まず聞いてみてください。

買う前に調べられること

調査結果がなくても、手がかりは無料で手に入ります。

その土地が、以前は何だったか

資料 見るもの
旧版地形図 国土地理院。明治期以降。田、池、川、湿地でなかったか
空中写真 国土地理院。戦後の造成の履歴
地形分類 重ねるハザードマップで表示。谷底低地、氾濫平野、旧河道、埋立地
旧地名 沼、深、池、谷、江、蒲、芦など、水に関わる字

かつて水があった場所は、軟弱な層が厚い可能性があります。これは造成して宅地になった後も残ります。

造成の履歴

盛土か切土かで、性質が変わります。盛土のほうが沈下のリスクが高くなります。

  • 市町村の開発指導課で、開発許可の履歴を確認できます
  • 造成された年代。古い盛土は締まっている一方、施工の記録が残っていないことが多くあります
  • 宅地造成等工事規制区域内かどうか

周辺を見る

近隣の構造物が教えてくれる

専門的な知識がなくても、現地で見て分かることがあります。

  • 周辺のブロック塀が傾いていないか
  • 擁壁にひび割れがないか
  • 道路のアスファルトが波打っていないか
  • 電柱が傾いていないか
  • 玄関が周囲より高く造られていないか(過去に浸水した地域の可能性

一軒だけなら偶然ですが、複数あればその一帯を疑います。歩いて回るだけで得られる情報です。

擁壁 ── 金額が最も大きい

高低差のある土地では、擁壁の状態が最大の費用要因になります。造り替えが必要になれば、数百万円の規模になることがあります。

まず、確認申請を受けているか

擁壁は建築基準法上の工作物にあたります。高さが2メートルを超える擁壁については、確認申請が必要とされています。

確認済証・検査済証があるかを確認してください。ないものは、後から適法性を証明することが難しくなります。

また、宅地造成等工事規制区域内であれば、宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)による許可の対象になっている場合があります。この法律は2023年に、従来の宅地造成等規制法を全面改正する形で施行されました。

現地で見るところ

見るもの 意味
傾き・はらみ 前方に傾いている、中央が膨らんでいる。土圧に負けている
ひび割れ 縦方向、斜め方向のひび。幅と長さを記録する
水抜き穴 詰まっていないか。そもそも開いているか
白い粉(白華) 内部を水が通っている痕跡
上に載っているもの 擁壁の上にさらにブロックを積んでいないか
継ぎ目 途中で構造が変わっていないか
二段擁壁・増積み擁壁に注意

既存の擁壁の上に、後からブロックを積み増したもの(増積み擁壁)や、擁壁の上にさらに擁壁を重ねたもの(二段擁壁)があります。

下の擁壁は、上に載る分の重さを想定して設計されていません。安全性が確保されていない可能性があります。

建て替えの際に、擁壁ごと造り替えを求められることがあります。そうなれば、建物とは別に大きな費用が発生します。高低差のある土地では、必ず確認してください。

水抜き穴が効く理由

擁壁の背後に水が溜まると、土圧に加えて水圧がかかります。これが擁壁が倒れる主な原因の一つです。

水抜き穴が詰まっている擁壁は、設計時に想定していない力を受けていることになります。現地で穴の有無と、詰まっていないかを見てください。

基礎を見る

既存の建物がある場合、基礎の状態が地盤の状況を示していることがあります。

見るもの 意味
基礎のひび割れ 幅が大きいもの、斜めに走るものは注意
鉄筋の露出 コンクリートが剥がれ、内部の鉄筋が見えている
床の傾き 水平器があれば数値で記録できる
建具の建て付け ドアや窓が閉まりにくい
壁のひび 開口部の角から斜めに走るひび

建物が傾いていても、原因が地盤とは限りません。断定せず、事実として記録してください。判断は建築士や地盤の専門家に委ねます。

不同沈下

建物が均等に沈むのではなく、一部だけが沈むことを不同沈下といいます。実務で最も問題になる現象です。

建物にゆがみが生じ、建具が閉まらなくなり、壁にひびが入ります。修復には、建物を持ち上げる工事が必要になることがあります。

地盤調査と改良

調査の方法

方法 対象
スクリューウエイト貫入試験 戸建て住宅。旧称はスウェーデン式サウンディング試験
標準貫入試験(ボーリング) 中〜大規模建築。土のサンプルが採れる
表面波探査 掘らずに測る

戸建てでは、敷地の四隅と中央の五点程度を測るのが一般的です。同じ敷地でも、点によって結果が違うことがあります。

改良の工法と費用の桁

工法 内容 費用
表層改良 地表から2メートル程度までを固化材と混ぜて固める 三つの中で最も安い
柱状改良 固化材で地中に柱を作る 表層改良の1.5〜2倍程度
鋼管杭 鋼管を支持層まで打ち込む 最も高い

戸建てでは数十万円から百万円単位になります。支持層が深ければ、それ以上になることもあります。

改良費以外にもかかる
  • 残土処分 表層改良や柱状改良では土が出る
  • 重機の搬入 前面道路が狭いと小型機での施工になり割高。入れない場合は工法が制限される
  • 撤去費 将来売るときに改良体の撤去を求められることがある。とくに鋼管杭は高額

最後の項目は見落とされがちです。改良した土地を売る際、地中の埋設物として扱われる場合があります。

液状化

砂質の地盤に地下水が多い場所では、地震時に液状化が起こることがあります。建物が傾き、上下水道が使えなくなります。

熊本地震でも液状化による被害が発生しました。旧河道、埋立地、干拓地では、可能性を確認しておく必要があります。

自治体が液状化マップを公表している場合があります。液状化への対策は通常の地盤改良とは別で、費用も変わります。

数字にどう効くか

場面 効いてくること
建てるとき 地盤改良費。建物の予算とは別に必要
建て替えるとき 擁壁の造り替え。現行基準に適合していなければ求められることがある
保有中 擁壁の補修、排水設備の維持
売るとき 擁壁の状態は説明事項。価格に影響しうる
融資 擁壁に問題があると、担保評価に影響することがある

いずれも、購入時の収支計算には出てきません。しかし現実には発生します。

誰に相談するか

内容 相談先
地盤の調査・改良の要否 地盤調査会社
建物の基礎、擁壁の構造 建築士
擁壁の適法性 市町村の建築指導課
造成の履歴、規制区域 市町村の開発指導課
境界、土地の形状 土地家屋調査士

擁壁が適法かどうかは、行政に確認するのが確実です。「昔からあるものだから」では、建て替えのときに通りません。

地面を見るチェックリスト
  • 売主が地盤調査報告書を持っていないか確認した
  • 旧版地形図で以前の地形を確認した田・池・川・湿地でなかったか
  • 空中写真で造成の履歴を確認した
  • 地形分類を確認した谷底低地・氾濫平野・旧河道・埋立地
  • 開発許可の履歴を市町村で確認した盛土か切土か
  • 宅地造成等工事規制区域内か確認した
  • 周辺の塀・擁壁・道路・電柱の傾きを見た
  • (擁壁あり)高さが2メートルを超えるか確認した
  • (擁壁あり)確認済証・検査済証の有無を確認した
  • (擁壁あり)傾き・はらみ・ひび割れを見た
  • (擁壁あり)水抜き穴の有無と詰まりを見た
  • (擁壁あり)二段擁壁・増積みになっていないか見た
  • (建物あり)基礎のひび割れ、床の傾きを確認した
  • 液状化の可能性を確認した自治体の液状化マップ
  • 前面道路の幅を確認した重機が入れないと工法が制限される
  • 改良費・擁壁の造り替えを、資金計画に幅で見込んだ

まとめ

  • 地盤調査の結果は売買の時点では存在しないことが多い。分かるのは設計段階。
  • 履歴と地形は買う前に無料で調べられる。旧版地形図、空中写真、地形分類。
  • 金額が最も大きいのは擁壁。二段擁壁・増積み擁壁は建て替え時に造り替えを求められることがある。
  • 擁壁は現地で自分の目で見られる。傾き、ひび割れ、水抜き穴。
  • これらの費用は購入時の収支計算に出てこないが、現実には発生する。
この内容を、勉強会・研修として。

登記・測量と物件調査を実際に行っている立場から、数字の前提になっている土地の条件をお話ししています。特定の商品を勧めることはありません。
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