視界性と周知性 ── 見えることと、知られること
- 視界性と周知性は別のもの。見えていても知られていない店があり、その逆もある。
- どちらが不足しているかで打ち手がまるごと変わる。取り違えると費用が無駄になる。
- 賃料に反映されやすいのは視界性。周知性は借り手が持ち込むもので、物件には残らない。
- 現地では車の目線と歩行者の目線を分けて見る。見える距離と時間を測る。
「この場所は目立ちますか」と聞かれたとき、「目立つ」には二つの意味が混ざっています。
通りから見えるかどうかと、その店が知られているかどうか。この二つは連動しません。
この記事では、二つを分けて捉える見方と、現地で何を測るかを整理します。
二つは別のもの
| 視界性 | 周知性 | |
|---|---|---|
| 意味 | 通行者から物理的に見えるか | その存在が知られているか |
| 決めるもの | 立地と建物 | 営業年数と発信 |
| 変えられるか | ほぼ変えられない | 時間をかければ変えられる |
| 移転したら | ゼロから | ある程度は持っていける |
見えているのに客が入らない店と、見えないのに客が来る店。前者は周知性の問題で、後者は視界性を周知性で補っています。
視界性を分解する
「見える」は、次の四つに分けられます。
- 見え始める距離 どこから視界に入るか
- 見えている時間 通過するまで何秒あるか
- 見える角度 正面か、斜めか、真横か
- 遮るもの 街路樹、電柱、看板、隣の建物
車の目線は高く、速く、正面しか見ません。時速40キロなら、判断できる時間は数秒です。
歩行者の目線は低く、遅く、横も見ます。同じ場所でも、どちらを客とするかで評価が反転します。
現地では、両方の目線で歩いて、実際に測ってください。
街路樹は、葉が茂れば看板を隠します。冬に見た現地と、夏の現地は違います。
夕方以降が主な営業時間なら、暗いときの見え方を確かめます。昼間だけ見て判断しないことです。
周知性を分解する
知られているかどうかも、一つではありません。
- 存在を知っている あそこに何かある
- 業種を知っている あそこは何屋か
- 行ったことがある 中を知っている
- 人に言える 名前を挙げられる
調べるときは、この段階を分けて聞きます。「知っていますか」だけでは、どの段階か分かりません。
どちらが不足しているかで、打ち手が変わる
売上が伸びない店に対して、原因を取り違えると費用が無駄になります。
| 状態 | 効くこと |
|---|---|
| 視界性が低く、周知性も低い | 立地の見直し。ここで広告を打っても戻りにくい |
| 視界性は高いが、周知性が低い | 看板と外観。何の店か分かるようにする |
| 視界性は低いが、周知性は高い | 誘導。案内表示と経路の説明 |
| 両方高いのに売上が低い | 立地の問題ではない。商品か価格か接客 |
いちばん多い誤りは、二つめの状態で広告費を使うことです。見えているのに何の店か分からないなら、まず看板です。
賃料に効くのは、どちらか
賃料に反映されやすいのは視界性です。立地と建物に固定されており、借り手が変わっても残るためです。
周知性は借り手が持ち込むもので、退去すれば一緒に出ていきます。物件の価値としては積み上がりません。
ただし例外があります。長く続いた店の跡地は、「あそこにあった場所」として認識が残ります。次の借り手が同業なら、これは効きます。
- 見え始める距離を、実際に歩いて測った
- 車の目線で通過して、見えている秒数を数えた
- 歩行者の目線でも確認した
- 正面・斜め・真横のどれで見えるか確認した
- 街路樹・電柱・隣接建物の遮りを確認した
- 営業時間帯の明るさで確認した
- 季節による見え方の差を織り込んだ
- 主な客が車か歩行者かを確認した
- 周知性の段階を分けて把握した存在/業種/来店/推奨
- 不足しているのが視界性か周知性かを切り分けた
- 前の借り手の業種と営業年数を確認した
まとめ
- 視界性と周知性は別のもの。見えていても知られていない店がある。
- 視界性は距離・時間・角度・遮りに分解できる。車と歩行者を分けて測る。
- 周知性は段階がある。存在、業種、来店、推奨。分けて聞く。
- どちらが不足しているかで打ち手が変わる。見えているのに分からないなら、まず看板。
- 賃料に残るのは視界性。周知性は借り手と一緒に出ていく。
立地の評価は、数字にする前に、分けて見ることから始まります。現地に立って、何が見えて何が見えないかを確かめる。それ以上に確かな材料はありません。
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