都市再生特別措置法と脱炭素 ── 改正が重ねてきたもの
- この法律は時代の課題を次々と取り込んできた。改正の履歴が都市政策の変遷を示す
- 脱炭素都市再生整備事業は、認定を受けると金融支援を受けられる仕組み
- 市街地の整備が脱炭素に関わるのは、建物単体では減らせない部分があるため
- 立地適正化計画と根拠法が同じ。制度どうしがつながっている
都市再生特別措置法は、平成14年(2002年)に制定されました。当初の主題は、都市の国際競争力を高めることでした。
その後、この法律には次々と新しい制度が追加されていきます。コンパクトシティ、防災、そして脱炭素。
この記事では、改正の流れを追ったうえで、脱炭素に関わる部分を整理します。
何のための法律か
制定時に設けられた主な仕組みです。
| 制度 | 内容 |
|---|---|
| 都市再生緊急整備地域 | 政令で指定し、重点的に市街地の整備を進める |
| 都市再生特別地区 | 既存の用途地域等によらない都市計画を定められる |
| 民間都市再生事業計画の認定 | 国土交通大臣が認定し、金融支援等を行う |
| 都市計画の提案制度 | 民間事業者から都市計画を提案できる |
この法律の基本的な考え方は、規制ではなく誘導です。
行政が用地を取得して整備するのではなく、民間が事業として成立するよう条件を整える。
- 用途地域等の制限を、区域を定めて外す
- 民間から都市計画を提案できるようにする
- 認定した事業に金融支援を行う
「特別措置法」という名称のとおり、通常の枠組みに対する例外を設ける法律です。
改正が重ねてきたもの
制定後、この法律には主要な制度が順に追加されました。
| 時期 | 加わったもの | 背景にある課題 |
|---|---|---|
| 平成17年 | 都市再生整備計画に関する支援 | 市街地の再生を全国に広げる |
| 平成23年 | 特定都市再生緊急整備地域 | 国際競争力の強化 |
| 平成24年 | 都市再生安全確保計画 | 震災を受けた防災機能の向上 |
| 平成26年 | 立地適正化計画 | 人口減少とコンパクトシティ |
| 令和2年 | 防災に関する指針、災害リスクへの対応 | 災害の激甚化 |
| 令和4年 | 脱炭素に資する事業への支援 | カーボンニュートラル |
国際競争力 → 防災 → 人口減少 → 災害 → 脱炭素。
この順序は、その時期に何が課題とされていたかをそのまま反映しています。
一つの法律に制度が積み重なるため、次のことが起こります。
- 法律の条文が膨大になる
- 制度どうしの関係が分かりにくくなる
- 同じ法律の中に、性格の違う仕組みが並ぶ
実務では、「都市再生特別措置法に基づく」という表現だけでは、どの制度の話か分かりません。
どの制度に基づく手続きなのかを、必ず特定してください。
脱炭素都市再生整備事業
市町村が作成する都市再生整備計画の区域内で行われる民間の都市開発事業について、国土交通大臣の認定を受ける制度があります。
このうち、都市の脱炭素化に資するものを対象とした認定制度が設けられました。
| 内容 | |
|---|---|
| 対象となる区域 | 都市再生整備計画の区域内 |
| 対象となる事業 | 計画に記載された事業と一体的に施行される民間都市開発事業 |
| 認定 | 国土交通大臣 |
| 効果 | 脱炭素化に資する設備等の整備費用について、金融支援を受けられる |
補助金ではなく、資金の供給という形の支援です。
民間都市開発推進機構による出資や貸付けが行われます。
前提となるのは、市町村の計画
認定を受けるには、その区域について都市再生整備計画が作成されている必要があります。
| 内容 | |
|---|---|
| 作成 | 市町村 |
| 内容 | 区域、目標、実施する事業、期間 |
| 位置づけ | 市街地の整備を面的に進めるための計画 |
民間の事業だけでは認定を受けられません。
事業を検討する場合、まずその区域が計画に含まれているかを市町村に確認してください。
含まれていなければ、計画の作成または変更から始めることになります。その分の期間を見込む必要があります。
なぜ市街地の整備が脱炭素に関わるか
建築物の省エネは、建築物省エネ法によって基準が定められています。
しかし、それだけでは減らせない排出があります。
| 排出源 | 市街地の整備で効く理由 |
|---|---|
| 自動車 | 移動の距離と手段は、都市の形で決まる |
| 熱・電力の供給 | 複数の建物で融通すれば、設備の総容量を減らせる |
| インフラの整備・更新 | 市街地が広がるほど、道路や管路が長くなる |
| 建て替えの繰り返し | 解体と新築のたびに排出が生じる |
一棟ごとの性能を上げるだけでは、都市全体の排出は下がりきりません。
そのため、面的な整備の中に脱炭素の要素を組み込むという方向が取られています。
具体的に想定されるもの
- エネルギーの面的利用 地域熱供給、複数建物での融通
- 再生可能エネルギーの導入 太陽光、蓄電池
- 緑地の確保 二酸化炭素の吸収、暑熱の緩和
- 歩いて移動できる環境 歩行者空間、自転車、公共交通との接続
- 既存建築物の改修と活用
いずれも、一つの敷地では完結しにくいものです。
立地適正化計画との関係
立地適正化計画も、この都市再生特別措置法に基づく制度です。
平成26年の改正で追加されました。同じ法律の中に、都市の再生と、都市機能の集約という二つの方向が並んでいます。
| 扱うこと | |
|---|---|
| 都市再生緊急整備地域等 | 拠点となる区域の集中的な整備 |
| 都市再生整備計画 | 市街地の面的な整備 |
| 立地適正化計画 | 居住と都市機能を、どこに誘導するか |
三つは、スケールが違うだけで方向は一致しています。
機能を集めることが、インフラの効率、移動の削減、エネルギーの融通につながる。脱炭素は、この延長線上に位置づけられます。
災害リスクとの関係
令和2年の改正では、災害リスクを土地利用に反映させる方向が強められました。
- 立地適正化計画に、防災に関する指針を定める
- 災害の危険性が特に高い区域を、居住誘導区域に含めない運用
- 災害リスクの高い区域における開発への対応
誘導区域や指針に関する区域は、災害リスクの有無を示すものではありません。
「誘導区域内だから安全」「区域外だから危険」という説明は成り立ちません。
災害の危険性は、ハザードマップと、その土地の地形・履歴で確認してください。
また、法令上存在しない区域名を用いた説明は避けてください。重要事項説明では、根拠のある区域指定を正確に示す必要があります。
実務での確認
土地を調査するとき
| 確認するもの | 影響 |
|---|---|
| 都市再生緊急整備地域 | 特別地区等による都市計画の特例 |
| 都市再生特別地区 | 用途地域等によらない制限が定められている |
| 都市再生整備計画の区域 | 認定制度の対象となりうる |
| 立地適正化計画 | 誘導区域の内外。区域外は届出が必要 |
| 防災に関する指針 | その区域の位置づけ |
窓口は市町村の都市計画課です。都市計画図と、各計画の図面で確認できます。
事業を検討するとき
- その区域が都市再生整備計画に含まれているか確認する
- 含まれていなければ、計画の作成・変更の可能性を市町村に相談する
- 認定の要件と、必要な書類を確認する
- 金融支援の内容と条件を、機構に確認する
- 他の制度との併用の可否を確認する
この法律の制度は、市町村の計画に位置づけられていることが出発点です。
民間の事業者が単独で申請しても、区域の指定がなければ進みません。
したがって、次の順序になります。
- 市町村の計画を確認する
- 合致していなければ、計画への位置づけを働きかける
- 並行して、事業計画を組み立てる
行政との協議に相応の期間がかかることを、工程に織り込んでください。
- どの制度の話か特定した同じ法律に複数の制度がある
- 都市再生緊急整備地域・特別地区の指定を確認した
- 都市再生整備計画の区域か確認した
- 立地適正化計画の誘導区域の内外を確認した
- (事業)計画への位置づけを市町村に確認した
- (事業)認定の要件と手続きを確認した
- (事業)金融支援の内容と条件を確認した
- (事業)行政との協議期間を工程に織り込んだ
- 災害リスクはハザードマップで確認した誘導区域の内外では判断しない
- 法令上存在しない区域名を使っていない
まとめ
- この法律は、時代の課題を次々と取り込んできた。改正の履歴が都市政策の変遷を示す。
- 同じ法律に複数の制度が並ぶ。「この法律に基づく」だけでは特定できない。
- 脱炭素都市再生整備事業は、認定により金融支援を受けられる仕組み。
- 建物単体では減らせない排出があるため、面的な整備に脱炭素を組み込む。
- 立地適正化計画も同じ法律に基づく。機能の集約と脱炭素は方向が一致している。
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