スーパーシティと国家戦略特区 ── 制度の位置づけと、実務での見方

この記事の要点
  • スーパーシティは国家戦略特区の一類型。並列に比較できるものではない
  • 指定されても、規制が自動的に外れるわけではない
  • 特例が使えるのは、区域計画に位置づけられた事業に限られる
  • 構想を根拠に将来の地価を語らない。実現していない計画である

「スーパーシティに指定された地域は、これから発展する」──こうした説明を見かけます。

しかし、指定されたからといって、その区域で何でもできるようになるわけではありません。

この記事では、制度の位置づけと、実務で何を確認すべきかを整理します。

まず、分類を正す

国家戦略特区と並べるものではない

「国家戦略特区とスーパーシティの違い」という説明を見かけますが、この二つは並列の関係にありません。

内容
国家戦略特別区域 制度の枠組み。国家戦略特別区域法に基づく
スーパーシティ型区域 その中の一類型。令和2年の法改正で加わった

スーパーシティは、国家戦略特区制度の一部です。

したがって、スーパーシティに指定された区域は、国家戦略特区でもあります。

「どちらの制度か」ではなく、「国家戦略特区のうち、どの類型か」という整理になります。

国家戦略特区の仕組み

内容
区域の指定 政令により、区域を定める
区域会議 国、自治体、事業者で構成される
区域計画 実施する事業と、適用する特例を定める
認定 内閣総理大臣が認定する
効果 認定された事業について、規制の特例が適用される
二段階になっている

区域の指定と、事業の認定は別の段階です。

区域に指定されただけでは、まだ何も変わりません。

  • 第一段階 区域が指定される
  • 第二段階 区域計画が作られ、認定される
  • 第三段階 計画に位置づけられた事業が、特例を使って実施される

したがって、「この地域は特区だから規制が緩い」とは言えません。

特例が適用されるのは、区域計画に位置づけられた特定の事業だけです。

スーパーシティ型の特徴

令和2年(2020年)の改正で創設された類型です。

特徴 内容
複数分野の一体的な改革 移動、物流、医療、教育、行政手続などを一体で扱う
データの連携 分野をまたいでデータを活用する基盤
住民の意向 区域の指定・計画にあたり、住民の意向を踏まえること

従来の特区が「特定の分野の規制を個別に緩和する」ものだったのに対し、複数の分野をまとめて扱う点が異なります。

指定の状況

令和4年(2022年)に、茨城県つくば市と大阪府・大阪市がスーパーシティ型として指定されました。

あわせて、健康・医療分野を中心とする類型(デジタル田園健康特区)として、複数の自治体が指定されています。

最新の指定状況と、各区域の事業内容は、内閣府が公表する資料で確認してください。

何が変わり、何が変わらないか

土地利用の一般的な規制は残る

特区に指定されても、都市計画法や建築基準法の一般的な規制がなくなるわけではありません。

扱い
区域区分・用途地域 そのまま適用される
建蔽率・容積率 そのまま適用される
接道義務 そのまま適用される
農地法・農振法 そのまま適用される
災害関係の区域指定 そのまま適用される

「特区だから開発しやすい」という一般化はできません。

土地の調査は、特区の内外にかかわらず、通常どおり行う必要があります。

なお、国家戦略特区には都市計画に関する特例(都市再生特別地区の手続きの迅速化など)が用意されていますが、これも区域計画に位置づけられた事業について適用されるものです。

「スマートホームの規格緩和」といった制度はない

建築基準法について、スマートホームに関する特例といったものは設けられていません。

制度の名称や内容は、内閣府・所管省庁の資料で確認してください。

実在しない制度名を用いた説明は、顧客の判断を誤らせます。

地価との関係

構想を根拠に、将来の価値を語らない

次のような説明は、避けてください。

この地域は今後、交通の利便性が飛躍的に向上する予定です。将来的には現在の地価よりも価値が上昇する可能性が高く、資産価値としても魅力的です。

問題は三つあります。

  • 実現していない計画を、確定した将来として語っている
  • 地価の上昇を断定的に示唆している
  • その利便性が、その物件に及ぶ保証がない

構想は、実証実験の段階にあるものを含みます。計画どおりに進まないこと、途中で見直されることもあります。

宅地建物取引業者が、将来の価格について断定的な判断を提供することは認められていません。

示すなら、「こういう計画がある」という事実にとどめ、判断は相手に委ねてください。

技術の導入と、地価の関係

新しい技術が導入されても、それが土地の価格にどう反映されるかは分かりません。

従来から価格に効いてきたもの 備考
駅からの距離 実績のあるデータが蓄積されている
道路の整備 同上
用途地域・容積率 建てられる規模が決まる
災害リスク 近年、影響が大きくなっている

これらに比べ、実証段階の技術が価格に及ぼす影響は、まだ検証されていません。

実務での確認

特区に関わる土地を扱うとき

確認すること
その区域が国家戦略特区の区域内か
どの類型かスーパーシティ型か、他か
区域計画に、どの事業が位置づけられているか
その事業の実施区域・実施時期
適用される特例の内容
通常の都市計画・建築の規制を、別に確認する

区域計画は公表されています。自治体または内閣府のサイトで確認できます。

事業を検討するとき

特例を使うには、計画に位置づける必要がある

民間の事業者が単独で特例を申請することはできません。

次の順序になります。

  1. 自治体に相談し、区域計画への位置づけを働きかける
  2. 区域会議での検討
  3. 区域計画の作成・変更
  4. 内閣総理大臣の認定
  5. 事業の実施

相応の期間がかかります。工程に織り込んでください。

また、特例の対象とならない手続きは、通常どおり必要です。開発許可、建築確認、農地転用。これらは別に進めます。

住民との関係

合意形成が前提に置かれている

スーパーシティ型の区域指定では、住民の意向を踏まえることが求められています。

背景には、データの取扱いに対する懸念があります。

  • 移動や購買の履歴が、どこまで収集されるのか
  • 誰が、何のために使うのか
  • やめたいときに、やめられるのか
  • 事業者が撤退したら、データはどうなるのか

技術的に可能であることと、地域が受け入れることは別です。

説明会や意見の聴取が、制度の中に位置づけられているのはこのためです。

不動産業者の立場

不動産業者が構想の推進主体になるわけではありません。

役割は、その土地に何が適用されるかを正確に調べ、事実として伝えることです。

避けるべき言い方 適切な言い方
「特区なので規制が緩いです」 「区域計画に位置づけられた事業に、特例が適用されます」
「将来、地価が上がります」 「こういう計画があります。実現の見通しはこの資料で確認できます」
「最新技術で便利になります」 「実証実験の段階です。対象区域と時期はこうなっています」
「国が指定した地域です」 「指定区域ですが、通常の建築規制はそのまま適用されます」

他の制度との関係

制度 使い分け
国家戦略特区 区域を定め、複数分野の特例を一体的に扱う
規制のサンドボックス 期間と参加者を限定して実証する
グレーゾーン解消制度 その事業が規制の対象かを事前に照会する
地域脱炭素化促進事業 再エネの立地に関する促進区域

特区の枠組みに乗せる前に、グレーゾーン解消制度で確かめられる場合があります。

そもそも規制の対象でなければ、特例は不要です。

特区に関する確認
  • 国家戦略特区の区域内か確認した
  • どの類型か確認した
  • 区域計画に位置づけられた事業を確認した
  • 事業の実施区域と時期を確認した
  • 適用される特例の内容を確認した
  • 通常の都市計画・建築の規制を別に確認した
  • (事業を検討)自治体への相談から始めた
  • (事業を検討)特例の対象外の手続きを整理した
  • (事業を検討)認定までの期間を工程に織り込んだ
  • グレーゾーン解消制度で確認できないか検討した
  • 将来の地価について断定していない
  • 実在しない制度名を使っていない

まとめ

  • スーパーシティは国家戦略特区の一類型。並列に比較するものではない。
  • 区域の指定と事業の認定は別。指定されただけでは何も変わらない。
  • 特例が適用されるのは、区域計画に位置づけられた事業に限られる。
  • 都市計画法・建築基準法の一般的な規制は、そのまま適用される。
  • 実現していない構想を根拠に、将来の地価を語らない。
この内容を、研修・講座として。

自治体職員、専門職団体、事業者の皆様向けにお引き受けしています。制度の位置づけと、行政協議の進め方をお話しします。
構成のご提案とお見積りまで、費用はかかりません。

都市計画実践講座を見る
土地法制の見取図

BLOG

ブログ

PAGE TOP