まちづくりの段取り ── 止まるのは、工事の前
- 止まるのは工事ではなく、その前の段取り
- 法令の確認は構想の段階で。後だと前提が崩れる
- 予算と用地は年度と地権者の都合で動く
- 手戻りの多くは、順序を飛ばしたことから生じる
まちづくりの事業は、工事より前の期間のほうが長くなります。
調べ、決め、合意し、手続きを通す。そのどこかで止まると、全体が動きません。
この記事では、段取りの全体と、止まりやすい箇所を整理します。
全体の流れ
| 段階 | 決まること | |
|---|---|---|
| 一 | 現状把握 | 何が問題か |
| 二 | 構想 | どうしたいか |
| 三 | 計画 | 何を、いくらで、いつまでに |
| 四 | 合意 | 関係者が受け入れるか |
| 五 | 手続き | 許認可、予算、用地 |
| 六 | 実施と運用 | 誰が続けるか |
順序は入れ替えられません。
ただし、行きつ戻りつします。合意の段階で反対が出れば、計画に戻ります。手続きで要件を満たせなければ、構想からやり直すこともあります。
止まりやすい四つの箇所
① 法令の確認が遅れる
計画が固まってから「その場所ではできない」と分かる。これが最も多い手戻りです。
| 確認するもの | |
|---|---|
| 用途地域 | その用途が建てられるか |
| 市街化調整区域 | 開発許可の見通し |
| 農地 | 農振除外と転用 |
| 森林 | 林地開発 |
| 災害関係の区域 | 土砂災害、浸水想定 |
| 文化財 | 埋蔵文化財包蔵地 |
| 景観、地区計画 | 形態や用途の制限 |
候補地が複数あるうちに、まとめて確認してください。
一つに絞ってから調べると、駄目だったときに戻る場所がありません。
各所管に相談する際、「この場所で、この用途を考えている」と伝えれば、見通しを教えてもらえます。
② 関係する部局を後から知る
順に相談すると、後の部局の指摘で前提が崩れます。
- 都市計画、建築、農政、土木、環境、文化財、消防、上下水道
- 県と市町村で所管が分かれる
- 道路管理者と交通管理者は別
- 補助金の所管は、また別
最初に洗い出し、同席の場を作ってください。
一度に集まってもらえば、部局間の食い違いもその場で出ます。
③ 予算と年度
| 制約 | |
|---|---|
| 予算 | 年度単位。要求の時期が決まっている |
| 補助金 | 着手前の申請が必要なものが多い |
| 議会 | 議決を要する案件は開会時期に縛られる |
| 人事 | 年度替わりで担当が替わる |
逆算して、いつまでに何を決めるかを置いてください。
「補助金が使えると思っていたが、着手してしまったので対象外」という事例が繰り返し起きます。
制度は年度で変わります。前年度の要綱で判断しないでください。
④ 用地
- 地権者が複数いる 全員の同意が要る
- 相続が済んでいない
- 共有で、一部の所在が分からない
- 境界が確定していない
- 抵当権、賃借権が付いている
- 価格の折り合いがつかない
用地の問題は、時間で解決しません。むしろ相続が進んで当事者が増えます。
早い段階で登記を調べ、権利関係を把握してください。
現状把握でやること
| 調べるもの | |
|---|---|
| 現地 | 時間帯を変えて、複数回 |
| 統計 | 人口、世帯、年齢構成、事業所 |
| 土地利用 | 都市計画基礎調査、用途地域図 |
| 上位計画 | 総合計画、都市計画マスタープラン |
| 既存の計画 | 過去に何が検討され、なぜ止まったか |
| 聞き取り | 住民、事業者、自治会 |
同じ場所で、以前にも計画があったことが多くあります。
それがなぜ実現しなかったのかを知らないと、同じ理由で止まります。
- 反対があった 誰が、なぜ
- 予算がつかなかった
- 用地が確保できなかった
- 担当者が替わって立ち消えた
「前にも同じ話があった」と住民に言われる前に、把握しておいてください。
計画に書くこと
| 内容 | |
|---|---|
| 目的 | 何を解決するのか |
| 範囲 | どこまでやるか、やらないか |
| 担い手 | 誰が実施し、誰が続けるか |
| 費用 | 初期と、毎年かかる分 |
| 財源 | 補助、起債、一般財源の内訳 |
| 工程 | 手続きの期間を含めた日程 |
| 評価 | 何をもって成否とするか |
三つ目と四つ目を、初期費用だけで書かないでください。
施設は建てた後に維持費がかかります。誰が、どの財源で払うのか。
ここが曖昧なまま作られた施設が、数年後に持て余されます。
手続きの期間を工程に入れる
| 手続き | 要する時間の性格 |
|---|---|
| 事前協議 | 相手の都合。数週間から数か月 |
| 都市計画の変更 | 縦覧、審議会。年単位になりうる |
| 開発許可 | 32条協議が最も長い |
| 農地転用 | 農業委員会の開催日程 |
| 埋蔵文化財 | 試掘・本調査となれば大きく延びる |
| 用地買収 | 相手次第 |
これらは並行して進められるものと、順番が決まっているものがあります。
どれが前提で、どれが並行できるかを整理してください。
- 候補地が複数あるうちに、法令を確認した
- 用途地域・調整区域・農地・森林を確認した
- 災害関係の区域指定を確認した
- 埋蔵文化財包蔵地を確認した
- 関係する部局を最初に洗い出した
- 順に回らず、同席の場を作った
- 過去に同じ計画がなかったか調べた
- なぜ止まったかを把握した
- 補助金を、着手前に確認した
- 予算・議会の時期から逆算した
- 用地の権利関係を登記で確認した
- 相続未了・共有・所在不明がないか確認した
- 境界の確定状況を確認した
- 維持費と、その財源を決めた
- 手続きの期間を工程に入れた
まとめ
- 止まるのは工事ではなく、その前の段取り。
- 法令は構想の段階で、候補地が複数あるうちに確認する。
- 関係部局は最初に洗い出す。順に回ると前提が崩れる。
- 過去に同じ計画がなかったか調べる。止まった理由は繰り返す。
- 維持費と財源を決めずに作らない。数年後に持て余す。
自治体職員、専門職団体、事業者の皆様向けにお引き受けしています。行政の側で事業を進めてきた立場から、段取りの組み方をお話しします。
実際の協議への同席もお引き受けしています。
