重要事項説明に加わるBMA ── 生物多様性維持協定
- 2025年4月から、生物多様性維持協定が重要事項説明の対象に加わった
- 理由は承継効。土地の所有者が変わっても、協定の効力が引き継がれる
- 調査先は市町村の環境担当課。都市計画課だけでは分からない
- 締結には区域内の土地所有者等の全員の同意が必要とされている
重要事項説明の対象に、新しい項目が加わりました。生物多様性維持協定です。
建築協定や景観協定と同じく、土地の所有者が変わっても効力が引き継がれます。見落として説明しなければ、買主が取得後に「そんな取り決めがあるとは聞いていない」となります。
この記事では、この協定が何か、どこで調べるか、どう説明するかを扱います。
根拠となる法律の正式名称は「地域における生物の多様性の増進のための活動の促進等に関する法律」です。通称は地域生物多様性増進法。2024年(令和6年)に成立し、2025年4月1日に施行されました。
「BMA」「RBPA」といった英字略称は、実務で定着したものではありません。重要事項説明書や顧客向けの資料では、「生物多様性維持協定」と正式な名称で記載してください。独自の略称を使うと、市町村の窓口で話が通じないことがあります。
制度の位置づけ
この法律は、地域における生物多様性の保全・回復に向けた活動を促進するためのものです。2030年までに陸と海の30パーセント以上を保全するという国際的な目標(30by30)に沿った制度です。
| 仕組み | 内容 |
|---|---|
| 増進活動実施計画 | 事業者等が作成し、国の認定を受ける。自然共生サイトの認定につながる |
| 連携増進活動実施計画 | 市町村が作成し、国の認定を受ける |
| 生物多様性維持協定 | 市町村と土地所有者等が締結する。承継効がある |
生物多様性維持協定とは
市町村が認定を受けた計画の区域内で、市町村と土地の所有者等との間で締結される協定です。
定められる内容
- 協定の区域 効力が及ぶ土地の範囲
- 活動の内容 その土地で行う保全・回復の活動
- 土地の利用に関する事項 樹木の伐採、工作物の設置などに関する取り決め
- 有効期間
- 違反した場合の措置
活動の内容は、地域によって大きく異なります。在来種の植栽、外来種の除去、水路の維持、農薬の使用に関する配慮、夜間の照明への配慮など。個々の協定書を読まなければ分かりません。
締結の要件
協定を締結するには、区域内の土地の所有者等(借地権者などを含む)の全員の同意が必要とされています。
建築協定と同じ構造です。一人でも同意しなければ、その区域では締結できません。
なぜ重要事項説明に加わったのか
協定が締結され、公示されると、その後にその区域内の土地の所有権等を取得した者に対しても、協定の効力が及びます。
買主は、協定の存在を知らなくても、取得した時点で当事者になります。活動への協力や、土地の利用に関する制限を引き継ぐことになります。
これは、建築協定・景観協定・緑地協定と同じ性質です。説明せずに取引すると、買主に予期しない負担を負わせることになります。
そのため、宅地建物取引業法施行令の改正により、2025年4月1日から、重要事項説明において説明すべき法令に基づく制限に加えられました。
調査の手順
どこで調べるか
この協定は都市計画法に基づくものではないため、都市計画課の窓口では把握していないことがあります。
照会先は市町村の環境担当課です。名称は自治体により異なります。環境政策課、環境共生課、みどり政策課、自然環境課など。
市町村が認定を受けた計画がなければ、そもそも協定は存在しません。まず「計画の認定を受けているか」から確認してください。
確認する項目
- 市町村が連携増進活動実施計画の認定を受けているか
- 対象地が協定の区域内か
- 協定書の写しを取得できるか
- 公示されているか、公示の日
- 活動の内容と、土地の利用に関する取り決め
- 有効期間と、期間満了後の扱い
- 違反した場合の措置
協定書の中身を読まずに「協定があります」とだけ伝えるのは、説明として不十分です。買主が何を引き継ぐのかを具体的に示す必要があります。
アンテナを立てておく場所
すべての物件で環境担当課に照会するのは現実的ではありません。該当の可能性が高い場所を意識しておいてください。
- 河川、水路、湿地に接する土地
- まとまった樹林地、社寺林、里山に隣接する土地
- 市街化調整区域内の農地や山林
- 自然公園、緑地保全地区などの周辺
- 地域で環境保全活動が行われていることが知られている区域
ただし、市街地にも設定されうる制度です。市町村が計画の認定を受けている場合は、区域図を一度確認しておくのが確実です。
説明の仕方
伝えるべき四点
| 内容 | |
|---|---|
| 一 | 対象地が協定の区域内であること |
| 二 | 協定の内容(活動、土地利用の取り決め、有効期間) |
| 三 | 買主に効力が引き継がれること |
| 四 | 違反した場合の措置 |
三番目が最も重要です。「地域でこういう取り組みがあります」という紹介で終わらせず、買主自身が当事者になることを明確に伝えてください。
制限と価値の両面を示す
協定があることは、土地の利用に制限がかかるという面があります。同時に、その地域の自然環境が維持されることを意味します。
どちらを重く見るかは買主によります。こちらが「良いこと」「悪いこと」と評価して伝えるのではなく、事実を示して判断してもらってください。
断定しない
協定の解釈について問われた場合、市町村の担当課に確認するよう案内してください。
「この程度なら大丈夫でしょう」といった判断は避けます。活動への協力の範囲、伐採が認められる場合、建築の可否。これらは個別の協定と市町村の運用によります。
自然共生サイト
あわせて知っておきたいのが、自然共生サイトです。国立公園などの法的な保護地域ではないものの、民間の取組等によって生物多様性が保全されている区域を国が認定する仕組みです。
企業の社有林、里地里山、社寺林などが認定されています。これは協定とは別の制度で、承継効はありません。ただし、周辺の環境を示す情報にはなります。
この制度の現時点での広がり
2025年4月に施行されたばかりの制度です。協定が締結されている区域は、現時点では限られています。
そのため、多くの取引では「該当なし」となります。ただし、該当なしであることを確認して記載する必要があります。空欄のままにしないでください。
今後、市町村の計画認定が進めば、該当する案件が増えていきます。調査手順を社内で決めておくのが実務的です。
- 正式名称を使っている「生物多様性維持協定」。独自の英字略称を使わない
- 市町村が連携増進活動実施計画の認定を受けているか確認した
- 照会先を環境担当課にした都市計画課では把握していないことがある
- 対象地が協定区域内か確認した
- 協定書の写しを取得した「協定がある」だけでは説明にならない
- 公示の有無と日付を確認した
- 活動の内容を確認した
- 土地の利用に関する取り決めを確認した伐採・工作物の設置など
- 有効期間と、期間満了後の扱いを確認した
- 違反した場合の措置を確認した
- 買主に効力が引き継がれることを明確に説明した
- 制限と価値の両面を、評価を加えずに示した
- 解釈に関する質問は市町村につないだ
- 該当がない場合も「該当なし」と記載した空欄にしない
まとめ
- 根拠は地域生物多様性増進法。2025年4月1日に施行された。
- 2025年4月から、生物多様性維持協定が重要事項説明の対象に加わった。
- 理由は承継効。所有者が変わっても効力が引き継がれ、買主が当事者になる。
- 照会先は市町村の環境担当課。都市計画課では把握していないことがある。
- 該当がない場合も「該当なし」と記載する。空欄にしない。
調査・契約・法改正への対応を、対象者と時間に合わせて構成し直してお話ししています。
90分の単発講義から、半日研修まで。構成のご提案とお見積りまで、費用はかかりません。