CHIOU / 株式会社地央

ZEH・ZEB ── 何がゼロなのか

この記事の要点
  • 混同されやすい四つを分ける。省エネ基準/ZEH水準/ZEH/GX志向型住宅
  • ZEH水準は性能の水準、ZEHは実際の建物。ZEH水準に創エネは要らない
  • 断熱等性能等級は1から7。等級4が旧基準、等級5がZEH水準
  • 補助制度の名称・金額は年度ごとに変わる。資料の数字をそのまま伝えない

ZEH、ZEH水準、GX志向型住宅、省エネ基準。似た言葉が並び、どれが何を指すのか分かりにくくなっています。

この整理ができていないと、顧客への説明が曖昧になります。「ZEHですか」と聞かれて「ZEH水準です」と答えるのは、正確ではあっても、違いを説明できなければ伝わりません。

この記事では、用語の関係を整理し、実務でどこを確認するかを扱います。

根拠となる法律

住宅の省エネ性能に関する基準は、建築物省エネ法と、住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)に基づく住宅性能表示制度によります。

「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)」は、工場・輸送・機器等のエネルギー管理を定める別の法律です。断熱等性能等級を定めているものではありません。資料で根拠法を挙げるときは、確認してください。

四つの言葉を分ける

言葉 指すもの 創エネ(太陽光等)
省エネ基準 2025年4月から新築に義務づけられた最低ライン 不要
ZEH水準 性能の水準。断熱等級5かつ一次エネ等級6 不要
ZEH 実際の建物。創エネを含めて年間の一次エネルギー消費量の収支をおおむねゼロにする 必要
GX志向型住宅 補助制度上の区分。ZEH水準より高い性能を求める 必要
ZEH水準とZEHの違い

ZEH水準は、建物の「器」と設備の性能がその水準に達していることを指します。太陽光発電がなくても、断熱等級5と一次エネ等級6を満たせばZEH水準です。

ZEHは、そこに創エネを加えて、実際に年間のエネルギー収支をおおむねゼロにする建物です。

住宅ローン控除や住宅性能表示で使われるのは「ZEH水準」、補助制度で使われるのは「ZEH」であることが多くあります。どちらの意味で使われているかを、そのつど確認してください。

断熱等性能等級

住宅性能表示制度における等級です。2022年に等級5・6・7が新設されました。

等級 位置づけ
等級4 従来の省エネ基準の水準。2025年4月からはこれが最低ライン
等級5 ZEH水準
等級6 等級4と比べて、冷暖房に要するエネルギーを大きく削減する水準
等級7 現行の最高等級

等級1から3は、それ以前の水準です。古い住宅では、そもそも等級が評価されていないことがほとんどです。

一次エネルギー消費量等級

設備を含めた建物全体のエネルギー消費を評価する等級です。等級6がZEH水準に対応します。

UA値は地域によって基準が違う

断熱性能はUA値(外皮平均熱貫流率)で表され、同じ等級でも地域区分によって求められる数値が違います。

全国は1から8の地域区分に分けられており、寒冷地ほど厳しい数値が求められます。「等級5だからUA値は○○」と一律に言えません。該当する地域区分を確認してください。

GX志向型住宅

補助制度において設けられている区分です。要件は次の三つを満たすこととされています。

項目 要件
断熱性能 断熱等性能等級6以上
一次エネルギー消費量削減率
(再エネを除く)
35パーセント以上
一次エネルギー消費量削減率
(再エネを含む)
100パーセント以上
寒冷地・低日射地域・多雪地域では要件が異なる

再生可能エネルギーを含む削減率100パーセントという要件は、日射条件によって達成の難易度が大きく変わります。

そのため、寒冷地、日射量の少ない地域、多雪地域については、削減率の要件が緩和される取扱いが設けられています。

該当地域かどうかは、制度の公表資料で確認してください。熊本県内でも、山間部は条件が異なる場合があります。

補助制度の扱い

名称も金額も、年度ごとに変わる

住宅の省エネに関する補助制度は、年度ごとに事業名、要件、補助額が入れ替わります。

「GX志向型住宅は1戸あたり○○万円」といった数字は、その年度の制度のものです。翌年度も同じとは限りません。

資料や記事に書かれた金額をそのまま顧客に伝えると、申請時に食い違い、責任を問われます。必ず、その時点の公式情報で確認してください。

確認すべき点

  • 予算の上限と受付期間 予算に達し次第終了する制度が多い
  • 着工前の手続き 事前の登録や申請が必要な場合がある
  • 事業者の登録 登録された事業者による施工が要件となる制度がある
  • 他制度との併用可否 国と自治体、複数の制度の重複利用ができるか
  • 報告義務 交付後に実績報告を求められることがある

最も多い行き違いが、着工後に「補助金は使えません」と分かる事態です。計画の初期に確認してください。

費用について伝えるとき

高性能な住宅は、建築費が上がります。ただし、金額を断定して伝えないでください。

避けるべき言い方 適切な言い方
「300万円ほど高くなります」 「仕様によって差が出ます。具体的な金額は見積りで確認しましょう」
「光熱費が年間○万円下がります」 「同条件での試算では差が出ます。実際は使い方と機器で変わります」
「補助金で○○万円戻ります」 「該当しうる制度があります。要件と期限を確認しましょう」
「売電で収入になります」 「余剰電力の買取価格は年度ごとに決まります。現時点の単価を確認しましょう」

とくに売電については、買取価格が年度ごとに決まり、買取期間にも期限があります。長期の収支を示すときは、期間終了後の扱いも含めて説明してください。

実務での確認

新築の場合

  • 断熱等性能等級と一次エネルギー消費量等級
  • UA値と、該当する地域区分
  • 創エネ設備の有無と容量
  • BELSや住宅性能評価書を取得しているか
  • 住宅ローン控除の区分(借入限度額が住宅の性能で変わる)

中古の場合

2025年3月以前の住宅では、等級が評価されていないことがほとんどです。

  • 住宅性能評価書、設計住宅性能評価書の有無
  • フラット35の適合証明を取得していたか
  • 断熱材の仕様が分かる図面が残っているか
  • 窓の仕様(単板ガラスか複層ガラスか)は現地で確認できる

資料がなければ「不明」と伝えてください。築年数から推測して断定すると、後で食い違います。

改修を提案するとき

部位 効果
熱の出入りが最も大きい部位。内窓の設置は工期が短い
床下・天井 比較的施工しやすい
効果は大きいが、内装または外装の解体を伴う
給湯設備 使用エネルギーに占める割合が大きい

全面改修を前提にせず、費用対効果の高い部位から示すと、現実的な提案になります。

説明の順番

環境への貢献から入ると、多くの顧客には伝わりにくくなります。次の順で伝えると理解されます。

  1. 快適さ 冬の朝の室温、部屋ごとの温度差、結露
  2. 健康 室温の変動が小さいこと
  3. 費用 光熱費の目安と、初期費用の差
  4. 制度 補助制度、住宅ローン控除、フラット35Sの金利
  5. 環境

実際に暮らす場面から入るほうが、判断の材料になります。

実務チェックリスト
  • 用語を分けて説明した省エネ基準/ZEH水準/ZEH/GX志向型住宅
  • 根拠法を確認した建築物省エネ法と品確法。省エネ法ではない
  • ZEH水準に創エネが不要であることを説明した
  • 断熱等性能等級と一次エネルギー消費量等級を確認した
  • UA値の基準が地域区分で異なることを前提にした
  • (GX志向型)三つの要件を確認した
  • (GX志向型)寒冷地・低日射地域・多雪地域の取扱いを確認した
  • 補助制度を最新の公式情報で確認した年度で変わる
  • 着工前の手続き・事業者登録の要件を確認した
  • 費用と光熱費を断定せず、前提を示した
  • 売電の買取価格と期間について説明した
  • (中古)性能評価書等の有無を確認した
  • (中古)資料がなければ「不明」と伝えた築年数から推測しない
  • 改修は費用対効果の高い部位から示した

まとめ

  • 省エネ基準・ZEH水準・ZEH・GX志向型住宅は、それぞれ別のものを指す。
  • ZEH水準は性能の水準で、創エネは不要。ZEHは創エネを含めて収支をゼロにする建物。
  • 断熱等性能等級は1から7。等級4が最低ライン、等級5がZEH水準。
  • UA値の基準は地域区分によって異なる。一律には言えない。
  • 補助制度は年度ごとに変わる。資料の金額をそのまま伝えない。
この内容を、貴社の研修として。

調査・契約・法改正への対応を、対象者と時間に合わせて構成し直してお話ししています。
90分の単発講義から、半日研修まで。構成のご提案とお見積りまで、費用はかかりません。

不動産実務講座(無料・全43講座)
研修の内容を見る

BLOG

ブログ

PAGE TOP