REIT入門 ── 現物との違いから考える
- 分配金が多いのは導管性要件のため。利益の大部分を分配する条件で法人課税を避けている
- 現物と違い価格が毎日動く。売りやすい代わりに、値動きが見える
- 金利の上昇は二重に効く。借入コストと、他の商品との比較の両方
- 分配金は配当控除の対象外。株式の配当とは扱いが違う
不動産に投資する方法は、物件を買うことだけではありません。証券市場を通じて、間接的に不動産の収益を受け取る仕組みがあります。
これがREIT(不動産投資信託)です。現物とは性質がまったく違います。どちらが優れているという話ではなく、向く場面が違います。
この記事では、仕組み、現物との違い、そして注意すべき点を整理します。特定の銘柄や商品を勧めるものではありません。
仕組み
投資家から集めた資金で不動産を取得し、賃料収入などを分配する仕組みです。投資信託及び投資法人に関する法律(投信法)に基づいています。
| 役割 | 担うもの |
|---|---|
| 投資法人 | 資産を保有する器。従業員はいない |
| 資産運用会社 | 実際の運用。物件の取得・売却、賃貸の戦略、資金調達 |
| 資産保管会社 | 資産の保管。主に信託銀行 |
| 事務受託会社 | 投資主名簿の管理、分配金の支払いなどの事務 |
| 投資家 | 投資口を保有し、分配金を受け取る |
投資家が保有するのは投資口で、株式にあたるものです。上場している銘柄は、証券取引所で売買できます。
なぜ分配金が多いのか
通常の会社なら、利益に法人税がかかり、その後の配当にも投資家の税がかかります。二重に課税されることになります。
REITは、利益の大部分(90パーセント超)を分配するなどの条件を満たすことで、投資法人段階での法人税が実質的にかからない仕組みになっています。
これを導管性要件といいます。利益を通す「導管」の役割に徹する代わりに、二重課税を避けているわけです。
分配金の水準が高めになるのは、この仕組みによるものです。運用が特別に優れているからではありません。
裏返すと
利益の大部分を分配してしまうため、内部に資金を貯めておくことができません。
物件を取得するには、その都度投資口を新たに発行するか、借入をすることになります。この点が、次に述べる金利の影響につながります。
現物とどう違うか
| REIT | 現物の不動産 | |
|---|---|---|
| 必要な資金 | 比較的少額から | まとまった資金または借入 |
| 売りやすさ | 市場が開いていれば売れる | 数か月かかる |
| 物件の選択 | 自分では選べない | 自分で選ぶ |
| 現地を見る | できない(開示資料で見る) | 自分で確認できる |
| 管理の手間 | ない | ある(委託しても判断は残る) |
| 分散 | 一つの銘柄で多数の物件に | 物件ごとに集中 |
| 借入の利用 | 投資法人が行う | 自分が行う |
| 価格 | 毎日動く。見える | 動くが、見えない |
現物の不動産は「価格が安定している」と言われることがあります。しかし、実際には値付けされていないだけです。
REITは毎日値が付くため、下落が数字として見えます。現物は、売ろうとした時点で初めて分かります。
見えないことと、動いていないことは違います。
物件を自分で選べないということ
現物であれば、接道、境界、越境、地盤、擁壁を自分で確認できます。納得できなければ買わないという選択ができます。
REITでは、どの物件を取得するかは資産運用会社が決めます。投資家が見られるのは、開示された資料の範囲です。
その代わり、専門家が調査(デューデリジェンス)を行い、その結果が資料として開示されます。個人では調べきれない規模の物件についても、一定の情報が得られます。
投資対象の分類
| 種類 | 収益の性質 |
|---|---|
| オフィス | 企業の業績や景気の影響を受けやすい |
| 賃貸住宅 | 比較的安定しているとされる |
| 商業施設 | 消費動向の影響。売上に連動する契約もある |
| 物流施設 | 通信販売の拡大が背景 |
| ホテル | 変動が大きい。旅行需要に左右される |
| ヘルスケア施設 | 高齢者向け住宅、医療関連 |
| 複合・総合型 | 複数の種類に分散 |
種類によって、景気の影響の受け方が違います。複数に分けることで、影響を和らげる考え方があります。
見る指標
| 指標 | 意味 |
|---|---|
| 分配金利回り | 年間の予想分配金 ÷ 投資口価格。予想であり、変動する |
| NAV倍率 | 投資口価格 ÷ 1口あたり純資産価値。1倍が一つの目安 |
| LTV | 有利子負債 ÷ 総資産。低いほど借入への依存が小さい |
| 稼働率 | 保有物件の賃貸されている割合 |
| FFO | 賃貸事業から生む現金の水準。分配の原資 |
| 格付け | 格付会社による信用力の評価 |
分配金利回りが高い銘柄には、価格が下がっているという理由がある場合があります。
利回りは「分配金 ÷ 価格」です。価格が下がれば、分配金が変わらなくても利回りは上がります。
なぜ価格が下がっているのかを確認せずに、利回りだけで判断しないでください。
どこで調べるか
- 各投資法人の決算短信、決算説明資料、有価証券報告書
- 保有物件の一覧(所在地、取得価格、稼働率、テナント)
- 証券取引所や関係団体が公表する市場全体のデータ
いずれも無料で見られます。資料には、物件ごとの調査結果や、金利の状況、今後の方針が記載されています。
リスク
価格が動く
市場で売買されるため、買った価格を下回ることがあります。元本は保証されていません。
分配金が変わる
空室が増えれば、賃料が下がれば、分配金は減ります。予想分配金は約束されたものではありません。
金利が二重に効く
金利が上がると、REITには二つの経路で影響が出ます。
| 内容 | |
|---|---|
| 借入コスト | 投資法人の支払利息が増え、分配の原資が減る |
| 比較の対象 | 国債など他の商品の利回りが上がり、相対的な魅力が下がる |
導管性要件のため内部に資金を貯めにくく、借入への依存度が一定程度あります。だから金利の影響を受けやすい仕組みになっています。
各投資法人が、固定金利の比率や借入期間の分散でどう備えているかは、決算説明資料で確認できます。
不動産そのもののリスク
災害、老朽化、テナントの退去や賃料の滞納。現物と同じリスクが、間接的に及びます。
運営に関するリスク
資産運用会社は運用報酬を受け取る立場です。投資家の利益と運用会社の利益が一致しない場面が生じうるため、法令や規則で制約が設けられています。
とくに、スポンサー企業から物件を取得する場合の価格の妥当性は、開示資料で確認する項目です。
税金の扱い
| 扱い | |
|---|---|
| 分配金 | 原則として源泉徴収される |
| 売却益 | 申告分離課税 |
| 配当控除 | 対象外 |
| 損益通算 | 上場株式等との通算が可能 |
| NISA | 成長投資枠の対象となりうる |
| iDeCo | 個別の銘柄は買えない。ファンドが選択肢にあれば間接的に |
株式の配当金は、確定申告で総合課税を選ぶと配当控除を受けられる場合があります。
REITの分配金は、この配当控除の対象外です。導管性要件により投資法人段階で法人税がかかっていないためです。
株式と同じつもりで確定申告の方法を選ぶと、想定と違う結果になります。税務の判断は税理士にご確認ください。税率や制度は改正されます。
どちらを選ぶかではない
REITと現物は、性質が違うだけです。
| 状況 | 考えられること |
|---|---|
| まとまった資金がない | REITなら少額から始められる |
| いつ使うか分からない資金 | 売りやすさが効く |
| 物件を自分で選びたい | 現物 |
| 土地を持ち続けたい | 現物 |
| 管理の手間をかけたくない | REIT |
| 価格の変動を見たくない | REITは毎日値が動く |
両方を組み合わせることもできます。資産全体の配分の中でどう位置づけるかは、金融機関や資産運用の専門家に相談してください。
不動産の仕事に関わる場合
REITの動向は、不動産市場全体の状況を映すことがあります。
各投資法人が公表する資料には、地域別・用途別の稼働率や賃料の動きが載っています。個人では集めにくい情報が、まとまった形で無料で得られます。
- 導管性要件の仕組みを理解した分配金が多い理由
- 投資対象の種類を確認したオフィス・住宅・商業・物流・ホテルなど
- 分配金利回りが高い理由を確認した価格が下がっていないか
- NAV倍率を確認した
- LTVを確認した借入への依存度
- 稼働率と、その推移を確認した
- 決算説明資料を読んだ
- 保有物件の一覧を確認した地域・用途の偏り
- 金利への備えを確認した固定金利の比率、借入期間の分散
- スポンサーからの物件取得の有無と価格を確認した
- 分配金が予想であることを理解した
- 元本が保証されていないことを理解した
- 配当控除の対象外であることを確認した
- 税務の扱いを税理士に確認した
- 現物との性質の違いを踏まえて位置づけた
まとめ
- 分配金が多いのは導管性要件による。運用が特別に優れているからではない。
- 内部に資金を貯めにくいため、借入への依存がある。金利の影響を受けやすい。
- 金利上昇は二重に効く。借入コストの増加と、他の商品との比較。
- 現物は価格が安定しているのではなく、値付けされていないだけ。
- 分配金は配当控除の対象外。株式の配当と同じつもりで扱わない。
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