2025年改正でどう変わる?建築物省エネ法のポイントを初心者向けに整理

建築物省エネ法とは?
建築物省エネ法の目的
建築物省エネ法(正式名称:建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律)は、建築物の省エネルギー性能を向上させ、環境負荷を低減することを目的とした法律です。日本ではエネルギー消費量の約3割を建築物が占めており、その削減が求められています。特に、住宅やオフィスビルなどの建築物は、冷暖房や照明、給湯などで多くのエネルギーを使用しており、これを効率的に管理することが重要です。
なぜ省エネが重要なのか?
環境問題と不動産市場の関係
気候変動対策として、国際的に二酸化炭素(CO₂)の排出削減が求められています。日本も「2050年カーボンニュートラル」を目標に掲げ、建築物の省エネ化を進めています。この流れは不動産市場にも大きな影響を与えています。
建築物のエネルギー消費量と削減の必要性
例えば、最新のエネルギー効率が良いオフィスビルと、20年前に建てられたオフィスビルを比較すると、同じ面積でも電気代が半分以下になることがあります。これにより、企業はエネルギー効率の良い物件を選ぶ傾向が強まり、不動産市場でも「省エネ性能の高い建物」が評価されるようになっています。
省エネ住宅の価値向上
最近では、「ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)」や「BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)」のように、省エネ性能が明確に評価される仕組みが整っています。これにより、省エネ基準を満たす住宅の価値が高まり、将来の売却時にも有利になるケースが増えています。
省エネ性能の向上が求められる背景
法規制の強化
日本政府は、2025年以降すべての新築住宅・建築物に省エネ基準適合を義務化する方針を打ち出しています。これにより、新築物件のすべてが省エネ基準をクリアすることが求められ、住宅市場全体の性能向上が進みます。
エネルギー価格の高騰
近年、電気代やガス代の高騰が続いています。エネルギー効率の低い建物では、冷暖房費が大きな負担となるため、入居者や購入者にとって省エネ性能の高い物件が魅力的に映ります。
住宅ローンや補助金制度の活用
政府は、省エネ住宅の普及を促進するために、「フラット35S(省エネ基準を満たした住宅向けの低金利住宅ローン)」や「省エネリフォーム補助金」などの制度を用意しています。これにより、省エネ基準を満たす住宅は経済的なメリットも享受できるようになっています。
まとめ
建築物省エネ法は、不動産市場にも大きな影響を与える法律であり、省エネ性能の高い建物が今後さらに評価されることが予想されます。環境問題への対応、法規制の強化、エネルギーコスト削減の観点からも、省エネ基準を理解し、活用することが重要です。
建築物省エネ法の仕組み
建築物のエネルギー消費性能をどう評価するのか
建築物の省エネルギー性能は、主に「エネルギー消費量の削減率」と「設備の性能」の2つの視点から評価されます。具体的には、以下のような基準が設けられています。
エネルギー消費量の削減率
建物が消費するエネルギー量を基準値と比較し、どれだけ削減できているかを評価します。ここでは「設計一次エネルギー消費量」という指標が用いられます。一次エネルギーとは、石油やガス、電気などのエネルギー源のことで、これを建物全体でどの程度削減できるかが重要なポイントになります。
建築物の断熱性能
断熱材の厚さや窓の性能は、建物のエネルギー消費に大きく影響します。例えば、断熱性の低い住宅では、冬に暖房を使用してもすぐに室温が下がってしまいます。しかし、高性能な窓や壁に断熱材を使用すれば、暖房効果が長続きし、エネルギー消費を大幅に削減することができます。
設備の効率
建物内で使用する空調、給湯、照明などの設備のエネルギー効率も評価の対象になります。例えば、エアコン一つをとっても、最新の省エネモデルは旧式のものに比べて消費電力が半分以下になることもあります。
省エネ基準(住宅と非住宅での違い)
住宅(戸建て・マンション)の省エネ基準
住宅においては、主に「断熱性能」と「エネルギー消費量」の2つの基準が設けられています。これらの基準を満たす住宅は、冷暖房費の削減につながり、居住者の生活コストを抑えるというメリットがあります。
非住宅(オフィスビル・商業施設)の省エネ基準
非住宅の場合、オフィスや商業施設では照明や空調の使用量が多いため、特に設備のエネルギー効率が重視されます。例えば、「LED照明の導入」や「高効率な空調設備の設置」などが求められます。また、エネルギー管理システムを導入し、使用状況をモニタリングすることも重要とされています。
BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)とは
BELSとは何か
BELS(Building-Housing Energy-efficiency Labeling System)は、建築物の省エネ性能を評価し、わかりやすく星の数(★)で示す制度です。これは、自動車の燃費表示と同じような仕組みで、建物ごとのエネルギー効率を一目で確認することができます。
BELSの評価基準
BELSは、省エネ性能に応じて5段階で評価されます。評価のポイントは以下のとおりです。
BELS評価 | エネルギー消費削減率 |
---|---|
★☆☆☆☆ | 基準値を満たしていない |
★★☆☆☆ | 基準値をわずかに上回る |
★★★☆☆ | 省エネ基準に適合している |
★★★★☆ | 省エネ基準を大きく上回っている |
★★★★★ | 最高水準の省エネ建築物である |
BELSが不動産市場に与える影響
BELSの評価が高い建物は、省エネ性が高く、電気代などのランニングコストを抑えることができます。そのため、物件の資産価値が向上し、売却時や賃貸時にも有利になります。特に、近年のエネルギー価格の高騰を背景に、省エネ性能の高い建築物への需要が増加しています。
まとめ
建築物の省エネ性能は、エネルギー消費量や設備の効率をもとに評価されます。住宅と非住宅では基準が異なり、特に非住宅においては設備のエネルギー効率が重視されます。BELSのような評価制度を活用することで、建物の省エネ性能を明確に示すことができ、資産価値の向上にもつながります。
最新の改正ポイント(2025年改正)
改正の概要と背景
建築物省エネ法は、日本の建築物のエネルギー効率を向上させることを目的として制定された法律です。これまでは大規模な建築物を中心に、省エネ基準の適用が進められてきましたが、2025年の改正では、すべての新築住宅や小規模建築物にもその適用が拡大されます。これは、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた政府の方針の一環であり、建築分野における二酸化炭素排出の削減が不可欠とされているためです。
省エネ基準適合義務の拡大
適用範囲の拡大
これまで、省エネ基準への適合義務は、延べ床面積2,000平方メートル以上の非住宅建築物に限定されていました。しかし、2025年の改正により、以下のように義務の対象が拡大されます。
建築物の種類 | 適用対象 |
---|---|
新築住宅 | すべての住宅に省エネ基準適合義務が適用 |
非住宅建築物 | 延べ床面積300平方メートル以上の建物に適用 |
適用範囲が広がる理由
住宅部門におけるエネルギー消費量は年々増加しており、特に冷暖房による電力使用が大きな割合を占めています。そのため、小規模な住宅であっても省エネ基準の導入が必要とされ、全国的なエネルギー消費の削減が求められているのです。
改正のポイント
すべての新築住宅に省エネ基準適合義務化
これまでは一定規模以上の住宅にのみ、省エネ基準の適合が求められていました。しかし、2025年の改正により、すべての新築住宅がこの基準を満たすことが義務化されます。この改正により、住宅の断熱性能や設備のエネルギー効率が向上し、長期的な電気代やガス代の節約にもつながります。
一定規模以上の建築物は省エネ計算の提出が義務化
建築物の省エネ性能を確認するために、設計段階で「省エネ計算書」を提出することが義務付けられます。これにより、建築確認申請の際に、建物の省エネ性能が事前に審査される仕組みが強化されます。
届出義務の厳格化と罰則の強化
これまでは、省エネ基準に適合しない建築物に対する罰則は限定的でした。しかし、2025年の改正では、以下のようにより厳格な措置が導入されます。
違反内容 | 罰則 |
---|---|
省エネ計算書の未提出 | 建築確認申請が受理されません |
省エネ基準に適合しない建物の建築 | 行政からの指導や改善命令の対象となります |
ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の推進
ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)とは、建物のエネルギー消費を最小限に抑え、再生可能エネルギーを活用して、年間のエネルギー収支を実質ゼロにすることを目指した建物のことをいいます。今回の改正では、ZEBの普及を加速させるため、補助金制度が拡充され、環境負荷の少ない建築物がさらに広がることが期待されています。
改正による不動産業への影響
物件の資産価値への影響
省エネ基準に適合している建築物は、将来的に資産価値の向上が期待できます。特に、BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)で高い評価を受けている物件は、投資家や購入希望者からの注目を集めやすくなります。
省エネ基準を満たさない物件の売買・賃貸リスク
省エネ基準を満たしていない物件は、エネルギーコストが高くなりやすく、購入者や借主から敬遠される可能性があります。特に、ZEBやBELS評価の高い物件が普及していく中で、基準未満の建物は市場での競争力が低下する恐れがあります。
まとめ
2025年の改正により、省エネ基準の適用範囲が大きく広がり、すべての新築住宅がその対象となります。これにより、建築物のエネルギー効率がさらに高まり、不動産市場においても省エネ性能が物件評価の重要な指標となります。今後は、省エネ性能の高い建物が求められ、物件の資産価値や競争力を高める鍵になるといえます。
不動産業務で建築物省エネ法をどう活用する?
物件の資産価値評価と省エネ性能
建築物省エネ法が改正され、省エネ性能が法律上の基準となったことで、建物の価値を考える際に「エネルギー効率」が重要な判断材料になってきました。これまで「駅からの距離」や「築年数」が重視されてきましたが、これからは「どれだけエコか」も同じくらい注目されます。
たとえば、自動車を購入する場面を想像してみてください。燃費の悪い車よりも、ガソリン代がかからないエコカーを選びたくなるのと同じように、住宅も光熱費が少ないほうが人気になります。省エネ性能が高い住宅は、長期的に見てお得になるため、資産としての価値が高まるのです。
省エネ住宅が選ばれる理由
光熱費が安くなる | 毎月のランニングコストを抑えられます |
快適な室内環境 | 断熱性能が高く、夏は涼しく冬は暖かいです |
資産価値が維持しやすい | 将来的に売却する際にも人気が高いです |
BELS認証が取れていると査定価格がどう変わる?
BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)は、建物の省エネ性能を「星の数」で表示する制度です。1つ星から5つ星まであり、星の数が多いほど省エネ性能が高いと評価されます。これは冷蔵庫やエアコンに付いている省エネラベルのようなものです。
このBELS評価を取得している住宅は、買主にとって安心材料となるため、不動産査定時にもプラス評価となることがあります。特に星3以上であれば、査定額が数パーセント上がるケースもあります。明確な査定ルールはありませんが、他の条件が同じであれば、BELS認証の有無によって評価に差が出る傾向があります。
買主や借主が求める省エネ住宅のトレンド
近年の住宅選びでは、単に「安い」だけでなく、「長く快適に住めるか」「維持費を抑えられるか」といった視点が重視されています。特に若年層や子育て世代では、以下のようなポイントに注目が集まっています。
注目されている住宅の特徴
ZEH(ゼロエネルギーハウス) | 太陽光発電などでエネルギーを自給自足できます |
長期優良住宅 | 耐久性と省エネ性を兼ね備えた高性能住宅です |
高断熱・高気密の住宅 | 冷暖房の効率が良く、体にもやさしいです |
売買時に必要な省エネ説明
物件を販売する際には、省エネ性能について説明することが今後ますます重要になります。特に、住宅性能表示制度やBELSといった「見える化」された情報を使って、買主に安心感を与えることが求められます。
説明時に盛り込むべき内容
省エネ基準への適合状況 | 建築物省エネ法に適合しているかどうか |
断熱性能や設備の効率 | 冷暖房や給湯にかかる光熱費の目安 |
BELSの評価 | 星の数や発行日、評価の根拠など |
買主への提案資料に盛り込むべきポイント
買主が省エネ住宅を選ぶ際には、パンフレットやプレゼン資料の内容が判断材料になります。見た目だけでなく、コストに関する具体的な数字も添えることで、説得力が高まります。
効果的な提案資料の例
年間光熱費の試算 | 近隣の一般住宅との比較で削減額を提示します |
断熱材の構造図 | 床・壁・天井に使われている断熱材の種類と効果 |
BELSラベルの提示 | 客観的な評価として提示できます |
リフォーム・リノベーション時の注意点
既存住宅を販売または賃貸する際、省エネ性能が低いと買主や借主の関心が薄れる可能性があります。リフォームやリノベーションによって性能を高めることができますが、その際には注意すべき点があります。
リフォーム時に見直すべき箇所
窓の断熱性能 | 複層ガラスや内窓の設置が効果的です |
給湯器の交換 | エコジョーズやエネファームへの切り替え |
断熱材の追加 | 壁や床、天井への後付け施工が有効です |
助成金・補助金制度の活用
省エネリフォームや高性能住宅への改修には費用がかかりますが、国や自治体の補助金制度を利用することで、その負担を大幅に軽減できます。以下に、2024年度時点で活用できる主な制度をまとめました。
利用可能な補助制度の一例
こどもエコすまい支援事業 | 新築やリフォームに対する省エネ性能向上の補助 |
住宅省エネ2024キャンペーン | 窓や断熱材、給湯器などの交換に対する補助 |
ZEH支援事業 | 太陽光発電や蓄電池の導入に対する補助 |
なお、補助金を利用する際には、着工前の事前登録や指定の施工業者による工事が必要な場合があります。そのため、利用を検討する際には、国土交通省や環境省の公式ウェブサイトで最新情報を確認しておくことが大切です。
まとめ
建築物省エネ法は、単なる法令遵守のための制度ではなく、不動産の魅力や価値を高める有効な手段でもあります。物件説明、査定、提案、リフォーム、補助金の活用など、あらゆる場面で活かすことができます。省エネ性能に注目することで、より納得感のある提案が可能になり、これからの不動産営業において大きな強みとなるでしょう。
建築物省エネ法を理解して顧客に価値提供する
省エネ住宅を強みにする不動産営業術
省エネ住宅は、環境にやさしいだけでなく、実生活における「お得さ」をわかりやすく伝えることができる商品です。たとえば、ある住宅では冷暖房費が年間18万円だったところ、省エネ仕様に変更したことで13万円になったという事例があります。年間で5万円の差が出るため、10年間住めば50万円の節約になります。
このように、省エネ住宅の魅力は「見えない節約」を「具体的な数字」で説明することで、お客様の納得感を得やすくなります。営業時には、次のようなポイントを押さえて提案することが効果的です。
提案時に押さえるべき視点
光熱費の比較 | 従来の住宅と省エネ住宅の年間コスト差を提示します |
健康面の利点 | 冬のヒートショック対策や夏の熱中症リスク軽減につながります |
住宅ローン控除などの制度活用 | 税制優遇や補助金の対象になることを伝えます |
「省エネ=ランニングコスト削減」を武器にする
ランニングコストとは、住宅を購入した後にかかる維持費のことです。これは車と同じで、燃費の悪い車ほどガソリン代が高くなります。住宅も同様に、冷暖房費や給湯のエネルギー消費量によって、毎月の支出が変わってきます。
省エネ住宅は、設備や断熱性能が高いため、光熱費を抑えることができます。そのため、住宅ローンの返済だけでなく、生活費全体が安くなることを提案資料で示すと、より説得力が増します。
営業資料に盛り込むと良い項目
エネルギー消費量のグラフ | 冷暖房、給湯、照明など項目別に視覚化します |
他の住宅とのコスト比較表 | 同じ広さや地域の物件と比較します |
月額費用の総額提示 | 住宅ローンと光熱費の合計を提示します |
ZEH(ゼロ・エネルギー住宅)と補助金活用
ZEHとは、住宅で使用するエネルギーを太陽光発電などでまかない、年間のエネルギー消費を実質ゼロにすることを目指した住宅のことです。断熱性能の高さに加え、エネルギー効率の高い設備を備え、自家発電を行うことで、エネルギーの自給自足を実現しています。
国土交通省、環境省、経済産業省などがZEHの普及を後押ししており、新築時には補助金の対象となる場合があります。営業の現場では、こうした補助金を活用した購入メリットを説明することで、成約につなげやすくなります。
ZEHに関する補助金の一例(2024年度)
ZEH支援事業 | 1戸あたり定額55万円の補助(要件あり) |
蓄電池・高効率給湯器導入支援 | 条件により追加の支援を受けられます |
申請方法 | 事業登録されたZEHビルダーを通じて申請します |
これからの市場の動向
省エネ基準適合義務化で変わる不動産市場
2025年からは、すべての新築住宅に省エネ基準の適合が義務付けられます。つまり、省エネ性能が「当たり前」となる時代が到来します。これにより、性能の低い古い住宅は市場での評価が下がる可能性があります。
既存不適格物件のリスクと対策
省エネ基準に適合していない既存住宅は、今後の売却や賃貸で不利になることが予想されます。たとえば、同じ家賃で設備の新しい住宅と古い住宅が並んでいれば、当然新しい方が選ばれやすくなります。そこで、既存住宅を扱う場合には、次のような対策が必要になります。
断熱リフォーム | 窓や外壁、屋根の断熱性能を強化します |
BELS評価の取得 | リフォーム後に省エネ性能を「見える化」します |
補助金の活用によるコスト削減 | リフォーム費用の一部を補助金でまかない、提案しやすくします |
エコ投資・環境配慮型不動産の将来性
世界的に「ESG投資(環境・社会・ガバナンス)」が広がる中、不動産分野でも環境性能の高い建物が高く評価されるようになっています。特に大手企業や自治体が不動産を取得・賃貸する際には、環境配慮が重要な判断材料になっています。
この流れは今後さらに加速すると考えられ、省エネ性能の高い建物は不動産としての資産価値だけでなく、投資対象としても注目されるようになるでしょう。
まとめ
建築物省エネ法を理解することは、単なる法令対応にとどまらず、不動産営業の提案力を高めるための重要なポイントとなります。お客様にとってのメリットを具体的な数字や実例で示すことで、省エネ住宅の魅力を効果的に伝えることができます。今後の不動産市場では、環境性能を正しく把握し、それをわかりやすく伝える力がますます求められます。