冷凍冷蔵倉庫 ── なぜいま注目されるのか

この記事の要点
  • 冷凍冷蔵倉庫は、建物より冷凍設備が資産価値を決める。躯体が健全でも設備が寿命なら、話は別になる。
  • 普通の倉庫にはない法令が重なる。倉庫業法・高圧ガス保安法・フロン排出抑制法のほか、食品を扱えば食品衛生法も。
  • 冷媒がアンモニアかフロンかで、話がまるごと変わる。資料を見るとき最初に確かめる。
  • 選任が必要な有資格者がいる。人を確保できるかは、立地の問題でもある。

「冷凍冷蔵倉庫を探している」という相談は、普通の倉庫の延長では考えられません。建物を見ても、判断材料の半分も揃わないためです。

価値を決めているのは冷凍設備であり、営業できるかどうかを決めているのは法令と有資格者です。この二つは図面には書かれていません。

この記事では、普通の倉庫との違い、重なる法令、そして物件調査で確かめる順序を整理します。

建物ではなく、設備が価値を決める

冷凍冷蔵倉庫では、断熱パネル、冷凍機、配管、扉、そして電源設備が一体で機能します。このどれかが欠けると、倉庫として使えません。

普通の倉庫であれば、躯体が健全なら次の借り手を探せます。冷凍冷蔵倉庫はそうなりません。冷凍機が寿命を迎えていれば、入替えに相当の費用と工期がかかります。

築年数より、設備の更新歴

資料に築年数は書いてあっても、冷凍機がいつ入れ替えられたかは書いてありません。断熱パネルの劣化も、外から見ただけでは分かりません。

設備の更新履歴と、直近の点検記録。この二つを求めるところから調査が始まります。

重なる法令

普通の倉庫に比べて、関わる法令の数が増えます。それぞれに選任すべき人がいます。

法令窓口選任すべき者
倉庫業法国土交通省・運輸局倉庫管理主任者
高圧ガス保安法都道府県知事冷凍保安責任者
消防法消防署長防火管理者
食品衛生法都道府県知事・保健所食品衛生責任者
労働安全衛生法労働基準監督署安全管理者・衛生管理者・はい作業主任者

このほか、建築基準法、電気事業法、輸入貨物を扱うなら関税法が関わります。

労働安全衛生法の選任には人数の要件がある

安全管理者・衛生管理者は常時50人以上の事業場で、はい作業主任者は高さ2メートル以上の作業で必要とされています。

規模によって、必要な体制が変わります。借り手の運営体制まで含めて確かめないと、実際に使えるかどうかは分かりません。

冷媒が何かで、話が変わる

資料を受け取ったら、最初に冷媒を確かめてください。アンモニアかフロンかで、必要な体制も、将来の負担も違います。

高圧ガス保安法

冷凍保安責任者の選任が必要になる冷凍能力の基準は、アンモニアで20トン以上、フロンで50トン以上とされています。アンモニアを使う事業所では、特定化学物質等作業主任者も必要です。

アンモニアは毒性があり、扱いに資格と体制が要ります。一方で温暖化への影響は小さく、規制強化の対象になりにくい冷媒です。

フロン排出抑制法

フロンを使う場合、管理者に継続的な義務がかかります。

  • 冷媒の充填・回収は、都道府県知事に登録された業者しか行えない
  • 一定規模以上の機器は、知識を有する者(冷媒フロン類取扱技術者)による定期点検が必要
  • 年間の算定漏えい量が1,000 CO2トン以上になると、国への報告義務が生じる
点検記録は、引き継がれているか

フロンの点検は、機器を持っている間ずっと続く義務です。売買で所有者が変わるとき、記録が引き継がれていないことがあります。

記録がなければ、その機器がどう管理されてきたか分かりません。点検記録の有無は、設備の状態を推し量る材料にもなります。

倉庫業法の登録

他人の物品を保管して料金を受け取るなら、倉庫業法の登録が要ります。自社の荷物を置くだけなら不要です。

登録には施設設備基準があり、冷蔵倉庫にはその区分に応じた基準が定められています。「倉庫」として建っていても、登録を受けられる建物とは限りません。

借り手が営業倉庫として使うのか、自社倉庫として使うのか。用途によって、必要な条件が変わります。最初に確かめる点です。

物件調査で確かめる順序

  1. 冷媒の種類 アンモニアかフロンか
  2. 冷凍能力 選任すべき有資格者が決まる
  3. 設備の更新履歴 冷凍機の設置年と入替えの有無
  4. 点検記録 フロンなら特に。引き継がれているか
  5. 倉庫業法の登録の有無 営業倉庫として使えるか
  6. 電源容量 増設の余地があるか
  7. 用途地域と接道 大型車が入れるか
  8. 有資格者を確保できるか その地域で人が採れるか

1から4までで、建物を見る前に判断がつくことがあります。

調査するときのチェックリスト
  • 冷媒の種類を確認したアンモニアかフロンか
  • 冷凍能力を確認したNH3 20トン/フロン 50トン の基準
  • 冷凍機の設置年と更新履歴を求めた
  • 断熱パネルの状態を、専門業者に見てもらった
  • フロンの点検記録が引き継がれているか確認した
  • 算定漏えい量の報告実績を確認した
  • 倉庫業法の登録の有無を確認した
  • 借り手が営業倉庫として使うのか確認した
  • 電源容量と増設の余地を確認した
  • 選任すべき有資格者を洗い出した
  • その地域で有資格者を確保できるか確認した
  • 用途地域と接道、大型車の動線を確認した
  • 設備更新の費用と工期を、概算で見積もった

まとめ

  • 価値を決めるのは建物ではなく冷凍設備。築年数より、設備の更新履歴を見る。
  • 倉庫業法・高圧ガス保安法・フロン排出抑制法・消防法・食品衛生法・労働安全衛生法が重なる。
  • 冷媒がアンモニアかフロンかで、必要な体制も将来の負担も変わる。最初に確かめる。
  • フロンは点検と報告が続く義務。記録が引き継がれているかを見る。
  • 営業倉庫として使うなら倉庫業法の登録が要る。建っていても登録できるとは限らない。
  • 有資格者を確保できるかは、立地の問題でもある。

冷凍冷蔵倉庫の調査は、不動産の調査というより、設備と体制の調査に近いものになります。建物を見に行く前に、資料で確かめられることが多くあります。

本記事は、一般社団法人日本冷蔵倉庫協会の解説(冷蔵倉庫業に関連する法令と必要な責任者、フロン排出抑制法)に基づいて構成しています。設備の仕様や費用は物件ごとに異なるため記載していません。個別の案件については、所管の官公庁および各専門業者にご確認ください。

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