地すべり等防止法ノート
地すべり等防止法とは
地すべり等防止法とは、1958年3月31日に制定された法律で、法律第30号として知られています。
この法律は、地すべりの危険に対して人々を守り、また土地の安全な利用を確保することを目的としています。
第3条に基づき、関係都道府県の知事の意見を聞いた上で、国土交通大臣や農林水産大臣が特定の区域を「地すべり防止区域」として指定することができます。
これは、公共の利害に密接な関連を有する地域を特定し、その地域での地すべりのリスクを管理するためのものです。
地すべり防止区域の指定を要する地域は、大きく分けて以下の2つのカテゴリーに分類されます。
地すべり区域
地すべりしている区域
これは、既に地すべりが発生している地域を指します。
地すべりするおそれのきわめて大きい区域
これは、地理的、地質的な条件から判断して、将来的に地すべりが発生する可能性が非常に高いと考えられる地域を指します。
地すべり区域に隣接する区域
地すべりを助長・誘発している地域
これは、隣接する地域の状況が、地すべりを引き起こしやすくする要因を持っている地域を指します。例えば、土地の開発や過剰な水分、不適切な土地利用があげられます。
地すべりを助長・誘発するおそれがきわめて大きい地域
これは、隣接する地域の状態が、将来的に地すべりを引き起こしやすい条件を持っている可能性が非常に高い地域を指します。
これらの区域は、「地すべり地域」と総称され、公共の利害に密接な関連を有するものとされています。
このように、地すべり等防止法は、地すべりの危険性を予測し、適切な予防策を講じることで、人々の命や財産を守る役割を果たしています。
カテゴリー | 区分 | 説明 |
---|---|---|
地すべり区域 | 地すべりしている区域 | 既に地すべりが発生している地域 |
地すべりするおそれのきわめて大きい区域 | 地理的、地質的な条件から判断して、将来的に地すべりが発生する可能性が非常に高いと考えられる地域 | |
地すべり区域に隣接する区域 | 地すべりを助長・誘発している地域 | 隣接する地域の状況が、地すべりを引き起こしやすくする要因を持っている地域(例:土地の開発、過剰な水分、不適切な土地利用) |
地すべりを助長・誘発するおそれがきわめて大きい地域 | 隣接する地域の状態が、将来的に地すべりを引き起こしやすい条件を持っている可能性が非常に高い地域 |
地すべりの予防には、地域の地理的、地質的な特性を考慮した対策が不可欠です。
そのため、地すべり等防止法に基づいて指定された地すべり地域においては、国、地方自治体、地域住民が協力して、地すべりの発生を防ぐための取り組みが進められます。
地すべり防止区域の指定
地すべり防止区域の指定には、いくつかの重要な条件があります。
これらの条件は、地すべり等防止法に基づいています。
関係都道府県知事の意見の聴取
地すべり等防止法第5条に基づき、関係する都道府県の知事の意見を聴いた上で、国土交通大臣や農林水産大臣が地すべり防止区域を指定します。
これは、地方自治体の意見を尊重し、地域の実情に合った対策を講じるために重要なプロセスです。
現地調査の実施
地すべりのリスクを適切に評価するためには、地形、地質、降水、地表水、地下水、土地の滑動状況などについての現地調査が必要です。
これにより、地すべりの発生原因やリスクを正確に把握し、適切な防止策を立てることができます。
公共の利害に密接な関連
指定される地域は、公共の利害に密接な関連を持っている必要があります。
これは、地すべりが発生した場合に、公共の安全や利益に大きな影響を与える可能性がある地域を指すものです。
これらの条件に基づいて、地すべり防止区域が適切に指定されます。
指定された地域では、地すべりの発生を防ぐための様々な取り組みが進められます。
例えば、地すべりの危険性を低減するための土木工事、森林の管理や植樹、土地利用の制限などが含まれます。
条件 | 詳細 |
---|---|
関係都道府県知事の意見の聴取 | 地すべり等防止法第5条に基づき、関係する都道府県の知事の意見を聴いた上で、国土交通大臣や農林水産大臣が地すべり防止区域を指定する。 |
現地調査の実施 | 地形、地質、降水、地表水、地下水、土地の滑動状況などについての現地調査を実施し、地すべりの発生原因やリスクを正確に把握する。 |
公共の利害に密接な関連 | 指定される地域は、公共の安全や利益に大きな影響を与える可能性があるため、公共の利害に密接な関連を持っている必要がある。 |
地すべりは、その発生原因や影響範囲、発生確率などが多様であり、地域によって異なります。
そのため、地すべり防止区域の指定や地すべりの予防策については、それぞれの地域の特性に応じて慎重に進められる必要があります。
国や地方自治体、地域住民が連携し、効果的な地すべり防止策を講じることで、人々の命や財産を守ることができます。
地すべり防止区域に指定された土地での特定の行為の制限
地すべり防止区域に指定された土地では、地すべりの発生による被害を防止または軽減する目的で、地すべりの発生を助長・誘発する可能性のある特定の行為が制限されます。
これらの制限は、地すべり等防止法第18条に基づいて定められており、以下のような行為について都道府県知事の許可が必要となります。
- 地下水を誘致し、または停滞させて地下水を増加させる行為(ただし、政令で定める「軽易な行為」は除外されます。)
- 地下水の排除を阻害する行為(例:地下水の排水施設の機能を阻害する行為。政令で定める「軽易な行為」は除外されます。)
- 地表水の浸透を助長する行為(例:地表水を放流し、または停滞させる行為。政令で定める「軽易な行為」は除外されます。)
- のり切または切土で政令で定められたもの。
- 地すべり防止施設以外の施設または工作物の新築または改良で政令で定められたもの(例:ため池、用排水路)。
- 上記以外で、地すべりの防止を阻害し、または地すべりを助長・誘発する行為で政令で定められたもの。
なお、地すべり防止区域内で行為許可が必要な場合や違反行為を発見した場合は、その土地が所在する都道府県の砂防主管課にお問い合わせください。
制限される行為 | 詳細 | 例 |
---|---|---|
地下水を誘致し、または停滞させて地下水を増加させる行為 | 政令で定める「軽易な行為」を除く。 | — |
地下水の排除を阻害する行為 | 政令で定める「軽易な行為」を除く。 | 地下水の排水施設の機能を阻害する行為 |
地表水の浸透を助長する行為 | 政令で定める「軽易な行為」を除く。 | 地表水を放流し、または停滞させる行為 |
のり切または切土 | 政令で定めるもの | — |
地すべり防止施設以外の施設または工作物の新築または改良 | 政令で定めるもの | ため池、用排水路 |
地すべりの防止を阻害し、または地すべりを助長・誘発する行為 | 政令で定めるもの | — |
このように、地すべり防止区域内では、地下水の流れや地表水の浸透、土地の改変など、地すべりを助長・誘発するおそれのある様々な行為について制限が設けられています。
これらの制限は、地すべりの発生を未然に防ぎ、安全な土地利用を促すためのものです。
地すべり防止区域内の開発行為等
地すべりの発生による被害を未然に防止するため、「地すべり等防止法」が制定され、地すべり防止の観点から一定の開発行為等が制限されています。
この法律は、特定の地域を地すべり防止区域として指定し、その区域内での地すべりを誘発し助長するおそれのある行為、通称「制限行為」を定め、その行為を行う際には都道府県知事に許可を申請する必要がある、と規定しています。
制限行為と許可申請
「制限行為」とは、地すべり防止区域内で、地すべりの発生を阻害する可能性がある、または地すべりを助長・誘発する可能性があるとされる行為のことです。
これらの行為の内容は、地すべり等防止法第18条で定められており、計画している開発行為の内容が「制限行為」に該当する場合、都道府県知事に申請して許可を受ける必要があります。
ただし、申請された行為が地すべりの防止を著しく阻害し、または地すべりを著しく助長すると認められる場合、許可は下りません。
また、許可が下りる場合でも、地すべりを防止するために必要な条件が付けられることがあります。
18条申請の手続き
地すべり防止区域内で開発行為や現状変更を計画している場合、以下の手続きが必要となります。
申請窓口での事前協議
まず、市役所の開発行為等の申請窓口で、開発行為の申請や事前協議を行います。
申請地が地すべり防止区域内であることが確認された場合、市役所の田園づくり振興課で計画内容の確認を受けます。
土地登記簿謄本による確認
次に、土地登記簿謄本を確認し、計画している土地が地すべり防止区域内であることを確認します。
もし、明らかに「制限行為」でないと判断される場合、申請の必要はありません。
制限行為の判断
しかし、「制限行為」と判断される、または「制限行為」と思われる場合、県の農村振興課と「18条申請」の協議が必要となります。
18条申請の提出
協議の結果、「制限行為」に該当すると判断された場合、市役所田園づくり振興課経由で、県知事あてに「18条申請」を提出する必要があります。なお、2部提出が必要です。
申請内容の検討
申請内容は、地すべり防止の観点から、地すべり等防止法第18条に基づき内容検討されます。
問題がなければ、一定の条件を付けて許可されます。
許可書の受け取り
最後に、許可書は原則、県の農村振興課で受け取ることになります。
ただし、郵送を希望する場合は、申請時に所定の金額の切手を貼付した返送用封筒を提出する必要があります。
万一、返送時に事故があっても、許可書の再発行はできません。
以上が、地すべり防止区域内での開発行為や現状変更に関連した手続きの流れです。
なお、これらの手続きは、地すべりの発生を未然に防ぐための重要なプロセスですので、計画される開発行為や現状変更の内容に応じて、適切に進めてください。
また、不明点や疑問点がある場合は、関係する役所や専門家に相談することをお勧めします。
地すべり防止区域及びぼた山崩壊防止区域の管理
地すべりを防止する観点から、地すべりを引き起こしやすくする可能性のある特定の行動が、同法第18条により制限されています。
地すべりとぼた山崩壊の防止に関連する法律、通称「地すべり等防止法」(以下、「法」と表記)の第7条および第41条によれば、地すべり防止区域およびぼた山崩壊防止区域の管理は、都道府県知事が行う国の機関として規定されています。
ここでいう「管理」とは、地すべり防止工事やぼた山崩壊防止工事の実施、地すべり防止施設やぼた山崩壊防止施設の維持・修繕、そして、地すべり防止やぼた山の崩壊防止に有害な行為の制限等を指します。
この法律の目的は、これらの区域全般にわたって、これらの管理を適切に実施することにより、地すべりやぼた山の崩壊を防止することです。
地すべりとは、斜面の土地が、水分の影響や地震などの外力により、下方向に移動する現象を指します。
これは、住宅地や道路、農地などに重大な被害をもたらす可能性があります。
ぼた山崩壊とは、ぼた山(溶岩ドーム)の一部が崩れ落ちることを指し、これもまた大きな被害を引き起こす可能性があります。
これらの災害を防止するため、都道府県知事は、地すべり防止工事やぼた山崩壊防止工事の施行、それに関連する施設の維持・修繕、そして、これらの災害を引き起こす可能性のある有害な行為の制限を行う管理責任を持っています。
これは、「地すべり等防止法」により規定されているもので、この法律の目的は、地すべりやぼた山崩壊のリスクを低減し、地域社会の安全を保つことにあります。
以上のように、地すべり等防止法では、地すべり防止区域およびぼた山崩壊防止区域の適切な管理が、災害の予防に不可欠であるとされています。
特に、これらの区域での開発行為や現状変更は、前述の通り、法の第18条に基づいた申請と許可を必要とし、そのプロセスは地域の安全を考慮したものとなっています。したがって、これらの区域での開発や変更を考えている場合は、必ず関連する法律や制度を把握し、適切な手続きを踏むことが求められます。
地すべり防止区域及びぼた山崩壊防止区域の指定に関する都道府県知事の意見の申達
「地すべり等防止法」第3条(および第4条で準用する場合)に規定されている通り、都道府県知事は、主務大臣からの意見聴取に際し、意見を述べる責任を持っています。
この際、都道府県知事は、関係部局間で十分な連絡を取りながら、意見を述べることが求められます。
「地すべり等防止法」に基づき、地すべりやぼた山崩壊のリスクが高い地域は、特定の区域として指定されます。
この指定に際して、都道府県知事は、関係部局間で十分な連絡を取り合いながら、主務大臣に対して意見を述べる役割を果たします。
これにより、各地域の特性に応じた適切な対策が講じられることを目指します。
また、このプロセスは、災害リスクの低減を目的としたもので、都道府県知事の意見が、その地域の安全に影響を与える重要な要素であることから、関係部局間での連絡が重要であるとされています。
「地すべり等防止法」は、地すべりやぼた山崩壊のリスクを低減し、地域社会の安全を確保するための重要な法律です。
都道府県知事は、この法律に基づき、地すべり防止区域およびぼた山崩壊防止区域の管理、およびその区域の指定に際して、重要な役割を果たします。そのため、適切な手続きを踏み、関係部局との連絡を密に行うことが、災害の予防において非常に重要となります。
標識の設置
「地すべり等防止法施行規則」(以下、「規則」という。)第4条には、地すべり防止区域又はぼた山崩壊防止区域に設置する標識の様式について規定されています。
この規則によれば、規則別記様式第8に掲げる標識(その1)は、各地滑り防止区域又はぼた山崩壊防止区域において、1個以上設置することが求められています。また、標識(その2)については、適宜設置されることが推奨されています。
地すべりやぼた山崩壊のリスクが高い地域には、適切な標識を設置することが、その地域に住む人々や訪れる人々にとって、災害のリスクを知る上で重要な要素です。
規則によれば、規定された標識(その1)は必ず1個以上設置しなければならず、また、標識(その2)についても、必要に応じて設置することが推奨されています。
これらの標識は、地域住民や訪問者に、その地域の地すべりやぼた山崩壊のリスクを知らせ、適切な対応を取る助けとなるものです。
そのため、これらの標識の設置は、地域の安全を確保する上で非常に重要な要素となります。
「地すべり等防止法」および「地すべり等防止法施行規則」は、地すべり防止区域およびぼた山崩壊防止区域における災害のリスクを低減し、地域社会の安全を確保するための重要な法律および規則です。
これらの法律と規則に基づき、都道府県知事は、地すべり防止区域およびぼた山崩壊防止区域の指定、管理、および標識の設置に関連する重要な役割を果たします。そのため、適切な手続きを踏み、関係部局との連絡を密に行うことが、災害の予防において非常に重要となります。
地すべり防止工事基本計画の重要性
地すべり防止工事基本計画(以下、「基本計画」)は、「地すべり防止工事基本計画法」第9条の規定により作成されるもので、規則第6条において、その定める事項が規定されています。
この基本計画は、地すべり防止区域における地すべり防止工事に関連する基本的事項を定めるもので、その内容には、例えば、工事の目的、実施する工事の種類や範囲、工事に伴う費用の見積もり、工事の実施期間、その他の必要事項などが含まれます。
地すべり防止区域の指定の通知を受けた際には、その区域の状況を勘案し、関係する市町村長の意見を聴取しながら、すみやかに基本計画を作成することが求められます。
ここで、市町村長の意見の聴取については、少なくとも20日程度の期間をおくことが推奨されています。
この期間は、関係する市町村が適切に意見を形成し、提出するための時間を確保するためのものです。
基本計画の作成は、地すべり防止区域における災害リスクを低減するための重要なステップです。
そのため、都道府県知事は、地すべり防止区域の指定の通知を受けた際には、関係する市町村長の意見を聴取し、その地域の状況を勘案しながら、迅速に基本計画を作成することが重要となります。
この計画の策定を通じて、地すべり防止区域における安全対策が進められることで、その地域の安全が確保され、住民の生命や財産が守られることに繋がります。
「地すべり防止工事基本計画」は、地すべり防止区域における地すべり防止工事に関連する基本的事項を定める重要な計画です。
そのため、都道府県知事は、地域の状況を考慮し、関係する市町村長の意見を聴取しながら、迅速にこの計画を策定することが求められます。
これにより、地域の安全が確保され、災害リスクが低減されることが期待されます。
地すべり防止工事の実施と災害復旧の取り組み
地すべり防止工事の施行
地すべり防止工事は、「地すべり等防止法」第12条に規定する築造等の基準に従って行う必要があります。
これは、安全な施工のための基準が法律によって定められているためです。
なお、ぼた山崩壊防止工事については、別途通達される築造等の基準に従って行うことが求められます。
ぼた山崩壊防止工事の配慮
ぼた山崩壊防止工事については、基本計画の作成方法が法律で定められていないため、計画的に施行することが求められます。
漁港や港湾隣接地域での協議
漁港の区域や港湾隣接地域内で地すべり防止工事を施行する際には、法第48条に規定された通り、あらかじめ漁港管理者や港湾管理者の長と協議する必要があります。
また、港湾隣接地域、鉄道用地、軌道用地、または飛行場内で地すべり防止工事を施行する場合には、事前に当該工事の内容を運輸大臣に通知することが求められます。
災害復旧の取り組み
地すべり防止施設やぼた山崩壊防止施設に関連する災害復旧について、これらの施設が「公共土木施設災害復旧事業国庫負担法」における砂防設備、林地荒廃防止施設等に該当する場合には、同法が適用されます。
また、「農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律」における農業用施設や林業用施設に該当する場合には、同法が適用されます。これらの施設以外の災害復旧については、「地方財政法」の規定に基づき国庫補助を受ける場合があります。
まとめ
地すべり防止工事やぼた山崩壊防止工事は、それぞれ法律や通達に基づく基準に従って施行される必要があります。
また、特定の地域で工事を施行する場合には、関連する管理者や運輸大臣に事前に通知し、必要に応じて協議することが求められます。
さらに、災害復旧については、公共土木施設、農林水産業施設、またはそれ以外の施設に応じて、適切な法律の適用が求められます。
以上のように、地すべり防止工事やぼた山崩壊防止工事、および災害復旧については、法律や通達、また地域の状況に応じて、慎重な取り組みが必要です。
主務大臣の直轄工事に関連した責任と権限
主務大臣の権限と責任
主務大臣が直轄工事を施行する場合、主務大臣および国は、「地すべり等防止法施行令」(以下、「令」という。)の第2条および第3条に規定するところにより、都道府県知事および都道府県が持っている権限を代行します。
これは、直轄工事の施行に関連した事務を主務大臣が進めるための措置です。
権限の制約
その代行の範囲内では、都道府県知事は、その権限を行使することができません。
これは、二重の指揮や管理を避けるための重要な規定です。
賦課される負担金の帰属
令の第2条第12号または第13号の規定により、主務大臣が原因者負担金、受益者負担金等を賦課する場合でも、その収入は都道府県に帰属します。
これは、地域の安全確保に貢献した地方自治体への配慮として重要です。
まとめ
主務大臣は、直轄工事の施行において、都道府県知事および都道府県の権限を代行します。
これにより、効率的かつ迅速な工事の進行が可能となります。
ただし、その権限の行使には制約があり、代行の範囲内でのみ権限を行使できることが定められています。
また、原因者負担金や受益者負担金等の賦課についても、令の規定に従って進められますが、その収入は最終的には都道府県に帰属することが決まっています。
これらの規定は、地域の安全を確保するための工事を、国と地方自治体が連携して進めるための重要な制度です。
補足説明
主務大臣
特定の分野の政策を担当する大臣のこと。例えば、地すべり防止に関連する主務大臣は、国土交通大臣である可能性があります。
直轄工事
国が直接施工管理を行う公共工事のこと。
原因者負担金
地すべりや崩壊の原因を作った者に対して、その防止や復旧のための費用を負担させる金額。
受益者負担金
地すべりや崩壊の防止や復旧のための工事によって、特に利益を受ける者に対して、その費用を負担させる金額。
地すべり防止工事の承認プロセスと申請内容
地すべり防止工事の施行について、国や都道府県だけでなく、主務大臣や都道府県知事以外の者も関与する場合があります。
この場合、その者が施行する地すべり防止工事の設計及び実施計画について、どのようなプロセスを経て承認されるのか、また、申請書や協議書にはどのような内容を記載すべきか、以下で詳しく述べます。
承認・協議のプロセス
「地すべり防止工事法」の第11条の指定に基づき、主務大臣または都道府県知事以外の者が施行する地すべり防止工事の設計及び実施計画について承認する際、あるいは協議に応じる際、重要なのは、「地すべり防止工事基本計画」を考慮することです。
また、法の第12条に規定された築造等の基準に合致するものでなければなりません。
申請書・協議書の内容
地すべり防止工事の承認申請書または協議書には、少なくとも以下の内容を記載するよう指導されます。
- 当該工事の施行区域及びその現況
- 当該工事の種類
- 配置
- 構造
- 規模
これらの手続きは、地すべり防止工事が適切に計画され、効果的に実施されるために重要です。
工事の設計・実施計画は、地すべり防止工事基本計画を勘案し、法の規定に従って進められる必要があります。
これにより、工事が地域の安全を確保し、災害リスクを低減する目的に沿ったものであることが確保されます。
また、承認申請書や協議書には、工事の施行区域、現況、種類、配置、構造、規模が記載されることが求められます。
これは、工事の透明性を確保し、関連する機関や住民に対して必要な情報が提供されるための重要な手続きです。
補足説明
地すべり防止工事基本計画
地すべり防止工事に関連する様々な事項を包括的に定めた計画。これには、工事の目的、施行区域、工事の種類、配置、構造、規模などが含まれます。
築造等の基準
地すべり防止工事において、堤防や壁、斜面の補強などの施工に関連する技術的な基準。これには、材料の種類、強度、施工方法などが含まれます。
地すべり防止区域とぼた山崩壊防止区域における行為の制限
地すべりとぼた山の崩壊を防止するためには、特定の区域での活動に一定の制限を設けることが必要です。
これは、安全を確保する上で極めて重要ですが、一方で、国民の権利を不当に制限するものであってはならないことを念頭に置く必要があります。
法律において、地すべり防止区域及びぼた山崩壊防止区域における行為の制限は、法第18条及び第42条に規定されています。
法第18条第1項各号による制限
この条文は、それぞれ別個の観点から制限行為を規定しています。したがって、2以上の号に該当する行為について処分をしようとする際には、それぞれの観点から検討する必要があります。
例えば、2メートル以上の土地を掘削して新たに井戸を設け、かつ、1馬力を超える動力を用いて地下水を汲み上げる行為については、地下水を汲み上げること自体は支障がなくても、掘削することに支障がある場合、許可を与えてはならないことが示されています。
鉱業権者または租鉱権者による制限
鉱業権者または租鉱権者が、地すべり防止区域外から坑道を掘進して地すべり防止区域内に進入する場合、その行為は一般的に法第18条第1項第1号に該当する行為とされ、許可を受けるよう指導されます。
ただし、すべり面よりおおむね50メートル以上の深さにおける該当行為は、道号に該当しない行為であるとされています。また、地すべり防止区域内における堅坑については、法第18条第1項第1号及び同項第5号(令第5条第3項)に該当する行為として、許可が必要であるとされています。
地下水の汲み上げに関する制限
地すべり防止区域の指定の際に都道府県知事が別途示す場合、すべり面の深さ及び地下水の状況を考慮して、一定の深さ以上からの地下水の汲み上げについて、法第18条第1項第1号に該当しない行為として取り扱うことが示されています。
電らん、発電用導排水管、暗渠排水管に関する制限
これらの設備は、令第4条第1項第3号に規定する「これらに類する物件」に該当するものであるとされています。
ボーリングについて
直径35センチメートル以下のボーリングは、通常、令第5条第3項第1号の掘削に含まれないが、法第18条第1項第2号の制限行為に該当することがあります。ただし、水の浸透しない地質の土地でボーリングを行う場合、または水の浸透を防止する工法を用いるボーリングの場合、一般的には地表水の浸透しない軽微な行為と認められます。そのため、法第18条第1項第2号の許可を得る際には、この点を十分考慮する必要があります。
軽微な行為の指定
令第4条第1項第4号及び同条第2項第6号の規定により、都道府県知事が指定する軽微な行為は、それぞれ同条第1項第1号から第3号まで及び同条第2項第1号から第5号までに掲げる全国一律に規定できる行為以外のもので、地すべり防止区域の状況を考慮して指定するものです。行為制限の趣旨を十分考慮し、指定された行為が行われることが望ましい。
載荷重又は距離の指定
令第5条第2項第3号、同条第3項第1号及び第2号により都道府県知事が指定する載荷重又は距離は、地すべり防止区域の地形、地質、その他の状況を考慮し、地すべりの防止上支障のおそれのある範囲内でなければなりません。
ぼた山崩壊防止区域における制限
ぼた山崩壊防止区域における制限のうち、法第42条第1項第5号に規定する鉱物を掘採する行為は、鉱業権者又は租鉱権者が鉱業法及び鉱山保安法の規定により十分な監督を受けている場合、また、地下での掘採が本質的にもぼた山の崩壊を助長し、又は誘発するおそれが極めて少ないと認められる場合、法第42条第1項第5号の規定の運用に際して、その点を十分考慮する必要があります。
森林法又は砂防法による許可を受けた行為
森林法又は砂防法の規定により許可を受けた行為で、法第20条第1項の規定により本法の許可を受けることを要しないものは、それぞれ森林法及び砂防法の許可の内容に限られ、許可の内容にない行為、許可を受けた行為に関連する他の行為、又は許可を受けた行為を行うための他の行為は含まれません。
電気工作物の設置について
当該行為が地すべり等防止法、砂防法又は森林法の許可を要するもので、かつ、河川法による許認可を必要とする場合、関係部局間で連絡を取り、地すべり等防止法、砂防法又は森林法による許可と河川法による許認可とを同時に行うこととし、許可申請書に必要以上の手間をかけないよう配慮することが求められます。
鉱業に関する行為の許可申請
法第18条第1項又は第42条第1項の許可の申請があった場合、条件付きで許可を出す場合には、あらかじめその理由を添えて所轄通商産業局長に協議し、その意見を整えた上で、その処分を行うことが求められます。
河川法の適用を受けていない電気工作物の工事について
法第18条第1項の許可の申請があった場合、所轄通商産業局長に十分連絡し、その意見を反映するよう措置を取る必要があります。
土地改良法による土地改良事業の計画に関連する行為
土地改良法の規定による土地改良事業の計画に関連する一連の行為又は電気工作物の工事の際には、当該計画に係る工事が行われる場所及びその周辺の地すべり防止区域、ぼた山崩壊防止区域又は地すべり特定行為制限区域の区域の状況を確認し、地すべりの危険性、軽微な行為、制限行為、許可行為に関連した内容を検討し、それに対する適切な手続きを進めることが求められます。
補足説明
ぼた山崩壊
ぼた山とは、火山活動によって形成された土砂や岩石が積み重なった山のことを指します。これらの山は、土砂や岩石の堆積状態や水分の含有状況によって、崩壊のリスクが高くなる場合があります。
法第18条、第42条
これらは、「地すべり防止法」において、地すべり防止区域及びぼた山崩壊防止区域における行為の制限に関連する条項です。
坑道
鉱山で、鉱石や鉱物を採掘するために掘られた地下の通路や空間のことを指します。
堅坑
坑道を掘る際に、固い岩石を掘削する作業を行う場所や、そのような地質条件の区域を指します。
馬力
エネルギーの単位の一つ。1馬力は、約746ワットに相当します。
関連事業計画
地すべり防止に関連した事業計画の作成と承認 地すべりは土地の安定性を失い、斜面が崩れる現象です。
これによって家屋や道路、農地などが被害を受ける可能性があります。
そのため、地すべり防止区域や被害のおそれのある区域で、被害を除去または軽減するための関連事業計画が必要とされます。
関連事業計画とは 関連事業計画とは、地すべり防止区域及び地すべりによる被害を受けるおそれのある区域で、地すべりによる被害を除去し、または軽減するために必要な事業を列挙し、これらの事業と密接に関連する事業を含む計画です。
この計画は、地すべり防止区域外の土地に対して、法律の第24条第1項第1号から第3号までに掲げられた事項について作成されます。
都道府県知事の勧告と協力の要請 都道府県知事は、市町村長に対して、関連事業計画の作成を勧告することができます。
また、計画の承認にあたっては、その計画の内容に関連を持つ他の市町村長に、計画作成への協力を要請することが求められます。
この際、関連部局間で相互に十分協議を行い、整えることが重要です。
特に、計画の中で土地改良事業に関連する部分については、その概要の作成や計画の承認に当たって、所轄の農地事務局長との協議が必要です。
勧告の時期と関連市町村長への指示 関連事業計画の作成の勧告は、地すべり防止区域の指定の通知を受けた後、1ヵ月以内に行うことが望ましいとされています。
そして、その勧告を受けた市町村の長は、速やかに関連事業計画を作成し、都道府県知事の承認を求めるよう、関連する市町村長に指示することが求められます。
地方公共団体の責務 関連事業計画に基づいて行われる家屋の移転や建設が、円滑かつ適切に進行するよう、関係地方公共団体の長は、財政上および技術上の援助を行うことが求められます。
補足
法第24条第1項
これは、日本の地すべり等防止法の一部で、地すべり防止に関連する事業の一部を規定しています。
地すべり防止区域
地すべりの危険性が高いとされる区域で、特定の制約や規制が適用される場所を指します。
土地改良事業
土地を改良して、農地や住宅地、商業地として利用しやすくするための事業を指します。
都道府県知事
日本の行政区画である都道府県の最高責任者を指します。
市町村長
日本の行政区画である市町村の最高責任者を指します。
地すべり防止区域台帳およびぼた山崩壊防止区域台帳の作成とその重要性
地すべりとぼた山崩壊の防止には、それぞれの現況や施設の状況を正確に把握することが非常に重要です。
そのため、地すべり防止区域台帳およびぼた山崩壊防止区域台帳の作成が求められます。
台帳の内容
これらの台帳は、地すべりおよびぼた山崩壊の現状、地すべり防止施設およびぼた山崩壊防止施設の状況、およびそれぞれの区域の概況を把握するための唯一の資料です。
これにより、災害復旧の取り扱いを容易にし、被害の拡大を防ぐことができます。
台帳の重要性
これらの台帳は、災害発生時における復旧作業の効率化だけでなく、地方交付税の基準財政需要額の算定基準としても必要不可欠なものです。
地方交付税は、地方自治体の財政を支援するための税で、その額は基準財政需要額に基づいて決定されます。
そのため、台帳の内容が正確であることが、地方自治体の財政支援にも影響を与えます。
補足
地すべり
地面の土壌が崩れ、斜面が滑落する現象を指します。
ぼた山崩壊
ぼた山は、急峻な斜面に木が密集して生えている山を指し、これが崩れることをぼた山崩壊といいます。
地方交付税
日本政府が地方自治体に対して支給する税金で、自治体の財政を補助するためのものです。
基準財政需要額
地方自治体が適切に機能するために必要な財政額を指し、これが地方交付税の算定基準となります。
地すべりおよびぼた山崩壊は、自然災害の一種で、人々の生活や財産に甚大な被害をもたらす可能性があります。
そのため、これらの災害を防ぐための施設の状況や、被害のおそれのある区域の概況を正確に把握し、必要な対策を講じることが重要です。
また、これらの情報は地方自治体の財政支援にも影響を与えるため、地すべり防止区域台帳およびぼた山崩壊防止区域台帳の内容は、常に更新され、正確であることが求められます。