CHIOU / 株式会社地央

市役所での調査 ── 窓口ごとに、何を聞くか

この記事の要点
  • 役所調査は一つの課では終わらない。都市計画・建築指導・道路管理・下水道・開発指導に分かれる
  • 窓口では地番で尋ねる。住居表示では調べられない
  • 回答は担当者名・日付・課名とセットで記録する。後から食い違ったとき、これだけが拠りどころになる
  • 「たぶん大丈夫」は回答ではない。断定を避けた言い方は、そのまま記録して依頼者に伝える

役所に着いた。総合案内で「不動産の調査で来ました」と言うと、「どちらの課でしょうか」と聞き返される。

用途地域を知りたいのか、道路の種別を知りたいのか、排水の状況を知りたいのか。聞きたい内容によって、行く課が違います。一つの課で全部聞こうとすると、「それはうちではありません」と回されるうちに時間が過ぎ、受付時間が終わります。

この記事では、どの窓口で何を聞くのか、どう聞けば確実な回答が得られるのか、そして回答をどう記録に残すかまでを扱います。

一つの課では終わらない

自治体によって課の名称は違いますが、扱う内容の分かれ方は共通しています。行く前に、聞く項目を課ごとに仕分けておくと、一度で回れます。

窓口 聞くこと
都市計画課 区域区分、用途地域、建蔽率・容積率、高度地区、防火・準防火地域、風致地区、地区計画、都市計画道路・都市施設の計画
建築指導課 建築基準法上の道路種別(第42条の何号か)、後退の要否、建築確認の履歴、条例による制限(がけ条例など)
道路管理課 道路法上の位置づけ(認定路線か)、道路台帳の幅員、官民境界の確定状況、掘削の可否
下水道課 下水道の整備区域か、汚水と雨水の処理方式、本管の位置と口径、受益者負担金の納付状況
開発指導課 開発許可の要否、過去の開発許可の履歴、調整区域なら第34条各号の該当可能性
農業委員会 現況が農地か、農業振興地域の農用地区域か、農地区分
管財・財産管理 法定外公共物(赤道・水路)の扱い、用途廃止と払下げの可否
道路は二つの課にまたがる

「この道は市道ですか」は道路管理課、「この道は建築基準法上の道路ですか」は建築指導課です。同じ道について、聞く相手が二つあります。市道として認定されていても建築基準法上の道路とは限らないため、両方で確認する必要があります。片方だけで判断すると、回答を誤ります。

窓口別に、何を聞くか

都市計画課

ここで得た情報が、その後の調査の枠組みを決めます。最初に行く課です。

  • 区域区分 市街化区域か、市街化調整区域か、非線引き区域か、都市計画区域外か
  • 用途地域と建蔽率・容積率 敷地が二つ以上の用途地域にまたがる場合、扱いを確認します
  • 高さの制限 絶対高さ、高度地区、日影規制
  • 防火地域・準防火地域 建物の構造と開口部に制限がかかります
  • 地区計画・建築協定 用途地域に上乗せされる制限。ここを飛ばすと回答が後から覆ります
  • 都市計画道路・都市施設 かかっている場合、都市計画法第53条の許可が必要になります。事業の認可時期と進捗も確認します

建築指導課

建てられるかどうかに直結する課です。

  • 道路種別の判定 第42条の何号か。これが最も重要です
  • 後退の要否と後退線の位置 二項道路の場合。反対側が川や崖なら扱いが変わります
  • 建築確認の履歴 確認済証・検査済証が出ているか。検査済証がない建物は、増改築や融資で問題になります
  • 条例による制限 がけ条例、中高層建築物条例、狭あい道路の整備条例など。自治体ごとに異なります

道路管理課

  • 道路法上の位置づけ 認定路線か、法定外公共物(赤道・水路)か、私道か
  • 道路台帳の幅員 現地の実測値と一致するかを照らします
  • 官民境界の確定状況 確定していれば「確定図」を取得します。未確定なら、境界確定の手続きが必要になる可能性があります
  • 掘削の可否 舗装後の年数によって、一定期間は掘削が制限されることがあります。上下水道の引込み工事に影響します

下水道課

  • 整備区域かどうか 区域外なら浄化槽が必要です。整備予定の時期も確認します
  • 処理方式 合流式か分流式か
  • 本管の位置と口径、埋設深さ 接続の可否と工事費に影響します
  • 受益者負担金 納付済みか未納か。未納の場合、負担が買主に移ります

開発指導課

  • 開発許可の要否 市街化区域は1,000㎡以上(条例で引下げの場合あり)、非線引き区域は3,000㎡以上、都市計画区域外は1ha以上。市街化調整区域は面積にかかわらず必要です
  • 過去の開発許可の履歴 造成の経緯、許可条件、公共施設の帰属
  • 調整区域の場合 都市計画法第34条各号に該当する可能性、区域指定・集落内開発制度の対象区域か

聞き方

地番で尋ねる

窓口では地番で調べます。住居表示では調べられません。公図と登記事項証明書を持って行くのが確実です。地番が分からなければ、ブルーマップか課税明細で対応を確認しておきます。

図面を出して指す

言葉だけで場所を伝えようとすると、誤解が生じます。公図か住宅地図を出して、対象地を指しながら聞きます。隣接地との関係も同時に確認できます。

「たぶん」を持ち帰らない

断定を避けた回答は、そのまま記録する

「たぶん大丈夫だと思います」「おそらく該当しないかと」。窓口でこう言われることがあります。担当者としては断定できない事情があるためで、押しても答えは変わりません。

大切なのは、その言い方をそのまま記録し、そのまま依頼者に伝えることです。「大丈夫だそうです」と言い換えて伝えると、後で覆ったときに責任がこちらへ来ます。「窓口では『たぶん大丈夫』との回答で、確定的な回答は得られなかった」と伝えるのが正確です。

その場で復唱する

聞いた内容を、その場で「つまり○○ということですね」と復唱します。認識の食い違いは、この一手でほとんど消えます。

記録の残し方

役所での回答は、書面で出ないことがほとんどです。だからこそ記録が要ります。

記録する項目 理由
日付 制度は変わる。いつ時点の回答かが意味を持つ
課名 どの窓口の回答かで、内容の重みが変わる
担当者名 後から確認するとき、同じ人に聞けると早い
質問と回答 質問の仕方まで残す。聞き方が違えば答えも変わる
断定の度合い 「該当します」と「たぶん該当しません」は別物

取得した資料(都市計画図の写し、道路種別図、確定図など)は、取得日を記入して保存します。不動産の紛争は数年後に出てくることがあります。そのとき、記録だけが拠りどころになります。

実務チェックリスト
  • 地番を確認してから役所へ行った住居表示では調べられない
  • 公図・登記事項証明書・住宅地図を持参した
  • 聞く項目を課ごとに仕分けてから回った
  • (都市計画課)区域区分・用途地域・建蔽率・容積率を確認した
  • (都市計画課)地区計画・建築協定の有無を確認した飛ばすと回答が覆る
  • (都市計画課)都市計画道路・都市施設にかかっていないか確認した第53条の許可
  • (建築指導課)道路種別を第42条の号まで確認した
  • (建築指導課)後退の要否と後退線の位置を確認した
  • (建築指導課)検査済証の有無を確認した
  • (道路管理課)道路法上の位置づけと台帳幅員を確認した
  • (道路管理課)官民境界の確定状況を確認した
  • (下水道課)整備区域か、処理方式、受益者負担金の納付状況を確認した
  • (開発指導課)開発許可の要否と過去の履歴を確認した
  • 回答を、日付・課名・担当者名とセットで記録した
  • 断定を避けた回答は、その言い方のまま記録した
  • 取得資料に取得日を記入して保存した

まとめ

  • 役所調査は一つの課では終わらない。都市計画・建築指導・道路管理・下水道・開発指導に分かれる。
  • 同じ道について、道路法上の位置づけは道路管理課、建築基準法上の種別は建築指導課。両方で確認する。
  • 窓口では地番で尋ね、図面を出して指す。言葉だけでは誤解が生じる。
  • 断定を避けた回答は、言い換えずにそのまま記録し、そのまま伝える。
  • 回答は日付・課名・担当者名とセットで残す。紛争は数年後に出てくる。
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