空家法が大改正(令和5年法第50号)“壊す”から“活かす”時代へ

所有者の責任はどう変わったのか
「ただ持っているだけ」では通用しなくなる時代へ
空き家を所有している人にとって、今までは「ちゃんと管理しておいてくださいね」という、いわば“お願いベース”のルールが基本でした。しかし、今回の法改正で、法律のスタンスは大きく変わりました。これからは、ただ所有しているだけでは済まされず、地域や社会全体の課題として、空き家をどう扱うかが問われるようになります。
新たに加わった義務とは何か
今回の法改正で加わったのは「国や地方公共団体が行う空き家対策の施策に協力する努力義務」です。これは法律上の明確な責務とされ、「空家等対策の推進に関する特別措置法」第4条第2項に定められています。
この「協力義務」は強制力を持つ義務ではありませんが、将来的に行政からの要請や指導に応じなければならない場面が増えることが想定されます。たとえば、以下のような協力が求められることがあります。
協力内容 | 具体例 |
---|---|
空き家の現況調査への回答 | 市区町村から届く「空き家の使用状況確認票」などに対応する |
空き家の活用に関する相談対応 | リフォームや貸し出し、売却などの活用提案に耳を傾ける |
適切な管理に関する指導の受け入れ | 庭木の剪定、通風・通水の実施など基本的な管理を行う |
責任が強化された背景を理解する
なぜ、ここまで所有者の責任が重くなったのでしょうか。それは、空き家が放置されることで近隣にさまざまな悪影響を及ぼす事例が増えているからです。以下のような事態が全国各地で問題になっています。
放置空き家による地域への影響
- 屋根や壁が崩れて通行人に危険を及ぼす
- ごみが投棄され、悪臭や害虫の発生源になる
- 不審者が侵入し、治安が悪化する
たとえば、自転車置き場として使っていた実家の敷地が、草だらけになって蚊が大量発生してしまい、近所の人から苦情を受けたというケースもあります。所有者本人にとっては気づきにくい小さな問題が、放置されることで地域全体に波及してしまうのです。
考え方の転換が必要
ここで重要なのは、「空き家は個人の資産」であると同時に「地域全体の環境に影響する存在」だという考え方です。いわば、庭先に置かれた壊れた自転車が、自分の家の前だけでなく、通行人の安全にも関係してくるようなものです。
法律が「努力義務」という形で協力を求めてきたのは、こうした公共性の意識を高め、放置を防ぐための仕組みです。
将来的に予想される影響
現時点では「努力義務」にとどまっていますが、行政が求める協力に応じないケースが続けば、将来的にはさらに強い措置や法的義務への移行も検討されるかもしれません。特に、管理不全と判断されれば、後の章でも触れるように、固定資産税の軽減が解除されるリスクもあります。
法律の根拠条文
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空家等対策の推進に関する特別措置法 第4条第2項
所有者等は、空家等の適切な管理に努めるとともに、国及び地方公共団体が実施する空家等に関する施策に協力するよう努めなければならない。
まとめ
空き家の所有者に求められる姿勢は、「自分の持ち物だから自由にしていい」から「社会の一員として責任を果たす」へと変化しています。これからの空き家対策では、不動産を「所有する」こと自体に、地域や社会への貢献という側面が強く問われる時代に入ったと言えます。
支援法人が空き家対策を支える新しいしくみ
一人では解決できない問題に、専門チームが寄り添う
前の章では、空き家の所有者が果たすべき責任がこれまで以上に重くなったことを説明しました。しかし実際には、所有者自身が高齢だったり遠方に住んでいたりして、管理や活用を自分だけで進めるのが難しいケースも少なくありません。そうした現実に対応するため、今回の法改正では新たに「支援法人制度」が創設されました。
支援法人とはどんな存在か
支援法人とは、市区町村長が指定する団体のことです。具体的には、NPO法人や一般社団法人などがその対象となります。この法人は、空き家の所有者に代わって空き家の管理や活用の支援を行うことができます。あくまで所有者に寄り添いながら、必要なサポートを提供する役割を担います。
支援法人の主な活動内容
活動内容 | 具体的な取組例 |
---|---|
普及啓発 | 空き家の管理方法や活用の選択肢を、チラシや相談会を通じて広く伝える |
相談対応 | 空き家の今後について悩む所有者と一緒に、活用や売却の可能性を検討する |
所有者探索 | 登記簿に記載されていない相続人の調査や、電力契約者の情報照会を支援 |
管理受託 | 草刈りや見回りといった簡易的な管理を所有者の委託で実施 |
財産管理制度の提案 | 所有者が不明な場合に、市区町村へ財産管理人選任の申立てを助言 |
なぜこの制度が必要だったのか
空き家問題は、誰かが自分でなんとかすれば解決するというものではなく、地域全体で支え合いながら対処する必要があります。たとえるなら、川に浮かぶ流木を一人で引き上げるのは大変でも、周囲の人が協力すればスムーズに処理できるようなものです。
現場では、所有者が高齢化して連絡が取れない、相続関係が複雑で誰が所有者か不明、家が放置されて老朽化が進んでいるといった事情が重なり、個人では対応できないことがよくあります。支援法人は、そうした“つまずきの石”を一緒に乗り越えるための伴走者です。
法的根拠と制度の位置づけ
-
空家等対策の推進に関する特別措置法 第15条の2(令和5年改正により新設)
市町村長は、空家等管理活用支援法人として適切な能力および体制を有する法人を指定することができる。 - 同法第15条の3において、法人が行うことのできる業務として、情報提供、相談、管理受託、所有者探索、財産管理人制度の提案などが明記されている。
実務でどう関わってくるのか
不動産の現場では、空き家の売却や再利用の相談を受ける場面が少しずつ増えています。そんなとき、支援法人の存在を知っていれば、適切な窓口を紹介することができます。特に、所有者が意思決定を迷っていたり、管理の負担に困っていたりする場合には、支援法人と連携して進めることでスムーズに解決へとつなげることが可能です。
営業の現場で活かす視点
- 空き家の所有者が管理に困っていないか、面談時に確認する
- 空き家を活用したい顧客に対し、地域に支援法人があるか調べて伝える
- 相続関係が不明な物件については、支援法人経由で所有者の調査が可能か相談する
まとめ
支援法人制度は、空き家問題を一部の人の問題にとどめず、地域全体で解決するためのしくみです。不動産に関わる立場として、この制度の存在を理解し、必要なときに適切に案内できることが、これからの営業実務でも求められていきます。
問題が深刻になる前にできること 管理不全空家への指導と勧告
いきなり壊すのではなく、早めの声かけで防ぐ仕組み
前章では、空き家の所有者を支える支援法人について紹介しました。しかし支援だけでは空き家問題は解決しません。実際には、傷んだ空き家が周囲に悪影響を与える前に、行政が「これは放っておけない」と動けるようにする必要があります。そこで法改正によって導入されたのが「管理不全空家」に対する早期対応の仕組みです。
「管理不全空家」とは何か
管理不全空家とは、まだ特定空家(著しい悪影響を及ぼす状態)ではないものの、放置しておけば確実に悪化すると考えられる空き家のことです。たとえば以下のような状態が該当します。
管理不全空家の例
- 雑草が伸びて隣地にはみ出している
- 屋根の一部が壊れて雨漏りしている
- ガラス窓が割れて、外から内部が見えてしまう
- 郵便物が大量に溜まり、長期間不在であることが明らか
つまり、「このままだと危ない」「見た目にもよくない」と周囲から気づかれる状態が、管理不全空家です。放置すれば、ごみの不法投棄や不審者の侵入、火災のリスクなどにもつながります。
行政が取れる新しいアクション
以前は、こうした状態にある空き家でも「特定空家」になるまでは、行政が動きづらい状況がありました。しかし、法改正によって以下のような手順が可能になりました。
対応の流れ
- 市区町村が現地確認を行い、状態を把握する
- 管理が不十分だと判断した場合、所有者に対し指導を実施
- 改善が見られない場合、勧告を出すことができる
この「指導」や「勧告」は、命令や強制ではありませんが、公的な立場からの正式な注意です。そしてこの「勧告」を受けると、次に説明する税制上の大きな変化が起こります。
固定資産税の軽減措置が外れる仕組み
住宅が建っている土地については、固定資産税が大幅に軽くなる「住宅用地の特例措置」が適用されます。通常は、200平方メートル以下の部分について課税標準が6分の1に、超える部分については3分の1に軽減されます。
しかし、管理不全空家と判断され、かつ市区町村から「勧告」を受けた場合には、この特例が外れ、税額が大きく跳ね上がる可能性があります。これは所有者にとっては経済的な負担増となるため、大きな動機づけにもなります。
比較イメージ
状態 | 固定資産税の軽減措置 |
---|---|
住宅として使用または適切に管理 | 6分の1または3分の1に軽減 |
管理不全空家で勧告あり | 軽減措置解除。通常の課税が適用 |
現場で活かす視点
営業の場面でも、こうした法改正の知識が役立ちます。たとえば、次のような対応が考えられます。
実務への応用
- 空き家所有者が固定資産税の負担増を気にしている場合に法改正の内容を説明する
- 管理状態が悪い物件について、勧告リスクがあることを丁寧に案内する
- 放置の結果、資産価値が下がることを数値で示し、利活用を促す
法的根拠
- 空家等対策の推進に関する特別措置法 第13条の2
市町村長は、管理不全空家等に対し、必要に応じてその所有者等に指導又は勧告を行うことができる - 地方税法附則第15条、同法施行令第49条の2の2
管理不全空家等として勧告を受けた土地については、住宅用地特例の対象外となる
まとめ
空き家が深刻な問題に発展する前に、行政が手を打てるようになったことは大きな前進です。固定資産税の軽減措置の解除という具体的な経済的影響がある以上、所有者にとっても放置のリスクは明確になっています。営業活動の中でこうした情報を適切に伝えることで、所有者の判断を後押しし、地域の空き家問題解決にも貢献できます。
空き家の活用を進める新たなエリアづくり 空家等活用促進区域の創設
空き家に再び光を当てる新制度
前の章では、空き家が悪化する前に市区町村が指導できる仕組みについて説明しました。しかし、空き家対策は壊すだけでは終わりません。活かすという視点も欠かせません。そこで今回の法改正では、「空家等活用促進区域」という新しい制度が生まれました。これは、空き家を積極的に活用してもらうための“活用しやすいエリア”を市区町村が指定できる仕組みです。
どこが対象になるのか
空家等活用促進区域は、全国どこでも設定できるわけではありません。市区町村が次のような地域に限定して設定します。
対象となる地域の例
- 中心市街地(商店街や公共施設が集中するエリア)
- 観光振興を図りたい地域(歴史的建造物の多い街並みなど)
- 地域再生拠点とされた地区(地方創生の拠点となる地区)
たとえば、昔は賑わっていたけれど今は空き家が増えてしまった駅前商店街なども、促進区域の対象になり得ます。地域が元気を取り戻すきっかけとして、空き家の活用が期待されているのです。
何ができるようになるのか
この促進区域に指定されると、建築や用途の規制が一部緩和されることになります。従来では難しかった建替えや用途変更が、条件付きで可能になります。
主なメリット
活用内容 | 可能になること |
---|---|
建替え | 接道が4メートル未満でも、安全対策を講じれば建替えが認められる場合がある |
用途変更 | 住宅だった建物を、カフェや民泊、地域交流スペースに変更しやすくなる |
容積率・建ぺい率の緩和 | 市町村によっては、条例に基づいて制限の緩和が行われることもある |
たとえば、昔ながらの古民家を壊すか迷っていた所有者が、促進区域内であれば「このまま残して地域のカフェにしてみよう」と判断することも可能になります。空き家が地域のにぎわいの場へと生まれ変わるイメージです。
なぜ建替えがしやすくなるのか
都市計画や建築基準法のルールでは、原則として幅4メートル以上の道路に2メートル以上接していない土地には建物を建て替えできません(いわゆる「接道義務」)。しかし、昔からの細い路地が多い地域では、この接道義務がネックとなり、建替えできない空き家が多数ありました。
促進区域では、こうした土地でも、
- 避難経路の確保
- 近隣との調和
- 安全上の対策
などの条件を満たすことで建替えが許可される可能性が出てきます。
法的根拠と制度の位置づけ
- 空家等対策の推進に関する特別措置法 第16条の2(令和5年改正により新設)
市町村は、空家等の活用を促進するため、空家等活用促進区域を定めることができる。 - 同法第16条の3~4において、建築制限の特例や、用途変更の円滑化に関する措置が規定されている。
現場でどう活かすか
不動産営業や調査の場面では、次のような視点が重要になります。
実務への応用
- 空き家があるエリアが促進区域に指定されているか確認する
- 建替え希望の顧客に、接道要件緩和の可能性があることを説明する
- 利活用の提案時に、用途変更や行政支援の有無を一緒に案内する
まとめ
空家等活用促進区域は、空き家を「負動産」から「地域資源」へと変えるための新たな制度です。制度の趣旨を理解した上で、現地調査や顧客対応の中で活かすことが、これからの実務には欠かせません。空き家の未来を地域と一緒に描く制度といえます。
所有者がいない空き家も動かせる時代に 財産管理制度の拡充
誰のものでもない空き家は、どうするのか
これまでの章では、空き家の所有者が見つかっているケースを前提にした対策を取り上げてきました。しかし、実際には「誰が持ち主なのか分からない」「相続したはずの人が相続放棄していて動かせない」といった空き家も数多くあります。こうした物件は、近隣住民から苦情が出ても、所有者不在のために対応できないまま年月だけが過ぎてしまうという課題を抱えていました。
なぜ処分できなかったのか
所有者不明の空き家は、法的には「勝手に壊す」ことができません。なぜなら、たとえ手入れされていなくても私有財産であることに変わりはないからです。相続放棄された場合でも、名義がそのまま残っていたり、誰かが潜在的な権利を持っていたりする可能性があります。そのため、地方自治体としても安易に手を出すことができず、結果的に放置された空き家がそのまま残ってしまう状態が全国各地で見られました。
制度改正で変わること
令和5年改正の空家等対策特別措置法により、こうした「手つかずの空き家」への対応が可能になりました。具体的には、市区町村が家庭裁判所に申し立てを行い、「財産管理人」を選任してもらうことができるようになったのです。この財産管理人は、所有者の代わりに空き家を管理し、必要であれば売却することも可能となります。
新制度の流れ
- 市区町村が空き家の状態を調査する
- 所有者が不明または所在がつかめない場合、家庭裁判所に財産管理人選任の申し立てを行う
- 裁判所が弁護士などを管理人として選任する
- 管理人が空き家を適切に管理し、売却なども検討する
どんな空き家が対象になるのか
この制度はすべての空き家に適用されるわけではありません。以下のような要件を満たす必要があります。
主な対象条件
- 所有者の所在が長期間確認できない
- 相続放棄などにより、誰も権利主張していない
- 空き家の状態が危険または地域環境に悪影響を及ぼしている
たとえば、相続人全員が相続放棄をした古い住宅が台風で一部倒壊し、通学路に瓦礫が落ちたという事例では、これまでなら手が出せませんでしたが、今後はこの制度を使って行政が管理を進めることができるようになります。
なぜ今、この制度が必要とされたのか
日本全国で空き家が増加する中、特に問題になっているのが「所有者不明土地・建物」の存在です。国土交通省の推計では、所有者が不明な土地の合計面積は、九州全域に匹敵する規模にも達するとされています。こうした背景から、早急な対応が求められていたのです。
法的根拠と条文
- 空家等対策の推進に関する特別措置法 第15条の5(令和5年改正により新設)
市町村長は、所有者等の所在が長期間不明な空家等について、管理・処分の必要がある場合、裁判所に財産管理人の選任を申し立てることができる。 - 民法 第25条~30条
財産管理人の権限、義務、管理の内容について規定されている。
実務でどう役立てるか
営業や調査の場面で、明らかに管理されておらず、所有者が不明な空き家に出会うことがあります。そんなとき、単に「売主が分からないのでどうにもならない」と片づけるのではなく、この制度の存在を踏まえて次の一手を考えることが重要になります。
現場での活かし方
- 長年放置された空き家を確認した場合、市区町村が調査済みかを確認する
- 所有者と連絡が取れないことを前提に、財産管理人の活用可能性を検討する
- 空き家の活用を希望する顧客に、行政が関与して動かせる可能性があることを説明する
まとめ
財産管理人制度の拡充は、「所有者がいないから何もできない」という空き家対策の大きな壁を崩すものであり、長年放置されてきた空き家問題に現実的な対応をもたらします。不動産実務の現場でも、こうした制度を知っていることが、これまで動かせなかった案件に一歩踏み出す力となります。
空き家を放置すると税負担が増える時代へ 固定資産税の軽減特例が外れる仕組み
空き家でも安かった時代は終わりつつある
これまでの章では、所有者不在の空き家への対応や財産管理制度について解説してきました。こうした空き家の問題は、地域の安全や景観に関わるだけでなく、税制にも大きな影響を及ぼしています。これまでは空き家でも、住宅としての名目が残っていれば固定資産税の大幅な軽減措置を受けられる仕組みでした。しかし今後は、管理状態が悪いまま放置すると、この“優遇”が受けられなくなります。
固定資産税の軽減措置とは何か
固定資産税は、土地や建物を所有している人に対して市区町村が課税する税金です。ただし、住宅が建っている土地については、税負担を軽くするための特例措置が設けられています。これを「住宅用地の特例」と呼びます。
住宅用地の特例(従来の仕組み)
区分 | 軽減の割合 |
---|---|
200平方メートル以下の部分(小規模住宅用地) | 課税標準の6分の1 |
200平方メートルを超える部分(一般住宅用地) | 課税標準の3分の1 |
つまり、空き家でも住宅の形が残っていれば、その土地については大幅に税金が安くなる仕組みでした。
なぜ制度の見直しが必要になったのか
長期間管理されず放置された空き家は、倒壊や害虫の発生、景観悪化などの問題を引き起こすことがあります。にもかかわらず、所有者が何の対応もしていなくても税金は安いままという状態では、改善の動機が生まれにくく、行政としても対応に苦慮していました。
法改正で変わること
令和5年の空家等対策特別措置法の改正により、「管理不全空家」として市区町村から勧告を受けた場合には、固定資産税の住宅用地特例が解除されることとなりました。これにより、空き家の所有者が管理を怠れば、今までよりも税負担が重くなる可能性があります。
改正後のポイント
- 管理不全空家と認定されると、市区町村が所有者に対して「勧告」を行うことができる
- この勧告を受けると、固定資産税の軽減措置が外れる
- 特例解除により、6倍や3倍の課税額になるケースもある
どのような空き家が対象になるのか
この特例解除はすべての空き家に適用されるわけではなく、次のような条件を満たした空き家に対して適用されます。
対象となる空き家の特徴
- 草木が生い茂り、害虫や動物のすみかになっている
- 窓ガラスが割れたままで危険な状態
- 倒壊の恐れがあり、周囲に危害を及ぼす可能性がある
- 近隣から苦情が出ているにもかかわらず、改善の動きがない
制度がもたらす効果
この制度改正により、空き家の所有者は「持っているだけ」では済まされない状況になりつつあります。税制面でのペナルティが明確になったことで、空き家を放置することのコストが可視化され、管理や利活用への動機づけが強まることが期待されます。
法的根拠
- 空家等対策の推進に関する特別措置法 第13条の2
市町村長は、管理不全空家に対し、必要に応じて勧告を行うことができる - 地方税法附則第15条、同法施行令第49条の2の2
勧告を受けた管理不全空家に対する住宅用地特例の不適用が定められている
実務でどう活かすか
営業現場では、税負担に関する知識も重要な説明ポイントになります。特に、空き家の所有者が「今は使ってないけど、税金も安いしそのままでいい」と考えている場合には、制度改正による今後のリスクを丁寧に伝える必要があります。
実務での応用例
- 勧告による特例解除の事例をもとに、税負担の変化を説明する
- 利活用や売却によって管理責任と税負担を解消できることを提案する
- 市区町村によって運用が異なるため、地元の条例やガイドラインを確認する
まとめ
空き家を放置していても「どうせ税金が安いから」といった時代は、制度の改正とともに転換点を迎えています。固定資産税の軽減措置が外れることは、経済的なインパクトが大きく、空き家対策を真剣に考えるきっかけになります。不動産業に携わる者として、この制度の概要と実務的な影響を正しく理解し、顧客に伝える姿勢が求められます。
まとめ 空き家対策は“壊す”だけでなく“活かす”が主流に
空き家をめぐる制度は大きく変化しています
ここまでの内容では、空き家に関する法律の改正ポイントを順を追って確認してきました。以前までは、空き家といえば「放置されて危ない」「いずれ壊すしかない」というイメージが強く、実際の制度も「除却(取り壊し)」に重きが置かれていました。しかし、令和5年の法改正によって、その考え方に大きな転換が起きています。これからの空き家対策は「壊す」から「活かす」へと進んでいきます。
三本柱で整理する空き家対策の全体像
今回の法改正では、空き家問題を次の三つの観点から総合的に捉える構成となっています。
三本柱の全体像
対策の柱 | 主な内容 |
---|---|
活用 | 空家等活用促進区域の創設、支援法人の指定、用途変更の緩和など |
管理 | 所有者責任の明確化、管理不全空家への勧告、税特例の解除など |
除却 | 特定空家への対応、所有者不明物件への財産管理人制度の活用など |
なぜ「活かす」ことが重視されているのか
空き家の増加には人口減少や高齢化など多くの要因があります。そのなかで、すべての空き家を壊すことは現実的ではありません。壊すにはコストがかかりますし、周囲に影響を与えることもあります。そこで、まだ使える空き家を再利用するという考え方が主流になってきました。
例えば、古くなった空き家をリフォームしてカフェにしたり、地域の集会所として活用したりするケースが増えています。制度上も、そういった活用を後押しする仕組みが導入されました。壊すだけでなく、再び人の集まる場所に変えていくことが、まちの再生や地域活性化にもつながるという視点です。
現場対応でも知識が求められる
制度が複雑化する一方で、実務の現場ではシンプルかつ的確な判断が求められます。お客様から「この空き家、どうすればいいのか」「放っておくと税金はどうなるのか」といった相談を受けた際に、基本的な制度の知識をもとに説明できることは大きな信頼につながります。
知っておきたい相談対応のポイント
- 空き家が管理不全状態かどうかを確認する
- 税特例の有無や解除の可能性を把握しておく
- 利活用ができる区域か、支援制度があるかを調査する
- 所有者が不明な場合は、財産管理人制度の有無を検討する
小さな知識が、大きな違いを生む
たとえば、お客様が「祖父の家が空き家のままで、どうしたらいいか分からない」と相談してきたとします。そのとき、「そのままだと税金が高くなる可能性がありますよ」「市に相談すれば管理の支援が受けられるかもしれません」と一言添えられるだけで、信頼関係は大きく変わります。
このように、制度のポイントを押さえておくことで、営業や調査の実務にも役立つ場面は確実に増えていきます。複雑な制度でも、仕組みを分解して理解し直せば、初心者でも十分に対応できる力が身に付きます。
まとめ
空き家対策は、単なる撤去ではなく、社会資源としての活用、適切な管理、そして必要に応じた除却までを含めた総合的な取組みへと進化しています。法改正によって整備された新たな仕組みを正しく理解し、現場で柔軟に対応していくことがこれからの不動産業務において重要になります。